テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた   作:609

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マイソロ2 初代編 第四十八話 気持ち

世界樹の本体がある場所は、とても清らかな空気が漂っていた。

何より、暖かな光に包まれている。

だが、世界樹の幹の下まで来た一行は、はっきり言って疲れ切っていた。

センチュリオン・テネブラエも、「やれやれ」と言う顔をしている。

そして、世界樹の幹の所には一人の金髪の少年がニヤニヤし、腕を組んで座っている。

 

ディセンダーは肩で息をしながら、そして怒りながら言った。

 

「はぁ、はぁ……ひ、酷いよ……あれは…どういう事なんだ、ラタトスク!」

 

精霊・ラタトスクは幹から飛び降り、ディセンダー達に近付いて来た。

口の端を吊り上げ、楽しそうに言った。

 

「ククク、良い運動だったろう。それにしても、あれくらいでへばっているんじゃねーよ。」

「いやいや。あれは、いくら何でも魔物の数多過ぎだって!」

「は。そんなんじゃ、世界は救えねーぜ。」

 

その言葉に、ミトスは声を上げた。

 

「エントには、僕達も力を貸すから大丈夫だもん‼これ以上、エントを苛めないで‼」

 

精霊・ラタトスクは、ミトスの彼を呼ぶ〝エント〟と言う名に、冷たい視線を向けた。

精霊・ラタトスクから、殺気が出て来ている。

ミトス達全員は固まった。

 

ディセンダーはすかさず、彼等を庇うように背で隠す。

精霊・ラタトスクは冷たい声で、

 

「エント≪ディセンダー≫……何故、下界人がその名を知っている?ただでさえ、下界の人間が名付けたこと自体、許しがたいものを……」

「僕が彼等に教えたんだ。この名だって、僕が望んだ人からつけて貰った。それに、彼等は信じるに値する!」

「は、そんなもの……世界の戦争が終われば、お前は下界人達から忌み嫌われる。それこそ、あの時のあいつのようにな!」

 

その言葉に、エントは精霊・ラタトスクを見つめたまま、声を上げた。

 

「確かに、そうかもしれない。でも僕は、あの僕のようにはならない!」

「……そんなもの信用出来ないな。お前が良くても、俺様達はそうはいかない。」

 

精霊・ラタトスクはそう言って、攻撃しようとした。

その時、彼を止める声がした。

 

「待ちなさい、ラタトスク!」

 

四大が出て来たのだ。

精霊・ウンディーネは冷たい殺気を出している。

精霊・イフリートは腕を組んだまま黙っていた。

精霊・シルフは目に見え見えの怒りが、丸出しだ。

が、精霊・ノームはあくびをしていた。

かくして、精霊達の物凄い闘気がぶつかり合っている。

 

ミトスが小声で、ディセンダーに言った。

 

「エント……もしかして僕、まずいこと言った?いや、言ったよね……」

「ううん。気にしないで、ミトス。彼等のこれは、もう病気みたいなものだから。最近やっと解ったんだ。……過保護って、怖い。」

 

その言葉に、ミトス並びに静かにしていた三人は、心の中で頷いていた。

そうこうしている内に、精霊・シルフが口を開いた。

 

「さっきから聞いていたけど……何よ!あの子が決めたんだから、黙っていなさいよ!大体、ここに来る途中の魔物は、何なのよ。この俺様精霊め‼」

「は。俺様は、正論を言っているつもりだぜ。お前らが手緩いんだ。そんなんだから、こいつは甘いままなんだよ。」

「……うむ。確かに、主の言う通りだ。だが、それは同時に、あ奴の良い所だ。」

「……イフリート、貴様もか!どいつもこいつも、甘ちゃんばかりだ!」

 

ディセンダー≪エント≫が、四大と精霊・ラタトスクの間に入った。

その手には、光輝く剣が握られている。

精霊達は言い争いを止め、世界の守り手≪ディセンダー≫に前を開けた。

ディセンダー≪エント≫は世界樹の幹の下まで来て、剣を地面に刺し、膝をつく。

 

「……我が母にして、我が主世界樹よ。僕の我侭で、世界をここまで悪化させてしまいました。」

 

と言った時、空から声が聞こえた。

それは優しく、それでいて厳しかった。

 

「世界の守り手≪ディセンダー≫、此度のことは気にしないで下さい。元は私が、貴方を通して私の届かない世界を、皆の気持ちを直に聴きたかったが為に、貴方には苦しい思いをさせてしまいました。」

「……いいえ、世界樹。そのおかげで僕は、他の……他の世界の守り手≪ディセンダー≫達とは違う人生と言うものを、歩む事が出来ました。この十四年、人間として生きて来られた。僕の……いや、僕自身はこれで悔いはありません。僕はこの世界の世界の守り手≪ディセンダー≫として、王都国に行き、魔族達を止めます!」

「……そうですか。でも、世界の守り手≪ディセンダー≫。彼等といる時くらいは、人間としての……いいえ、エント≪貴方自身≫として、側に居て良いのですよ。」

 

エントは小さく「ありがとう、世界樹。」と言って、一粒の涙を流した。

そして世界樹は、優しい声で囁いた。

 

「……精霊達よ、どうかこの子に力を貸してあげて下さい。そして貴方方にも、お願いしたいのです。どうか、この子の事を宜しくお願いしますね。」

 

そう言って、声は聞こえなくなった。

精霊達とクラトス達は頭を下げ、

 

「謹んでお受けします。」

 

ディセンダーは立ち上がり、精霊・ラタトスクの方を向いて言った。

 

「……ラタトスク、ありがとう。僕を、ここに呼んでくれて。一度でも、直に世界樹を、この目に出来て良かった。」

 

笑顔のディセンダー≪エント≫の顔を見て、精霊・ラタトスクは少し顔を赤くして背を向けた。

 

「フン。貴様がせいぜい死なない事を祈っといてやるよ。このまま真っ直ぐ行きな。そうすれば、王都側の出口に出る。魔物共は、俺様が外しておいてやる。」

 

エントはもう一度、精霊・ラタトスクにお礼を言って、歩き出して行った。

 

 

一行が見えなくなると、精霊・ラタトスクは小さく言った。

 

「あちら側は、今のお前には辛いからな。せいぜい頑張れよ、世界の守り手≪ディセンダー≫。いや、ディセンダー≪エント≫……」

「ふふ。ラタトスク様も、素直になれば良いものを。本当は、本人の前でその名をお呼びしたいくせに……」

「う、うるせー‼」

 

と言って、彼等はその場から消えた。

彼等のいた場所は、入って来たとき同様、暖かな光に包まれていた。

 

 

王都国の出口に出た一行は、息を飲んだ。

何故ならそこは、息苦しいほど重い空気が流れている。

マーテルが青い顔をして、悲痛な叫びに似た声を出した。

 

「私達がこの国を出てから、一年しか経っていないのに……。こんなにも悪化していたなんて‥……!」

 

これには、エントも驚いていた。

 

『まさかこんなにも、瘴気が漏れていたなんて。まだ彼等には視えないけど、このままだとこの国に住む人達は、全滅だ。これ以上悪化したら、僕も危ないかもしれない。急いで、穴を見つけないと‼』

 

彼等は、ここから一番近い町へ向かった。

町に入った途端、エントは倒れてしまった。

四人は驚いた。

急いで宿を見付け、彼を休ませる。

そして彼らはもう一つ気付く。

精霊達が彼の傍にいないことを。

 

しばらくして、エントが目を覚ました。

マーテルはエントの顔をのぞみ込み、優しく聞いた。

 

「……大丈夫?エント君、まだどこか気分が悪い所はある?」

 

エントは起き上がり、首を振りながら言った。

 

「大丈夫です。少し、瘴気に当てられただけですから……」

「瘴気……まさか、視えるの?」

「そう、ですね……皆さんには話しておいた方が良いですね。師匠≪せんせい≫達のいる所に、行きましょうか。」

 

最後の方は、何故か悲しそうな感じがしたのを、マーテルは気が付いた。

エントとマーテルは居間に移動する。

 

ディセンダーとマーテルが居間に入ると、ミトスがすぐさま聞いて来た。

 

「エント‼体は大丈夫?どこかまだ、おかしな所はある?町に入った途端に、倒れちゃうんだもん!僕、驚いたよ……」

「もう、大丈夫。心配してくれてありがとう、ミトス。」

「あ、当たり前じゃん!な、仲間だし!」

 

ミトスは、そっぽ向きながら言った。

エントは嬉しそうに、「そうだね」と言った。

そして、皆がそれぞれ座ると、エントは説明を始めた。

 

「実は、僕が倒れた理由の一つはマナがあまりにも少なかった為です。僕の……いえ、世界の守り手≪ディセンダー≫の体はマナや瘴気に対して、もろに影響を受けます。世界の守り手≪ディセンダー≫は精霊と同じで、災厄の場合はマナさえあれば活動できます。でも、この国に入ってからの急激なマナの減少。……マナの枯渇は、おそらく帝都国よりも少ない。」

「……だから精霊も、途中から居なくなったのか?」

「はい。僕がそうするように言いました。それに、この国は瘴気が多いですし。」

「瘴気?……そう言えば、王の寝室でも言っていたよね。悪い気のようなもの?」

 

ミトスは首を少し傾げて、聞いた。

エントは少し悩んでから、説明した。

 

「うーん、まぁー、そんな感じかな。瘴気が多くなると、この世界の生き物は死ぬ。その理由は、マナも吸い取るからです。人々や空気中、地面、木々達、ありとあやゆる生き物のマナを吸うんです。王の病も、瘴気によるものだった。あれは負の想念の塊でもあって、それは僕≪ディセンダー≫や精霊だけでなく、世界樹も苦しめる。まだ皆の目には視えないから、大丈夫ではあるけど……あれが見えるようになったら、危ないという事です。」

「負の想念は、我々の負の感情……なのよね?」

「はい。僕もそうですけど、生きている者皆が持っている感情の塊です。マナもまた、そんな感じです。」

「マナも、そうなのか?だが、マナは世界樹が創り出しているのだろう?」

 

エントはユアンの問いに、もう一度深く考えてから、言った。

 

「はい。瘴気が集まると、今度は穴が生まれるんです。皆さんも、帝都の森の中で見たやつです。あの穴からは……魔族達が出てくるんです。」

「魔族……魔に連なるもの、か。あの角の生えた奇妙な生き物か?」

「そう、ですね……あんな感じのです。彼等は、ここと繋がっている世界の生き物でもあります。彼等は門を通るか、穴を通じてしか、この世界に入って来られません。でも、門の方はラタトスクが封じているから通れないはずです。それに、あの時はまだ穴は小さかったから、下級クラスしか出て来られないけど。……契約を交わせば、中級や上級も呼び出せる。あの宰相や王都王、騎士達は魔族に憑依されていました。宰相の方は自分から契約したのでしょうね、その証拠に、彼は意識があった。逆に王都王達の方は、乗っ取られていました。」

「だが、魔族達はこの世界に来て、何をしたいのだ?」

「……一つは階級上げですかね。同族同士や自分の階級よりも上の者を倒せば、階級と力が手に入る。でも、これにはリスクがある。逆に、自分が殺られる可能性があるという事です。でも、感情による負の想念は、それと同じ位の力があるんです。だから彼等は憑りつき、願いを叶える代わりに……契約者の命を貰う。又は、それ以外の人の者。想いが強ければ強いほど、彼等にとっては好都合なんです。宰相の願いは王を殺し、自分が王になる事だった。そうすれば、人間以外の者を排除出来ると思ったのでしょう。」

「成程。力を求めて、こっちにやって来るという事か……。という事は、この戦争も、その一つだな。」

「さすが師匠≪せんせい≫!勘が鋭いですね。戦争が起きれば、より多くの負の想念が生まれる。こっちにやって来る魔族が、増えるわけです。」

 

しかし、ユアンが腕を組んで眉を寄せる。

 

「だが、それだと今度は魔族同士の力の奪い合いになるだけではないか?」

「その通りです。でも、彼等にも階級があるので、命令には逆らえないんです。それに、感情による力の転換は、一番早い方法がある。」

「我々を乗っ取る事か?」

 

エントは小さく首を振り、冷たい声で言った。

 

「いいえ。……強い力を持ち、多くの負の想念を蓄えているものがあるじゃないですか。」

 

そう言ってエントは、窓の外に視線を送った。

ユアンさんは目を見開いて言った。

 

「まさか、精霊?いや……まさか⁉」

 

視線をユアンさんに戻し、エントは頷く。

見据えるような目で、

 

「そう、世界樹です。世界樹の力は、世界の力。言わば、この世界の命そのものです。彼等はこちら側に来て、世界樹の力と、負の想念を手に入れたいんですよ。それだけあれば、彼等はかなり……いや、十分に力を得られる。だから僕が……いや、世界の救世主≪ディセンダー≫が創られてるんです。言ったでしょう、世界樹を守る剣であり、楯であると。」

「それでは、お前も狙われていると言う事か。」

「うーん、狙われていると言えば……そうですね。世界の救世主≪ディセンダー≫と世界樹は繋がっているし……」

「それはやっぱり、世界を救うだけの力があれば、それを欲しがる者が出てくる。それは、魔族だけじゃないって事だよね。だから、ラタトスクは怒っていたの?ううん、精霊達はみんな……そんな感じだった。」

 

ミトスがそう言って、俯いた。

エントは悲しそうに、それでいて困ったように言った。

 

「……確かに、そうだね。別の世界の世界の守り手≪ディセンダー≫は利用されていたし。中には、世界の守り手≪ディセンダー≫のせいにして、世界樹を切り倒した者もいる。皆、僕≪ディセンダー≫の力を欲しがる者もいれば、恐れた者もいる。」

「恐れた者?何で?それに別の世界って?」

「えっと、その……世界樹には、沢山の兄弟姉妹≪きょうだい≫がいるんだ。世界樹が発芽している所、してない所。中には、一種類の種族しか居ない所とか、まぁー色々。で、この世界、グラニデはその中の一つ。今は無い世界の記憶を受け継いでいる。だから他の世界にも、ミトスと同じ姿、名前を持っている人が居る。でもそれは、その世界のミトス。この世界、グラニデのミトスは君という事になる。グラニデの世界の守り手≪ディセンダー≫が、僕であるように。」

「他の世界の僕……」

「そう。でも違うのは、その別の世界のミトスは、自分の住んでいる世界以外の記憶を持たない。その欠片はあっても……。無論、それはこの世界のミトスも、そうだけど。」

「という事は、エント……君は、別の世界の事や別の世界の記憶を持っているという事か?世界樹も……」

 

ユアンの問いに、エントは腕を組んで上を向いたり、下を向いたりして、一度頷いてから彼等に言った。

 

「世界樹はみんな繋がっているので、話や想いを互いに伝える事は出来ます。記憶は、自分の生まれる前の世界達の記憶しか持っていません。僕の場合は、元々持たずに生まれる予定だった。でも、前の自分の記憶が出てきたんです。無論、全てでは無いですけど……。そうですね、分かりやすく言えばビジョンのようなものですね。」

「持たずに生まれる予定?」

「はい。本来、世界の守り手≪ディセンダー≫は過去の自分の記憶を持たずに生まれます。そして今回、世界樹はこの世界を視る為に、僕を普通の人間として産み落とした。それは世界樹の森で聞きましたよね。それに、前の自分の記憶なんて無い方が良いんですよ。‥‥だって、今の自分が誰なのか……自信が持てなくなりますから。」

「エント君……でも、何で皆に恐れられるの?」

「ああ、それは……」

 

エントは視線を落として、黙り込む。

マーテルは慌てて、

 

「ごめんなさい……言いたく無かったら、言わなくても良いのよ。」

 

エント顔を上げて、首を振る。

彼は広い場所に移動する。

そして皆を見ながら、少し間を置いてから言った。

 

「……考えてみて下さい。この戦争を、仮にディセンダー≪世界の救世主≫一人で救ったと言う事にします。もしくは、精霊を操った。世界は平和になり、そのディセンダー≪世界の救世主≫は帝国にいます。皆さんは、どう思いますか?」

 

マーテル・ミトス・ユアンはそれぞれ考えた。

そして、マーテルから話し始めた。

 

「……私なら、平和になった事を素直に喜ぶわ。それに、救ってくれた人に感謝するわね。」

「僕なら、世界の救世主≪ディセンダー≫と言う存在に驚くね。何より、精霊を操っている事にも驚く。」

「私なら……いや、私やクラトスのような立場なら、その力を放っておく訳にはいかんだろうな。世界を救うだけの力……しかも、敵国や自国にいる。災厄の場合、新たな戦いが生まれるだろう。感謝すると同時に、恐怖が出てくるだろうな。“もしかしたら今度は世界を救った力で、我々に攻撃してくるのではないだろうか”、と‥。」

 

その言葉に、ミトスとマーテルは戸惑いつつも、納得しているようだった。

エントは驚き半分、納得半分と言う顔で、ユアンに言った。

 

「流石、ユアンさん。世界が平和になれば、世界の守り手≪ディセンダー≫と言う存在で、新たな争い事が生まれる。……僕はもう、あんな事は起こしたくない。世界を救う力は、同時に世界を破壊する力……。僕≪ディセンダー≫を恐れるのは、当たり前の事です。」

 

ミトスは立ち上がって、エントに叫んだ。

 

「そんな事ない!だって、エントは優しいし、時々意味解らない時もあるけど……僕は……僕は、エントの友達だもん‼そ、それに姉様だって、ノイッシュだって、そうだ‼」

 

後半、照れ過ぎたミトスは、マーテルに助けを求めた。

マーテルは、ミトスの肩に手を当てて小さく笑い、優しく言った。

 

「そうよ、エント君。私達だけじゃないわ。精霊や世界樹もそうよ。きっと貴方を信じているわ。」

「ミトス、マーテルさん、ありがとう。そう言って貰えて、僕嬉しいです。」

 

そう言って、涙目の笑顔で言った。

そして、また真剣な顔付きに戻り、話を頑張って切り替えた。

 

「……では、さっきの魔族の話に戻りますね。さっきも言ったように、彼ら魔族は世界樹の『生命の場』と呼ばれる世界樹の心臓を手に入れようとしています。でも、彼らが世界樹に行くにはリスクが大き過ぎるんです。世界樹を守っているのは、僕≪ディセンダー≫だけじゃなく、精霊達もいる。世界樹に辿り着く前に、僕≪ディセンダー≫や精霊、この世界の全ての者が邪魔でもあるんです。だから世界樹に到達するには、僕≪ディセンダー≫達を倒さなくてはならない、と考えている。その為に、自分達に駒が必要です。だから魔族は簡単に支配できる人々を使う。何故なら、世界の守り手≪ディセンダー≫や精霊は、駒にできないから……。そのはずだったのに、彼等にある者が手を差し伸べてしまった。」

 

クラトスは、エントの表情で、大体察しが付いた。

これまで黙って聞いていたクラトスが口を開き、エントに聞いた。

 

「ある者……つまり、お前と同じ位の力がある、もしくはそれ以上という事になるな。」

 

エントは一つ頷き、両手を胸に持って来た。

握り拳をもう片方の手で、包むようにした。

すると、体が輝き始める。

輝きが弱まると、彼の背からは翼が出ている。

右は光輝き、もう片方は黒く輝いている。

彼は四人を見渡した後、少しの間を置いて、話し始めた。

 

「この翼は、この世界の世界の守り手≪ディセンダー≫を縛るものです。」

「縛る……それは掟か、何かか?」

「……師匠≪せんせい≫、さっき『魔族に手を差し伸べた者がいる』と言いましたよね。それは……世界の守り手≪ディセンダー≫です。」

「だが、お前は……いや、世界の救世主≪ディセンダー≫は何故、魔族に手を貸したのだ。」

「……この世界が生まれるずっと、ずっと昔のことです。僕はビジョンでしか見ていないけど、あの世界の世界の守り手≪ディセンダー≫たる彼女が、何を思って魔族に手を貸したのか……そして何故、自らの手で世界樹を斬り倒したのかはわかりません。でも……」

 

エントは視線を落とす。

クラトスはそれでも彼に聞く。

 

「……エント、辛いようだが教えてくれないか。その世界の今と世界の救世主≪ディセンダー≫は、どうなってしまったのだ。」

「……世界樹を切り倒した瞬間、その世界は壊れました。暗黒で、瘴気に満ちた世界……。魔族以外の生き物が、次々死んで逝く……悲しい世界。あの世界の世界樹は、ただの力の塊となり、あの世界は魔族の住処となった。彼女≪その世界のディセンダー≫は、世界樹の一部の力を、世界の外に逃した後、消滅しました。あれが何なのかは、誰も知りません。でも、外に逃れた世界樹の力は、各世界樹の居る所に散っていき、世界樹達はあることを行った。それがこれです。」

 

ミトスが手を挙げて、複雑そうな顔で聞いて来た。

 

「で、でも、その翼に何の意味があるの?」

「この翼は、世界の守り手≪ディセンダー≫の力そのものであり……世界樹を裏切った証拠。この世界の他にも形は違うけど世界の守り手≪ディセンダー≫が、もし世界を破壊する存在になれば、すぐに対処できるように……。つまり、この翼が全て黒くなれば、僕はきっと世界を壊してしまうかも知れない……」

「あ、えっと、でも……まだ半分でしょ。僕達も何とかするから、大丈夫!絶対大丈夫!」

 

そう言って、エントに抱き付いた。

エントは、泣いているミトスの頭を撫でなていた。

クラトスはある事を思い出しながら、表情を固くして言った。

 

「もしや……あの時に受けた怪我で、そうなったのではないか。お前が落ちれば、世界樹を斬り倒す事が出来ると。」

 

ミトスも、クラトスの言うあの時の事を思い出した。

エントが、王都王から出た黒い何かに深手を負わされた時の事を……

 

「確かに、あの傷もそうですけど……これでも半分になっただけ、良かった。王達の瘴気や負の想念による塊が多過ぎて、あの時は僕の方に移したんです。それがちょっと負荷になって、倒れてしまった。それに……村を守るのに、力を使い過ぎてしまっていたし。」

 

エントは悲しそうに言った。

クラトスは、間をあけて言った。

 

「……お前は、その瘴気や負の想念を浄化できるのだろう?だが、それが行き届いていない……無理はするな。」

「師匠≪せんせい≫、……浄化……確かに、浄化か。」

 

そう言って、翼が消えた。

ミトスはなおも、エントに抱き付き、泣いていた。

エントはミトスに優しく、それでいて自分に言い聞かすように彼の頭を撫でながら、ポツリと言った。

 

「ミトス、約束する。僕は、ミトス達の居るこの世界を、何があっても守るよ。だから、力を貸してくれる?……あ、でも守るって言っているのに、力を貸してはおかしいか……やっぱり……」

 

照れながらそう言って、何て言っていいか悩みだしていた。

 

「えっと、だから……いや、この言い方もおかしいし……うーん……」

 

と、言い出してから、抱き付いていたミトスが笑い出した。

そして、顔を上げて苦笑い顔で言った。

 

「やっぱりエントは、おかしいよ……。これが世界を救う救世主だと思うと心配だから、僕が力を貸してあげる。だから約束して、無茶はしないで。」

「……うん。約束する。」

 

そう言って、二人は笑顔で指切りをした。

ユアンが切り替えるように明るく、それでいて真剣な顔で言った。

 

「では、明日ここを経つとしよう。王都まで、あともう少しだ。」

 

そう言って、各自で休む事にした。

エントは部屋に戻る。

彼は窓から夜空を眺めながら、先程の事を思い出していた。

 

『あの世界の住人の多くは死んだ。でも一部の者は、魔族の仲間になった。それは、この世界でも同じ事……。負の想念を、本当の意味で浄化する事は出来ない。でも、導く事は出来るはずだ。僕なりに考えよう……。これ以上皆に、世界の理を教えてしまえば、彼等は今を捨てなくてはならなくなる。そう言えばミトスやマーテルさんは、精霊や世界樹も……僕を信じていると言っていたけど……彼等精霊は世界樹から命令されて、本当は僕をいつでも殺せるように傍にいたって、言ったら困っただろうな……。ずっと殺す為に、傍にいた訳じゃないのは知っている。でも、僕が落ちたらきっと、僕を殺すだろう。……ふぅー、悲しいのか、嬉しいのか、解んないや。でも僕は、僕≪エント≫と言う自分を忘れない。今も、そしてこれからも……』

 

 

一行は朝早くに町を出て、二日後には王都の目と鼻の先まで来た。

一行は街で買い物を済ませ、さらに先に進む。

明日には、王都に入れる所まで来た。

王都手前で、野営を始めた。

 

『……王都に近付くにつれ、瘴気が濃くなってきている。そろそろ四大を呼び戻した方が、良いかもしれない。』

 

テントの準備を手伝っていたミトスは、黒い煙のような物を見つけ、手を伸ばしながら言った。

 

「……何これ?煙?」

「ミトス‼駄目だ、それに触っちゃ!」

 

そう言ってエントは、伸ばしていたミトスの手を引いた。

すかさず、黒い煙に手を伸ばし、光を当てた。

その瞬間、辺り一面が輝き、周辺の空気が清らかになった感じがした。

クラトスがこっちに来て、表情を固くして言った。

 

「もしや、今のが……」

「ええ、あれが瘴気です。皆の目に見えているという事は、この先もっと濃いのだと思います。」

「エ、エント、ごめん。僕……」

 

ミトスは、泣きながらそう言った。

エントは真剣な顔で、ミトスに言った。

 

「……大丈夫。でも、あれには触れては駄目だよ。体内に入ったりしたら、災厄死に至るから。」

「……気を付けます。」

 

ミトスを離し、エントは辺りを見渡してから、四大を呼んだ。

 

「火の精霊・イフリート、水の精霊・ウンディーネ、風の精霊・シルフ、地の精霊・ノームよ。我が前に現れよ。」

 

魔方陣が現れ、そこから四大が現れた。

精霊・イフリートが腕を組みながら、表情を固くして言った。

 

「……我らを呼んだという事は、そろそろか?」

「うん。もう目と鼻の先。皆には、僕の力と大気のマナを駆使して、瘴気から守って欲しい。無論、君達も、僕が呼ぶまでは絶対実体化しちゃ駄目だよ。君達の場合、瘴気を体内に取り込んだら、暴走か消滅だから……」

「うむ。解っている。では……」

 

そう言って、精霊達は消えた。

エントは振り返り、四人を見ながら硬い表情で言った。

 

「今、四大に瘴気から守る結界を張って貰いました。これで大分、良くなるはずです。」

 

食事の支度が終わり、食事を取りながら、エントが唐突に言った。

 

「そう言えば、皆に渡したい物があるんだ。」

 

エントは大事そうに、何かを取り出した。

ミトス・マーテル・ユアンに、ペンダントをそれぞれの手に載せた。

彼は、照れながら言った。

 

「お守りです。ああ、今回はちゃんとノイッシュの分もあるよ。」

 

と言って、ノイッシュの首に掛けてやった。

ミトスはペンダントを掛けながら、エントとクラトスを見て言った。

 

「……クラトスの分はないの?」

 

クラトスは、首に掛けていたペンダントを見せた。

 

「師匠≪せんせい≫には、村に初めて来た時にあげたんだ。本当はもうちょっと早く、皆に渡したかったんだけど……中々上手く出来なくて。もしあれなら、付けなくても良いよ。持っていれば、効果は出るから。」

 

ミトスは首を振って、ペンダントを掛け始めた。

ペンダントを優しく包みながら、

 

「大丈夫。何か、エントが僕を守ってくれている感じがする。ありがとう、大事にする。」

 

ユアンとマーテルも首に掛けながら、お礼を言う。

それから、エントが思い出したかのように言った。

 

「ねぇー、ミトス。ミトスは世界が平和になったら、何をするの?」

「え⁉えっと、僕は……うーん、と。へ、平和になってから考える。」

「……えー、聞きたかったなぁ……」

「どうしたの?」

「うーん。いや、何だかんだ言って……ミトスとは仲良くなったなぁーて。それが嬉しくて。」

 

ミトスは、顔を真っ赤にして、照れながら言った。

 

「……あ、当たり前だろ‼僕らは友達で、仲間だもん!これからだって、ずっと一緒だ。」

 

その言葉に一瞬、エントは目を見張った。

が、彼は悲しいような、嬉しいような顔で、ただ微笑んだ。

その夜、エントは空を眺めながら、ミトスの言葉を思い出していた。

 

『ずっと一緒か……。僕が……いや、皆で世界を救ってから、僕はどれくらいミトス達と一緒に居られるかな。なるべく、いっぱい一緒に居たいなぁ……』

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