テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた   作:609

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マイソロ2 初代編 第四十九話 再会、そして……

王都に入り、一行は目を見張った。

ここの来る途中も酷かったが、この中はそれ以上に酷い。

見渡す限り、大地は荒れ、木々達も枯れている。

水場にはもう水すら無かった。

 

『生き物からの生気を、ほとんど感じない……。思っていた以上に、瘴気が濃い‼人々は大丈夫か⁉それにしても、この量なら上級魔族も入って来ているはずだ。今の所、この辺には居ないようだけど……早く何とかしないと!』

 

取り敢えず一行は、瘴気が濃い場所へ向かう事にした。

下町の中央広場に出た所で、ユアンが悲痛な叫びをあげた。

 

「……何だ、これは⁉こんなになるまで、何故騎士達は何もしていないのだ⁉」

 

ユアンの叫びは、最もだった。

広場には最早、立つことも出来ない人々。

入り口よりも、荒れた土地が広がっていた。

 

マーテル達は、人々の治療を始めた。

意識のはっきりした人間の男性にマーテルが近付く。

彼女が治療をしようとして、その者が怒りと恐怖に満ちた声で叫んだ。

 

「お前、ハーフエルフ……お、俺に触るな!」

「……大丈夫です。治療をするだけですから、安心して下さい。」

「う、嘘だ!……俺達を殺す気だ!お前らの……同族みたいに‼」

 

この言葉に、彼女に退いて貰い、クラトスが男性に聞いた。

 

「どういう事か、聞かせて貰おう。……何があった?」

 

男はぐったりしながら、思い出しながら話始めた。

 

「この王都は、人間とハーフエルフが主に多かった……。だが、王がある頃からおかしくなってからは、異種族を殺すか、奴隷か、兵隊として扱っていった。王が、帝国に攻めに行ったあの日、ハーフエルフ達がここら一帯のマナを吸収して、逃げて行った!ある者は俺等を攻撃し、またある者は消えた!」

「……消えた?それはどういう事だ。」

「黒い何かに吸収されて、消えたのだ!その頃から、ここら一帯は黒い変な煙も出てくるし……。もう、俺達は終わりだ……!」

「そんな事はありませんよ。貴方方の王は正気に戻り、今は帝国で今後の事を話し合っています。それが終われば、貴方方を救出しに来るはずです。それに僕達が、この国を救いに来ました。」

 

エントが近くまで来て、その男の目を見て言った。

男は警戒しながら、口を開く。

 

「この国を……救う?本当か?」

「ええ、だから教えて下さい。貴方方の王は、いつ頃からおかしくなりましたか?」

「王は……王は……いや、はっきりとは解らない。でもあれは、五年前くらいかもしれん。」

「……そうですか。解りました。」

 

広場の中央まで来ると、エントは立ち止まる。

荒れた地面に両手を付き、目を閉じた。

その瞬間、彼は光輝き、背から翼を広げた。

光輝く翼の羽根と光が弾けた。

光が収まると、倒れていた人々が次々起き上がった。

先程の男も、良くなったようだ。

 

「な、何だったんだ、今のは⁉いや、それよりも、体が軽い……他の皆も、助かったのか……?」

「もう、大丈夫そうだな。ユアン、ミトス、移動するぞ。」

 

エントも駆けて来て、その場から離れた。

クラトスは、彼の顔を見ながら聞いた。

 

「……エント、大丈夫か?先程、力を使っていたが。」

 

見ると、ミトス達も心配していた。

エントは笑顔で、クラトスに答えた。

 

「大丈夫です。今回は取り敢えず、僕の中の力を出しただけなので、後で一掃します。一先ずは、彼等をあそこから動かさないと……。それと師匠≪せんせい≫、今からあの丘の所に行きます。ユアンさん、案内お願いします。」

「笛岩の丘か……。解った、こっちからの方が早い。」

 

ユアンを先頭に、走り出した。

丘に着いた時、大きな穴が開いていた。

その穴の近くには、青い髪の大男が立っていた。

大男はこちらに振り向き、

 

「久しぶりだな、ディセンダー……。相変わらず、チビ助だな。」

 

ミトスはエントを見た。

彼は青い顔をしながら、大男に近付いた。

クラトスは、すでに剣を抜いている。

これでエントとクラトスは、彼と何かしらの接点があると解る。

半分行った所で、エントは立ち止り、大男を見上げながら言った。

 

「バト、良かった……。あれから、どうしていたのか心配していたんだ。元気そうで、本当に良かった……」

「そう言うお前は、あの村を見捨てたか?」

 

大男こと、バルバトスは目を細めて、エントに聞いた。

エントは視線を落として、

 

「……あの時残った村人の生き残りは、もう僕だけだよ……。長老もみんな死んだ。」

「だから、見捨てたのだろ。お前は……世界を救うだけの力があると、あいつ等から聞いたぜ。なのに救えなかった。つまり、村の奴らが死んでも、お前は良かったのだろう。」

 

エントは目を見開き、顔を上げた。

だが、再び俯いた。

 

ミトスは、あれが誰なのかは解らない。

が、精一杯叫んだ。

 

「あれは仕方なかったんだ!僕達も、傍に居ても何も出来なかった。エント……ディセンダーが、悪い訳じゃない!」

「は、それでもこいつは、救おうと思えば救えた。なのに、それをしなかった。こいつは、村人を守る気は更々無かったんだよ!」

 

ミトスが、更に反論しようとした瞬間、エントが俯いたまま言った。

 

「確かに、そうかもしれない……。僕は、どこかで村の皆を見捨てていたのかもしれない……。僕は……僕は、あの村が大好きだった。でも、あの村の人達と世界の外での出来事を、いつも心の中で天秤に測っていたのかもしれないね。だって、皆が居なくなれば、僕は外の世界に行けたかもしれないと……。いや、皆の前では、ただの人間で居たかったのかもしれない。でも、僕がもっと真剣に本当の気持ちに気付いていれば、皆死なずにすんだ……」

 

バルバトスは腕を組んだまま、黙って聞いていた。

そこには冷たく、それでいて凄まじいまでの殺気を出している。

ディセンダー≪エント≫は顔を上げ、涙目で力強く拳を握りしめ言った。

 

「バト、それが僕の本心の一部だ。バト……一つ聞く、何故ここにいるの?」

「決まっている。……この世界を壊す為に、ここにいる。俺様は辞めるつもりはない!」

「……帝国王が村に懺悔を捧げ、僕らの村を壊したあの宰相を牢屋に入れても?」

「くどい!今更、辞めるつもりはない‼」

 

バルバトスの瞳はすでに決まっていた。

エントは泣くのを止め、剣を抜きながら言い放つ。

 

「なら僕は、この世界を守る為に……バト、いや、バルバトス!君を倒す‼」

「殺れるものなら、やってみな‼」

 

そう言った瞬間、穴から魔族が這い出てくる。

それが、自分達に襲い掛かる。

クラトスは、穴から出てきた角の生えた生き物を斬り倒す。

ユアン達も、その生き物を倒し始めた。

クラトスは、エントに向かって叫んだ。

 

「こいつ等は、我々が相手をする。お前は、そいつと戦え‼」

「はい、師匠≪せんせい≫!……レディアント解放‼」

 

エントは、王都王と対峙した時の姿に変わった。

バルバトスは武器を構える。

互いに地面を蹴って、剣と斧の刃がぶつかり合う。

二人の激しい斬り合いが始まった。

 

エントは、時々魔術を使う。

が、かなり厳しい。

体力も消耗し、肩で息をしていた。

それでも、一歩も引かず、戦い続ける。

が、エントが体勢を崩し、バルバトスの斧を防げなかった。

エントが斬られるのを覚悟した瞬間、マーテルがそれを庇った。

斧はマーテルの背を、深く抉った。

 

エントは、バルバトスの動きが一瞬止まったのを見た。

エントは拳を握りしめながら、剣をバルバトスに向かって投げた。

その剣は、バルバトスの体の横半分を抉った。

 

バルバトスが倒れ、地面に刺さった剣が、辺りを包む。

その光が魔族を一掃した。

 

エントは、すぐにマーテルさんを治療する。

だが、傷が深い。

ミトスが泣きながら、マーテルさんにすがっていた。

 

「姉様、しっかり!……僕を、一人にしないで!」

「マーテル‼目を開けてくれ!」

 

ユアンも治癒術を掛けながら、マーテルに叫ぶ。

クラトスは、ミトスを抱きしめていた。

 

エントはより一層、光り始めた。

その背からは翼が姿を現し、掛けている治癒術がより一層強くなる。

それと同時に、彼の翼も黒くなっていく。

 

マーテルの傷が塞がり、目を開けた。

ユアンは涙を浮かべ、マーテルに抱き付いた。

しかしすぐに、ミトスがユアンを突き飛ばし、マーテルに抱き付く。

泣いているミトスに、マーテルは頭を優しく撫でてやる。

 

クラトスは、突き飛ばされたユアンを起こす。

ユアンは苦笑いをしながら、その手を取った。

そしてクラトスは、エントを見る。

いつの間にか、バルバトスの元にいた。

そして驚愕した。

ユアンも、彼を見る。

ユアンも破顔した。

彼の翼は、光輝いていた翼の方が半分ぐらいまで黒くなっていた。

 

エント≪ディセンダー≫は、バルバトスの傷を塞ぐため、治癒術を掛け始める。

しかしそれを、バルバトスが止めた。

 

「……何をしている。俺様を助けるな!」

「助けるに決まっているだろう‼……大切な友達が、死にそうなんだ!僕はこれ以上、大切な物を……家族を失いたくない!」

 

エントは泣きながら、そう言った。

だがバルバトスは彼を突き飛ばし、立ち上がった。

そして、崖の端まで下がっていく。

 

「……バト⁉ダメだ!」

「うるさい!お前は、俺様に勝った。結果はどうあれ、この俺様に勝ったんだ。……俺は力が欲しい!その為なら、この世界だって壊す!俺様は……最強になる!」

「バト……それはエミリィを救えなかったから?それだったら、バトは悪くない。エミリィは、僕を庇って死んだ。僕のせいなんだ‼」

「……そうかもしれんし、そうではないのかもな。……村に残った奴らの最後は、どんなんだ。」

「……魔物に殺された者がほとんどだよ。魔物から救えても、生き残っていた人達は最後、長老と一緒に、僕を庇って死んだ。みんな、僕のせいなんだ……」

「ハハハハハ!……だったら、俺様はやっぱり力を求める。力さえあれば、良いんだ!ディセンダー、俺様は貴様を忘れない‼貴様を必ず、倒す‼……だからディセンダー……強くなれ。」

 

そう言って、バルバトスは崖から落ちて行った。

エントは駆け出し、手を伸ばす。

だが、その手は宙を掴み、彼は崖下へと落ちていった。

 

エントは膝をついて泣いていた。

最後の言葉は、彼にとって大切な言葉。

 

「何でだよ、バト‼……僕は、まだ君に伝えてない!僕があの時、君と一緒に行っていれば……こんな事にはならなかった!……僕がもっと早く、本当の事を言っていれば、皆死なずにすんだ‼僕が……僕が、世界の守り手≪ディセンダー≫になりきれなかったばかりに!……うう、結局僕は……初めての友達も救えなかった!ごめん、ごめん、バト!」

 

と、泣いていた矢先、穴から人型の角の生えた男女の魔族が二人現れた。

ディセンダーはその気配を感じ、すぐに涙を拭う。

そして立ち上がり、剣を手に取った。

 

クラトスとユアンはマーテルを守る。

ミトスはマーテルにしがみ付く。

その魔族達が、エント≪ディセンダー≫を見て、男の方の魔族がお辞儀をした。

その次に女の魔族が、それに続く。

 

「これは、これは、世界の守り手≪ディセンダー≫。初めまして……と言うべきですかな。」

「それにしても……そこまで落ちかけているのに、しがみ付いているのですか。ふふ、早く落ちればいいのに……」

 

女の魔族は口の端を上げて、冷たく笑う。

それを男の魔族が睨みつけ、

 

「口を慎めよ。それにしてもその姿、我らが主と定めた世界の守り手≪ディセンダー≫に瓜二つ……。どうやらここは、我らの主の因子を受け継いでいるようだ。さて、我らにとっての最初の世界の守り手≪ディセンダー≫は我らに住処を与え、次の世界の守り手≪ディセンダー≫は我らに力を与えた。貴方は何をなさいますか?」

 

男の魔族は目を細めて、冷たく微笑む。

エントは拳を握り、魔族を見上げる。

彼らに放つ言葉は冷たい。

 

「残念ながら、僕は落ちるつもりは無い。僕は、前の世界の守り手≪ディセンダー≫と違って、今いるこの世界が好きなんだ。」

「それは珍しい。ですが、その割には世界を呪っているようですね?」

「……それは否定しない。確かに、僕はこの世界が好きだけど、嫌いでもある。」

「では、貴方が未練があるのは、あの者達ですか?それなら私が、殺して差し上げましょうか?」

 

そう言って、クラトス達の方を見た。

その瞬間、辺りに黒い煙……瘴気が、浮き出てきた。

 

エントは、皆を庇うように背に隠した。

その背の翼は、輝き続けている。

 

エントが小声で、「四大よ。師匠≪せんせい≫達をよろしく。」と言った。

四大が、クラトス達を囲むように現れた。

 

エントは剣を男の魔族に向け、冷たい声で更に言った。

 

「僕の仲間に手を出す事は許さない。……それで、上級悪魔が何の用?」

「……これは、失礼しました。我々の目的は、世界樹の力を貰いに来ました。ですが、貴方が落ちかけているので、お力沿いが欲しかったのですが……」

「それは無理だね。世界樹を、奪われる訳にはいかない。」

 

二人はしばらく睨み合う。

だが、エントは剣を降ろす。

彼は何かを決意したように言った。

 

「僕から、提案があるんだけど。……特に君自身に、かな。」

「ほう。それは、私が誰か解った上ですかな。」

 

男の魔族はエントを冷たく、それでいて威圧感のある目で見る。

エントは男の魔族をジッと見つめ、

 

「勿論、悪い話じゃない。」

「良いでしょう、聴きましょう。」

「……僕と契約しない、魔族王。それこそ、君が主と認めた世界の守り手≪ディセンダー≫のように……」

 

エントがそう言うと、魔族王と呼ばれた男の魔族は、笑い出した。

 

「ククク、ハハハハハ‼落ちる気は無いのでしょう。では、何故です。」

「実を言うと、僕は君達が主と定めたあの世界の守り手≪ディセンダー≫の記憶と感情は知っているんだ。つまり、彼と君との契約も。だから僕とも契約して欲しい。」

 

だが、そこまで黙っていた精霊・ウンディーネが悲痛な声で叫んだ。

 

「いけません、世界の守り手≪ディセンダー≫!彼等との契約なんて‼」

 

無論クラトス達も、エントの魔族との会話が危ないと言うのは直感が言っていた。

 

エントは、顔だけ振り向いて「大丈夫」と笑った。

そして、魔族王に向き直した。

 

「ククク、成程。それで、姿が同じなのですかな。良いでしょう、契約の内容次第で考えましょう。」

「そう……。じゃあまず、僕が君と契約するのは、君達のこの世界に対する干渉権。僕が許可するまで、この世界には絶対に入らないこと。」

「……それで貴方は、我々に何を提供されるのですか?」

「世界の守り手≪ディセンダー≫の力の一部。君達の世界には、『生命の場』は残っていも、それを維持する為の手段がない。だから、それを維持する為の力を僕があげる。無論、それがあればこの世界とのリンクは切れないよ。後は……僕と君の勝負かな?」

「貴方の力が何なのかは後で聞くとして……勝負とは?」

「簡単だよ。君が僕を落とせるか、僕がこの世界を信じられ続けるか。どう、悪くないでしょ。」

「……そうですね。良いでしょう、受けますよ。ですが、本契約は貴方の力を、見せて貰ってからです。」

「ああ、ちょっと待ってね……」

 

そう言って、エントは手に、一つの鏡のような、それでいて楯のような物が現れた。

彼はそれを、魔族王に渡しながら説明を始める。

 

「これに、生命の場を移せば良い。それで、君の居る世界のバランスは取れるから。」

「これには、それ以外の要素もありますね。」

「うん。君が契約を無理に破ろうとすると、これは結界を作り出し、君達の行く手を塞ぐ。でも、僕の力は流れている事になるんだから……大丈夫でしょ?」

「ええ、そうでしょうね。では、本契約しましょうか。」

 

魔族王は面白そうに笑みを浮かべる。

控えていた女の魔族が、

 

「……王よ、良いのですか?本契約なんて。」

「良いのですよ。その方が面白い‼」

「ふふ、まったく……王らしいですね。」

 

魔族王の楽し気な雰囲気に、女の魔族は頬を赤くして微笑む。

エントは魔族王から少し距離を取り、

 

「じゃあ、始めるよ。……我は契約せし者なり。魔族王に我が契約、並びに楔を作る。汝はこの契約と楔により、我に従い、これを裏切る事を禁じる。我が契約に従え、我が名はエント‼」

 

変わった陣が出て来る。

エントはそこに、自分の血を垂らす。

陣は消え、魔界王はどこか楽しそうな声で、彼を見て言った。

 

「これで、契約は完了しました。我が主、世界の守り手≪ディセンダー≫・エント。汝の契約に沿って、我らはこれより動こう。では貴方との勝負、楽しみに待っています。」

 

彼等は黒い穴に向かい、消えて行った。

そして穴も、綺麗に消えた。

 

エントは武装を解除し、クラトス達の方に歩いていった。

クラトス達は彼の目が、金色から赤へ変わっているのに気が付く。

彼は困り顔で、皆に言った。

 

「すいません。今から、世界樹の元へ行っても大丈夫ですか?」

 

クラトスが剣をしまいながら、心配そうに言った。

 

「ああ、構わないが、今からだと時間がかかるぞ。」

「……多分、大丈夫です。この近くの……世界樹の森に向かいましょう。」

 

そう言って、歩き出す。

移動中、精霊達は無言で、それでいて辛そうな顔だった。

あの陽気なノームでさえ、何か深刻そうだった。

森に入ってから数分後、世界樹の幹の下に出た。

 

ミトスは驚き、叫んだ。

 

「この前の時は、かなり大変だったのに‼」

 

そこに、上から凄まじい声で、聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえた。

 

「当たり前だ!今回は、最短コースを作ったんだからな‼」

 

そう言って、上から精霊・ラタトスクが降りてきた。

その顔や雰囲気は、明らかに不機嫌で、怒りマックスだ。

その後に、センチュリオン・テネブラエと精霊らしい者が二人現れた。

一人は老人のようで、宙に浮く椅子の上に座り、分厚い本が幾つも、その周りを飛んでいる。

方やもう一方は、かなりの大男で腕が四本あり、腕を組んで宙に浮いている。

 

エントは、精霊達の前に出た。

無論、四大も一緒だ。

 

四大は、老人の方の精霊にお辞儀をした。

精霊・ラタトスクが何か言おうとした時、先に、四本腕の大男が前に出て来て冷たい声で言った。

 

「あれはどういう事だ、世界の守り手≪ディセンダー≫。」

「さっき話した通りだよ、オリジン。僕はこれから、その準備をする。手伝ってくれ……」

 

精霊・オリジンは一度、クラトス達を見て、冷たく言い放った。

 

「俺は断る。大体、あの下界人共は何だ。」

「……僕の友達で、仲間だよ。」

「そんなもの、お前には必要ない。力が必要なら、我々精霊の力を使えば良いだろう。」

 

精霊・オリジンは、マーテルを冷たく見て、

 

「それに、そこの女は最早、ただのハーフエルフではないな。」

「……その話は後にしてくれ、オリジン。」

 

エントは精霊・オリジンをじっと見る。

 

「僕は、世界の守り手≪ディセンダー≫であると同時に、一人の人間≪エント≫として、君にお願いしたいんだよ。」

「今の貴様が、それを言うか。貴様は、あいつと同じ事をしたのだぞ。この世界を滅ぼす気か!」

 

エントは背中から、翼を広げた。

その翼は、先程より光を取り戻している。

彼は自分の翼を一度見てから、静かに言った。

 

「確かに、僕は世界樹を裏切った。その代償が、この翼……。そして、体内に入っている瘴気は、もう簡単には抜けきらないかもしれない。でも、これからの世界の守り手≪ディセンダー≫は、僕の記憶を受け継ぐ事は出来ないようにする。そうすれば、僕のようにはならないはずだよ。」

「例えそうでも、お前達世界の守り手≪ディセンダー≫は下界人と関われば、また同じ苦しみを味わう。だから我等は反対したのだ……世界の守り手≪ディセンダー≫を、下界人共に育てさせるのは。」

 

エントは少し困り顔をしながら、精霊・オリジンに……いや、自分自身に言った。

 

「……オリジン、それは少し違うよ。僕はね、むしろ良かったと思っている。だって、そのおかげで僕は、彼らの温かさや優しさ……人々の心の形を、色んな角度で見られた。それに僕は、夢ができたんだ。」

「……夢?それこそ愚かだ。世界の守り手≪ディセンダー≫は世界樹を、そして世界を救う為にいるのだぞ!」

 

そう言って、厳しい顔付きになる。

ミトスは勇気を振り絞って、精霊・オリジンに叫んだ。

 

「……別に良いじゃないか!エントは、確かに世界を守るディセンダー≪世界の救世主≫かもしれない。でもエントは、人間なんだ!僕の友達で、仲間で!……大体、夢を持つ事は悪い事じゃないはずだ!」

 

精霊・オリジンは更に冷たく、厳しい顔付きになった。

それこそ、攻撃しそうな雰囲気だった。

精霊・オリジンが何か言う前に、彼の顔に分厚い本が叩き付けられた。

すると、ミトスの目の前に老人のような精霊が、椅子に座ったまま、彼の頭を優しく撫でた。

そして優しい声で、彼に言った。

 

「ふぉほほほ。坊主、すまんのぉー。あれは怒りぽい性格でのぉー。それにしてもお前さん、よっぽどディセンダー≪エント≫が、好きなのだな。」

 

ミトスは涙目のまま頷いた。

老人のような精霊はなおも優しく笑いながら、ミトスの頭を撫でてやった。

 

「ふぉほほほ。これは四大に聞いた通りじゃな。安心なさい。何、お前さんの言う通りじゃからの。」

 

そう言って、ミトスがもう一度頷いたのを見てから、老人のような精霊はエント≪ディセンダー≫の方へ寄っていった。

エントはその老人のような精霊に、小さくお礼を言ってからミトスに笑顔を向けた。

老人のような精霊はエントと向きあい、

 

「では、世界の守り手≪ディセンダー≫……いや、エントよ。教えておくれ、其方の夢とやらを……」

「うん。マクスウェル、僕の夢はね……今を生きる者、そしてこれからを生きる者達の為に、この世界を守りたいんだ。何より、僕の大切な物を守りたい。僕はこの世界も、この世界に生きる全ての者が好きだから。」

 

笑顔でそう言ったエント≪ディセンダー≫の顔を見た精霊・マクスウェルは、嬉しそうに「そうか、そうか」と言って、髭を擦っていた。

精霊・ウンディーネが、精霊・オリジンに向かい合って、

 

「オリジン、貴方も知っているでしょう。あの子が、世界の守り手≪ディセンダー≫としての記憶を持っていない時、貴方はあの子に会った。下界人の育てたあの子≪ディセンダー≫に……。それは間違いなく、無垢な子でした。そして記憶が蘇ってしまっても、あの子の優しさは変わらなかった。あの子の裏切りは、間違いなく我々にあるのです。私やシルフ……そして、マクスウェル様があの子に世界樹を裏切る形にしてしまった。……あの子は悪くないのです。」

 

精霊・オリジンの目の前に、精霊・マクスウェルは移動する。

そして悲しく、それでいて厳しく、

 

「そうじゃぞ。我らが、あの子の苦しみを知っていてなお、あの村を救う事を選ばせた。あの子が、どれだけあの場所を、あそこの下界人達を、大切に思っていたか知っておったからな。お前さんも、それは解るじゃろ。誰だって、自分の生まれ育った場所を守りたいと思う事は……」

「……マクスウェル。貴殿は、下界人共と多く関わり過ぎだ。考え方までもが、下界人のようではないか……」

「ふぉほほほ。知る事、関わる事は、悪い事では無いからのぉー。我は、エント≪ディセンダー≫の思いに応えるつもりじゃぞ。」

「……では貴殿は、この世界が滅ぶまでずっと、エント≪ディセンダー≫を人柱にさせておくつもりか。」

 

その言葉に、クラトス達は息を飲んだ。

そんな彼等に、精霊・ノームが近付いて来て小さく言った。

 

「大丈夫だぞぉー。そんな顔しなくてもぉー。」

 

その声に緊張感がないせいか、少し落ち着いた。

が、何故だろう……別の意味で、心配になってきた。

 

エントが声を出した。

 

「それは心配いらないよ、オリジン。僕もただ、人柱でいるつもりは無いよ。僕は僕で、ちゃんと考えているから。」

「それが、貴様の言っていた〝ゲーテ〟か?」

 

大人しく待っていた精霊・ラタトスクが、腰に手を当て言ってきた。

エントは一度頷いた後、答えた。

 

「うん。僕が人柱になっている間、彼にそれを頼むつもりだよ。その為に僕は、先にこの場所に来たのだから……」

 

そう言ってエントは、世界樹の幹の下まで移動する。

彼は翼を大きく広げた。

 

それが光輝いたと思うと、急速に光が凝縮され、そこに小さな子供が現れた。

紫色の髪に、瞳は左右違った。

右は赤く、左はかつてのエントのように金色だ。

しかし、右腕は異様に長く、骨の爪のようだった。

エントはと言うと、背にあった翼が片方なかった。

 

エントは、その小さな子供の頭を撫でる。

彼に、優しい顔を、それでいて悲しそうな顔をしていた。

小さな子供は、きょとんとした顔をして、自分を見上げている。

彼の頭を撫でたまま、

 

「初めまして、もう一人の僕。僕の名前は、世界の守り手≪ディセンダー≫・エント……。君の名前は〝ゲーテ‥‥‥導きし者〟だよ。」

「ゲーテ……導きし者……それが俺の名前……。俺はこれから、何をするんだ。」

 

ゲーテは目をキッと上げて言った。

エントはゲーテを抱きしめながら、優しく、そして悲しく言った。

 

「ゲーテ、君は今から世界樹の中に入って、負の想念をあるべき光に導いて欲しいんだ。これはある意味、辛い事でもある。僕の力で、物は作れても、君のような生き物は創れない。ごめんね、君はまだ本当の自分を見付けていないから、僕の感情の一部を君に渡すね……」

「お前の言うそれは、俺にしか出来ないのか。」

「うん。これは、世界の守り手≪ディセンダー≫の力を持っている者、そして世界樹自身にしか出来ないこと。でも、世界樹はそれを出来る状態ではなく、僕ももうじき眠るようなものだから、しばらくの間できないんだ。」

「じゃあ、俺がやってやる!つまらなかったら、辞めるけど。」

 

ジッと、エントの目を見上げて言った。

エントは頷き、目線を合わせる。

彼に、小さな笑顔を作って言った。

 

「じゃあ、君が自分の気持ちに気付いたら、また同じ事を聞くね。それまで世界樹や、彼等をお願いね……」

「おう、任せておけ!」

 

そう言って、ゲーテは光に包まれ消えた。

エントは世界樹を見上げ、静かに言った。

 

「……世界樹、ゲーテをお願いします。」

 

そう言って、エントはこちらに戻って来た。

エントは精霊だけではなく、ミトス達にも解るように話し始めた。

 

「あの子は、僕の半身だよ。僕の能力は、物を創りだすこと。だから足りない部分は、僕自身を使った。あの子がこれから先、自我をしっかりと持ち、感情を知れば、僕の事を恨むかもしれないね……。それでも僕は、あの子に一番大切な物を渡せた。いや、持っていてくれたよ……優しさを。もし弟が居たら、あんな感じかな。」

 

と言って、精霊達を見た。

そしてもう一度光輝き、二つの宝玉と宝珠を創り出した。

中心から、光輝いている。

 

エントは精霊・ノーム達に向かって、

 

「ノーム、ここに祠を立てて。ここを少し階段にして、周りを開けて。そしたらウンディーネは、ここに水を入れて。」

 

彼の言った通り、精霊・ノームは地面に穴をあけ、その底に祠を作り、それに続くような階段を作った。

彼は祠に、先程の宝玉と宝珠を納める。

そして何やら呟き、光で包んだ。

彼が階段を上がり、精霊・ウンディーネが水を入れた。

この祠は、小さな池の中にある祠となった。

精霊達の元へ戻り、先程の祠を見ながら口を開く。

 

「あそこの宝玉と宝珠は、ここで守って貰う。宝玉はマナを集め、制御する。宝珠は、世界の守り手≪ディセンダー≫が、もしもの時の蘇生の道具として。これなら何かあった時、これで大丈夫だと思う。頼む、オリジン!それにラタトスク!僕に力を貸してくれ……。君達にとって有益じゃないのは、知ってる!けど、お願い!」

 

精霊・ラタトスクは呆れ顔で、

 

「解った……俺様も、手伝ってやる。」

「ありがとう、ラタトスク‼」

 

と言って、精霊・ラタトスクに抱き付いた。

精霊・ラタトスクは「離せ、離れろ!」と唸っている。

それを見続けていた精霊・オリジンは、ため息を付いた後、

 

「解った、我も力貸そう。我が友、エント≪ディセンダー≫の為、そして世界樹の為に。」

 

そう言って、パッと明るくなったエントは、精霊・オリジンにも抱き付こうとして辞めた。

何故なら高さ的に無理と思い、動くのを辞めて笑顔で精霊・オリジンに言った。

 

「ありがとう、オリジン!……よし!これで後は、王達に会うだけだ!」

 

最後に、ミトス達の方に振り向き言った。

彼はミトス達の傍に行った。

翼をしまい、クラトスとユアンに言った。

 

「師匠≪せんせい≫、それにユアンさん、お願いがあります。世界樹の森の入り口……あそこは国の境目です。そこに、王達を呼んで来て貰えますか?無論、護衛付きで良いです。お願いします。」

 

と言って、頭を下げた。

クラトスとユアンは、顔を見合ってから頷き、

 

「解った、呼んで来よう。すぐの方が良いのだな。」

「はい。出来れば明日、明後日までにお願いします。」

 

クラトスとユアンは「了解した」と言って、歩き出す。

センチュリオン・テネブラエが、最短コースの道案内人として付いて行った。

それを見送ったエントは、ミトスとマーテルに振り返り、明るい声で言った。

 

「あっちに、休める場所があるんだ。シルフ、ノーム、案内してあげて。僕も後で行くから。」

 

二人は頷き、歩き出した。

エントは精霊達の所まで行き、空を見上げながら叫んだ。

 

「居るんだろう、ダオス。話がある。」

 

そう言った数秒後、空からダオスが降りてきた。

男は腕を組み、宙に浮いたまま、エントを見下ろした。

 

「何やら色々やっているようだな。それで、私に何の用だ。」

「ダオス、僕ははっきり言って、君のした事は許せない。でも僕は、ディセンダー≪世界の守り手≫として、君との因縁を飲み込む。ダオス、君はこれからの世界を見ていてくれ。僕は、この世界に生きる者達が、世界を破滅に向かわせない事を信じ、この世界を守る。だから君は見守っていてくれ。」

「つまり貴様が救う世界を見定めろ、という事か。」

「そうだ。僕ら、この世界に住む者が、この世界を新しくしていく。」

「良いだろう、貴様がどこまでやれるか……見ものだな。」

 

そう言って、また空高く飛んで行った。

エントは精霊に振り返り、早口で言った。

 

「じゃあ僕、ミトス達の所に行って来るね!」

 

彼は駆け出して行った。

それと同時に、センチュリオン・テネブラエが戻って来て「私もあちらを見て来ますね。」と言って消えた。

残された精霊達は、各々口を開いた。

 

「そういやお前、エント≪ディセンダー≫に抱き付いて貰えなかったな。は、ざまーみろ。」

「そう言う貴様も、嫌いなのではなかったか。……いつ、気変わりしたのだ。」

「は、妬むなよ。それに、俺様の勝手だろ。……ちなみに俺は、あいつが赤ん坊だった頃から知ってるしな。」

 

そう言って、精霊・ラタトスクはドヤ顔をする。

精霊・オリジンはムッとした顔になった。

精霊・ウンディーネが何かを思い出すように、頬に手を当て言った。

 

「そう言えば、赤ん坊のエント≪ディセンダー≫を抱っこして、あやした事もありましたね。最初は泣かれましたが……」

「うむ。確かにあの時のエント≪ディセンダー≫は泣き虫だったからな。……エミリィが、よく子守唄を唄ってはあやしていたな。」

「そうじゃのぉー。我の膝の上で空を飛ぶたび、大喜びじゃった。あの子の笑顔が、ほんに可愛い子じゃった。」

「……マクスウェル様は、無茶しすぎて危うくエント≪ディセンダー≫を落としそうになりましたね。」

 

と、話し始めた。

彼等の話はエント≪ディセンダー≫達が、戻るまで続くのであった。

 

 

クラトス・ユアンが王達の元へ行って二日後、エント達は世界樹の森の入り口に来ていた。

そこに、クラトスとユアンが王達を引き連れやって来た。

王には衛兵数人と、次期王が一緒だった。

王都王が力強い声で言った。

 

「久しぶりだな、少年。あの時の礼が、まだであった。あの時は助かったよ。少年のおかげで、我が国は救われた。」

 

と、今度は王都王の横から一人の青年が言った。

 

「父上や皆から聞きました。貴方方が、父と我が国を救ってくれたと。私からも、深くお礼を申し上げる。そして、貴方の村にした事も、深くお詫び申し上げる。あの時の指揮官は私だった……。君は私を殺しても構わない。」

 

王子はジッとエントを見る。

彼は首を振り、

 

「……王都国を救えたのは、僕に力を貸してくれた仲間のおかげです。それに僕は、王子を殺すつもりはありません。ですから、これからの国の為に尽くして下さい。」

「……そうか、ありがとう。」

 

と言って、王子が手を出した。

エントは照れながら、その手を握った。

そして、帝国王が口を開いた。

 

「……それで、我々を呼んだ理由を教えて貰っても良いかな。」

 

エントはひとつ頷いた後、王達を見て真剣な顔付きになり、剣を抜いた。

衛兵達はすぐに、臨戦態勢に入った。

が、王達がそれを止めた。

エントは剣を掲げ、小さい声で「レディアント完全解放!」と言った。

 

いつもと違う服装だった。

剣も前の時の大剣ではなく、細く、そして長い剣だった。

 

エントは剣を降ろし、真っ直ぐ王達を見た。

 

「僕の名は、世界の守り手≪ディセンダー≫。世界樹より、生まれし世界の守り手。我が母にして、主の世界樹に変わり、貴方方に頼みがあります。」

 

エントの名を聞いた王二人は見合った。

そして、帝国王は何か納得したように口に出した。

 

「〝ディセンダー‥‥‥光まとう者〟か。意味のある名であったので、何かある少年だとは思ったが、まさか世界樹の子とは。恐れ入った。」

「名の通り、光を持つ少年か。それでお願いとはもしや、世界をこんなに荒らしてしまった我らの首か?」

 

王都王も、静かにそう言った。

エントは首を振り、王達に願いと、これからの世界の希望を込めて言った。

 

「いいえ。貴方方は、これからこの世界を変えて行く者達です。僕は貴方方を……いえ、この世界に生きる者全てが、より良い世界に変えてくれると信じます。僕は、この世界が危なくなった為、生まれたような者です。これから先、平和になる世界を世界樹と共に見守ります。ですから王達よ、これからの世界を守って下さい。今回のようにならないように……。異種族同士、手を取り合っていける世界になるように、お願いします。」

 

と言って、頭を下げた。

王二人は頷き、互いに決意を言った。

 

「分かった。我ら両国は、今を持って同盟を強固しよう。そして、全ての種族が平和に暮らしていけるよう、手を尽くす。」

「この世界を、元の平和で豊かな世界になるように……。互いに手を取り合っていく。」

 

エントは嬉しそうに笑う。

小さく「良かった」と言った。

そして彼は王達をもう一度真っ直ぐ見て、真剣な顔で言った。

 

「その約束、ちゃんと守って下さいね。……今あるこの世界の負の想念と瘴気は、僕と精霊達が一時、処理します。」

 

そう言って、エントは剣を地面に突き立てた。

剣が光出し、地面の中に入っていく。

それを確かめてから、手を挙げる。

四大を呼び、叫んだ。

 

「全ての精霊達よ!盟約の名の元、今を持って世界のバランスを作り直す。僕に力を貸してくれ!」

 

と言って、彼は光出した。

その光は集まり弾かれ、世界の隅々まで飛んでいった。

足元の荒れていた土は、本来の豊かな土へと変わった。

空気も、綺麗に澄み渡った。

 

「これで、数百年は大丈夫です。今あるこの世界を壊すも、豊かに変えるのも、貴方方次第です。貴方方が再び、同じ事を繰り返さない事を祈っています。」

 

王二人は頷き、この場を離れて行った。

これからの国の方針について、再度話し合うようだ。

エントは王達を見送った後、姿をいつものに戻す。

そして、クラトス達の元に行った。

四大が、帰って来たのを確認して、恐る恐る皆へ口に出した。

 

「あ、あの、皆にお願いがあるんだけど……」

「何、エント?それにしても……さっきの衣装の時とまるで別人だね。何と言うか、威厳が……」

「え⁉……それ、僕が一番気にしているのに……」

「あー……ごめん。そんなに気を落とさないでよ。本当にごめんって。」

 

肩を落として落ち込むエントに、ミトスがなだめる。

クラトスがため息をついた後、口に出した。

 

「それで、お願いとは何だ?」

「あ、えっと、ですね……。その、僕の生まれ故郷に一緒に来て欲しいんです。」

「あの村か……解った。旅の支度をしてから、出発しよう。」

 

と言って、クラトスが歩き出し、ユアンはクラトスと話し始める。

ミトスが、その後を追いかけて行った。

エントは、横にいるマーテルさんに言った。

 

「マーテルさん、僕のせいでごめんなさい。ちゃんと皆に話すから、もう少しだけ許して下さい。」

「私は、大丈夫よ。それに、貴方のせいでもありません。私が、貴方を助けたかったから庇ったの。だから、貴方は自分を責めなくても良いのよ。」

 

マーテルは優しくそう言った。

エントは悲しそうな顔をしていた。

遠くからミトスの声が、聞こえて来た。

 

「おーい。エント、それに姉様ー!早くー、置いてっちゃうよー。」

「さ、行きましょう。」

 

と、マーテルが明るい声で言った。

二人はミトス達の元に急いだ。

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