テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた   作:609

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マイソロ2 初代編 第五十話 未来を信じて

村に行く順序は、この帝都に来た順番で行った。

これまでの旅の話をして、なんだか楽しくて可笑しな気分で、一行は笑いながら村を目指して歩き続ける。

村まであともう少しの所で、野営の準備を始めた。

 

エントは今日の食事を作りながら思っていた。

 

『……これで、皆と過ごす夜は最後か。なんか不思議な気分だ。僕以外の世界の救世主≪ディセンダー≫も、仲間と別れる時、こんな気持ちだったのかな……。最後の料理は、めいいっぱい美味しく作ろう!』

 

食事が出来て、皆に渡す。

食べ始めてちょっとしてから、僕は皆に緊張した声で言った。

 

「あの……皆、実は話しておかなきゃいけない事があるんだ。マーテルさんの事で……」

「姉様が、どうかしたの?」

 

エントは食事を横に置き、膝を抱え込む。

燃える火を見つめながら、静かに話し始めた。

 

「……マーテルさんが、僕を庇って深手を負ったでしょ。それで……その僕……」

「もしかして、それをお前は悔やんでいるのか?おそらくマーテルは、お前を恨んでいないと思うが……」

 

と、クラトスは言った。

エントはマーテルを見る。

彼女は笑顔で頷く。

ミトスは、エントの肩に手を置いて言った。

 

「姉様が、無事だったんだ。それにあの時、姉様が飛び出していなくても、誰かがやっていた。も、勿論、僕だって、飛び出すよ。」

「ミトス……ありがとう。でも、違うんだ。僕……僕、マーテルさんの生きる道を壊してしまった。僕はあの時、マーテルさんに術を掛けて……半分、精霊状態に変えてしまったんだ!僕は君のお姉さんを一度、殺したようなものなんだ‼マーテルさんは普通のハーフエルフと違い……その寿命も、時の流れも変えてしまった。」

 

エントは、膝に顔を埋めて泣き出した。

クラトスとユアンは、マーテルを見た。

マーテルは少し困り顔で、小さく笑った。

そしてエントを見て、悲しそうな顔をしていた。

 

理由は簡単だ。

自分のせいで、あそこまで追いつめていたのだから……

精霊状態と言えば、ほぼ不死状態なのだ。

マナが世界にあれば、生きていける。

つまり、普通のエルフやハーフエルフより、さらに長く生き続ける事になる。

ミトスより先に死ぬ事はなくても、これから孤独となるのは間違えないだろう。

長い時を、精霊と同じように過ごしていく事になる。

ミトスは腰に手をあて、エントに怒鳴った。

 

「バッカじゃないの!僕にも、同じ力があったら、同じ事をした。何より、形はどうあれ……姉様を助けてくれたんだよ。あのままだったら、姉様は死んでいた。そしたら、僕は独りぼっちになっていた……。だからエント、姉様を助けてくれてありがとう。」

 

エントは顔を上げて、涙を流したままミトスを見ていた。

ミトスは腰に手を当てて、まだエントを見ている。

エントは何かを言おうとして、それを飲み込んだ。

涙を拭いて、ミトスに抱き付いた。

 

マーテルが優しく、声を掛けた。

 

「……エント君、ごめんね。でも、ミトスの言う通りよ。それに言ったでしょ、貴方のせいでもありません。貴方は、自分を責めなくても良いの。あの時、私は確実に死んでいたわ。私も、たとえどんな形であれ……大切な人達と共に過ごす時間をくれた事に感謝しているわ。だから、ありがとう……」

 

マーテルは手を握り合わせる。

と、ユアンが身を乗り出して、マーテルのその手を握り、手に力を込める。

 

「そうだ!何があろうと、傍にいる!マーテル、私は何があろうと君を嫌いにはならない‼」

「ユアン‼……嬉しいわ!貴方に、そう言って貰えて……」

 

二人は見つめ合う。

その前で、クラトスが一つ咳払いし、

 

「……仲間なのだから、当然だな。所でユアン、ミトスがそろそろ切れるぞ。」

 

と、ユアンはすぐに手を放した。

ミトスは物凄い目で、ユアンを睨んでいる。

エントは抱き付いていたミトスを、ギュッと力強く抱き付いた後、離れる。

笑顔に戻って、ミトスに言った。

 

「ありがとう、ミトス。僕も……これで安心できる。でも、異性として人を好きになると、色々大変なんだね。一途っていうのも、良い感じだね。ユアンさん、頑張ってね!」

「あ、ああ!頑張る。だが、お前も恋をしてみるのも良いかもしれんぞ。なぁー、クラトス。」

「……そうかもしれんな。頑張れ、ユアン。」

「何故、俺に⁉」

 

その会話を、マーテルさんは笑っていた。

ミトスはわなわなして、エントに叱った。

 

「エント!ユアンの応援なんかしちゃダメ!ユアンは、大きな害虫なんだから!」

「そうなの⁉……分かった。でも、残念だなぁー……」

「なにが?」

「ん、だって、僕が女の子だったら、ミトスと付き合えたのになぁーって。」

 

その何気ないエントの一言に、全員は一斉に彼を見た。

エントは一瞬、言葉に詰まった。

が、つまずきながら言った。

手が時々、上下する。

 

「え……っと……だって、そうすればミトスとずっと一緒に居られるでしょ。それも面白そうだなぁーって……」

「ああ、うん、そうだね。確かにそうかもしれない。じゃ、じゃあ、逆もありだったって事だよね!僕が、女だったら、エントにドキドキしていたかもしれないね。」

「あー……でも、僕に恋をしても、世界が波乱馬上かもよ。ほら、僕は世界を守っているから。」

「ああ、成程。でもそれじゃあ結局、エントが女でも一緒だよ。」

「……それもそうだね。」

 

と言って、二人は話し始めた。

クラトス、マーテル、ユアンはそれぞれ、

 

『エントは家庭的な面では大丈夫だが、精霊達が黙っていないだろうな……』

『ミトスとエント君が、付き合っていたら……私とユアンは……いいえ、どっちにしても、関係は変わらなかったかも……』

『彼等が付き合っていれば!そうだ!そのだよな!いや、待て……でも結局今と変えあらない気がする……』

 

と、考えるのだった。

 

食事が終わり、火の番のクラトスは起きて夜空を見ていた。

と、誰かが近付いて来た。

顔をそちらに向けると、エントはクラトスの向かいに腰を折ろした。

クラトスに苦笑した後、夜空の星を見始めた。

そして、彼がポツリと言い出した。

 

「師匠≪せんせい≫……僕、村に帰ったら村の皆に報告した後、世界樹の中に帰るつもりなんです。僕のわがままなんです。世界樹の中に戻るなら、僕の生まれ育ったあの場所がいいって……。僕が人間として過ごし、ディセンダー≪一人の人間≫としている事を決めた場所。僕、心の中ではまだ皆と一緒に居たい。でも、僕は早く世界樹の中に帰らないといけない。作り直したこの世界のバランスを壊してしまう事になるから……。師匠≪せんせい≫は言いましたよね、全てが終わったら戻って来れば良い。その為の名前として、エントと言う名を貰いました。」

 

エントは夜空を見つめ、泣きながらそう言った。

クラトスは、黙ってそれを聞き続けた。

実は起きていたユアン・ミトス・マーテルも、最後まで聞いていた。

ミトスは起き上がろうとして、マーテルに止められたのである。

しばらくそうした後、エントはクラトスにまた苦笑いをし、続きを話し始めた。

 

「ごめんなさい、師匠≪せんせい≫。師匠≪せんせい≫……僕、この世界に生まれて良かった。皆に会えて、本当に良かった。だから明日は最後まで、笑っていようと思います。師匠≪せんせい≫、ありがとうございました。」

 

と言った後、また夜空を眺めながら、あの思い出の子守唄を鼻歌で歌い出した。

 

 

村に着き、一行は長老の墓の前で手を合わせた。

その場には、四大も一緒だ。

その後、エントは言い出す。

 

「長老……僕、王様に会ったよ。長老の言う通りの人だった。この村の事も、ちゃんと話したよ。村をめちゃくちゃにした宰相は、王の手によって捕らえられた。それにね、戦争が終わって平和な世の中が来るよ。だから安心して……」

 

そう言い終わり、立ち上がった。

ユアンはエントに優しそうに、それでいて悲しそうに言った。

 

「お前にとって、この村はとても良い村だったのだろうな。お前の育て親も、誇らしいだろう。……確か、村長殿だったな。」

 

エントは嬉しそうに、思い出しながら言った。

 

「はい。赤ん坊だった僕を、長老が引き取ってくれました。それから、長老の家に六歳まで居ました。」

「六歳まで⁉その年から一人暮らしは辛かったろう。しかし、あの長老殿ならずっと家に置いといてくれたのではないか?」

「長老もずっと居て良いと、言ってくれました。でも、僕自身がそれを拒んだんです。僕、あの頃は世界の救世主≪ディセンダー≫としての自分と、今の自分≪人間としての自分≫が解らなかったから……。あの家に暮らしてからは、四大と一緒だったけど、そういった事は初めてだった。だからよく、エミリィが来てくれたっけ……。それに、一人暮らしにちょっと慣れてきた時、師匠≪せんせい≫に料理を教わったから、意外と大丈夫でした。」

 

四大もそれを聞いて、思い出すように話し始めた。

 

「そうですね……。村人が毎日食料を持って来たから、料理と言うものをしようとして、イフリートが台所を爆破しましたね。」

「そうそう!それでエミリィに、エントがめっちゃ怒られて。その後、エントに物凄く怒られたわね……」

「うむ、そうであった。それ以来、我らは料理禁止になったのだったな。」

「ボクチンが、その台所直した時はエミリィも、長老も、驚いていたぞぉー。……でも、あの人間が来ていた時はディセンダー≪エント≫取られちゃったしねぇー。……まぁー、ディセンダー≪エント≫が楽しそうだったから、良いけどねぇー。」

 

と、矛先がクラトスに向かい、彼は息苦しくなった。

が、ミトスが首を傾げ聞いた。

 

「そういえば、時々出てくるけど……エミリィって誰?」

 

エントはミトスに小さく微笑みかけ、

 

「エミリィは長老の孫娘で、僕のお姉さんみたいな人。それに……バトの幼馴染。彼女はエルフだったから、成長が遅くてね。見た目的には妹かな。……昔は長老の事を爺様って呼んで、エミリィをリィ姉って呼んでいたっけ。周りの子達に、それで良く苛められいてたなぁー……。それをよくバトが、助けてくれて。バトは、僕の初めての友達になってくれて、僕がおかしな事を言っても、いつもと変わらず接してくれた。世界の救世主≪ディセンダー≫の記憶が戻って、僕が僕じゃない時も、それは変わらなくて……。エミリィも、長老も、変わらず優しくて、厳しくて。でも、僕を庇って死んだ。僕はこの村が好きで、ここでの暮らしも、忘れるつもりはない。それに、ミトスって言う同年代の友達も出来たし。」

 

と、笑顔で言った。

ミトスは照れたように、それでいて少し拗ねたように言った。

 

「ふん!どうせ僕は、代わりですよーだ。」

「そんな事ないって。でも、初めて会った時は、僕嫌われていたなぁー……」

「それは、だって……い、今はそうじゃないもん!」

「知っているよ。僕も、ミトス好きだし。それにあの頃は、僕も、ミトス苦手だったし。」

「へぇー……え⁉い、今も⁉」

 

ミトスが、目を見開いてエントを見る。

エントは首を振って、

 

「いやいや、今はそんな事ないよ。ほら、僕って普通の人間と違うでしょ。見た目もそうだったけど……。あの頃の僕を本当の意味で知っていたのは、師匠≪せんせい≫だけだったし。なにより、村に残っていた子供は、僕より年上ばっかだったしね。……実を言うと、僕さ、ミトスに嫉妬していたかも。あのとき言ったみたいにさ。でも本当は、多分ミトスとしていられるミトスに、嫉妬していたんだね。」

 

エントは苦笑いして、ミトスを見た。

ミトスは拳を握りしめ、

 

「だ、だったら、また戻ってくれば良いじゃん!また僕らの元に!一つの所に居られないなら、この世界を一周でも、二周でもすれば良い。だからもう、あんな悲しい顔するなよ!」

「……聞いていたんだ。恥ずかしいから、皆が寝てから師匠≪せんせい≫に話したのに‼」

 

と、顔を真っ赤にして言う。

ミトスは腰に手を当て、

 

「フフン!実は最初から全部聞いていた。ちなみに、鼻歌子守歌も!」

「うわぁー……あーでも、あの子守歌は良いよね。」

「あ!それ僕も、思った。あれは誰から聞いたの?」

「エミリィが良く歌ってくれたんだ。歌詞は覚えていないんだけど。」

 

と、また四大が思い出しながら言った。

 

「そうだな。よく、エント≪ディセンダー≫が泣いた時や、寝付けが悪い時に歌っていたな。」

「ええ。我々があやしても駄目でしたのに、あの歌が出たら泣き止んで、寝ていましたね。」

「エミリィも、嬉しそうにしていたわ。でもエント≪ディセンダー≫が泣く時って、大抵エミリィが目を離していた時なのよね。エント≪ディセンダー≫はあっち、こっち動き回るから余計に苦労したわ。」

「そうなのでしたぁー。一回、僕らも目を離してしまって、行方不明になったのでしたぁー。あれは、焦ったのでしたぁー。でも、帰って来てからのディセンダー≪エント≫は、それ以来泣くのが少なくなったのでしたぁー。懐かしいですぅー。」

 

エントは耳まで赤くなって、手で顔を隠しながら言った。

 

「あの時は、ラタトスクに拾われたんだよ。その後、エミリィが来て……泣いたら怒られるし、説教始まるし……赤子に本気で怒るって……」

 

当時の事を思い出したのか、真っ赤だった顔が青くなっていた。

それからしばらくして、エントが空を見上げて移動を始めた。

その場所は、変わった模様のある世界樹の根が張っている所だ。

 

クラトスは、この場所を知っている。

以前、エントが、ここで生まれたと話していた小さな子供だった頃を思い出した。

子供に似あわず、難しい事を話していた小さな子供。

それが今、目の前で大きく成長した。

それこそ、世界を救うまでに‥……

そして、ここから世界樹の元へ戻るつもりなのだろう。

 

エントは振り向き、光出した。

光が収まり、彼の目の前には二振りの剣がある。

一つは黄金に輝き、もう片方は黒く輝いている。

彼は説明を始めた。

 

「この剣は、聖剣エターナルソードと魔剣エターナルソード。この剣は、僕のレディアントの剣の一部と翼の羽根で出来ています。」

「それで、その剣を創り出して何に使うのだ?」

 

ユアンは腕を組んで、その二振りの剣を見て言った。

無論、他の者も、だ。

エントは苦笑しながら、静かに説明を続けた。

 

「こっちの光の剣が、世界樹の中で僕の本体の器と僕自身の代わりに柱になって貰う剣です。そして……この剣は世界の守り手≪ディセンダー≫を殺せる剣です。もし、この先世界の守り手≪ディセンダー≫が世界を滅ぼす事があったら、この剣で殺せるように。この剣は、この地の祠に封じておきます。」

 

そう言って、黒い方の剣が消えた。

ミトスは慌てて、ある事に気付いた。

 

「で、でも、そんな剣が、誤って世界の救世主≪ディセンダー≫に使われてしまったら?」

「その時は世界樹の所にある、あの祠の宝珠を使えば大丈夫。でも、使う事がない事を祈るよ。」

「大丈夫、この世界はきっと平和になる!いや、してみせる‼」

「……うん、信じている。……よし、僕はもう行くね。皆、今までありがとう。僕、皆に会えて良かった。皆が支えてくれたから、世界を救えた。この世界を守りたいと思えた。本当にありがとうございました。」

 

エントは泣きそうになるのを必死で押さえて、笑顔で皆に言った。

ミトスは、不安そうな顔で言った。

 

「エント……いつかまた会える?……会えるよね!」

「……次会うのは、僕じゃないかもしれない。でも、僕はいつだって傍にいるよ。ペンダント……それは僕の力の一部だから、それを通して見守っている。」

 

ミトスは一度俯いた後、勢いよく顔を上げ言った。

 

「……僕の夢、決まった!僕は、この世界を見て回る。エントのこと思い出して、その日にあった事を教える。これからの世界も!‥エントがこっちに戻った時、困らないように。それが僕の夢だ‼だから……」

「わかった……。さよならは言わない。ミトスの話を、毎日楽しみにしている。また会える、その日まで。だから行って来ます、皆!」

「行ってらしゃい。世界の救世主≪ディセンダー≫・エント。」

 

エントは涙を流していた。

でも、その顔は笑顔だった。

だから、その場にいた全員が同じく笑顔で、そう言ったのだ。

彼が消える瞬間、「皆、ありがとう。」と言う声が聞こえた気がした。

そして、ミトスが思いっきり泣き出した。

マーテルはミトスを抱き、優しく頭を撫でてやった。

ミトスが落ち着いてから、クラトスが四大に聞いた。

 

「お前達は、これからどうするのだ?」

「我々は本来の場所、遺跡を通して精霊界に戻ります。世界の守り手≪ディセンダー≫・エントの盟約により、この世界のバランスを守る為に……。ですから、ここでお別れです。」

 

精霊・ウンディーネが、静かにそう言った。

クラトスも小さく、「そうか」と言った。

それぞれ移動しようとした時、二人の精霊が現れた。

それは、精霊・オリジンと精霊・マクスウェルだった。

精霊・ウンディーネは、何かを恐れるように言った。

 

「マクスウェル様、何故ここに?」

「うむ、あの子は行ってしまったか……。残念じゃ、最後に会いたかった。」

「……それは後だ。我々は、貴様らに用がある。」

 

精霊・オリジンの言葉に、ユアンとミトスは何の用か解らない。

が、クラトスとマーテルは心当たりがあるようだ。

クラトスが代表で、精霊・オリジンに質問した。

 

「下界人を嫌う精霊・オリジンが、わざわざ何の用だ?」

 

オリジンは腕を組み、忌々しそうに言った。

 

「ふん。解っているようだな、クラトス・アウリオン。貴様は直接、世界の守り手≪ディセンダー≫から聞いているようだな。そこのハーフエルフも、おそらく同じか……。ならば、そこの二人も同じになって貰う。」

 

その言葉に、精霊・ウンディーネと精霊・イフリートが声を上げる。

 

「オリジン、いけません!何の為に、あの子が黙っていたと思うのですか‼」

「そうだ。あ奴は最後まで、仲間として、ここに居たのだ!……その想いを壊すつもりか‼」

 

その必死の声も、精霊・オリジンは冷たく言い放った。

 

「だが、そいつらは世界の守り手≪ディセンダー≫から多くの世界の理や、世界の守り手≪ディセンダー≫の事を知り過ぎた。このままにしておくつもりはない。そこの二人は、それを知っておきながら、逃げたのか。」

「違います‼ディセンダー≪エント≫が、自らそうさせたのです。彼等をこれ以上、巻き込まないように。マクスウェル様、お願いです。止めて下さい!」

「すまんのぉー……ウンディーネ。これは、我には止められん。この権限は、オリジンや、世界の守り手≪ディセンダー≫達にしか無いのじゃ。解っているじゃろう……」

「だが、その世界の守り手≪ディセンダー≫が彼等を解放した。その理を教えなかったのも、事実!」

 

精霊・イフリートはそれでも声を出し、訴えった。

だが、それでも精霊・オリジンは冷たく話を進める。

最早、このお会話にクラトス達も、そして精霊・シルフと精霊・ノームも声を出す事が出来ない。

 

「これは、あれの為にある。それに、貴様らも知っているはずだ。知りすぎた者がどうなるか……」

「世界を壊すか、手助けをするか……。しかしそれでは、世界の守り手≪ディセンダー≫の……エントの気持ちはどうなるのです!」

「世界を壊されるよりはましだ。彼等を……理よって縛る。」

 

そう言って、精霊・オリジンはある陣を造り出した。

そしてそれは、クラトス達を飲み込んだ。

その瞬間、彼等の頭の中にはあるビジョンと、この世界や別の世界についての知識、理を知った。

クラトスとマーテルは、エントからその一部を知らされていた。

しかし、世界の守り手≪ディセンダー≫としてのエントは、彼等を縛るのを辞めたのだ。

我々を信じて……

縛られない限り、クラトスは普通の人間として、マーテルは精霊の力が失われれば、ただのハーフエルフへと戻れるように。

だが、精霊・オリジンはその場にいた四人を理で縛った。

ディセンダー≪エント≫のペンダントを媒体にして。

 

意識がハッキリしてくる。

自分達がどうなったのか、すぐに理解した。

少なくても、普通の人間、そしてハーフエルフではなくなった。

彼等の時は止められたのだ。

しかし、ペンダントを外せば、少しずつではあるが時は流れる。

だが、最早それすら出来ないだろう。

全ての理を知ってしまった、今では……

何故なら、ディセンダー≪エント≫を裏切る事は出来ない。

ミトスは涙を流し、ユアンは頭を抱えて考え込んでいた。

 

彼らがしばらくそうしていた後、精霊・ウンディーネが小さく悲しく呟いた。

 

「ごめんなさい、ディセンダー≪エント≫。守る事が出来なかった……」

 

その言葉に、何故四大が今まで傍にいたのか理解した。

エントは、この事を予想していたのだろう。

そして、エントは自分が消え、この世界の為に何をしているのか、知られないように。

 

エントの創り出したゲーテは、負の想念を取り込んでは共に消えるのを繰り返す。

この世界に生きる全てのモノが、負の想念を生み出す限り永遠と……

エントは世界樹の柱となっている。

そしてその精神は、今もなお魔族達と戦い続けている。

時には口論を、時には刃を交えて……決して落ちないようにしている。

そして、今のこの世界のバランスを取る為に、力を放出し続けていた。

 

精霊・オリジンは冷たい声で、言い放った。

 

「これで貴様らは、世界の理に縛られる事になる。これから先、どうするかは貴様ら次第だ。」

 

そう言って、精霊・オリジンは消えて行った。

精霊・マクスウェルは彼等に悲しく、それでいて願いを込めて言った。

 

「……これは、其方達の力になる事を祈っとるよ。」

 

と言って、リングを人数分置いていった。

クラトス達はそれを手首に巻き着け、ユアンが口を開いた。

 

「……これから、お前達はどうする。」

「僕はエントとの約束通り、この世界を見て回る。エントに会える日まで……」

「私も、この子に付いて行きます。私の精霊としての力は、世界樹の外でも機能するようですし。」

「なら、私も行こう。王都王に会ってから、君達に合流する。」

「決まりだな。無論、私も共に行く。帝国王に報告をしてから、ユアンと共に、お前達に合流する。」

 

そう言って、彼等は進み出した。

クラトスは帝都へ、ユアンは王都へと。

ミトスとマーテルは、エントが消えた場所へ。

そして祠、最後に湖に行き、一晩経ってから王都へ向かって歩き出した。

 

 

エントは一人、彼らの生末を視ていた。

彼らは旅をし続け、世界が変わっていくのを見守り続けた。

時には人々に手を貸し、時には人々へ世界の語りべとして。

彼らは二代目の世界の守り手≪ディセンダー≫に会い、彼女の仲間を手助けした。

彼らと共に、力を合わせて世界を救ったのだ。

月日が流れ、その時の彼女の仲間が、世界の救世主≪ディセンダー≫についての絵本と小説を書いた。

二代目≪ディセンダー≫と言う存在を忘れないために……

 

彼らは、これから先、世界の守り手≪ディセンダー≫が生まれるのか解らない。

それでもまた、旅を始めて歩んで行く。

彼らの知る最初の世界の守り手≪ディセンダー≫に、いつか会える事を信じて……

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