テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた   作:609

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マイソロ2 初代編~おまけ1~

ーー世界の守り手(ディセンダー)と四大

四大は、世界の樹より生まれし世界の守り手(ディセンダー)を探していた。

世界守り手(ディセンダー)が生まれて、下界で暮らすようだ。

我々四大は、それを監視するために集まった。

 

「ここのようですね。世界の守り手(ディセンダー)が産み落とされたのは。」

「どんな子なのかなぁー♪会えるのが楽しみだなぁー♪」

「うむ。しかし、監視を怠ってはいけんぞ。もしもの時は、我らで世界の守り手(ディセンダー)を殺さねばならんのだから。」

「あ、世界の守り手(ディセンダー)が居たわ。ほら、あの家の揺り籠の中。」

 

と、四大はその民家に近付く。

日陰にあたり、気持ちよさそうに寝ている銀髪の赤子を見る。

揺り籠は、風に揺られ動いている。

四大は頬を染め、赤子が「むにゃ」と笑顔になるのを嬉しそうに視ていた。

しばらくそうしていると、赤子が泣き出した。

四大は慌てて、

 

「ど、どうしましょう⁈こういう時、どうすればいいのかしら。」

「うーむ、ゆ、揺らせばよいのではないか。シ、シルフ!」

「え!?わ、分かったわ。」

 

と、風を起こす。

しかし赤子は、より一層泣き出した。

 

「こ、これじゃあ、ダメみたいですねぇー。およ、誰か来たみたいだぞぉー。」

 

と、エルフが二人、慌ててやって来た。

一人は老人で、もう一人は幼い少女だ。

少女は赤子に、ミルクをあげた。

すると、赤子は泣き止んだ。

 

〝良かった。お腹が空いてた、だけみたいね。〟

 

四大の姿は、彼らには見えていない。

四大は、今度は赤子がミルクを飲んでいるのをじっと見ていた。

 

〝こうしてみると、ただの人間の赤子のようですね。〟

〝そうだな。まぁ、事実そうなのだろう。記憶を持っとらんしな。何より、人間を基準として創られている。〟

 

と話していると、エルフの少女が、

 

「それにしても、お爺様がこの子を連れて来た時は、どうしようかと思ったわ。」

 

老人のエルフは、髭を擦りながら

 

「うーむ、赤子を育てるのは久しぶりだからの。それにしても……こうしていると、お前が小さい時を思い出すよ。そんなお前さんが、この子を見られるかどうか……」

「もぉー。私も、もう八歳なんだから大丈夫よ。」

 

四大は、どうやらこの二人が、赤子の世界の守り手(ディセンダー)を拾ったと理解する。

そう思っていると、

 

「昨日、世界樹から光の柱が出た時はびっくりしたけど……。お爺様が、この子を拾ったのって、世界樹の幹の下だったのよね。」

「む、そうだなぁ。この子の両親は傍におらなんだ。今は戦争が起こるかもしれんからのぉ。もしかしたら、この子を守る為に、置いて行ったのかもしれんの。」

「でも親がいるなら、傍にいてあげた方が良いじゃない。私みたいに失うよりは……」

 

老人は、少女の頭を優しく撫でてやった。

 

『すまんのぉ。この子が生まれた時の事は、その場を見た者だけの秘密なのじゃ。』

 

と、ミルクを飲み終えた赤子の背を叩き始めた。

その光景を見た精霊・シルフが、

 

〝あ、ちょっと!何いきなり世界の守り手(ディセンダー)を苛めてるのよ!〟

〝シルフ、落ちつけ。どうやら、苛めているようではないようだ。〟

 

と、しばらく見守っていると、赤子から「げぷっ」とゲップが出た。

それに、少女は優しく言った。

 

「はーい、ディセンダー。もういいわよ、いっぱい飲めて偉かったわよ。」

「うむ、うむ。この調子で大きくなるのだぞ。」

〝どうやら、ミルクを飲んだ後はゲップをさせないといけないようですね。〟

〝うむ。我々も、子育てと言うものを知った方がよさそうだ。〟

 

四大は頷きあい、本などを漁り始めた。

本で解らない時は、少女や老人を見て学んだ。

 

ある日、ディセンダーの揺り籠に、下界人には見えない者がいた。

揺り籠の中のディセンダーは、とても嬉しそうにしている。

 

「珍しいですね。貴方が、ここにいると言う事はラタトスクも来ているのですか?」

 

その者は一度お辞儀をしてから、

 

「いえ、私だけです。ラタトスク様に、様子を見て来るように言いつかって参りました。」

「テネブラエ。アンタも大変ね。あの、俺様精霊の雑用なんて。」

「いえいえ。ああ見えて、ラタトスク様は素直じゃないだけですよ。」

「……そうですか?それで、貴方から見て世界の守り手(ディセンダー)はどう思いますか。」

 

センチュリオン・テネブラエは、ディセンダーが自分の尻尾で楽しそうに遊んでいるのを少し見た後、

 

「とても、可愛らしいと思います。それに、無垢で輝いた子。これからの成長が楽しみです。」

「うむ。主も、そう思うか。この子は、良い子に育つ。」

 

だが、センチュリオン・テネブラエは小首を傾げ、

 

「ですが、私はラタトスク様より、世界の守り手(ディセンダー)様は記憶や己の事も知らないと、お聞きしてます。」

 

精霊・イフリートは腕を組み、

 

「うむ、その通りだ。だが、それがどうかしたか。」

 

センチュリオン・テネブラエはディセンダーに目を向けた。

 

「姿を消している私の事が、どうやら視えてるようなのです。これは大丈夫なのでしょうか?」

「うーむ、そうか……視えてるのか。嬉しいが、そうだな……。もしそれが問題になった時は、こちらで対処しよう。だが、いちをラタトスクには報告しておいてくれ。」

「解りました。それでは、私はこれで失礼します。」

 

と言って、この場を離れて行った。

四大は、ディセンダー(赤子)を見た。

ディセンダー(赤子)は金色の目で、こちらを視て笑っている。

四大は、ディセンダーの成長を遠くから見守った。

時には近付き、遊んでやる。

その一方で、監視という使命を忘れないようにしていた。

四大が、ディセンダーを見守り、しばらく経つ。

ディセンダーについて、確認していた。

 

世界の守り手(ディセンダー)を拾い、育てているあの老人エルフは、どうやらこの村の村長のようですね。」

「うむ。それで、あのエルフの少女がその孫娘エミリィ。二人とも、優しい下界人というのはよく解った。」

世界の守り手(ディセンダー)の事も、種族が違うのに優しいしね。まぁーそれは、この村が多種族で構成されてるせいかもしれないけど。」

「でも今時、珍しいですねぇー。ここ以外の村でも、戦争が始まると言って、種族差別が起きているのにぃー。」

「……世界樹の御魂があるだけとも思えませんね。もしもの時は、世界の守り手(ディセンダー)をさらっていけば良いだけです。」

「ウンディーネ……アンタ、時々凄い事いうわね。でも、もしもの時は賛成ね。」

 

と、四大は今後の事を話していた。

ディセンダーが座れるようになった。

彼は、よく一人遊びをする。

が、長老や、エミリィのどちらかがいないと泣き出す。

長老は会合で居ない。

エミリィは洗濯を取り込んで居ない。

二人が居ない事に気が付いたディセンダー。

そして今日も、彼は泣き出した。

 

〝あー、また世界の守り手(ディセンダー)が泣き出したわ。あ、エミリィが気づいたわ。洗濯物途中ね。……はぁー、仕方ない。私がやっといてあげるわ。〟

 

と、精霊・シルフが、洗濯を取り込み始めた。

エミリィはディセンダーの元に着いた。

 

「はーい、ディセンダー。お姉ちゃんが来たから、もう泣き止みましょうねぇー。よし、よし。」

 

と、撫でてあげながら、子守唄を歌い始めた。

するとディセンダーは、うつら、うつらとし始めた。

そして、寝始めた。

エミリィはディセンダーを揺り籠の中に寝かした。

彼女は、選択が取り込んであるのに驚いた。

が、腕を組んで悩んだ後、

 

「誰だが解らないけど、ありがとうぉ――。」

 

と、叫んだ。

ディセンダーが歩き始め、喋るようになった頃、四大はある事に気が付いた。

 

世界の守り手(ディセンダー)と共に過ごすようになってから、時間というのが、いつも以上に早い時もあれば、遅い時もありますね。〟

〝そうだな。……人間の時間は、どの種族の中でも早いというしな。我々も、それを忘れないようにしとかなくては。〟

世界の守り手(ディセンダー)が、人間みたいに早く死んじゃうことかなぁー?〟

〝馬鹿ねぇー。逆よ、逆。世界の守り手(ディセンダー)の成長が止まるかもしれないという事よ。そうなれば、他の者達から忌み嫌われるものになっちゃうでしょ。〟

〝あー、なるほどぉー。〟

 

と、四大が話していると、誰かが近付いて来た。

それは、よちよち歩きでやって来るディセンダーだった。

彼が、四大の前に来て見上げた。

その眼は、彼らを視ている。

そして、笑いかけて来た。

 

「あーちょーぼー。」

 

と、精霊・ノームに抱き付いた。

精霊・ノームは、姿勢を低くし言った。

 

「いいぞぉー、何して遊ぶかなぁー♪」

 

ディセンダーは、精霊・ノームの伸びた毛や尻尾で遊び始めた。

そうしていると、空から精霊・マクスウェルが現れた。

 

「マクスウェル様!何故、ここに⁉︎」

「なーに、世界の守り手(ディセンダー)の様子を見に来ただけじゃ。どーれ、世界の守り手(ディセンダー)、こっちにおいで。」

 

と、声を掛けた。

精霊・ノームで遊んでいたディセンダーは、精霊・マクスウェルを見上げた。

そして、精霊・マクスウェルの周りに飛んでいる本が気になったのか、ずっと視ている。

と、ディセンダーは立ち上がり、その本を取ろうと精霊・マクスウェルに近付く。

 

「おーおー、これが気になるか。じゃが、今のお前さんにはちと難しいぞ。代わりにほら、ワシの膝にのらせてやろう。」

 

ディセンダーを膝の上に乗せ、飛び始める精霊・マクスウェル。

ディセンダーが喜ぶたびに、加速する。

精霊・ウンディーネが慌てて、

 

「ま、マクスウェル様、お気を付け下さい。ディ、世界の守り手(ディセンダー)を落とさないように。」

「ふぉほほほ、解かっとるわい。ほーれ、楽しいじゃろ、世界の守り手(ディセンダー)。」

 

と、調子に乗って、さらに加速する。

さすがのディセンダーも嫌になったのか、怖くなったのか、泣き出した。

慌てた精霊・マクスウェルは、危うくディセンダーを落とす所だった。

精霊・マクスウェルがゆっくり降りて来る。

 

「おお、世界の守り手(ディセンダー)、すまなんだ。ほーら、ほーら。」

 

と、高い高いをするが、一向に泣き止まない。

精霊・ウンディーネが抱き抱えた。

そして背をトントンしたりするが、駄目だ。

と、裏口からエミリィが走ってやって来た。

精霊・ウンディーネはディセンダーを降ろした。

 

「ディセンダー?ああ、泣いてたの。どうしたの、転んじゃった?」

 

と、あやすが泣き止まない。

だが、エミリィが子守唄を歌いだすと、ディセンダーは泣き止んだ。

そして、また笑顔に戻る。

それを見届けた精霊・マクスウェルは安心して、帰って行った。

 

 

あの日、エミリィが長老に黙って、ディセンダーを連れて出掛け始めた。

 

〝エミリィったら、どうしたのから。長老に黙って出てくなんて。〟

〝きっと何かあるのでしょう。もしもの時は、我らで何とかすればいいのです。〟

 

と、話している間にある広い場所に来た。

小蔭に入り、エミリィがディセンダーを降ろした。

その斜めには、何やら人間の少年がいる。

少年が、呆れたように言った。

 

「その赤子は何だ?」

 

エミリィは、赤子の頭を撫でながら、

 

「バトがいない間に、この村で育てる事になった子よ。ほら、世界樹から光の柱が出た日。お爺様が連れて来たの。捨て子らしいわ。あ、名前はディセンダーと言うのよ。」

 

どうやら、この少年とエミリィは友達と言う者だろうと思う。

ディセンダーは自分の名前を呼ばれ、返事をするかのように、「あい。」と返事をした。

少年は中腰になり、

 

「ガキが、ガキを育てて大丈夫かよ。」

 

エミリィは、顔を真っ赤にし、

 

「ガキじゃないわよ、全く!私は、この子のお姉さんになるんだから、もう大人なの!貴方と違ってね。」

 

と、少年に「べー」と舌を出した。

こうして、二人の口論が始まった。

四大は、

 

〝うむ。どうやらエミリィは、世界の守り手(ディセンダー)をこの少年に紹介したかったようだな。〟

〝でもエミリィが、こんなに子供ポイの初めて見たわ。〟

〝そうね。それだけ、この少年はエミリィと仲が良いという事でしょう。〟

〝喧嘩してるけど?〟

〝喧嘩するほど、仲が良いという事でしょう。〟

 

精霊・ノームは、一人で遊んでいたディセンダーと共にいた。

ディセンダーが綺麗な石を見つけ見せては、また手に握る。

それを繰り返している。

しばらく口論をしていた二人を見たディセンダーが、甲高い泣き声で泣き出した。

エミリィは慌てて、

 

「ごめんね、ディセンダー。ほーら、もう喧嘩してないわよ。よしよし、もう泣き止もうね。」

「あー!うるせ、泣くなガキ。言いたい事があったら、口で言え、口で。」

「泣くのは当たり前でしょ!まだ赤子なのよ‼大体、まだはっきり喋れないのよ。」

〝あー、また喧嘩始めちゃったわよ。〟

世界の守り手(ディセンダー)が可哀想ですね。〟

 

と、また甲高い泣き声が、響き渡る。

エミリィは慌ててあやす。

少年はため息を付き、ディセンダーを見る。

ディセンダーの手の中には、先ほど精霊・ノームに見せていた綺麗な石を握っている。

少年は、

 

「おい、ガキ。お前、何を握っているんだ。」

 

と、ディセンダーは泣くのを止め、握っている自分の手を見た。

手には二つの綺麗な石が、一つずつ持っている。

ディセンダーは、しばらくそれを見つめた後、一つをエミリィに渡した。

 

「ネー、あーえる。」

 

エミリィはそれを受け取り、

 

「ありがとう、ディセンダー。」

 

と、頭を撫でる。

エミリィの笑顔を見て、同じように嬉しそうに笑うディセンダー。

ディセンダーが、少年と目が合う。

ディセンダーは笑顔を向けたまま、もう一つの石を少年に渡すように腕を伸ばす。

 

「バート、あーえる。」

 

少年は露骨に嫌な顔をして、

 

「俺様は、バルバトスだ。大体、バトと呼んでいいのは、このガキんちょだけだ。お前はダメだ。」

 

エミリィは反論しようとした。

が、ディセンダーはまるで気にしていないように笑顔のまま、

 

「バート、あーえる。バート、バート、バート、あーえる。」

 

と、永遠に続けられる。

少年が諦めたように、

 

「はぁー、仕方ねぇーな。お前も特別に許してやるか。で、これを俺様にくれるってか。」

 

ディセンダーは笑顔のまま、「あい!」と言った。

少年は嬉しそうに、それを受け取った。

ディセンダーを見ると、キャッキャ、と物凄く嬉しそうに騒いでいる。

少年は赤子の頭を優しく撫で、

 

「ディセンダー、強くなれよ。」

 

と、言った。

エミリィは呆れたように、

 

「赤子に何言ってんのよ、馬鹿ね。さて、そろそろ戻りましょうか、ディセンダー。お爺様が探してるかもしれないから。」

「て、お前、黙って来たのかよ。お前の方が、赤子連れて何やってんだよ。馬鹿だな。」

「ほっといてよ。」

 

と、歩き出していった。

 

〝ああ……エミリィ、危なっかしいわね。世界の守り手(ディセンダー)を落とさないでよ。〟

 

と、精霊・シルフが慌てている。

と、少年がエミリィからディセンダーを取り、抱き抱えた。

 

「ちょっと、何?」

「危なっかしいから、家まで俺が抱っこしてやるよ。ほら、行くぞ。」

「あ!待ちなさいよ。」

 

と、エミリィが後を追う。

精霊・シルフは、少年に抱き抱えられたディセンダーを見た。

いつの間にか、少年の腕の中で眠ってしまっている。

精霊・シルフは、

 

〝まぁー、エミリィよりかは、ましのようね。〟

 

と、家まで行くのであった。

家に帰ったエミリィは、長老にこっぴどく怒られるのであった。

 

 

ディセンダーが、自分の足でしっかり歩けるようになったある日。

ディセンダーは、エミリィと共に庭で遊んでいた。

すぐ傍では、精霊・ノームも腰を下ろして遊んでいる。

だが、エミリィには視えていない。

と、精霊・ノームがいつのまにか寝ている。

そしてエミリィは、ある事に気が付いた。

 

「ディセンダー?……ディセンダー、どこ!?」

 

と、探し始める。

精霊・ウンディーネ達も、探し始める。

精霊・ノームも起きた。

 

〝あれぇー?世界の守り手(ディセンダー)がいないぞぉー。どこにいったのだぁー?〟

 

精霊・シルフは怒って、精霊・ノームの頭を一度バシっと叩き、

 

〝バカ!世界の守り手(ディセンダー)がいつの間にか居なくなっちゃったのよ!あんたも早く探しなさい‼︎〟

 

と、辺りを探し始めた。

 

ディセンダーは、蝶を追って歩いていた。

と、気付けば周りは知らない所、それに誰も居ない。

 

「ねぇー?どこ?」

 

いつも、周りで飛んでいたりする者もいない。

ディセンダーは泣きだそうとした時、池が太陽の光で反射した。

ディセンダーは気になり、そっちに向かった。

池の中には、キラキラ輝く石や魚が泳いでいる。

 

「キラキラ!」

 

ディセンダーは、キラキラ光る物が好きだ。

それに、それをあげると皆喜ぶからだ。

ディセンダーが、池に手を伸ばそうとして落ちそうになった。

その瞬間、一匹の魔物がディセンダーの襟を加えた。

ディセンダーは訳が解らなくなり、泣きだそうとした。

が、誰かに抱き抱えられた。

そして、その者は腰を折り座った。

その者は魔物を見て、

 

「良く見つけてくれた。帰って良いぞ。」

 

魔物は去って行った。

ディセンダーは、声のする者を見上げていた。

彼は、その者と見つめ合った。

 

『……誰?ねぇーじゃない。』

 

ディセンダーは嬉しそうに、その者の顔をペタペタ触り始めた。

宙に浮いていた何かが、その者の横から声を掛ける。

 

「それにしても、良かった。もし、あの魔物がくわえていなかったら、池に落ちていましたね。」

 

そしてセンチュリオン・テネブラエに気が付いた。

 

『テネブがいる!』

 

ディセンダーがセンチュリオン・テネブラエを見てると、その者は怒り出した。

 

「そうだ、世界の守り手(ディセンダー)。お前、あのまま落ちていたら溺れていたぞ!大体、お前歩けるようになったからといって、動き回るな!」

 

と、叫んだ。

ディセンダーはいきなり怒鳴り声を出され、驚き、泣き出した。

 

「泣くな!いいか、今のお前はまだ何も出来ないだぞ。これだから、下界に置いておくのは嫌なんだ!」

 

ディセンダーは、怖い顔をしたその者が怖くなった。

より一層、泣き出した。

その者は怒り続ける。

センチュリオン・テネブラエはやれやれと言うように、

 

「ラタトスク様。相手は、まだ赤子ですよ。そんなに怒っても、逆に泣き叫ぶだけですよ。もっと優しくしてさし上げないと。」

『ラタ……ラタト?ラタ。』

 

センチュリオン・テネブラエは、ディセンダーの顔に尻尾を持っていき、振ったり、時にはくすぐる。

すると、ディセンダーは笑い出した。

そして精霊・ラタトスクから降り、センチュリオン・テネブラエの尻尾を掴み、最後は噛みついた。

センチュリオン・テネブラエは「痛!」と、飛び跳ねた。

その瞬間、ディセンダーはコロコロ転がった。

センチュリオン・テネブラエは、尻尾を「フーフー」とやっている。

精霊・ラタトスクは、しばらくそれを見ていた。

と、止まったディセンダーは視界の隅に、キラキラ光る水面が見えた。

ディセンダーは池に向かう。

そして精霊・ラタトスクが、また抱き抱えた。

 

「お前は何がしたいんだ、全く。池なんて、たいして面白くもないだろうに。」

 

と、ディセンダーは精霊・ラタトスクに抱き抱えられたまま、池の方に手を伸ばし、

 

「キラキラ。あっち、キラキラ。」

 

と、言った。

センチュリオン・テネブラエが池の中を覗くと、

 

「ああ、成程。ラタトスク様、どうやら世界の守り手(ディセンダー)様は、池の中の石や魚が綺麗に輝いているのが見たかったのではないでしょうか。」

 

と、精霊・ラタトスクも覗いてみた。

精霊・ラタトスクの腕の中で見ていたディセンダーは、大喜びだ。

しばらく見ていた後、センチュリオン・テネブラエの尻尾を見つめ始めた。

ディセンダーは、精霊・ラタトスクの髪を引っ張り、

 

『キラキラ、取れにゃい。テネブであちょぼ。ラタ、あっち行って貰お。』

 

などと考え、

 

「ラタ、あれ、テネブのちっぽ。」

 

精霊・ラタトスクは、複雑そうな顔をしている。

センチュリオン・テネブラエは、自分の尻尾を隠した。

だが精霊・ラタトスクは、ディセンダーを抱いたまま歩き出した。

 

『テネブのちっぽ……』

 

と、ふて腐れていると、精霊・ラタトスクがリンゴを取り、ディセンダーに持たせる。

ディセンダーは,それを色んな角度で見始める。

 

『…リンゴ?リンゴ!ねぇーにみちぇよ。』

 

精霊・ラタトスクは頭を撫でながら、

 

「それをやるから、もう泣くなよ。泣き虫だと、カッコ悪いぞ。それにしても、何でこいつは、こんなにも落ち着きが無いんだ。」

 

センチュリオン・テネブラエは、宙に浮いて付いて来ていた。

ディセンダーは、時々センチュリオン・テネブラエにリンゴを見せる。

その状態で、

 

「仕方ありませんよ。世界の守り手(ディセンダー)様にとっては、どれも初めて見る世界ですから。しかも歩けるようになって、余計気になって仕方ないのでしょう。」

「それにしても、これは危なっかしいだろう。たく、四大共もちゃんと見とけよ。」

 

歩いてると、奥の方から声が聞こえて来た。

エミリィの声だ。

 

「ディセンダー、どこにいるのー。ディセンダー。」

 

と、ディセンダーは身を乗り出し、

 

「ねぇーの声聞こえる。ねぇーがあっちにいる。ラタ、あっち、あっち。」

 

精霊・ラタトスクは仕方なく、声のする方へ向かった。

ディセンダーはエミリィを見ると、

 

「ねぇー、僕こっち。ねぇー。」

 

と、降りようとした。

精霊・ラタトスクは、ディセンダーを降ろした。

ディセンダーは、トテトテと歩いて行った。

エミリィは嬉し泣きをしていた。

ディセンダーを抱きしめ、

 

「良かった、ディセンダー……見つかって。本当に良かった。今度からは、一人でどっか行ってはダメよ。」

 

ディセンダーはキョトンとしていたが、

 

「ラタとテネブと一緒らった。ねぇー、これラタがくれた。」

 

と、精霊・ラタトスクの方を指さした。

エミリィはディセンダーの指さした方を見た。

そこには、金髪の少年が立っていた。

ディセンダーは、精霊・ラタトスクから貰ったリンゴを四大にも、見せていた。

エミリィは、

 

「貴方が、この子を見つけて下さったんですね。ありがとうございます。」

 

少年は少し近付いて来て、エミリィを一度見て、エミリィには見えない彼ら、四大に向けて言った。

 

「こいつから、目を離すな。危なっかしくて仕方がない。これからは、気を付けることだな。」

 

そう言って、精霊・ラタトスクは去って行った。

エルフの少女は、返事をする暇もなかった。

 

〝全く、言われなくても分かってるわよ!今回はたまたまよ。〟

〝ですが、ラタトスクのいう事も事実です。我々は、あの子から目を離してしまったのですから。〟

〝これから、気を付けていけば良い。〟

〝それにしても、あのラタトスクが、ここに来るなんて珍しいぞぉー。〟

 

精霊・ノームの一言に、彼らは黙り込んだ。

そうしてるうちに、エミリィはディセンダーの手を引いて帰って行った。

帰り途中、エミリィは疑問に思った事をディセンダーに聞いた。

 

「そう言えば、あそこにいたのは彼一人だったけど、もう一人の人は先に帰っていてしまったのかしら。でもこの村の人ではない方だったから……旅人?」

 

後半は、自分に対する疑問になっていた。

ディセンダーは、エミリィを見上げながら、

 

「ラタは抱っこしてきゅれた。テネブはワンネコ。」

「え!?ワンエコ!?」

 

エミリィは首を傾げ、

 

『子供の見る事はよく分からないなぁー。私も、良くそんな事あったし。ここは……』

 

エミリィは笑顔で、ディセンダーに言う。

 

「じゃあ、また会えたら教えてね。」

 

ディセンダーは笑顔で「あい。」と言った。

 

 

それから数年、言葉もはっきりするようになったディセンダー。

色々と、家の手伝いも良くするようになっていた。

彼は今日も、手伝いが一通り終え、村を探検していた。

彼は村の人に会うたびに、

 

「おばさん、こんにちは。」

「うん?ああ、ディセンダー!こんにちは。散歩かい?」

「うん。あ!それ、僕も手伝う。」

 

と、言っておばさんの手伝いをする。

すべてが終わると、おばさんは嬉しそうに言った。

 

「ありがとう、ディセンダー。おかげで、早く終わったわ。はい、これあげるわ。」

「ありがとうございます。」

 

と、グミを貰った。

彼は広場に向かい、歩き出した。

と、広場で年の近い子達がいたので、声を掛けた。

 

「皆、何してるの?僕も一緒に遊んでいい?」

 

子供達は僕を見て、

 

「げ!?ディセンダー!お前とは遊びたくねーよ。」

「どうして?」

 

子供達は周りを見渡して、

 

「だって、お前と遊んでると、いきなりおかしな事が起きたり、バルバトスがやって来るだもん。」

 

ディセンダーは、ちらっと後ろを見た。

皆には視えていない精霊達を。

 

『彼等の事は、内緒にしなきゃいけないから言えないし……。確かに、皆と遊んでてシルフが怒って突風を起こしたりしてるけど……それが原因か。バトに付いては、きっと皆誤解してるんだろうな。バトは、ああ見えて優しいんだけどな……』

 

対して精霊達は、いや特に精霊・シルフが怒っている。

 

〝何よ、その言い方!大体、アンタ達が幼い世界の守り手(ディセンダー)にむっちゃさせるのがいけないんでしょ!この前だって、大きな木に登らせて落とそうとしたじゃない!〟

〝シルフ、落ち着きなさい。下界人に、そんな怒っても仕方がありません。それに、あれは貴女の起こした突風の方が、世界の守り手(ディセンダー)を危険に合わせましたよ。〟

〝う⁈それはそうだけど……〟

〝む、あれは……〟

 

ディセンダーも、精霊・イフリートの言った方を見る。

と、バルバトスと同い年くらいで、この辺ではガキ大将のような者が来た。

しかし、彼の方が強い。

なので、彼がいる時はディセンダーに突っかからない。

が、その彼が居ないのを見て、ディセンダーに声を掛けた。

その顔は、蔑みや苛めっ子の顔だ。

 

「お、貰われっ子ディセンダーじゃないか!今日は、バルバトスやエミリィと一緒じゃないのか。」

 

ディセンダーは笑顔で、

 

「リィ姉は爺様と一緒にいるよ。バトは……多分、森の中?」

 

と、真面目に答えている。

それが気に入らないのか、言い出した相手はイラついた顔をしている。

横から小さい子が、

 

「ねぇー、兄ちゃん。貰われっ子って、何?」

 

兄にくっ付いていた少年が、聞いていた。

ディセンダーや、その場にいた者は見ていた。

兄は、答えるのに戸惑っていた。

と、ガキ大将は、

 

「俺が教えてやるよ。こいつは余所者で、親に捨てられて村長に引き取られたんだよ。」

 

笑いながら、言った。

少年は、

 

「それって、家族じゃないってことだよね?何で、村長と一緒にいるの?」

 

と、ディセンダーを見て言った。

ディセンダーは思いもよらない事を聞かれ、

 

「え?それはえっと……、何でだろう?」

 

と、考え込み出す。

精霊達も、これは何とも言えない。

この事はよく言われることだが、毎回決まった事をガキ大将は言う。

そして今回も、ガキ大将は何かを思いついたかのように、

 

「そうだよなぁー。余所者の上に、家族でもない村長の家にやっかいになっていて、本当おかしいよなぁ。しかも周りの大人達は、ディセンダーにはあんまし怒らねぇーし。そうだよなぁー、ディセンダー。お前、なんかやれよ。」

「何を?」

「決まってんだろ。大人を困らせる事だよ。」

「だから、何を?」

「……うっせい‼」

 

と怒鳴って、僕を突き飛ばした。

ディセンダーは困る。

 

『あー、まただ。どうすればいいんだろう。』

 

と、同じ事の繰り返しになる。

精霊・シルフが起ころうとした所を、精霊・イフリートに止められる。

 

〝ちょ!?何、止めてんのよ。〟

〝駄目だ。ここでは被害が大きくなる。どうせまた、突風を起こそうとするのだろう。〟

〝でも、世界の守り手(ディセンダー)が!〟

 

ガキ大将が、ディセンダーを殴ろうとした。

そこに、

 

「おい、貴様ら何やってんだ。」

 

と、ガキ大将は声の方を見る。

そこには、バルバトスが立っていた。

ガキ大将は逃げ出した。

他の者達も、すぐに追っていった。

バルバトスは、ディセンダーを見下ろした。

ディセンダーは立ち上がり、

 

「バト、珍しいね。リィ姉なら家だけど、呼んでくる?」

 

バルバトスは腕を組み、

 

「お前は、そんなんだから毎回苛められるんだぞ。少しは、自分で何とかしろ!」

 

彼の顔はキョトンとして、

 

「え?でも別に、たいした怪我をしたわけじゃないし。だから、バトもそんなに怒らないで。」

 

バルバトスはため息をついた。

そしてディセンダーと共に、家に向かう。

エミリィと共に、家のすぐ近くでおしゃべりをしたりする。

ディセンダーは、バルバトスから聞く、外の話が大好きだった。

それと同時に、毎回同じ事を言う。

 

「僕、絶対バトみたいに強くなる!」

「期待せずに、待っているぞ。ククク。」

 

エミリィはバルバトスを一発叩いてから、

 

「強くなることは良いけど、無茶しちゃダメよ!この前も、擦り傷が多かったでしょ。」

「……そこは気を付けます。」

 

と、素直に返事をする。

四大は、これをただいつも見てるだけであった。

 

 

家のベランダで、ディセンダーはエミリィの買い物を待っていた。

そして、いつものように、どこからか聞こえてくる話をしていた。

四大は屋根の上で、話あっている。

 

「それでね、今日はバトとリィ姉と、その会話でお話ししたんだ。」

世界の守り手(ディセンダー)は、二人の事が好きなのですね。〟

「うん、大好きだよ。でも爺様やこの村の皆も、好きだよ。」

 

と、会話をしている。

ディセンダーは、相手が誰なのか知らない。

なので今日は、聞いてみる事にしてみた。

 

「ねぇー、聞いたことなかったけど……あなたは誰?」

〝聞かれた事なかったので、言い忘れていました。私は、世界樹です。〟

「世界樹って、あの世界樹?」

〝ええ、そうですよ。〟

「へぇー、……あ!リィ姉が帰って来た。またね、世界樹。」

〝はい。また、お話ししましょうね。〟

 

ディセンダーはベランダから、部屋へ入った。

と、爺様に会った。

 

「あ、爺様。リィ姉が帰って来たよ。」

「おお、そうか。」

 

と、長老はディセンダーの頭を撫でる。

ディセンダーは、さっきの事を長老に話した。

 

「爺様。最近ね、お話してるの誰か分かったよ。世界樹だって。」

 

長老は、ディセンダーの頭を撫でる手が止まった。

 

『あれ?もしかして言っちゃダメだったのかな。でも精霊の存在は話しては、ダメって言っていたど、世界樹はそう言ってない……よね?』

 

と、長老は腰をかがめ、ディセンダーと目線を合わせた。

 

「ディセンダー、この事をワシ以外に誰かに言ったかい?」

「言ってないよ。」

「じゃあ、この事は内緒にしておきなさい。いいかね?」

「解った。約束する。」

「良い子じゃ。」

 

と言って、また頭を撫でる。

玄関から、エミリィの声が聞こえた。

 

「ただいまー。お爺様?ディセンダー?」

 

ディセンダーは玄関へ駆けて行った。

 

 

ディセンダーは森の中で、世界樹と話をしていた。

四大は席をはずしている。

と、森の中から誰か来た。

ディセンダーが振り返ると、そこにはバルバトスが立っていた。

 

「バト!?どうしたの?」

 

バルバトスは辺りを見渡した。

ディセンダー以外、誰も見当たらない。

 

「ディセンダー、いま誰と話していた?」

「えっと、……ひ、独り言だよ。」

 

バルバトスはディセンダーに近付き、胸ぐらを掴み上げる。

 

「俺様に嘘をつく気か。まさか貴様、誰かに、この村の事を教えているのではないな。」

「……違うよ。僕は、ただ世界樹と話していただけだよ。」

 

バルバトスはディセンダーを降ろした。

 

「世界樹、だって!?何を言ってる?お前は、神子にでもなったというのか?」

 

ディセンダーは彼を見上げ、

 

「神子って、何?」

「神子と言うのは、ゆういつ世界樹と対話できる存在だ。神子自身も、そう多くいないそうだが……」

「そうなんだ。だから爺様も、内緒って言ったのかな。バト、これ内緒にしておいて。お願い。」

「ああ、解った。」

 

バルバトスは眉を寄せ、

 

『神子になれば、災厄王都に連れていかれる可能性がある。神子自体、今では貴重なものだからな。貴族や王が欲しくてたまらないだろう。だが本来、神子は王の傍にいる事が義務のようなものだ……』

 

ディセンダーを起こし、頭を撫でてやってからこの場を離れた。

 

 

ディセンダーはバルバトスが居なくなってから、精霊達の所に向かった。

そこには、いつもの精霊達の他に、見た事のない精霊がいる。

 

『精霊……だよな。邪魔しちゃった?』

 

精霊・ウンディーネが、ディセンダーに振り向き、

 

世界の守り手(ディセンダー)、どうしました?こちらに、いらっしゃいな。」

 

ディセンダーは、精霊・ウンディーネ達の所まで歩いて行った。

彼は、宙に浮いていた精霊を見る。

その精霊はディセンダーを見て、

 

「まさか……、何で……こんな事が⁈」

 

ディセンダーは何だか解らなかった。

そして精霊・シルフが、

 

「それでオリジン、何のようなのよ。」

 

気持ちを切り替えた精霊・オリジンは、冷たい声で言った。

 

世界の守り手(ディセンダー)を直に見て決めた。世界の守り手(ディセンダー)を、すぐにでも、この下界から離すべきだ。」

「しかし、世界樹はそれを望んでは無いのだろう。我々で、勝手にそんな事をしてはまずいだろう。」

『僕の話?何で?下界?訳が解らない。』

 

ディセンダーは首をかしげる。

と、精霊・オリジンは、

 

「大体、何故世界樹は世界の守り手(ディセンダー)を下界に落としたのだ。しかも、こんなでは使い物にならんだろう。」

「あんたねぇ、確かに世界の守り手(ディセンダー)は、まだ戦った事はないけど、優しい子なのよ。」

「優しいだけでは、使い物にならん。大体まだ戦っていないとは、どういう事だ。鍛えさせろ。」

『何のお話ですか!?僕、付いて行けないよ……。ああ、もしかしてバトが言っていた……神子の事?』

 

と、ディセンダーは頭をフル回転していたが、フリーズしそうだ。

と、呑気な声で精霊・ノームが、

 

「……皆、平気で話してるけどぉー。世界の守り手(ディセンダー)は、何も知らないのにいいのかなぁー。と言っても、世界の守り手(ディセンダー)はすでに、混乱してるけどねぇー。」

 

そう言った精霊・ノームの言った通り、ディセンダーを見る。

頭が混乱しすぎて、おかしな感じになっている。

それ以前に、

 

「……世界の守り手(ディセンダー)の存在を忘れて言い過ぎたが、どうするのだ、オリジン。」

「私に振るか、イフリート。こうなっては仕方ない。聖域に連れて帰ろう。」

「いやいや。それ、ダメでしょ。大体、こうなったのはアンタのせいでしょ。」

「知らん。世界の守り手(ディセンダー)、今から我々と共に来い。」

 

ディセンダーは、考え込んでいたものを一回すべて捨てて、

 

「どこへ、行くの?」

「世界樹の所だ。つまり、この世界の中心だ。」

「夕方までには帰らないと、リィ姉に怒られるよ。大丈夫?」

「ここには二度と戻らないから、安心しろ。」

 

ディセンダーには、?マークが多く浮かび出て来た。

精霊・ウンディーネが優しく言った。

 

「この村を出て、世界樹の所に行くのですよ。ここを出れば、ここには戻りません。」

 

ディセンダーはしばらく、精霊・ウンディーネと見つめ合って、

 

『……帰れない=リィ姉に怒られる=駄目。ここに帰れない=リィ姉に会えない=駄目。』

 

ディセンダーは精霊・ウンディーネを見たまま、泣き出した。

精霊・ウンディーネに抱き付きながら、

 

「ヤダー!うわーん‼︎」

 

精霊・ウンディーネは慌てて、

 

「大丈夫です、世界の守り手(ディセンダー)!今のは、なしです‼なし‼」

 

精霊・シルフも慌てて、

 

「そうよ。ここにいましょう、世界の守り手(ディセンダー)!」

 

ディセンダーは泣き止み、

 

「ヒック、本当?リィ姉会える?ヒック。」

 

精霊・ウンディーネと精霊・シルフは頷いた。

ディセンダーは涙を拭き、笑顔に戻った。

 

「わーい、良かった!」

 

精霊・オリジンは頭を抱えた。

 

「あれで、世界を救えるのか……」

「今は、無理だろうな。だが、あの子は優しく、良い子だ。世界樹とも、仲が良いみたいだしな。」

「……世界が救えないなら、世界の守り手(ディセンダー)の意味がないだろう。」

「それまでに、何とかすれば良いだろう。今は焦らず、ゆっくりやっていけば良いのではないか。」

 

と、ディセンダーが精霊・オリジンを見上げ、

 

「僕、そろそろ帰ります。えっと、オリジンも、僕の友達になってくれるの?」

「友達?……もっと言う事は、お前達は何をやってるんだ!」

世界の守り手(ディセンダー)のお願い事を、無下には出来ません!」

世界の守り手(ディセンダー)の、あの嬉しそうな顔には勝てなかったのよ。」

「……、監視役が何をやってるんだか。なぜ、友が欲しい。」

 

ディセンダーはちょっと考え、

 

「……普通の友達が、中々出来ないのもあるけど……一番の理由は、特にないかな。」

 

と、上目目線で言って来る。

精霊・オリジンは、ある事を思い出していた。

この世界ではないある者(ディセンダー)を。

 

〝ラタトスク、オリジン、俺の友になってくれ。理由?そんなもん、無いに決まってんだろ!ただその方が、断然面白いからな。と言う訳で、よろしくな‼︎〟

 

精霊・オリジンはため息をついて、

 

「良いだろう。友にはなってやる。しかし、条件がある。お前がしっかり、世界の守り手(ディセンダー)になる事だ。」

「解った?よろしくね。」

 

その動作は、あの別の世界の世界の守り手(ディセンダー)のようだった。

髪も、目も、姿も同じ、あの世界の守り手(ディセンダー)に……

 

 

今日は日差しが強い。

ディセンダーは池に行こうと思って、エミリィに話しかけた。

 

「リィ姉。僕、池に遊びに行って来るね。」

「ディセンダー、今日は日差しが強いから、これを被って行きなさい。」

 

と、彼の頭に帽子を被らせた。

彼は笑顔で、出て行った。

 

「ディセンダー、遅くならないようにね。」

「はーい。じゃあ、行って来ます。」

 

池に着くと、ディセンダーは池の中を見ていた。

四大は誰かに呼ばれているらしく、今は傍にいない。

と、いきなり突風が吹いた。

ディセンダーの被っていた帽子が風に飛ばされ、池に落ちた。

ディセンダーが届くかどうか、危うい。

 

『うー。後、もうちょっと。……、もう少し。』

 

と、頑張って、手を伸ばしていた。

が、ガタットと手を滑らしてしまった。

落ちる寸前で、誰かが服の襟を掴んだ。

 

「たく、相変わらず危なっかしい奴だ。」

 

ディセンダーの襟を掴んだまま、座らせた。

ディセンダーは、金髪の少年を見上げていた。

 

『あれ、この人?……どこかで会ってる?うーん、思い出せない。何かと一緒だったような。気のせいかな。あ、いけない。お礼を言ってなかった。』

 

ディセンダーは、金髪の少年に笑顔で言った。

 

「あ!助けて下さって、ありがとうございます。僕は、ディセンダーって言います。」

 

金髪の少年は、腕を組んで胸を張った。

 

「別にかまわんが、お前は何をやっていたんだ。」

 

ディセンダーは頬をかきながら、池を見て、

 

「リィ姉が、今日は日差しが強いから、帽子を被らせてくれたんですけど……、風にあおられて池に落としてしまって。取ろうとして、落ちそうになった所を助けて貰いました。」

 

金髪の少年は、呆れたようにため息をついた後、池に浮かぶ帽子を取り上げる。

水を絞ってから、それをディセンダーに放り投げる。

ディセンダーは嬉しそうに、また笑顔で金髪の少年に、

 

「ありがとうございます。」

 

と、言った。

金髪の少年は、頭をかきながら照れた。

ディセンダーは苦笑して、

 

「僕……覚えてないけど、今よりずっと小さい時、この池で今みたいに誰かに助けられたような気がするんです。その時に見たこの池の中が、綺麗なのが忘れられなくて、よくここに来るんです。」

 

と、嬉しそうに言った。

金髪の少年は顔を赤くして、ディセンダーの頭を撫で、

 

「と、とりあえず、気を付けろよ。この池はかなり深いからな。お前でも溺れてしまうからな。お、俺様は忙しいからもう行くが、本当に気を付けるんだぞ。」

 

ディセンダーは笑顔で「はい。」と言って、金髪の少年が居なくなるまで、彼の後ろ姿を見ていた。

 

『あの人、優しい人だったな。でも、何で僕がここが好きなこと……あの人に教えたんだろう?』

 

と思っていると、四大がやって来た。

 

「あれ?世界の守り手(ディセンダー)、またここに来てたの?本当に好きね。」

「僕は、ここ大好きだから。」

 

笑顔でそう言った。

夕方まで、ディセンダーはこの池の所にいた。

ディセンダーは、夕日に反射する池の中に、昼とは違う所も好きだった。

だが今回は、池の中に自分がくっきり映っていた。

 

『……僕?……ううん、違う。あれは僕じゃない?』

 

ディセンダーは池の中に手を伸ばしながら、

 

「君は……誰?」

 

精霊・シルフがそれに気付き、

 

世界の守り手(ディセンダー)、どうしたの?」

 

精霊・シルフが近づこうとすると、彼が落ちた。

 

世界の守り手(ディセンダー)!?」

 

精霊・ウンディーネが、すかさず池の中に飛び込み、彼をすくい上げた。

ディセンダーから水を吐き出せた。

しかし、気を失ったままだ。

しかも、熱が出ている。

四大は急いで、家に向かった。

玄関の前に彼を置き、玄関を叩いた。

すぐにエミリィが出て来て、ディセンダーを見る。

 

「お爺様!早く来て。ディセンダーが!」

 

その声を聴き、長老も走って来た。

ディセンダーを見るや、急いで部屋に運んだ。

彼の熱は、三日三晩寝込むものだった。

目を覚ました彼は、どこか辛そうだった。

 

『……僕は……』

 

ディセンダーは、エミリィと長老の前では笑顔でいた。

そしてエミリィからのお使いで、広場の方に来ていた。

 

「おや、ディセンダー。良くなったみたいだね。エミリィが「ディセンダーが高熱を出した!」と、言ってたもんだから、心配してたんだよ。」

 

ディセンダーは笑顔で、

 

「もうすっかり、良くなりました。僕、リィ姉より、体は丈夫だと思ってたんだけどな。」

「まぁー、エミリィは元々丈夫な方じゃないからね。」

「……それもそうだ。あ、おばさん。リンゴ三つと小麦粉、それとチキン下さい。」

「はいよ。おまけしておくね。」

「ありがとう、おばさん。」

 

ディセンダーは笑顔でお礼を言って、帰って行った。

家の少し手前で、四大が飛んで来た。

 

世界の守り手(ディセンダー)‼良かった、元気になったのね。」

「安心しました。我々は、どうしようかと思いましたよ。」

 

ディセンダーは、心配する四大に笑顔を向けようとして、涙が出た。

 

「ム!?世界の守り手(ディセンダー)、どうした。やはりまだ、本調子ではないのか。」

 

ディセンダーは首を振って、

 

「ごめん。違うんだ。ただ僕は、僕は君達の望む…世界の守り手(ディセンダー)にはなれないかもしれない。」

 

四大は息を飲んだ。

ディセンダー記憶を持っていないはずで、

 

世界の守り手(ディセンダー)、それはどういう意味で言っているのですか?」

 

精霊・ウンディーネは優しく聞いた。

ディセンダーは俯いたまま、

 

「僕は、世界樹より生まれし者。世界を救うために生み出された、世界樹の剣であり楯の存在。そして、僕を殺す為に監視してるんでしょ。だから……傍にいるんでしょ。」

 

四大は、黙り込んでしまった。

ディセンダーはそれを見て、家まで走って行った。

四大は窓から、ディセンダーを見ていた。

 

〝夢で、何かにうなされているようね。……涙まで流して。〟

〝そうだな。しかしこの事を、世界樹や他の奴らにも言わねばならないな。〟

〝そうね、そうよね。……ごめんなさい、世界の守り手(ディセンダー)。〟

 

それからしばらくディセンダーは、別の世界の記憶をビジョンで見続けていた。

 

『僕は……一体、誰なんだろう。』

 

それをずっと考え続けていた。

ディセンダーは池に向かっていた。

四大は無言で、付いて行った。

ディセンダーは、池にうつる自分の顔を悲しそうにみていた。

彼は、金髪の少年に気付いた。

 

『あれは、あの時の……。そっか、君も精霊だったのか……。だからかな、知ってるような気がしたのは。名前は確か……』

 

「……えっと〝精霊・ラタトスク〟であってる?」

 

精霊・ラタトスクは不機嫌そうな顔をし、

 

「だったらなんだ、世界の守り手(ディセンダー)。」

 

ディセンダーは、少し困ったような顔をした。

でも、すぐに笑顔を作った。

 

『うわー。なんか、すごい不機嫌。僕、何かしたかな。』

 

ディセンダーは、彼を見つめ、

 

「あ、えっと、その、以前はありがとう。前にこの池に会った時とか。……あれは、僕がディセンダー(世界の守り手)だったからでしょ。僕はあまり、別の世界について、はっきり思い出せた訳ではないけれど、君は僕のこと知ってるんだよね?」

「お前は、どのくらいこの世界の事を知っている。」

 

と、いつぞやの時と同じ、頬をかきながら、

 

「えっと、僕がどういう存在かと言う事と、僕がもし世界樹を裏切ったら、どうなるかというのと、世界の理の一部についてですね。後、精霊についてちょっとだけ。」

 

ディセンダーは気が付いていなかったが、時々敬語では無くなっているのに、四大は気が付いていた。

おそらく別の世界の世界の守り手(ディセンダー)の影響だろう。

 

「で、お前はそれで、どうすると言うのだ。」

「僕は、別にどうもしません。ただできるなら、このままここに居たいだけ。時間が許すまで。」

「クッハハハ、これはとんだ甘ちゃんだ!記憶が無いならまだしも、記憶が一部戻ってこれとは、ククク。はぁー、良いこと教えてやるぜ、世界の守り手(ディセンダー)。俺様は、貴様を監視し続けてやる。貴様がもし、世界樹を裏切るその時は、この俺様が貴様を殺してやろう。」

 

その言葉に、精霊・ウンディーネが怒り出した。

 

「ラタトスク‼貴方は何を言い出すのですか。この子が、世界樹を裏切るはずがないでしょう。」

「解らないぜ。大体、世界の守り手(ディセンダー)を下界人に関わらせて、良い事があったか?どれも、世界的には良い事はなかった。そうだろう。」

「そ、それは確かにそうですが……しかし!」

 

と、精霊・ウンディーネが反論を続ける前に、世界の守り手≪ディセンダー≫が、

 

「解った。じゃあ、その時は君達に任せるよ。僕を殺せるのは、君達や世界樹だもんね。」

 

ディセンダーは困り顔で、そう言った。

精霊・ラタトスクは背を向けた。

そして去って行った。

 

世界の守り手(ディセンダー)、何故あんな事を言ったのです!あれでは、貴方は立場が悪くなるのですよ。」

「解ってる。でも、さっき言ったように、僕を殺せるのは世界樹と君達、精霊でしょ。君達も、これからは自分の使命を全うすればいいよ。僕がもし危ないと判断したら、殺して構わないから。僕は、君達を恨んだりしない。……安心して。」

 

精霊・シルフはディセンダーの目の前にいき、指を指した。

 

「バッカじゃないの!私達は、アンタを殺す事なんて出来ないわよ。確かに、私達はアンタを監視してたわ。それは認める。でも、アンタはもう……」

 

途中から精霊・シルフは目に涙を溜め、黙ってしまった。

代わりに、精霊・ウンディーネが、

 

世界の守り手(ディセンダー)、我々にとって貴方は確かに監視対象です。今回のようなケースは、我々にとっても初めての事なのです。だからこそ、我々は貴方を監視する事にしたのです。ですが、貴方はもう我々にとって、とても大切な存在なのです。我々は貴方を失いたくないのですよ。それこそ、今は亡き世界の守り手(ディセンダー)のように……」

 

ディセンダーは涙を流し、笑顔で言った。

 

「じゃあ僕は、君達にそんな事をさせないように気を付けるね。だから、それまで一緒にいてくれる?」

 

四大は声をそろえて、

 

「もちろんよ。」「勿論です。」「勿論だ。」「もちろんだぞぉー。」

 

しかしディセンダーは、毎晩徐々に別の世界の事などをビジョンで見続けた。

 

 

ある日、ディセンダーは空を見上げていた。

後ろからエミリィが、

 

「ディセンダー、お昼よ。いらっしゃい。」

 

ディセンダーは立ち上げり、

 

「あ、うん。分かった。」

 

と、エミリィと共に居間に向かった。

お昼を食べながら、ディセンダー思っていた事を話した。

 

「あのね、爺様……それにリィ姉。僕、実は二人にお願いしたい事があるんだ。」

「……それにしても、ディセンダーがお願いするなんて初めてじゃの。何じゃね。」

「あのね、僕……この家を出ようと思うんだ。出来れば早く、ここを出たいんです。」

「何で、ディセンダー!?ここが嫌いになったの。」

 

と、青い顔をしている。

長老も、息を飲んでいる。

 

「ち、違うよ。僕は爺様も、リィ姉も、大好きだよ。ただ僕はいつまでも、ここには居られないから……」

 

ディセンダーは手を握りしめる。

 

『僕はいずれ、この村から居なくなるかもしれない。そうなっても、二人が悲しまないように……』

 

エミリィが反論しようとして、長老に止められた。

長老は優しい声だが、厳しい感じもしている声で、

 

「何故、この家を出たいのか、理由を話してはくれなんだか。」

 

ディセンダーは首を振った。

長老は、

 

「そうか……だが、駄目だ。」

 

ディセンダーが口を開く前に、

 

「今はまだ、駄目だ。お前が、六歳になるまでは待ちなさい。」

 

エミリィは飛び出していった。

ディセンダーは追いかける事が出来なかった。

ディセンダーは、居間を出る時長老に小さく、

 

「ありがとう、爺様。」

 

と、言って出て行った。

そして六歳になった彼は、この家を出る。

 

「ディセンダー、お前さんがこれから住む家から、ここは近いからいつでも遊びに来なさい。」

「うん、。爺様、ありがとう。リィ姉も、ありがとう。」

 

エミリィはディセンダーを抱きしめ、

 

「ディセンダーが、心配だから様子を見にちょくちょく行くからね。」

 

ディセンダーは頷いて、これから自分の家になる場所へ向かった。

家に着き、

 

「今日からここが、僕に家か……」

世界の守り手(ディセンダー)が、暮らすには十分なくらいの大きさね。」

「長老も、頑張ったかいがありましたね。ここ数年で、ここまで整えてくれましたから。」

「それにしても、あの長老が良く許してくれたわね。」

 

ディセンダーは荷物を整理しながら、小さく「そうだね。」と言った。

それから、この家での生活が始まった。

エミリィが、毎日様子を見にやって来てくれる。

無論長老も、だ。

 

この日、ディセンダーは長老の家に来ていた。

家の裏で見つけた薬草を渡す為だ。

長老の家の前には、村人が来ていた。

ディセンダーは声を掛けようとしたが、

 

「村長!ディセンダーが、この村を出るとは本当ですか!?」

「誰が、そんなデマを流したのだ。あの子はこの家を出て、自立をしているだけだ。」

「本当ですか!?良かった。俺達はてっきり、この村を捨てて行くのとばかり。」

「その時は、その時だ。あの子は優しい子だ。この村を出る時は、皆に挨拶するだろう。」

「そうですね。ああ、本当良かった。あの子は私達の子のような者だから、心配で、心配で。」

 

と、みんな安心して帰って行った。

 

『……僕は、この村が大好きだな。でも皆、僕の本当の事を知れば……』

 

と、考えていた所で、長老が声を掛けて来た。

 

「おお、ディセンダー、来ておったのか。こっちへおいで。」

 

ディセンダーは近付いて行った。

手に持っていた薬草を、長老に渡した。

 

「じ……長老、これ家の裏にあったんです。エミリィは居ないみたいですね。僕、これで失礼します。」

 

と、お辞儀して、帰った。

帰り道、ディセンダーは視線を落としていた。

 

『爺様、悲しそうな顔していたな……。でも僕は、彼等の家族じゃないから。世界の守り手(ディセンダー)、これは僕であって、僕じゃない。では、僕は誰だろう。』

 

家に帰り、自炊を覚えたディセンダー。

ちなみに四大は(ノーム以外)、見ているだけである。

そんなある日、四大は家にあった食材で、料理をしようとしていた。

この食材は、先程村人が置いていった物である。

 

「では、世界の守り手(ディセンダー)が帰って来る前に、我々で食事と言う物を作ってしまいましょう。」

「うむ。ではまずは、ウンディーネが食材を洗い、シルフが食材を切り、我が焼く。」

 

と、精霊・ウンディーネが水を操り、食材を洗い流す。

続いて、精霊・シルフが頑張って小さい風を作り、切る。

かなり原型を留めていないが……

そしてディセンダーが家に帰り、戸を開けた瞬間爆発した。

精霊・イフリートが、火を使ったのが原因ではある。

が、ディセンダーは台所を見た。

かなり爆破されている。

ディセンダーが何か言おうとして、エミリィが来た。

 

「ディセンダー、これさっき貰ったんだけど……って、何これ!?」

 

ディセンダーは慌てて、

 

「これは四大……じゃなかった。えっと、料理作ろうとして間違えちゃったみたい……です。」

 

エミリィは、唖然としている。

 

「料理しようとして、爆破!?どうしたらそうなるのよ!じゃないわ、怪我はない?」

「怪我はありません……よ。うん。」

「そう、それは良かったわ。……さて、ディセンダー。そこに正座なさい!」

「はい……」

 

と、エミリィの説教が始まったのである。

エミリィは家に戻って、お弁当を作ってくると出て行った。

ディセンダーは、四大に理由を聞いた。

 

「成程、気持ちは嬉しいよ。でも、今後は料理禁止とします。いいね。」

「「解りました。」」「わかったのだ……」「わかったのだ〜。」

 

四大は、声をそろえて言ったのであった。

その後、村の人達により台所は無事治りました。

 

ディセンダーは長老の家を出てからは、村の人の手伝いをするのが日課となっていた。

無論、長老の家手伝いもしている。

ディセンダーは、手伝いをするのは好きだった。

ふと、今回は村の外れまで四大と散歩をしていた。

ディセンダーは散歩中に、誰かの声が聞こえたような気がした。

そこに行ってみると、一人の帝国騎士が倒れていた。

 

「ウンディーネとノームは、その人を見ていて。」

 

と、彼は急いで長老を呼びに行く。

どこに運ぶかで悩んでいた村人に、ディセンダーは声を上げた。

 

「僕の家に、お願いします。そうすれば、長老の家にも近いし。」

 

ディセンダーには、想いがあった。

 

『それに外の事について、何か知れるかもしれないし……』

 

だが、村人は反対した。

 

「それは駄目だ、ディセンダー。もし何かあったら、どうするのだ。相手は大人だ。子供のお前が、どうこうする事は出来ないのだぞ。」

「そうよ、そんな危険な事させられないわ。」

『あー、どうしよう。うーん、四大の事を言うか……。いや、ダメだよな。』

 

と、思っていたが、精霊・ウンディーネと精霊・イフリートが姿を現した。

ディセンダーは目を見開いた。

彼が声を上げようとした時、シルフが平然とした声で言った。

 

〝大丈夫よ、世界の守り手(ディセンダー)。あの二人に、任せておきなさい。それと、貴方の思った事……こっちに筒抜けだったわよ。〟

『うそ!?何で?!は!そういえば、前の世界の世界の守り手(ディセンダー)で、そういう人いた‼それかぁー、コントロール出来ると良いな……』

〝まぁー、頑張んなさい。〟

 

と、精霊・ウンディーネ達が口を開く。

ディセンダーは内心、不安だった。

 

「私は、水の精霊・ウンディーネ。こっちは、火の精霊・イフリートです。我々は今、この村の世界樹の御魂について調べています。」

「その協力者として、そこの少年を借りている。」

 

長老は、精霊・ウンディーネと精霊・イフリートを見上げ、

 

「いきなりですね。じゃが、ディセンダーはこの事を何故、黙っておったのです?」

 

精霊・イフリートは腕を組んだまま、

 

「少年には、我々の事は口止めしていた。言えば、この村を潰すと。」

「成程。では何故、いま出て来たのですか。」

「何、興味本心だ。その騎士から、それとなく外の事を聞こうと思ってな。その間は、この少年を守ってやろう。」

「……解りました。皆、ディセンダーの家に、その方を運ぶぞ。」

 

村人は仕方なく、ディセンダーの家に騎士を運んだ。

ディセンダーは、騎士の手当を手伝った。

村人は用心するように、と言って出て行った。

長老も、

 

「精霊がいても、危険だから気を付けるのだぞ。」

「はい、長老。」

 

長老が出て行き、この家にはディセンダーと騎士、精霊だけになった。

ディセンダーは、騎士の食べる料理を作りながら、

 

「それにしても……、あれでよく通用したね。」

「まぁー……世界樹の御魂は、今じゃ珍しいものだからね。精霊が言えば、結構説得力はあるわよ。」

「そ、そうだよね。」

 

ディセンダーは苦笑いする。

 

『世界樹の御魂……世界樹の加護……つまり結界のような物だったよな。』

 

と、スープが出来た。

ディセンダーはしばらく、騎士を見ていた。

 

『そういえば僕、村の人以外の人見るの初めてだよな。』

 

じっと見ていたら、騎士が目が覚めた。

僕は、騎士に声を掛けた。

 

「あ、目が覚めたんですね。良かった、気分はどうですか?」

 

騎士は、ディセンダーへ顔を向けた。

 

『村の人とは、雰囲気が違うなぁ……。それに騎士様だから、強いんだろうなぁ。バトも強いけど、この人はどうなんだろう。』

 

そして騎士が、声を発した。

 

「ここはどこだ?」

『不審に思われないようにしないと。でも、本当に良かった。意識戻って。確かに四大がいるって言っても、僕自身はまだまだ弱いし。』

 

ディセンダーは笑顔で、

 

「ここは、僕の家ですよ。貴方は、村の外れで倒れていたんです。」

 

と、言いながら水を渡した。

騎士は小さく「そうか」と言い、体を起こす。

それを受け取り、一口飲んでから、しばらくコップの中の水を眺めていた。

 

『……大丈夫かな。僕、まずいこと言った?』

 

そう思ってたら、騎士が立ち上がった。

ディセンダーは慌てて、

 

「あわわ、まだ立っちゃダメですよ!傷がまだ完全に、治ってないんですから。」

 

騎士は傷を押えながら、

 

「助けてくれたことには、感謝している。だが私は、すぐにここを離れなければ……」

『僕だったら、こういう時どうするか……。敵から逃げてる時とか、早く帰らなくてはならない。多分、前者だろうな、やっぱり。』

 

そう言って、動き出す騎士にディセンダーは言った。

 

「安心してください。この土地は世界樹の幹の下でもあり、外からは見つかりにくい所にあります。何より、この村には世界樹の加護……御魂があって守られていますから。」

 

それを聞いた騎士は、少し安心したように動くのをやめた。

だが、黙り込んでしまった。

 

『世界樹の御魂があると言っても、やっぱり無理だったかな。』

 

ディセンダーが何か話そうとした時、騎士が声を出した。

 

「‥世界樹の加護‥‥成程、御魂か‥まだそのようなものが存在していたとは‥」

 

騎士の言葉に、ディセンダーは言った。

 

「外の世界には、世界樹の加護が少なくなってきているんですか?」

 

その問いに、騎士は静かに言った。

 

「そうだ。今この世界は、異種族同士争いが続いている。争いが多くなるにつれて、世界樹の加護は失われていった。簡単にいえば、御魂の奪い合いが起こったのだ。そしてそれを境に、世界樹から生み出されるマナも少なくなってきている。」

 

そう言いながら、騎士は少し表情を落として続きを言った。

 

「もしかしたら世界樹は、この世界を見捨ててきているのかもしれないな。争いを始めてから、多くの種族が土地の奪い合いや差別化が始まった。もはやこの世界の戦争は、止まる事はないのかもしれん。」

 

僕は騎士の言葉を聞いて、

 

『僕と話している世界樹は、いつもこの世界と人々を大切にしている。いつだって世界樹は、世界の全ての者達を信じている。そして、見捨てた事はない。』

 

僕は真剣な顔付きで、しかし小さな微笑を浮かべ、騎士にこう言った。

 

「……世界樹が、世界を見捨てる事はないと思いますよ。だって世界樹は、この世界も、この世界の住人も、大好きですから。でなければ僕に……」

 

ディセンダーは視線を落とす。

 

『僕に、この世界について聞いたりしない。ディセンダー≪世界の守り手≫ではない僕の言葉を……。それに、この世界がどうでもいいなら、世界樹は僕を赤ん坊として、この世界に落とさない…よな。』

 

騎士は「そうだな」と言いながら、ディセンダーの頭を撫でた。

ディセンダーは嬉しくなった。

 

『誰かに、こうやって頭を撫でて貰ったのは久しぶりだな。……なんか嬉しいな。』

 

僕は笑顔をいっぱいの顔をして、言った。

 

「今、食事を持ってきますね。少し待ってください。」

 

騎士は手を放した。

ディセンダーは嬉しそうに、スープを皿に入れている。

 

世界の守り手(ディセンダー)、嬉しそうね。そんなに頭撫でて貰ったの、嬉しかったの?〟

〝うーん、何というか久しぶりだったから、嬉しいんだ。ほら、長老やエミリィと同じくらいの背になって、頭を撫でて貰う機会も減ったしね。〟

〝じゃあ私も今度、貴方にやってあげるわ。〟

 

と、なぜか精霊・シルフは自信満々だった。

 

『シルフにやって貰うのは、なんか変な感じだな。……そういえば僕、話出来ているなぁー。』

 

などと、思っていた。

ディセンダーはスープを片手に、小さなテーブルをこっちに引きずった。

 

世界の守り手(ディセンダー)、手伝います。貴方には、きついでしょう。〟

〝ありがとう、ウンディーネ。でも、ばれないようにね。〟

〝解っています。安心なさい。〟

 

運び終わって、騎士を見た。

どうやら、気付かれていないようだ。

スープを受け取った騎士は、ディセンダーの目を見て言った。

 

「そういえば、お前の両親はどうした。外はかなり暗いようだが……まさか外に出たのではあるまいな。」

 

騎士に向けられた目をそらさずに、微笑で騎士に言った。

 

「この家には、僕一人で暮らしています。僕には両親、しいて言うならば兄弟姉妹(きょうだい)もいません。残念ながら、両親の顔も知らないんです。」

「そうか、すまない」

 

と、小さく言った。

 

『僕は、世界樹から直接生み出された人間のような者だから……いなくて当たり前だけど。やっぱり、ちょっと寂しいな。でも、両親はともかく……兄弟姉妹(きょうだい)は、別世界のディセンダー(世界の守り手)がそうなるのかな?世界樹同士は、兄弟姉妹(きょうだい)みたいなものだし。』

 

ディセンダーは騎士の視線に気付き、

 

「この村の人達は、良い人たちですよ。僕を拾ってから、変わらず愛してくれています。それにこの村は、多種族で出来ているんですよ。村長はエルフです。あ、後、そのスープ温かいうちに飲んでくださいね。」

 

と、照れながら言う。

 

「ああ、そうだな。」

 

騎士はスープを一口飲む。

ディセンダーが少し照れたように、それでいて少しおどおどした感じで言う。

 

「あ、あの、お口に合いますか?僕、料理は得意な方じゃないから……。それに普段は、僕一人分しか作ったことなくて、それでその……」

 

と言って、騎士をチラチラ見る。

精霊・シルフは、

 

世界の守り手(ディセンダー)が、頑張って作った料理にケチ付けたら、ただじゃ済まさないわよ!〟

〝シルフ、何もしないでよ。相手は怪我人だから!〟

〝……言われなくても、解っているわよ。〟

 

騎士は微笑を浮かべて、

 

「いや、よくできている。それよりすまないな。私がベッドを占領してしまっていたようだ。」

 

ディセンダーは笑顔を浮かべてから、すぐにとんでもないと言う風に、手を横に振りながら、

 

「い、いえ、貴方をここに運んでほしいと、お願いしたのは僕なので、気にしないで下さい。」

「そうなのか。でも、何故だ?」

『単に、外の事について何か知れるかもしれない、と思ったのと、単に寂しくなったから……とは言いにくいけど、仕方ない。素直に言っておくか、前半だけ。』

 

ディセンダーはまた照れたように、目を左右に動かしながら、

 

「貴方をここに運んだのはなんというか、お話してみたかったと言う気持ちがありまして。外の話とか色々、聞きたくて……。ご、ご迷惑でしたよね。すいません。」

 

と、言いながらシュンとなって、小さく肩を落とす。

 

世界の守り手(ディセンダー)、自分で言って落ち込むとか……可哀想すぎよ。〟

〝黙ってなさい、シルフ。〟

 

騎士は少し考えた後、ディセンダーの方をしっかりと見て言った。

 

「私は、お前の歳くらいの子供と、あまり話したことがない。故に簡単な話はしてやれんかもしれないが、それでもいいなら、ここにしばらく置いてはくれないか。」

 

ディセンダーはガバっと顔を上げ、

 

「はい!喜んで。ええっと、……」

「ああ、まだ名乗っていなかったな。私の名は〝クラトス・アウリオン〟だ。」

「クラトスさんですね。僕は……ディセンダーです。」

 

と言って、握手をする。

 

『クラトスさん、か。優しそうな人で良かった。村の人は騎士様に対して、なんかあるみたいだし……』

 

 

数日後のある日。

ディセンダーは、クラトスが寝ているのを確かめて、外に出た。

この村の世界樹の幹があり、その下に何かの模様がある所に立っていた。

 

『僕の生れ落ちた場所。小さい頃は何故か、この場所が苦手だったんだよね。今となっては、よく解らないんだけど。今度、ラタトスクにでも聞いてみようかな……。やっぱり、やめよ。話せるようになってから、最後は呆れられるか、怒られるかのどっちかだもんな。』

 

そう思った後、ディセンダーはいつものように、世界樹へ話し掛けた。

 

「世界樹、今晩は。今夜は月が綺麗だよ。」

〝……今晩は、世界の守り手(ディセンダー)。あの騎士の方は、もういいのですか?〟

「うん。クラトスさんも、もう歩いても傷は痛まなくなってきたみたいだよ。」

〝それは、良かったですね。貴方も、頑張っていましたものね。〟

「うん。でも世界樹が、力を少し僕に貸してくれたからだよ。だから、ありがとう。」

世界の守り手(ディセンダー)は、あの騎士と外のお話をしたのですか。〟

「うん、したよ。クラトスさんから教えてらった、外の世界の事。ねぇ、世界樹……どうして皆、仲良くできないのかな。」

〝………………〟

「う~、またこれに関しては、何も答えてくれないんだね。」

〝それは、自分で答えを探さなくてはいけません。〟

「自分で考えなさいって……解らないから聞いているのに。」

〝ちゃんと、考えなさい。何でも自分で考える前に聞いていては、いざという時に大変ですよ。〟

「はぁー、解ったよ。ちゃんと考えるから。」

〝解ってくれれば、良いのです。では、朝が近いとはいえ、道に気を付けるのですよ。〟

「うん。じゃあ僕、行くね。クラトスさんも、起きる頃だと思うから。……また来るね、世界樹。」

 

と言って、帰り道の方へ振り向いた。

そんな彼の前へ、クラトスが出て来た。

ディセンダーは、クラトスを見て驚いた。

 

『まずい、今の聞かれていたかな。四大を連れて来なかったの、まずかったかな。仕方ない。』

 

ディセンダーはいつもの笑顔で、

 

「クラトスさん、おはようございます。今日は早いんですね。今、朝食の準備をしますね。」

 

と言い、クラトスの横を歩いて、通り過ぎようとする。

そんな彼の腕を掴み、クラトスは無言で見つめてきた。

ディセンダーは、クラトスの意図が解らなかった。

クラトスは腕を掴んだまま、

 

「ディセンダー。お前は世界樹と話したり、その力を使えたりするのか?」

 

この質問に、ディセンダーは少し困った顔をして俯いた。

だが、クラトスは続ける。

 

「答えろ。……私は誰かに、この事を言うつもりはないから安心していい。」

 

しばらく沈黙が続き、クラトスさんは手を離した。

 

『この人は、信じるに値する……と、僕はここ数日共に過ごして思った。この人は、僕を裏切らない。』

 

ディセンダーは瞳を閉じ、開く。

そして、クラトスを見上げる。

 

「クラトスさん。確かに、僕は世界樹と会話したり、その力を借りたりできます。でも………本当に誰にも、この村の人にも言いませんか?」

 

ディセンダーは、クラトスの瞳をじっと見る。

 

『この人の目を視れば、解るはずだ。僕が話しても大丈夫か。』

「ああ、本当だ。恩を仇で返す事はしない。」

 

ディセンダーは静かに口を開いた。

 

「僕が、この村で拾われた事は言いましたよね。」

 

と、クラトスさんは「ああ。」というように頷いた。

それを見てディセンダーは、空を、世界樹を眺めながら、続きをポツリと言い始めた。

 

「僕は世界樹の幹の下、つまりここで拾われたんです。村の人は世界樹から光の柱が出た時に、僕がいたと。」

 

ディセンダーは瞳を揺らす。

 

『世界樹がこの世界人々をより深く見たいため、僕をこの村に落とした。何も知らなかった頃の僕を。』

 

ディセンダーは昔を思い出しながら、

 

「最初は、世界樹の声だとは思いませんでした。でも物心がついた頃から、この声が世界樹だと解りました。理由は簡単です。僕が自分で聞いたんです。〝あなたは誰〟っと。そしたら、〝世界樹です〟って。僕は最初、このことを長老に話したんです。でも長老は〝内緒にしておきなさい〟って。」

 

そこまで話してから、ディセンダーはクラトスの顔を見る。

すると、クラトスは同意したように頷いて、

 

「村長殿は、お前を守りたいのだろう。普通の人間の子として。」

『神子、と言う者の事かな。僕、あまりそのこと知らないんだよな。それとなく、誰かに聞こうかな。』

 

ディセンダーは悩んでいた。

クラトスは微笑ながら答えた。

 

「私は村長殿と話をして、あのご老体は良い村長だと思えた。お前を実の子……、いや孫か。まぁ、そんな感じでお前と接していた。他の村人はお前を大切にしている事は、ここ数日でよく分かったからな。」

 

クラトスは少しの間を置いてから、

 

「だが、どこか村人は……いや、特に一部の大人達と村長は、お前をどこか違う感じで見ていた。」

 

ディセンダーは驚いた。

 

『長老と一部の大人は、僕が生まれた所を見ていたようだから、僕が普通の人間じゃない事知ってるんだよな。』

 

と、笑顔を向ける。

 

「クラトスさんは凄いですね。でも僕は、村の皆が大好きですよ。」

 

それに、クラトスは頷く。

ディセンダーは続ける。

 

「それで、長老の言う通りに皆には内緒にしています。でも、一人だけ………」

『バトには、ばれてしまったけど、バトは内緒にしてくれた。』

「力については皆、僕の能力だと思っています。だから、世界樹に力借りているとは思ってないんです。この事は、長老にも話していません。これでいいですか?」

「ああ。話してくれたこと、感謝する。約束通り他言はしない。」

 

ディセンダーは笑顔で、クラトスを見た。

 

『この目は、嘘を言ってない。この人は、やっぱり信頼するに値する。』

「じゃあ、家に帰りましょう。僕、おなか空いちゃいました。」

「そうだな。……今日の朝食は、私が作ろう。」

 

そう言ったクラトスを、彼は嬉しそうに振り返る。

 

「本当ですか!僕の家で、誰かが料理する姿を見るのは久しぶりだなぁ。うん、後で世界樹に話そう。」

『イフリートが台所を爆破してからは、エミリィはお弁当に切り替えたし。……はぁー、気持ち切り替えよ。』

 

と、嬉しそうに歩いて行く。

家に着き、ご飯の支度をしているクラトスを見続けるディセンダー。

 

『クラトスさん、料理の手順が凄く良い!もしかしたら、エミリィよりも上手かもしれない‼』

 

と、考えていたら、料理が出来上がった。

テーブルに置かれた朝食は簡単な物なのだが、

 

「わぁーい、いただき、まーす!」

 

と、言いながら食べていく。

ご飯を食べながら、クラトスと話すのだった。

 

「ごちそう様でしたー。クラトスさん料理上手ですね。」

「そうでもない。自然に身に着いただけだ。」

「そっかー。……クラトスさん、僕に料理教えてください。ダメですか?」

「ふッ……、良かろう。だが、教えるからには甘くはないぞ。」

「はい、先生。今日のお昼から、お願いします。」

 

などと、会話をしながら片付けをした。

片づけが終わり、

 

「クラトスさん、この後どうしますか?僕、この後は何もないので、用事とかあればやりますよ。」

 

クラトスは少し考え、自分の剣を見ていた。

 

「今日は剣の稽古をするつもりだ。ここ最近、振っていなかったのでな。鈍ってしまわないようにな。」

『……僕自身で鍛えるにしても基礎が出来ていない以上、限界がある。バトと稽古はしてはいるけど、追いつけない。いくら、他の世界の守り手(世界のディセンダー)の剣技術があっても、それは僕自身には何も身に付いてこない。だったら、やっぱりそれを知ってる人に、聞かなくてはダメだ。』

 

考えて、ディセンダーはためらいながら聞いてきた。

 

「あの、クラトスさん。僕に、剣を教えて貰えませんか。」

 

と、クラトスを見る。

クラトスはしばし考え、

 

「何故、剣を教わりたい?軽い気持ちなら、教える訳にはいかない。」

『僕は、強くなりたい。今はまだ、世界よりもこの村を守りたい!あのバトのように。でも……』

 

ディセンダーは一度開きかけた口を閉じた。

精霊・イフリートが、

 

世界の守り手(ディセンダー)、誰かに何かを教わりたい時、真意を聞かれれば、素直に己の気持ちを言ってみる事だ。〟

〝イフリート、そうだね。うん、その通りだ。ありがとう。〟

 

下を向いていた顔を、ガバっと上げた。

 

「僕、いつも一緒に稽古している奴がいるんです。この村は月に一度町に出て、食料とか調達したり売りに行ったりするんです。でもあいつは、僕より少し歳が上で……強くて、村のためにいつも魔物も大人と一緒に、戦っているんです!」

 

と、強く言う。

その眼には、涙を溜めていた。

クラトスは黙って聞いていた。

 

世界の守り手(ディセンダー)…、貴方は……〟

 

そして、ディセンダーは続きを話した。

 

「僕は、いつもあいつには勝てない。いつも見ているだけで……、村を守ることが出来ない。だから僕、少しでも強くなりたいんです。村を守れるように!」

 

それを聞いて、クラトスはしばらく考えて、しっかり頷いた。

 

「解った。お前に剣を教えよう。だが忘れるな、剣を扱い……その力を使うことは、覚悟が必要になる時があるだろう。それでもなお、お前が剣を教えてほしいと思うなら料理以上に厳しくなるぞ。」

 

僕は笑顔になった後、真剣な顔で、頷いた。

 

「はい、師匠(せんせい)!お願いします。」

 

そう言って、元気よく外へ出ていく。

 

『僕は強くなるよ、絶対。今はこの村を守る為にも、力がいる。これから師匠(せんせい)と頑張るぞ。』

 

と、決意を固めた。

が、心のどこか深くで、自分ではない誰かが、それを否定したような気がした。

その後、みっちり指導を受けたディセンダーは、へとへとになりながら、今度は料理を教わるのであった。

そして昼食を食べ終わり、また剣の稽古をし、夕飯を作る。

これを毎日やっていたのである。

 

 

ある晩、ディセンダーはあるビジョンを視た。

世界樹から生み出された世界の守り手(ディセンダー)が泣いている。

世界を守れず、泣いていた。

 

ディセンダーは外へ出た。

ただひたすら歩いていた。

お気に入りの池へと。

 

『世界を救ても、世界の守り手(ディセンダー)は世界を滅ぼす事になる。あの世界の守り手(ディセンダー)の悲しみと絶望が、僕の中に入って来た。でも、あの世界の守り手(ディセンダー)は僕とは姿が違った。でも、何故だろう……。僕は、彼を知ってる気がする。じゃあ、僕は誰なの?』

 

ディセンダーは湖を眺め、そう考えていた。

その姿はあまりにも悲しそうだった。

精霊・シルフは、

 

世界の守り手(ディセンダー)……。私、もうあんな世界の守り手(ディセンダー)見たくないわ。〟

〝シルフ、それは我らも同じだ。しかし、我々はあの子と共にいる事を望んだではないか。〟

〝それは……そうだけど。でも……〟

「……、僕は……」

 

ディセンダーが小さく声を出した。

しかし、パキッと小枝を踏む音がして彼は、

 

「だ、誰?」

「私だ。」

師匠(せんせい)……すみません。心配して探してくれたんですか?」

 

と、微笑を浮かべる。

クラトスは少し困り顔をして、

 

「こんな夜遅くにいなかったら、嫌でも探すに決まっている。お前ともなんだかんだ言って、結構長い付き合いになったしな。それだけではない。私は、お前の師匠(せんせい)にもなったからな。」

 

ディセンダーは悲しそうな笑顔を、クラトスに向ける。

 

「そうですか……」

 

と、静かに言った。

 

師匠(せんせい)は優しいな。いくら師弟関係でも、普通はしないんじゃないかな。僕、子供の姿だから、多分それが大きいのかな。』

 

ディセンダーは俯いていた。

クラトスは、静かに言った。

 

「私でよければ悩みを聞いてやるぞ。」

 

ディセンダーはそれを聞いて、クラトスに背を向け、月を眺めてた。

 

『これ以上、師匠(せんせい)に甘えるわけにはいかない。もし、僕が口を滑らせて、師匠(せんせい)を巻き込んでしまうかもしれない。それは絶対に、嫌だ。』

 

そう考えていると、精霊・ウンディーネが、

 

世界の守り手(ディセンダー)、あの人間に話してみてはどうですか?その方が、貴方にとっても気分が楽になるのでは。〟

〝……そんな事したら、師匠(せんせい)を災厄理に縛り付けてしまうかもしれない。それは嫌なんだ。〟

〝では、お前がほんの一部話すだけにしてはどうだ。この者の事を、お主は信じたのだろう。少しは自分に素直になった方が良い。〟

〝……師匠(せんせい)は、僕のこと嫌いにならないかな。〟

〝その時は、その時よ。もしもの時は私が……〟

 

最後の方は聞こえなかった。

が、ディセンダーはクラトスに振り返った。

クラトスを真っ直ぐ見た後、微笑を浮かべ語りだした。

 

師匠(せんせい)、僕……自分が解らないんです。僕は、ディセンダーだけど、それは僕自身であって僕じゃない。」

 

泣きそうな顔で、ディセンダーはそう言った。

 

「自分が解らないのは皆そうだと私は思うが、少なくとも私は、お前をディセンダーという一人の人間だと思っている。」

 

ディセンダーは泣きそうになった。

自分を、一人の人間としてみてくれる事を。

 

「そう……確かに、僕はこの世界の最初の世界の守り手(ディセンダー)……。でも僕は、いつかこの大好きな村から……皆の前から去らなきゃいけなくなる。世界樹の……いや、この世界の為とはいえ、僕は……いや、その前に師匠(せんせい)はこの村から……いつか居なくなっちゃうんですよね?」

 

ディセンダーは、自分で言った質問の答えを聞くのが怖かった。

しかしクラトスは、意外な事を言い出した。

 

「確かに、私はここをいつかは離れて、元居た都市に帰る。だが、世界や私の事よりお前はどうしたいんだ。」

 

それに、ディセンダーは唖然としてしまった。

 

「え?僕自身?」

「そうだ、お前自身だ。どうしたい。」

 

ディセンダーはうつむいて、黙った。

 

『イフリートは、自分に素直になった方が良いって言っていたな。僕の、今の気持ちは……』

 

そして、ディセンダーは思いを口に出した。

 

「僕は……、僕は、今のこの師匠(せんせい)との暮らしや村での暮らしをやめたくないです。」

「なら、今はそれでいいではないか。私も、まだしばらくはここに滞在する。」

「……、そうですよね。いつか来ることより、今を大切にですよね。」

 

そう言ったディセンダーは決意した。

 

師匠(せんせい)が拒むなら、話すのは止めよう。』

 

さっきまでの泣きそうな顔ではなく、真剣の顔でクラトスに質問した。

 

師匠(せんせい)。いえ、クラトス・アウリオン。貴方は、世界の理を受け入れますか?」

 

クラトスは硬直した。

しかし、クラトスはゆっくり、それでいてはっきりと、頷いて答えた。

 

「ああ、今のお前の気持ちが楽になるなら受け入れてやろう。ディセンダー。」

『僕を受け入れてくれた。師匠(せんせい)、ごめんなさい。そして、ありがとう。』

 

ディセンダーは言いかけた言葉を飲み込んだ。

 

〝あの下界人、意外と勘は鋭いようね。〟

〝だが、受け入れた。それは称賛に値するだろう。〟

 

ディセンダーは心を決め、語った。

 

「この世界の理とは、世界樹がこの世界を作り出す前……そう、世界の最初の者達が終わりゆく己が世界の最後に願いを未来に託した時から始まった。世界最初の世界樹は、消えつつある自分の力で、初めての自分の分身体であり、己が子……なにより世界を……いや、世界樹を守る為に創り出したもの。その者を、ディセンダー、『光纏いし者』と名付けた。」

 

クラトスは固まっていた。

 

〝まぁー、下界人には驚くべき事よね。〟

〝この下界人は世界の理の一部を知り、どうなるか見極めなくてはいけませんね。〟

 

そんなクラトスの表情を、微笑しながらディセンダーは続きを話していた。

それはまるで、一つの悲しい物語を話しているような悲しく辛い。

それでいて、懐かしように思えた。

 

「ディセンダーは世界樹の願いを聞き、世界を救うため人々の前へ進み出ていた。人々に今ある世界樹の力が、終わりにあり、世界の終わる。世界樹の寿命が来た事を……。人々は争いをやめ、今後の世界が終るその事について話し合う事になった。ある者は違う世界へ逃げると。またある者は、世界が終るその時まで生まれた土地にい続けると。でも、それでも受け入れない人々がいた。彼等は僕が、嘘をついていると。でも、大地の一部が崩壊を始めた頃には皆恐怖し、世界が終る前に、自らの命を絶つ者まで出てきてしまった。だから、僕は皆に〝諦めないでくれ〟と。〝希望を忘れないでと〟。そんな人々は、一人の少女に世界樹の母体になってもらい、新しい世界を創り、未来と希望を託す事にした。世界樹は種を世界に飛ばした。そして、新たな世界が生まれ、また寿命が来て終わり、また新たな種を飛ばす。そうして、世界の遺伝子を絶やさず、新た世界へ未来を、希望を託し続けた。そうやってこの世界も、前の世界の遺伝子を元にできている。だから、この世界には色々な種族が暮らしている。」

 

ディセンダーは話をするにつれて、自分が今の自分ではない気がしていた。

それでも、話し続ける。

四大達は、それを静かに見守り続けていた。

 

「この世界以外にも、僕達が今いる世界に似ている世界があります。世界樹の兄弟姉妹(きょうだい)が、僕と同じ世界の守り手(ディセンダー)が……」

 

そう言って、ディセンダーは夜空を見上げ、片方の目から涙を流した。

まるで、前の世界のディセンダーが、自分を通して、その時の感情を思い出したかのように……

 

クラトスは静かに問うた。

 

「それは、この世界が終わりに近づいているからか。」

 

その問いに、ディセンダーはクラトスを見ながら首を振った。

 

「この世界は、確かに多種族同士の戦争が続いている。でも、まだこの世界は生まれたばかりです。」

「では何故、お前はそんなに辛そうなんだ。戦争がそうしているのか。」

「確かに、この戦争は早く終わりにしなくてはいけない。世界樹もそう言いながら、悲しんでいる。僕も、本来ならこうやって、表にはあまり出てきてはいけない。本当の意味では、この世界の戦争はまだ危なくないから……」

 

ディセンダーは、自分ではない誰かが、語っているように思えた。

 

「僕は、ずっと前の世界で、世界樹の中からずっと見ていた。生命が産まれれば、世界樹とともに喜び、死んでしまったら、共に悲しんだ。世界樹も、僕も、一瞬のような日々……。僕は、世界樹にお願いして、外に出してもらいました。僕自身の目で、世界を見てみたくて。外に出てからの僕は、それまでとは違ってとても楽しかった……。一日一日が、僕自身に刻まれていくようで。でも、皆、僕より先に居なくなってしまう。でも、僕はそこに居続け、見守っていた。何時しか僕は忘れていた……人々は恐怖という感情があることを。」

 

そう言いたディセンダーは、クラトスに背を向けうつむいた。

ほんの数秒の間の後、

 

「その頃、世界は負の塊である巨大な魔物達が暴れていた。無論、僕はそれらを倒しに行きました。だって、皆を守りたかったから。僕は一人で、何匹もの魔物を倒していった。皆、戦う勇気すら失われてしまった。それまでにも、あいつらは強かった。僕がすべて倒した頃には、皆の顔には笑顔が戻っていた。僕は嬉しかった。でも、しばらくたって、皆の目が変わった。……僕の力を恐れたんです。このままでは、僕という存在で新たな争いが生まれる。僕は、世界樹の中に帰る事にしました。でも、もう一度だけ自分の目で、町を見てから帰ろうとしました。そしたら、子供が木の上にいて落ちたんです。僕は走り出しました。あの子は、何とか大怪我する事はなかった。あの子がお礼と言ってくれた。でも母親は、僕があの子に手を出したのだと思たんです。それをきっかけに、僕を、世界樹を、殺そうとしたんです。僕が、世界樹の元に駆け付けた時には、世界樹は切り倒されていた。僕は、自分を許せなかった。世界樹を守る事ができず、人々に新たな争いを生み出してしまった。その瞬間、僕は世界を壊していたんです。当たり前ですよね。世界を救うだけの力があれば、壊す事だってできる。」

〝ディセンダー……そんな世界の事まで、知っていたのね。〟

〝本来であれば、ここまで思い出す事はないはずなのだが。〟

 

ディセンダーは、小刻みに震えている。

そして続ける。

 

「次の世界は、僕が壊した世界の記憶を持っていた。世界を守る為に現れた僕に、人々は〝世界樹から世界の救世主(ディセンダー)が現れた世界が終る〟と。僕は、解らなくなりました。世界を救う事は僕の使命。でも、僕を良く思わない人々の為に、僕は世界を救う意味があるのかと……。でも、僕は世界を救うことにした。世界樹が、そうするように言ったから‥‥。僕は…今度はすぐに世界樹の中に帰った。そして外部との関わりを捨てた。世界樹が目を覚ますように言った時、世界の寿命が来たんです。僕はただ茫然と見ていただけ。次に目を覚まして、世界に降り立った時、人々は僕に〝世界樹が世界の救世主(ディセンダー)を生み出してくださった。これで世界は救われる〟と。涙を流しながら、僕に言ったんです。僕は思い出した。〝そうだ、僕は誰かの笑顔を守りたかったんだ(・・・・・・・・・・・・・・)〟と。僕は、それを続けていた。それで良かった。でも……」

 

そこまで言って、ディセンダーはクラトスに振り向いた。

その片方の眼には、涙が流れていた。

 

「できることなら、一人の……この村の人間として生きていきたかった。」

「ならば、世界を救った後、この村に帰ればいい。お前で新たな争いが生まれるなら、その時に去ればよかろう。」

 

ディセンダーは小さな笑顔を作り、首を振った。

 

「本当なら、世界樹もそうできるように、僕を赤子としてこの世界に生み出した。記憶もない真っ白な僕を。一人の人間として。」

『そして、人々を見る為に。』

 

クラトスは間を取ってから言った。

 

「つまり、前の世界の世界の救世主(ディセンダー)の記憶を思い出したから、世界樹の中にいるべきだと。」

 

ディセンダーは小さく頷いた。

自分の胸に手を当て、世界樹の方を見ながら言った。

 

「世界樹も驚いていたよ。僕に、前の世界の世界の守り手(ディセンダー)達の記憶があること。僕が僕でなくなること……」

 

クラトスは、小さく笑いながら言った。

そして、真剣な顔で言った。

 

「私には、前の世界のお前を知らない。私の知るディセンダーは、お前だけだ。この村のな。」

師匠(せんせい)……、本当に師匠(せんせい)は凄いや。何でかな。師匠(せんせい)に話して、本当に良かったと、思うなんて。』

「お前が、ディセンダー(世界の救世主)でいるのが嫌なら、自分自身に名を付けてこの世界に留まればいい。」

 

ディセンダーは目を見開いてクラトスを見た。

そして不意に笑い出した。

 

「あはは、それは考えたことなかったなぁー。じゃあ、師匠(せんせい)が僕に名前を付けてください。」

「何……、私が名付けるのか!?」

 

驚くクラトスの姿に、ディセンダーはまた笑う。

それから、笑いながら言うのだ。

 

「当たり前ですよ。言いだしは、師匠(せんせい)ですよ。」

 

クラトスは考えていた。

だが、精霊達は違った。

 

〝何考えているのよ、世界の守り手(ディセンダー)!あんな下界人に、名前を決めさせるなんて‼〟

〝そうです!下界人に決めさせるくらいなら、我々が付けてあげます!〟

〝ごめん。でも僕は、師匠(せんせい)に付けて貰いたいんだ。お願いだよ。〟

世界の守り手(ディセンダー)が、そこまで望むのであれば仕方がない。〟

〝あの下界人が、変な名前を付けたら絶対に許さないんだから‼〟

〝そうですね。その時は、大量の水を落としましょう。〟

 

ディセンダーは苦笑いで、それを聞いた。

クラトスが決めたようで、ディセンダーを見て言った。

 

「で、では、お前の名は〝エント……創世の者〟と言うので、どうだろうか。」

 

ディセンダーは、その名を何度も嬉しそうに呟いた。

そして、とびっきりの笑顔で、クラトスに言った。

 

「じゃあ、これからは二人の時は僕のこと、そう呼んで下さいね。いつか来る、その日の為に。」

「ああ、そうだな。では、もうじき夜が明ける。お前の……、〝エントの家〟に帰ろうか。」

「はい。師匠(せんせい)。」

 

そう言って、歩き出す二人。

ディセンダーは、いや、エントは世界樹に振り返り、小さな笑顔を向けて小さく呟いた。

 

「世界樹。僕にも名前ができたよ。僕だけの……」

「エント、どうした。置いていくぞ。」

 

それを聞き、エントはクラトスの元に走り出す。

 

「待ってください、師匠(せんせい)!」

 

追いついてから、エントはクラトスに言った。

 

師匠(せんせい)、ごめんなさい。師匠(せんせい)に、世界の理を教えたことで、縛ってしまう事になってしまった。」

 

すると、クラトスはエントの頭を撫でながら、

 

「いや、構わん。私は直感では解っていた。解っていて受け入れたのだから、お前が誤る必要はない。」

「ありがとうございます、師匠(せんせい)。」

 

泣きながら、笑顔を向ける。

それから、エントの見た世界について話すのであった。

世界樹のある世界、無い世界、人間だけの世界など色々話すのであった。

そんな二人を見た四大達は、

 

〝まぁー、下界人にしては……良い名を付けたわね。〟

〝ええ。ちゃんと意味を持たせていますしね。〟

〝それにしてもぉー、世界の守り手(ディセンダー)がまたあんな風に笑ってくれて、嬉しいのだぁー♪〟

〝そうだな。ずっと、抱え込んでいたからな。その点では、あの下界人には礼を言わねばな。〟

 

と、二人の後ろに、付いて行くのであった。

 

ディセンダーにエントと名がつけられた。

そんな彼は、変わらずの朝を迎えていた。

クラトスに、朝稽古を付けてもらう。

それが終わると、朝食を食べる。

そして、エミリィのお見舞いけん、会いに行くのだ。

今日も、その彼女の所に来ていた。

だが、日々の疲れもあったのだろう。

彼は、一生懸命話しているエミリィの話を聞いている内に、うたた寝をしてしまったようだ。

それに気付いたエミリィのはディセンダーに起こるのだった。

彼に付いて来ていた、シルフとウンディーネがその光景を見て、

 

〝あーあ。エミリィ、すごく怒っているわよ、世界の守り手(ディセンダー)。〟

〝今回はうたた寝をしてしまった、世界の守り手(ディセンダー)の落ち度ですね。あのクラトス(下界人)が来てからは、エミリィと会う機会も、少なくなっていましたし。それも、あるのでしょう。〟

 

後ろの方で、精霊達は会話していた。

そして、世界を守るはずのディセンダーは、自身がライバルと見ている目標の人物バルバトスから一本取ることが当面の目標らしい。

それを聞いた精霊シルフは、

 

世界の守り手(ディセンダー)、仮にも世界の救世主の目標が、あれでいいのかしら。〟

〝まぁー、今は良いのではないのですか。〟

 

村の入り口で、警備をしていた精霊・イフリートから連絡が届いた。

 

世界の守り手(ディセンダー)、外に出ていた村人が帰って来たぞ。〟

〝本当!ありがとう、イフリート。〟

 

それを聞いたディセンダーが、窓の外を見つめて勢いよく立ち上がろうとして倒れた。

 

〝ちょ!?ディセンダー(エント)、大丈夫?〟

〝少し落ち着きなさい。〟

 

エミリィは驚いて起き上がり、「大丈夫」と言いながら彼に手を差しのべる。

その手を支えに、起き上がったディセンダー(エント)は顔を輝かせて言った。

 

「エミリィ、バト達が帰って来たよ。」

 

その言葉に、エミリィも顔を輝かせながら言った。

 

「本当!?バトが帰って来た。」

「うん。だから早く迎えに行こう。」

 

と、二人の子供は手を繋ぎ、嬉しそうに広場に向かった。

広場に着くと、村人の全員が集まっていた。

精霊・シルフと精霊・ウンディーネは、精霊・イフリートの元へ向かった。

村人の中に、クラトスが長老と今しがた帰って来た村人と話しているのを見た。

その顔が真剣なので傍に寄ろうとした時、バルバトスが二人に近づいて来たのだった。

 

「おい、エミリィ、ディセンダー、今帰った。」

 

ディセンダーは行く事をやめ、声のした方へ視線を向ける。

 

「バト、おかえり。外の世界はどうだった?」

 

その眼からは、興味津々と見てわかる。

エミリィも、バルバトスに振り返る。

 

「バト、お帰りなさ……、‼」

 

「お帰りなさい」と言おうとした時、エミリィはバルバトスのマントの下の服に付いていたものに気が付いた。

それを見て、彼女は青ざめた。

エミリィの様子に気が付いたディセンダー(エント)も、彼の血まみれの服を見て絶句した。

さっきよりも青ざめた顔をしたエミリィは、彼に近づきながら言った。

 

「バ、バト!あなたそれ、どこか怪我を……、すぐに治療の準備を――」

 

と、今にも倒れそうなエミリィに、彼は思い出したかのように言った。

 

「これは魔物の返り血だ。俺様に怪我はないぜ。むしろ、俺様に怪我などありえん。」

 

その言葉に、二人はほっとして胸を撫で下ろした。

そして、彼は二人に手を出すように言った。

二人は顔に?マークを浮かべ手を出した。

そんな二人の手に、小さな包みがのる。

 

「他の奴らには、内緒だぞ。町では、今人気の砂糖菓子のようだ。」

 

二人は包みを開けて、周りに聞こえないように「ありがとう」と言った。

ディセンダー(エント)は包みの中のお菓子を見て、一つ口の中に入れた。

 

『お星さまのような形……、甘い‼後で、師匠(せんせい)にもあげよう。』

 

エミリィは包みを戻してから、「後で食べるね」と二人で話している。

 

『僕は、この二人のやり取りが好きだ。僕の大好きな二人が、いつまでもこうしてくれる事を、僕は願続けるよ。僕が居なくなっても、そうしてくれるように。』

 

そんなことを思って、二人を見ていた。

と、長老がディセンダー(エント)を呼んだ。

その声には、焦りが感じ取れた。

 

『?どうかしたんだろうか。そういえば、さっきから四大達が見当たらない。』

 

彼は急いで、長老の元へ急いで行った。

そこには、バルバトスと共に町へ行った人達が傷だらけだった。

ディセンダー(エント)は、急いで世界樹に力を貸してほしいと願い、治癒術をかけた。

見ると、クラトスも、他の人達も、手当をしていた。

長老は、もっと薬を持ってくるように言った。

ディセンダーは全集中力を、傷口の最も酷い所に……

彼は思った。

 

『傷口がひどいのは、皆そうだけど……それにしても、ハーフエルフとレイモーンの民が多いような気がする。』

 

そう思っていると、後ろから答えがきた。

 

「ハーフエルフ共は、町で暴行にあった。やり返せばいいものを、こいつらはずっと暴行を受け続けた。レイモーンの奴らはいつも通り、俺様と同じように血が上って、魔物の群れとやりあったんだ。だが、弱いからこうなる。」

 

そう言って、バルバトスは蔑みの目を向けていた。

そして広場を去って行った。

ディセンダー(エント)は、少しぞっとした。

 

『バトは、時々怖い。なんか、別の世界の……ディセンダー()を見ている感じだ。』

 

エミリィは、怪我人を見て青ざしきった顔だった。

それは、今にも倒れそうだった。

が、泣きじゃくっている子供達の傍に掛けより、なだめていた。

村人たちは、バルバトスに何か反論しようとした。

が、時間が惜しいようで、ほっとく事にした。

しばらくして、何とか治療を終え、皆それぞれ家に戻った。

ディセンダー(エント)は、クラトスの背の中で目が覚めた。

 

「し、師匠(せんせい)!?す、すいません!降ります。」

 

クラトスは、ディセンダー(エント)を背おったまま、静かに言った。

 

「いや、力を使いすぎて倒れたのだ。このまま甘えておけ。」

 

ディセンダー(エント)は、その言葉を嬉しそうに、それでいて気恥ずかしようで、クラトスの背に顔を埋めた。

 

『父親や、兄がいたらこんな感じなのかな。なんか……嬉しいな。』

 

 

次の日、ディセンダー(エント)はクラトスとの稽古を終え、今度はバルバトスと剣を交えていた。

すぐ傍の日蔭には、エミリィの姿もある。

バルバトスの剣に圧倒され、吹き飛ばされる度に腰を浮きかけては、また座って見守っていた。

四大達は、エミリィの傍で、これまたディセンダー(エント)を見守っている。

彼が危なくなる度に、

 

〝あー、世界の守り手(ディセンダー)、危ない‼〟

〝シルフ、もう少し大人しくしていなさい。〟

〝だって、世界の守り手(ディセンダー)が危なっかしいんだもん!〟

〝災厄の場合は、我々が動けば良いのだ。それまでは大人しくせよ。〟

〝分かったわよ。〟

 

ディセンダー(エント)の剣が上がったのを感じたのか、嬉しそうに言った。

 

「ディセンダー。お前、しばらく会わないうちに腕が上がったな。」

 

ディセンダー(エント)も、バルバトスにそう言われ、嬉しそうに言った。

 

「バトがいない間に、僕は帝都の騎士様に稽古を付けて貰ったんだ。だから絶対、バトから一本取ってやる!」

 

そう言って、勢いよく前へ飛び出した。

ディセンダーは、バルバトスの目に怒りの闘志を感じた。

だが、バルバトスはより一層笑みを浮かべ、斧を振った。

 

「わはは、貴様が俺様から一本取るなど、百年早いわー‼」

 

そうして、ディセンダー(エント)は勢いよく吹っ飛んだ。

 

「うわぁー‼」

 

木にぶつかると思い、目をギュッと瞑る。

 

ディセンダー(エント)‼全く、やりすぎよ!〟

 

四大達は、姿を現そうと思ってやめた。

ディセンダー(エント)に駆け寄る人影を見たからだ。

ディセンダー(エント)は、誰かに守られた。

恐る恐る目を開けると、クラトスが自分を抱え、木にぶつかたクラトスの姿。

ディセンダー(エント)は治癒術を急いで掛けた。

 

師匠(せんせい)、大丈夫ですか!?」

 

クラトスは平然とした顔で、「平気だ」といった。

後ろから、長老とエミリィが近づいて来た。

エミリィは青ざめた顔で、ディセンダー(エント)の顔を触りながら言った。

 

「ディセンダー、怪我は!?」

「僕は大丈夫。師匠(せんせい)が庇ってくれたから。師匠(せんせい)、助けてくれてありがとうございます。」

 

クラトスは小さく笑顔を作った。

ディセンダー(エント)はバルバトスを見た。

バルバトスは、クラトスに怒りにも似た目を向けている。

エミリィはすくっと立ち上がり、クラトスにお礼を言ってからバルバトスに言った。

 

「ちょっとバト!貴方、ディセンダーに大怪我を負わせる気!?騎士様が助けて下さったから、良かったものの。ディセンダーは、まだ子供なのよ!もう少し手加減をなさい‼」

 

バルバトスは腕を組んで胸を添って、ディセンダー(エント)に言った。

 

「弱いこいつが悪い。」

 

エミリィが言い返そうと声を出す前に、バルバトスはクラトスに怒りを露わにして、斧を振って向かって行った。

 

『バトがいつもと違う。僕、何か悪い事したのかな!?』

「お前が、ディセンダーに剣を教えている奴だな。覚悟しな、帝都の騎士野郎‼」

 

クラトスは素早く立ち上がり、剣を抜いた。

クラトスはバルバトスと何度か受け流し、彼の斧を弾き飛ばした。

ディセンダー(エント)は、それをじっと見つめていた。

あのバルバトスに勝ったクラトスの背中を見ていた。

 

師匠(せんせい)、あのバトに勝ったんだ。僕は、バトの勝った人に剣を教わっているんだ。でも、バトが負ける姿は見たくなかったな。バトは強いし……』

 

クラトスは、座り込んでいるディセンダー(エント)に手を差し伸ばした。

ディセンダー(エント)は立ち上がり、クラトスに何か言おうとした時、バルバトスは叫んだ。

 

「これだけの実力がある騎士野郎が、ここで何をやってやがる!まさか、そんな子供にお情けで、剣を教えているんじゃないだろう。それとも、あの時のようにこの村でも潰すつもりか‼」

 

それを聞いた長老とエミリィは、「はっ‼」と反応していた。

 

『あの時?僕がいない頃に、何かあったのかな?それにしたって、潰すなんて……』

 

ディセンダー(エント)は疑問に思った。

が、それを声に出す事は出来なかった。

ディセンダー(エント)はバルバトスを見た。

彼の目には、怒りの闘気がにじみ出ている。

 

『バトは、どうしてあんなに師匠(せんせい)を嫌っているんだ?いや、騎士という名に、かな。』

 

など思っていた。

クラトスが口を開いた。

 

「私は、情けで剣は教えん。こいつから、強い意志を感じたから教えているにすぎん。」

 

そう言って、クラトスはディセンダー(エント)を見た。

 

師匠(せんせい)……師匠(せんせい)は、僕を分かってくれているんだ。』

 

ディセンダー(エント)は、素直に喜んでクラトスを見ていた。

バルバトスは再び、斧を手に取り襲い掛かろうとした。

長老が大声で、「やめんか、バルバトス」と叫んだ。

だか、それを無視して突進している。

ディセンダー(エント)は前に出ようとして、止められた。

精霊・シルフと精霊・ウンディーネが、ディセンダー(エント)の前に来た。

 

ディセンダー(エント)、ダメよ!危ないわ‼〟

〝今の貴方では、役に立ちません。〟

 

クラトスは剣を構え直しながら、バルバトスに突っ込もうとした。

だが、エミリィがクラトスの前で手を広げていた。

バルバトスは動きを止めた。

クラトスも剣を下した。

エミリィは泣きながら言った。

 

「バト、もういいでしょ。この騎士様は、あの時の騎士達とは違う‼」

 

バルバトスは、あげていた斧を降ろし、背を向けて森の中に去って行った。

クラトスは剣をしまった。

ディセンダー(エント)は、そんなバルバトスの背中をずっと見ていた。

消えてもずっと……

 

『バト……。何故だろう。あの感じ、僕にも経験がある。いや、僕じゃない。他の世界の守り手(ディセンダー)が。』

 

しばらく沈黙した長老が、クラトスに申し訳なさそうに言った。

 

「クラトス殿申し訳ない。バルバトスの奴は、頭に血が上ると見境がなくなってしまっての。」

 

クラトスは首振りながら言った。

 

「いえ、村長殿。私も、いささか大人気なかったようです。私の方こそ謝らなくては。」

 

そこまで言うと、声を殺して泣いていた少女エミリィが、こちらに振り返る。

そして、クラトスに頭を下げて謝った。

 

「騎士様、申し訳ありませんでした。でも、お願いです。バトを……、バトを許してください。お爺様も、お願い。」

 

クラトスは少女に頷いた。

長老も、クラトスの反応を見て良しとした。

ディセンダー(エント)は、その様子を見てほっとした。

エミリィは、手を胸の前で握りしめてから、長老を見てから語りだした。

 

「バトの両親は十年前、この村に来た時に、野盗に殺されたんです。それも目の前で……」

 

少女は思い出したかのように、また声を殺して泣き出した。

長老は孫の背中を擦った。

クラトスは、少女に問うた。

 

「それに、お前と帝国騎士も、関わっているのだな。」

 

エミリィは頷き、続きを話始めた。

 

「あの頃は、多種族戦争が起こるかもしれないと、大騒ぎでした。だから、帝都から移り住む為に、この村に来る者も多かったんです。この村にも、昔は騎士団が居ましたから。バトの家族も、ここに移り住もうとしていたんです。バトとは、帝都の馬車で知り合ったんです。私も、その時両親と共に、帝都から村に帰る途中でした。でも、村に着いた時、野盗に襲われました。騎士達は貴族を先に助ける為に、私達を見捨てたんです。私は、バトに守られていました。私達の両親は、野盗に刃向かって、私達の目の前で殺されました。騎士も居なくなり、大変だったけど……、何とか村を守れた頃には、村は荒らされまくりました。生き残った者で、この村を再建し、祖父が村長になりました。バトは、自分達を見捨てた騎士を許さなかった。そして何より、何もできなかった自分が許せないんです。その日から、バトは力を求めるようになりました。」

 

ディセンダー(エント)は、自分の知らない事なので驚いていた。

そして、いつの間にかクラトスの服の裾を掴んでいた。

 

『十年前といえば、エミリィは三・四歳くらいで、バルバトスは五・六歳のはずだ。そして、自分の大切な存在を目の前で失う悲しみを知っている。バトの力の源や力を求める気持ちは、前の世界の守り手(ディセンダー)達と同じだ。僕は、それをビジョンで見続けてきた。世界の人々を、世界樹を守れない悔しさや悲しみ。前の世界で、何度も思い続けてきたこと。それは、今も思い続けている。』

 

エミリィは、ディセンダー(エント)の顔が青ざめているのに気が付いた。

彼女はディセンダー(エント)に近づき、

 

「ごめんね。怖い話をして……」

 

と、まるで姉のように、優しく頭を撫でた。

ディセンダー(エント)は頭を振り俯いた。

 

世界の守り手(ディセンダー)。これでまた、ディセンダー(エント)が笑わなくなっちゃたらどうしよう。〟

〝その時は……今度こそ、我々で何とかしましょう。〟

 

黙って聞いていた、クラトスは口を開いた。

 

「この村で起きた事は解った。帝国騎士団が、この村……いや、当時の者にとっては、許してはもらえないでしょう。騎士団の中には、今も、昔も、己が命を優先する者も、貴族しか助けない者もいる。本当に申し訳なかった。」

 

と、クラトスは頭を深く下げた。

長老とエミリィは、クラトスに慌てて頭をあげるように言った。

 

「騎士様、頭をお上げください!確かに、あの時の騎士の者達は許せません。でも、あなたが立派な騎士様とゆうのは分かっています。あなたのような騎士様がこれから増えてくだされば、どんなにいいか。」

 

長老は、クラトスを見上げ、声を絞り出すように言った。

 

「クラトス殿さえよろしければ、このままこの村に暮らしていただきたい。帝国ほどよい報酬は出せませんが、それなりにお出しします。」

 

その言葉に、ディセンダー(エント)はクラトスを見上げた。

その視線に気が付いていたが、クラトスは見ずに長老に首を振った。

そして、長老に言った。

 

「村長殿の申し出は嬉しいのですが、私は帝国騎士団長として帝都に戻らねばならぬのです。」

 

その言葉に、三人は目を見開いて驚いた。

 

『騎士団長って……昔、長老に聞いたことある。普通の騎士達と違って、王族直轄だって。まさか、師匠(せんせい)が、そんなに偉い騎士様とは知らなかった。よくよく考えれば、僕はその辺に関して何一つ、聞いてなかった。』

 

ディセンダー(エント)は、掴んでいたクラトスの裾を離した。

クラトスは、なおも言った。

 

「ここでの暮らしは、私も好きでした。できれば私も、ここに長く留まりたい。ですが、一週間後にはここを出て、帝都に戻らねばなりません。」

 

長老は、静かに頷いて「そうですか」と小さく言った。

そして、孫娘に帰ろうと言って、この場を離れた。

エミリィは、クラトスに一礼して去って行った。

ディセンダー(エント)は、クラトスの一週間後にはここを出る、という言葉を頭の中で繰り返していた。

 

『一週間後には、師匠(せんせい)は帝都に帰ってしまうんだ。……寂しくなるな。』

 

クラトスは、エントの頭を撫でながら言った。

 

「さあ、エント。帰ろう。私が帰るまでの一週間、いつも以上に鍛えるからな。」

 

ディセンダー(エント)はクラトスを見上げ、

 

「はい。最後の時までお願いします、師匠(せんせい)。」

 

と言って、二人は無言で家に帰って行った。

 

 

クラトスが帝都に帰る、三日前の事である。

四大達が(主に精霊・ウンディーネと、精霊・イフリート)、クラトスに会うと言ったのである。

理の一部を知ったので、それも含めて言いたい事があるそうだ。

 

「あ、あの師匠(せんせい)。今、お時間ありますか。」

 

クラトスはコーヒーを飲みながら、ディセンダー(エント)を見た。

そして、頷いた。

 

「あ、じゃあ、その、お願いがあるんですけど。今から池に一緒に来て下さい。」

 

ディセンダー(エント)と共に池にやって来た、クラトス。

ディセンダー(エント)は内心、『頼むから、穏便に済んでくれよ。』と思っていた。

目的の場所につくと、四大達がクラトスとディセンダー(エント)の前に姿を現した。

ディセンダー(エント)は、クラトスを見た。

案の定、驚いている。

精霊・イフリートが、クラトスに声を掛けた。

 

「我が名は、火の精霊・イフリート。……手っ取り早く、我らは四大だ。」

〝え!?雑過ぎない?!〟

〝いいのだ、これで。面倒だしな。〟

「とりあえず……、まずは貴方に礼を申し上げます。あの子を、世界の守り手(ディセンダー)の事を受け入れて下さったこと。」

 

なんとなく、精霊・ウンディーネが怒っている気もした。

が、黙っておく事にした。

クラトスは、何かを理解したように、

 

「それで、四大が私に何の用だろうか。」

「貴方は、世界の守り手(ディセンダー)より、世界の理の一部を聞きました。本来なら、それ相応の事をしなくては、ならないのです。が、あの子が望んでいないので、今はしません。そこで貴方には、この村の事について黙っておいて欲しいのです。」

「それは、御魂や四大・世界の救世主(ディセンダー)という存在に、か?」

「……御魂は、そうですね。そこまで重要ではないでしょう。ですが、我々と、世界の世界の守り手(ディセンダー)の事はそうです。」

「承知した。他言無用にしよう。」

 

ディセンダー(エント)がホッとしたのだが、

 

「それはそうと、世界の守り手(ディセンダー)に付けた名の事ですが。」

「エントという名か。……名付けては、まずかったのか。」

「いいえ。他の世界の守り手(ディセンダー)にも、名はありました。問題は、その名を、誰にもばらさせない事です。あの子は、世界の守り手(ディセンダー)です。名を知られれば、利用されてしまう。」

「それはこの世界で、か。それとも、別の世界で、か。」

「この世界内なら、世界の守り手(ディセンダー)自身にも、そして、我々にも対処は出来る。だが、この世界以外の手に、名が知られれば、世界の守り手(ディセンダー)の名を通して、情報を取られてしまう。特に、あ奴らに。」

「名を知られるだけで、そんな事が起こるのか。」

 

これには、世界の守り手(ディセンダー)が、いや、ディセンダー(エント)が答えた。

 

「普通の人に名を知られても、そんな事はありません。ですが、僕と同じ存在……つまり、世界の守り手(ディセンダー)が知れば、情報を読み取れます。そして、それを通して、契約している精霊、世界樹を知る事になる。世界樹は、元々世界の因子があるので、ある程度は知っているとは思います。しかし、世界樹も全てを記憶する事は難しいんです。だから、世界の守り手(ディセンダー)の奥底には、世界の記憶が眠っています。なので、世界の守り手(ディセンダー)の因子を持っている者がいれば、前のいた世界の記憶を埋め込まれているはずです。世界の守り手(ディセンダー)に名がある事は、己の印と同時に情報を知る為の鍵なんです。」

『この世界には、今は亡き世界、パスカの住人の者達が海の底で眠っている。この世界に、パスカの因子と、世界の守り手(ディセンダー)の因子を受け継いだ者がいるから……僕には、コンタクトは取れないけど。』

「そうか。その名も、二人の時以外では言わない事にしてはいるが、やめた方が良いか?」

 

ディセンダー(エント)が悲しい顔をした。

 

師匠(せんせい)に、これ以上迷惑は掛けられないし。仕方ない……か。』

 

と、精霊・シルフが怒った。

 

「それじゃあ、エント(ディセンダー)が可哀想でしょ。名を与えた以上、責任取りなさい!」

「ちょ!?シルフ、落ち着いて。ご、ごめんなさい、師匠(せんせい)。でも、できれば僕の名を呼んで貰えると嬉しいです。」

「そうか。」

 

と、頭を撫でる。

ディセンダー(エント)は嬉しそうだ。

と精霊・ウンディーネが、

 

「ですので、もし貴方が、この事を誰かに言った場合、正確には理の事をですが……その時は殺しますから。」

 

ディセンダー(エント)とクラトスは、息を飲んだ。

ディセンダー(エント)は恐る恐る、

 

「ウンディーネ、出来れば穏便にして欲しいんだけど……」

「大丈夫ですよ、世界の守り手(ディセンダー)。この者が、ちゃんと約束を守れば良いだけです。」

「それに、災厄知った者全員殺さねばならなくなるからな。肝に銘じておけ。」

 

ディセンダー(エント)は絶句していた。

クラトスはディセンダー(エント)に笑いかけ、

 

「大丈夫だ、約束はちゃんと守る。」

 

そう言って、精霊……特に精霊・ウンディーネと精霊・イフリートが、クラトスに対し厳しく当たるのであった。

今日の一日は、主にクラトスに取っては辛い感じの一日だった。

ディセンダー(エント)は主に、見ている事しかできなかった。

 

 

クラトスが帰る日、いつものように稽古を終え、ディセンダー(エント)は空を眺めていた。

クラトスは、長老の家に最後の挨拶を言いに行っている。

バルバトスとは、あれから会うことは出来なかった。

 

師匠(せんせい)……今日帰ってしまうんだ。寂しいな。僕、師匠(せんせい)に、何も恩返しが出来てないなぁ……。そうだ!確か、前の世界の世界の救世主(ディセンダー)が、お守りを創っていたな。』

 

決心したように、ディセンダー(エント)は森の中行った。

 

「この辺で、いいかな。世界樹、お願いがあるんだけど……」

 

しばらくして、世界樹から応答があった。

 

「何ですか、世界の守り手(ディセンダー)。」 

「あのね、世界樹の枝を少しだけ分けて欲しいんだ。お守り創りたくて。」

「良いですよ。手を出しなさい。」

 

と、手を出した。

そこに、世界樹の枝が落ちて来た。

ディセンダー(エント)は、それを手で大事に持ち、

 

「世界樹、ありがとう。」

 

と言って、急いで家に帰る。

家に帰り、クラトスにお弁当を作り出した。

 

師匠(せんせい)の教わった事、全てを注ごう!』

 

四大達は頑張るディセンダー(エント)を、ずっと見守っていた。

 

世界の守り手(ディセンダー)、前より手つき良くなったわよね。〟

〝ええ。前に比べれば、本当良くなりました。味も良くなりましたしね。〟

 

と、四大達が過去を振り返っていると、お弁当ができた。

と、家の前に、クラトスが長老とエミリィと共に帰って来た。

お弁当を持ち、四人で村の入口へ着く。

 

「騎士様、どうか無事帝都に帰れるようお祈りしています。それと、騎士様。とても厚かましい事と分かっていますが、もし王に会えたならば……戦争を早く終わらせて世界に平和を、と……」

 

クラトスは少女に頷き、長老に頭を下げていった。

 

「村長殿、この数週間大変お世話になりました。こやつもお借りしてしまって、申し訳ない。村長殿、どうかお元気で……」

 

長老は、クラトスを見上げ、髭を触りながら言った。

 

「いやいや。クラトス殿も、どうか無事に帝都へお帰りくだされ。またこの村の近くを通った時は、気なげなく訪れてくだされ。クラトス殿なら、いつでも歓迎いたしますゆえ。ノイッシュも、クラトス殿を頼んだぞ。」

 

そして、「フォホホ」と笑った。

ノイッシュは「任せろ」と言うかのような顔で、一つ鳴いた。

そして、ディセンダー(エント)を見ながら、孫娘に言った。

 

「さあ、エミリィ。我々は帰ろう。ディセンダーと話したい事もあるじゃろう。」

 

エミリィは、お辞儀をして長老と帰って行った。

ディセンダー(エント)は、

 

『世界の平和……僕が早く、皆が安心して暮らせる様にならなくちゃ。』

 

クラトスは微笑を浮かべながら、ディセンダー(エント)の頭を撫で、

 

ディセンダー(エント)。お前には世話になった。おかげで無事旅立てる。」

 

ディセンダー(エント)は寂しそうな表情で、クラトスを見上げてお弁当を渡しながら言った。

 

「僕の方こそ、師匠(せんせい)と暮らせた事、とても楽しかったです。父や兄がいたら、こんな風だろな、と思いましたから。……、お弁当は自信作です。」

 

と、ガッツポーズを取っている。

クラトスは、これまでの日々を思い出しながら言った。

 

「ああ、楽しみにしておく。ディセンダー(エント)、あまり一人で抱え込むなよ。」

「はい。それと師匠(せんせい)、手を出してください。」

 

と、微笑を浮かべて、そう言う。

クラトスは手を出した。

すると、一つの珠を包んだ樹のペンダントがある。

珠の中を覗くと、光輝いていた。

ディセンダー(エント)は恥ずかしがりながら言った。

 

「お守りです。世界樹にお願いして、枝を分けて貰って、ディセンダーの力(僕の力)を包みました。世界樹に包まれれば、ディセンダーの力(僕の力)は消えませんから。……、道中気を付けてください。無論、ノイッシュも気を付けるんだよ。帰って来た時には、僕に帝都の話を聞かせてね。」

 

と、ノイッシュの頭を撫でながら言った。

それから、エントはノイッシュと少し話していた。

 

「ノイッシュ、村の外は魔物とかもいるから気を付けるんだよ。元気でね。友達、ちゃんと作るんだよ。」

 

その後、クラトスは「さらば」と言って、ノイッシュに乗って旅だった。

ディセンダー(エント)は、クラトスが見えなくなっても、しばらくずっと見ていた。

 

師匠(せんせい)、お気を付けて……。出来れば、また会いたいな。』

 

 

次の日、エミリィはディセンダー(エント)を連れて、バルバトスの元へ向かった。

バルバトスは湖を眺めていた。

ディセンダー(エント)は声を掛けた。

 

「バト……、やっと村に顔を出してくれたんだね。」

 

バルバトスは振り返り、腕を組んだ。

こちらを見渡してから言った。

 

「あの騎士野郎はどこだ。今度こそぶち倒してやる。」

 

ディセンダー(エント)は微笑を浮かべていた。

エミリィが呆れたように言った。

 

「まったく。騎士様は、あなたが山籠もりしている間に帝都に帰ったわよ。」

 

と、腰に手を当てて言った。

バルバトスは「何⁉」と怒っていた。

 

「あの騎士野郎⁉勝ち逃げだと‼」

 

と、地面をガンガン蹴っている。

ディセンダー(エント)は、バルバトスを見上げて言った。

 

「バト。僕、今よりももっと強くなる。この村を、世界を守れるくらいに‼」

 

バルバトスは地面を蹴るのをやめ、ディセンダー(エント)に口の端を上げて言った。

 

「くくく、期待せずに待ていてやろう。」

 

そのあと、三人はいつものように会話を始めるのだった。

その光景を、四大達は暖かく見守るのだった。

 

 

ディセンダー(エント)は町の入り口で、人が立っているのが見えた。

 

『もしかして、師匠(せんせい)が来てくれたのかな?』

 

だが、そこにはクラトスではない人が立っていた。

その人はディセンダー(エント)を見た途端、こっちに近づいて来る。

 

「少年、ここの村長に、会わせて貰えないだろうか。」

「えっと、申し訳ありませんが、貴方はどちら様でしょうか。」

「私は、この国の宰相である。此度は、ここを視察しに来た。では、案内を頼もうか。」

 

と、ディセンダー(エント)を押しのけて進む。

仕方なく、ディセンダー(エント)は宰相を村長の家へと案内した。

エミリィが、宰相に茶を出して席を外すように言われたので、ディセンダー(エント)と共に広場に来ていた。

途中、バルバトスに会ったので、一緒に来た。

三人はベンチに座り、グミを食べていた。

ディセンダー(エント)は、いきなり村を覆う世界樹の加護が消えたのに気が付いた。

 

『加護が消えた⁉世界樹の御魂に、何が起きたんだ!』

 

急いで、ディセンダー(エント)は精霊に叫ぶ。

 

〝ノーム、シルフ!祠に行って、世界樹の御魂を調べてくれ。〟

〝分かったわ!〟

 

と、立ち上がる。

村長の家に向かおうと歩き出した瞬間、誰かとぶつかった。

 

「す、すいません。」

 

と、相手を見ると何と宰相だった。

宰相は慌てて、村を出て行った。

ディセンダー(エント)は、バルバトスに起こして貰った。

エミリィは心配している。

 

「たく、あの野郎。何なんだ?」

「あれは、この国の宰相よ。何でも、ここを視察しに来たとか、言っていたけど……」

「今更、ここに何の用だってんだ?だが、村出てっちまったぞ。」

 

そこで、精霊・シルフ達から連絡が来た。

 

ディセンダー(エント)、大変よ!〟

〝御魂に何かあったの?〟

〝その御魂が無いのだぞぉー。〟

〝代わりに、長老が蒼い顔して走って行ったわよ。なんか、騙されたとか、何とか。〟

〝っ!すぐに皆こっちに来て!〟

 

そう言って、バルバトス達を見て言った。

 

「どうしよう……追いかけた方が、良いよな!」

 

と、走りだした所で、バルバトスに腕を掴まれる。

 

「おい、ディセンダー、どうした。これから暗くなるってのに、何処に行く気だ‼」

「さっきの宰相が、世界樹の御魂を奪っていったんだ‼今なら追いつく!」

「何だと⁉だったら、俺様が行く。お前達は、ここで待っていろ。」

 

と言った瞬間、変な匂いがした矢が大量に振って来た。

そいて、それを追うかのように、大量の魔物が押し寄せて来た。

ディセンダー(エント)とバルバトスは、魔物と戦闘を始めた。

村人達も戦い始めた。

しかし、魔物の数が多い。

ディセンダー(エント)は、剣を握りしめる。

 

『このままじゃ、村が‼仕方ない!』

 

ディセンダー(エント)はキッと気持ちを引き締め、

 

「四大達よ、お願い!力を貸して!」

 

そう言った瞬間、四大達が姿を現し、ディセンダー(エント)と共に戦い始めた。

しばらく、戦い続けていて、ある事に気付いた。

だんだん魔物達が、統一してこの村から逃げて行く。

 

〝ラタトスクが気づいてくれたのかな。これで、何とか魔物は大丈夫だ。問題は、矢を放った者達だ。シルフ辺りを調べてくれ。〟

〝分かったわ。……ディセンダー(エント)、気を付けなさいよ。〟

 

残っていた魔物を殲滅した時には、村人を二十人近くを失った。

だが、精霊・シルフから連絡が入る。

 

ディセンダー(エント)、人間よ。あの騎士とは違った格好をした奴らが、沢山いるわ。〟

〝恰好が違う?隣国の騎士達かな?〟

 

休む間もなく、今度はその隣国の王都騎士団が攻めてきた。

ディセンダー(エント)も応戦しながら、

 

「何故、この村を襲う?ここには、もう世界樹の御魂はないというのに!」

 

すると騎士は、にやにやしながら、

 

「そうか、御魂は奪われたか……。あの宰相、我々の裏をかいた訳か。それにしても、自国の宰相に裏切られ、売られるとは哀れだな。安心すると良い。この村は、我々がこの国を責める拠点として使わせて貰う。」

『何だよ、それ!この村の人々を、村をそんな理由で襲うのか!許せない!』

 

ディセンダー(エント)は、怒りというものをはっきり解った気がした。

その騎士を、ディセンダー(エント)は怒り満ちた剣で切り倒した。

その瞬間、ディセンダー(エント)は固まった。

 

『魔物は、よく倒していた。他の生き物も、僕は季里って斬っていた。それこそ、人間やハーフエルフとかも……。でも僕は、この世界で初めて(・・・・・・・・)人型を斬った……』

 

ディセンダー(エント)の手は震えていた。

そして、隙だらけの彼に、王都騎士団の一人が、斬りに掛かった。

バルバトスは叫びながら、

 

「ディセンダー!何をしている。戦え‼」

 

ディセンダー(エント)は「は!」として顔を上げ、剣を握る。

しかし、彼は動けなかった。

 

〝!ディセンダー(エント)、どうしたのです!早く避けるなり、戦うなりしないと、貴方が死んでしまいます!〟

 

精霊・ウンディーネが、こちらにやって来る。

精霊・ウンディーネが庇うより早く、ディセンダー(エント)の前に人影が生まれ、彼を守った。

そして、斬った騎士は、バルバトスによって斬られた。

ディセンダー(エント)を庇ったのは、エミリィだった。

エミリィからは、血が大量に流れ出ている。

ディセンダー(エント)は急いで、治癒術を掛ける。

長老もこっちに来て、エミリィを見始める。

バルバトスは「くそ‼」と言って、騎士達をどんどん斬っていく。

エミリィは、ディセンダー(エント)を見上げる。

 

「ディセンダー……泣かないで。私は大丈夫だから……」

 

ディセンダー(エント)は、治癒術をめいいっぱい掛けながら、

 

「どうして、僕を庇ったの!僕、エミリィが死んだら嫌だ!」

 

エミリィは優しく笑い、ディセンダー(エント)の顔に優しく触れた。

 

「当たり前でしょ。血は繋がっていなくても、種族は違っても……貴方は、私の大事な弟なのよ。赤ん坊の時から、貴方は泣き虫で……でも、それは貴方が誰よりも優しいからよ。ディセンダー……私達の所に来てくれて、ありがとう……」

 

と、エミリィは、苦しそうにし始めた。

治癒術をより高めようとした時、騎士が長老の後ろに立ち斬りかかろうとした。

ディセンダー(エント)は剣を取り、騎士を斬った。

騎士は、次々こっちにやって来る。

ディセンダー(エント)は、騎士達に斬り掛かりに行った。

 

『頼むから……邪魔をしないでくれ‼』

 

ディセンダー(エント)が戻った時には、エミリィは死んでいた。

その亡骸を、長老は泣きながら抱き抱えていた。

ディセンダー(エント)は崩れ落ち泣き叫んだ。

 

「ごめん、ごめん。リィ姉!うわぁ――――。僕のせいで……ごめん、リィ姉‼」

 

姿を消して近づいて来た四大達は、そんなディセンダー(エント)をただ見ているだけしかできなかった。

 

世界の守り手(ディセンダー)……ディセンダー(エント)……〟

 

 

次の日、世界樹の加護がなくなったこの村を出て行くと、多くの村人が村を去って行った。

ディセンダー(エント)は、エミリィの墓の前で立っていた。

彼は悩んでいた。

 

『これから、僕はどうしよう。これは、世界がもうやばいという事なのかもしれない。そうなら、僕はこの村を出て、世界を救いに行った方が良いのか……。でも、そんな事をしたら、この村に残った人達はどうなるのか。』

 

と、ディセンダー(エント)の後ろに誰か来た。

振り返ると、長老が花束を持ってやって来た。

それを多くの墓の中心に置き、黙とうを捧げてから、エミリィの墓に近づいて来た。

長老は孫娘の墓の前に膝を付き、

 

「すまなんだ、エミリィ。ワシは、お前の両親が死んだ時に誓った……息子夫婦に代わり、お前さんを守ると……。ワシが不甲斐無いばかりに、お前を、そして村人を多く失ってしまった。」

 

と、泣き続けた。

ディセンダー(エント)も膝を付き、長老の背を擦った。

 

「長老、ごめんなさい。僕を庇ったから、エミリィは……本当にごめんなさい。」

 

長老は首を振った。

そして、ディセンダー(エント)の腕を掴み、

 

「お前さんのせいではない。お前さんは、ワシにとっても、大切な存在じゃ。……、ディセンダー。頼む、ワシらを、村人を、この村を、見捨てないでくれ(・・・・・・・・)。ワシらは、お前さんが居なくなったら、やってはいけぬ。それに、ワシはもう家族を失いたくないのじゃ……」

 

ディセンダー(エント)は、しばらく悩んだ。

 

『世界樹を裏切るかもしれない。僕は世界より、この村を守ろうとしている。たとえ、理に縛られても。僕の生まれ育った、この村を、育ててくれた長老を残してはいけない。』

 

ディセンダー(エント)は微笑しながら、優しく長老に言った。

 

「大丈夫。ここに残るから。長老を一人にしないよ。」

 

と言って、しばらく長老とエミリィの墓の傍にいた。

と、今度は荷物を抱えたバルバトスがやって来た。

バルバトスは、エミリィの墓の前で黙とうを捧げた後、

 

「ディセンダー。俺は、この村を出て行く。お前はどうする。」

 

ディセンダー(エント)は、バルバトスが悲しみを押し殺し、怒りを、そして静かなる闘志をたぎらせているのに気が付いた。

 

『このまま、バトを一人で行かせてはいけない。でも……長老に、ここにいると約束した。……バト、ごめん。』

 

バルバトスは歩き出し、ディセンダー(エント)を越していった。

ディセンダー(エント)は泣きながら言った。

 

「僕は……この村に残る。この村に残った人達を守るよ。……僕は、この村を見捨てる事は出来ないから。」

 

バルバトスは少し笑った。

いつものように、

 

「そうか。では、ここでお別れだ。ディセンダー……強くなれ。」

 

ディセンダー(エント)は、去って行くバルバトスの背に、

 

「バルバトス……僕は強くなるよ。きっと君をいつか越せるくらいに!」

 

と、叫んだ。

 

 

バルバトスが、村から居なくなってから、ディセンダー(エント)は村の復興に尽くしていた。

加護を失ってからの村は、まともにマナも集まらない。

ディセンダー(エント)は、四大達に手伝って貰って、だいぶ村も良くなってきた。

しかし、村に残った者達の心は壊れかけていた。

ディセンダー(エント)は、皆に接する時は笑顔でいた。

そうすることで、ディセンダー(エント)自身も、大切な人達を失った事を忘れるような気がしたからだ。

そんなディセンダー(エント)は、毎日池に来ていた。

後ろに、誰か来たのが解る。

振り向くと、精霊・ラタトスクがいた。

そして、精霊・ラタトスクは怒っていた。

 

「おい、世界の守り手(ディセンダー)!何故、この村に留まっている!」

 

ディセンダー(エント)は悲しそうな顔で、

 

「僕は、この村を見捨てることは出来ないよ。僕は……ここを守っていく。」

「馬鹿か!このままだと、お前は世界樹を裏切る(・・・・・・・)ことになるんだぞ!」

 

ディセンダー(エント)は泣きながら、

 

「それでも!僕は、ここが大事なんだ!」

『これ以上、僕は失いたくないんだ。たとえ、世界を裏切ったとしても‼』

 

精霊・ラタトスクは背を向けた。

 

「そうかよ。だったら、俺様は知らん!」

 

と消え去った。

その後、精霊・マクスウェルと四大が入れ替わる様に出て来た。

 

「久しいの、世界の守り手(ディセンダー)。我の事、覚えておるかの?」

 

ディセンダー(エント)は泣くのを止め、精霊・マクスウェルを見上げた。

 

「……、精霊の主・マクスウェルですね。……残念ですが、僕自身の子供の事を言っているなら、まだ思い出せていないんです。」

 

精霊・マクスウェルは残念そうに、髭を擦った。

 

「そうかぁ、それは残念じゃ……。では、本題に入ろうかの。」

 

真剣は気持ちで耳を傾けた。

 

世界の守り手(ディセンダー)……いや、ディセンダー(エント)や。其方は、これからどうする気じゃ。」

「僕の気持ちは変わらない。僕は、この村の人々を、村を守り続けていく。たとえ、世界樹を裏切る事になっても。」

 

精霊・イフリートが腕を組んだまま、

 

「本気か、ディセンダー(エント)。そんな事をすれば、お主は代償をおう事になるんだぞ。」

「その覚悟は出来ている。僕は、望むからには絶対に後悔しないし、恐れない。大切な物を守る為に、僕は僕自身を信じる。」

 

精霊・マクスウェルが懐かしむ様に、

 

「ふぉおおお、不可能も、恐れも知らない訳ではあるまいに。それすら超えるか。では、ここに残ってどのようにこの村を守る気じゃ。」

「っ!マクスウェル様、何を言っているのですか!それでは……」

 

だが、ディセンダー(エント)は真っ直ぐ、精霊達を見つめ、

 

「僕が、この村に結界を作る。そして、この村に必要なマナは、僕自身が出す!」

「……承知した。我は、他の者が何と言おうが其方に付こう。」

「……本気なのですね、ディセンダー(エント)。」

 

ディセンダーは頷いた。

精霊・イフリートが、初めてディセンダー(エント)を叱った。

 

ディセンダー(エント)!お主は、解っておらん。確かに、この村は、お主にとって大事なのは解る。だが、ここだけに目を向けるのは駄目だ。世界を救えば、この村も必然と守れるだろう!」

「確かに、イフリートの言う通りだよ。でもね……僕にとっては、初めてできた故郷(・・・・・・・・)なんだ‼初めてできた大切な存在が、僕自身が生まれ育った大切な場所なんだ!」

「……、それは解る。だが、それではあ奴と同じになってしまう。……我は、もう知らぬ。」

 

と、背を向け消えて行った。

 

『おそらく、イフリートは僕を許さないだろう。多分、イフリートの知る世界の守り手(ディセンダー)が、世界樹を裏切っているのかも。……仲直りできると良いな。』

 

その後、精霊・ノームは呼べば来てくれると言ってくれた。

精霊・シルフと精霊・ウンディーネは、このままディセンダー(エント)に付いててくれるようだ。

ディセンダー(エント)は、精霊・シルフ達に力を借り、自分の力と合わせて村を結界で覆い、マナを己の命で創りだした。全てが終わった時、彼には痛みがきた。

 

『ぐっ!背中が痛い……これが代償、か。』

 

と、翼が広がった。

精霊・ウンディーネ達は悲しそうな顔をしていた。

 

「僕は大丈夫だよ。今日はもう家に帰ったら寝よう……」

 

と、家に向かって帰った。

精霊・マクスウェルは、最後にディセンダー(エント)の頭を撫でてから消えて行った。

 

『この翼……前に見た彼女のようだなぁ。そうなると、やっぱり彼女は、僕の後の世界の守り手(ディセンダー)か。』

 

代償を受けてから、日に日に苦しさが増している。

村を覆う結界はディセンダー(エント)の力、村を直すのに使っているマナは、ディセンダー(エント)の命。

 

『後悔はしていない。僕のこの力で、村の皆はだいぶ良くなった。外の人に対しては、まだあれだけど……今頃、師匠(せんせい)は、どうしているかな……』

 

 

彼のそれは、五年も続いた。

ディセンダー(エント)の翼は、黒くなりつつあった。

彼自身、少しまずいかもしれないと思っていた。

だが、彼はそれでも続けていたのだ。

そして今日も、いつもの日課である村の外れの見回りを、精霊・ウンディーネと精霊・シルフと共にしていた。

そして、空を見上げ心痛な顔をしながら呟いた。

 

「……ここも、結界が壊れかけている。」

〝最近、多いわね。ディセンダー(エント)、無理してない?〟

〝そうですね……。翼の色も、最近は黒味が増しています。〟

 

ディセンダー(エント)は、それには答えなかった。

いや、答えられなかった。

答えれば、自身の過ちと懺悔を認めてしまう。

それでも、自身の選んだ道を後悔していない。

その矛盾の中で、戦っているのだ。

 

そして、ディセンダーは両手を上げて目を瞑った。

ディセンダー(エント)の体が輝きだし、手に集中する。

しばらくして、光が消えていき、目を開けて手を降ろす。

ディセンダー(エント)は少し苦しい顔をして、

 

「こ、これで……、大丈夫……」

 

彼は、肩で息をしながら言った。

そして、その場に座り込んだ。

精霊・シルフは近づこうとしてやめた。

 

『……っ、僕の力が、かなり少なくなっている。それに、世界樹も。……ごめん、世界樹……ごめん……』

 

あれから、世界の守り手(ディセンダー)として、色々な事を知るようになった。

そして彼は、幼かった頃の事も思い出していた。

なにより、今の彼は世界樹とのリンクを切っている。

だがら、あれから世界樹とはもう会話すらしていない。

それでも、彼には世界樹の声は聞こえていた。

だが、彼はその返事をしないのだ。

 

少し休憩してから、彼らは広場へ向かった。

 

ディセンダー(エント)、あんまし無茶しちゃダメよ。」

「うん、解ってるよ。大丈夫だから。」

「……毎回、そう言ってますよ。ディセンダー(エント)……」

 

広場に着くと、村の入り口で村人達がいきり立っている。

中には、武器を手に持っている者もいた。

ディセンダー(エント)は急いで走り出した。

 

『もしかして敵⁉それとも、モンスターが村に⁉でも、どうして!』

 

だが、村の入り口から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「私の名は、クラトス・アウリオンと言う。この村の村長殿に会いたい。」

 

村人は、「騎士が来た」と襲い掛かっていた。

ディセンダー(エント)はこの名前を聞き、村人に大声で言った。

 

「皆、待って‼その人は大丈夫だから。」

 

ディセンダー(エント)は、村人の前に手を広げて飛び出した。

そして、「落ち着いて」と言った。

その後、「長老を呼んで来てほしい」と頼んだ。

村人は武器を降ろしたが、まだ旅人に敵意を向けている。

ディセンダー(エント)はどうしようかと迷ったが、旅人に振り返った。

クラトス(師匠)とノイッシュがいる。

それと、三人のハーフエルフがいた。

ディセンダー(エント)は笑顔で言った。

 

師匠(せんせい)、お久しぶりです。お元気そうで良かった。ノイッシュも、元気そうで良かった。」

 

と、ノイッシュの頭を撫でて言った。

クラトスは少し笑って、ディセンダー(エント)の頭を撫でながら言った。

 

「大きくなったな。……、稽古は続けていたようだな。」

 

ディセンダー(エント)は微笑を浮かべて頷いた。

 

師匠(せんせい)だ。変わってないな。なんか、嬉しいなぁ。』

 

すると、ジーと見られているのに気付いた。

ディセンダー(エント)より二・三歳年下に見える金髪の少年だ。

彼の目には、ある種の敵意を感じる。

ディセンダー(エント)は、それに気づかない振りして、手を出し笑顔で言った。

 

「僕の名前は、ディセンダー。よろしく。」

 

しかし、少年はキッと眉を上げ、緑色の綺麗な二十代前半の女性の後ろに隠れて、ベーと舌を出した。

すると女性は困り顔で、ディセンダー(エント)に言った。

 

「ごめんなさいね。私は〝マーテル・ユグドラシル〟。この子は弟の〝ミトス・ユグドラシル〟よ。」

 

その女性をみた精霊・シルフと精霊・ウンディーネは警戒していた。

 

〝ねぇー、ウンディーネ。あのハーフエルフの女……〟

〝ええ。あの者は、目を付けておいた方が良さそうですね。〟

 

ディセンダー(エント)は微笑を浮かべて、声を出そうとした。

しかし、ディセンダー(エント)の出していた手を、クラトスの横から出てきた青い髪のクラトスと同じ二十代半ばくらいの男性に握られた。

 

「私の名は〝ユアン・カーフェイ〟。お前が、クラトスの言っていた奴だな。うむ……」

 

ディセンダー(エント)は驚いたが、「よろしくお願いします」と言おうとして、ユアンの着ている服に気が付いた。

隣国の騎士団の服(・・・・・・・・)、あの日自分達を襲った騎士団の服。

自分の大切な姉を殺した騎士団の服だ。

 

『この人だから……村の人は、あんなにいきり立っていたんだ‼』

 

ディセンダー(エント)は握っていない方の手で、剣を握っていた。

しかし、その手をクラトスが握り、首を振った。

ディセンダー(エント)は剣から手を離した。

ユアンも、握っていた手を放した。

すると、後ろから長老が来た。

長老は、クラトスに向かい合いあった。

クラトスは、長老に頭を下げて言った。

 

「村長殿、お久ぶりです。お元気そうで何よりです。」

 

長老は髭を擦りながら、

 

「クラトス殿も、お元気そうで何よりですじゃ。……、そちらの方は隣国の騎士殿ですな。」

 

ユアンは、長老に一度お辞儀をしてから話した。

 

「私はユアン。確かに、王都の騎士団の者です。しかし、騎士団を抜けてきました。」

「そうですか……、そちらお二方も、隣国の者ですかな。」

 

と優しい口調で、二人を見て言った。

マーテルは、深くお辞儀をしてから言った。

 

「私はマーテル。こっちは弟のミトスです。私達は、土地を奪われた流れ者です。」

 

長老は「うむ」と唸ってから言った。

 

「それは大変でしたな。クラトス殿も、積もる話もあるようですし……。ここでは何ですから、ワシの家でしましょう。どうぞ、後ろの方々もご一緒に。」

 

そう村長が言った途端、後ろにいた村人が怒りを露わにした声で怒鳴った。

 

「村長‼よそ者を村に入れる気ですか⁉しかも、騎士の者を(・・・・・)‼」

 

長老は振り返って、村人全員を見渡してから静かに言った。

 

「この騎士様方は大丈夫だ。安心なさい。」

 

だが、村人は武器をまた構えている者もいる。

ディセンダー(エント)は剣を手に掛けていた。

 

『災厄の場合は、僕が皆の武器を壊そう。』

 

クラトス達は黙って聞いていた。

より一層、大きな声で村人が怒鳴った。

 

「村長も、忘れたわけではないはずだ‼十年以上も前に、帝国騎士はこの村を見捨てた!五年前には、王都騎士どもはこの村を襲い、多くの仲間が……、家族が殺された事を!村長あんたの孫も―-」

 

それを聞いたとたん、ディセンダー(エント)自身の中で何かが壊れた気がした。

「これ以上聞きたくない」と言うように、ディセンダー(エント)は「ガン‼」と地面を叩くような音でかき消した。

ディセンダー(エント)は、拳を握りしめた。

そして、自分でも知らないうちに泣いていた。

 

ディセンダー(エント)。お願いだから、落ちないでね……〟

『何をやっているんだ、僕は!こうなったのは、全て僕のせいじゃないか!村人に当たっては駄目だ。』

 

村人は一瞬言葉に詰まったが、怒りをしまう事はできなかった。

長老は村人に苦痛めいた声で言った。

 

「無論、わしも、忘れたわけではない。じゃが、戦争中なのじゃ。村を守る事の出来なかったワシにも非がある。今は怒りを抑えておくれ。」

 

村人は納得のいかない顔をしていたが、各々道を開けた。

長老はディセンダー(エント)に「共に来なさい」と言い、素直に従った。

ディセンダー(エント)は、長老と共に歩き出した。

長老の家の大広間で、ディセンダー(エント)の入れたお茶を飲みながら、ユアンが口を開いた。

 

「村長殿、失礼だと解っていて伺います。王都騎士団が、この村に何をしたのかお聞きしたい。」

 

長老はしばらく沈黙した後、髭を触りながらユアンを見て言った。

 

「五年前、世界樹の加護が一度失われた時期があったのです。その時に王都騎士団は、この村を魔物に襲わせたのですじゃ。……魔物を殲滅したすぐに後に、今度は王都騎士団が攻めて来ました。その時、この村は多くの者を失いました。ワシの孫も、その時に……。この子や若い者が先陣を切ってくれたおかげで、何とか生き残ったワシらでしたが、村人の多くはここを出て行きました。この村に残った者は、外部の者を恐れ、信じられなくなってしまったのですじゃ。村人のご無礼、許して下され。」

 

ユアンは飲んでいたお茶を降ろした。

そして長老を見つめて、静かに言った。

 

「確かに、王都騎士団の中に、その戦法がある。村長殿、こちらの方こそ、戦争とは言え、この村には酷い事をした。」

 

と、頭を下げた。

長老は流していた涙を拭いた。

ディセンダー(エント)は、この騎士の言った事を改めて考えていた。

 

『戦法……そうだよな。この世界は、今戦争をしているんだよな……』

 

ディセンダー(エント)が顔を上げると、ユアンが自分を見て言った。

 

「君も、大分辛い思いをしただろう。君のご家族は無事か……」

 

ディセンダー(エント)はクラトスを見た。

すると、クラトスは首を振った。

 

師匠(せんせい)……僕の事は、あまり話していないんだな。』

 

ディセンダー(エント)は苦笑を浮かべて、ユアンに言った。

 

「僕には、肉親はいません。この村の皆が、僕の家族です。」

 

ユアンは目を見開いて、「すまない」といった。

そこで、子供の声が聞こえた。

 

「それにしても、この村はクラトスの言った通りなんだね。村長がエルフで、多種族で構成させた村なんて。今時、珍しい。」

 

隣に座っていた女性は『すいません』と言う様に、頭を下げた。

長老は「ふぉほほ」と笑いながら、優しい口調で少年に言った。

 

「なーに。この村は元々、帝国に捨てられた所でな。残った者や流れ者が集まって、出来たのじゃよ。だから、皆、異種族が集まって暮らして居ても、それが当たり前と言う感じなのじゃよ。」

 

少年は「へぇー」と言って、お茶を飲んだ。

そこで、長老はクラトスを見て、髭を撫でながら言った。

 

「クラトス殿、ここに来る途中の道中は、どうでしたかな。」

 

クラトスはひとつ頷いて、真剣な顔付きで言った。

 

「とても、まずい状態です。王が床に伏せってから、戦火が広がっています。ここに来る途中も、村が幾つか壊滅していました。」

 

ディセンダー(エント)はクラトスの言葉を聞き、顔を真っ青にした。

 

『おそらく、その大半は僕に対する行為だな……。世界中に、負が満ち始めている事は知っている。そのせいで、人々の負の感情はより一層高ぶっている……』

 

長老は、なお一層、髭を撫でた。

 

「うーむ、そうですか……。最早、この戦争は止められないのかもしれませんな。」

 

そう言って、全員は沈黙した。

しばらくそうしてから、長老が言った。

 

「今日は、皆さんここに泊まっていて下され。部屋は好きな所を、お使い下され。」

 

そう言って、ディセンダーを見ながら言った。

 

「すまんが、ディセンダー。食事の用意をしてはくれんかのぉ。」

 

ディセンダー(エント)は長老に頷いて、部屋を出て行った。

 

精霊・ウンディーネは精霊・シルフを見て、

 

〝シルフ。私は、ここに残ります。〟

〝……分かったわ。〟

 

精霊・シルフは、ディセンダー(エント)の後を追った。

彼は料理の準備をしながら、精霊・シルフに話し掛けた。

 

「久しぶりに、沢山作るな。何が良いと思う?」

「簡単なもので、いいんじゃない。」

「えー。それが、一番困るんだよなー……」

 

ディセンダー(エント)は嬉しそうに、料理を作り出す。

その姿を、精霊・シルフは嬉しそうに見ながら、

 

〝『良かった……。ディセンダー(エント)、少し明るくなった。あの下界人は気に入らないけど、お礼はしないといけないわね。』〟

「よし!これで大丈夫、と。さて、呼びに行こうか。」

 

調理を終えた、ディセンダー(エント)は長老達を呼びに行った。

部屋のドアの前に立ち、「コンコン」と叩く。

中に入り、周りの雰囲気から頃合いだったうようだ。

 

「長老、食事の用意が出来ましたよ。皆さんも、下においで下さい。」

 

ユアンとマーテルは、長老にお辞儀をして出る。

ミトスは一度、ディセンダー(エント)を見ると、「フン」とそっぽを向いて出て行った。

ディセンダー(エント)は、彼のそんな態度に、

 

『僕って、見た目が普通の人間と違うから、違和感があるのかな。それにしても、僕は嫌われているな。まぁー、この村の子供は少ないし……。僕より年下の子も、もう居ないし……。やり辛いなぁー。』

 

とりあえず、ディセンダー(エント)は彼の事は置いといた。

残っているクラトスと長老を見た。

長老はクラトスを見ていた。

何かに気が付いたかのように、クラトスが立ち止った。

 

「ありがとう、ディセンダー。今日は、お前さんも泊まって行きなさい。それと、クラトス殿とワシは少し遅れて行くから、先に食べてくれ。」

 

ディセンダー(エント)は、「分かりました。」と言って、部屋を出た。

 

『長老、師匠(せんせい)と何を話しているんだろう。』

 

ディセンダー(エント)は、精霊・ウンディーネに語り掛ける。

 

〝……ウンディーネ。後で彼等の話、少しだけ教えて。〟

〝ええ、分かっています。〟

 

ディセンダー(エント)が居間に入った時、席の取り合いが始まった。

 

『マーテルさんの隣を取り合っているのか……。えっと、弟のミトスが、ユアンさんを嫌っている……のかな?』

 

ディセンダー(エント)は近い所に座る。

だが、それをどう対処して良いのか分からず、見ていた。

そうしている間に、長老とクラトスが入って来る。

ディセンダー(エント)は、クラトスに助けを求めた。

長老は席に着き、クラトスも席に着きながら、

 

「ミトス、落ち着け。お世話になっているのだから、食事ぐらい静かにしなさい。それとユアン。お前は、もう少し自重しろ。」

 

すると、二人は素直に謝った。

マーテルも「申し訳ない」と言う顔で、頭を下げた。

長老は「ふぉほほ」と笑いながら、嬉しそうに言った。

 

「いやいや。こんなに賑やかな食事は、いつ振りか。クラトス殿、ディセンダーの料理は、本当に美味しいですぞ。」

 

と、孫を褒めるように言いながら、食べ始める。

クラトスも食事を見渡した後、一口食べる。

 

師匠(せんせい)、褒めてくれるかな。』

 

ディセンダー(エント)はドキドキしながら、クラトスを見ていた。

クラトスは嬉しそうに、言い出した。

 

「確かに、以前より比べものにならないくらい上達したな。身のこなしも、上達していた……。成長したな。」

 

ディセンダー(エント)は嬉しかった。

斜め横では、ミトスが顔をムッとしたのを感じた。

が、気付かない振りをした。

そして、食事の後、張魯の家で暮らしていた時の部屋に入った。

ディセンダーは真剣な顔で、精霊・ウンディーネに聞いた。

 

「それで、師匠(せんせい)達は何て?」

「彼等は、今起きている戦争を対処する為、各地を回りながら旅をしているようです。その原因を、異種族による差別、王や貴族達による世界改革。そしてなりより、マナの枯渇と言っていましたよ。」

「そう……。師匠(せんせい)は、もう動いているんだ……」

「……。さ、貴方も、もう寝ておきなさい。今なら寝られるでしょう。」

「……そうだね。じゃあ、お休み。」

 

と言って、ディセンダー(エント)は眠った。

精霊・ウンディーネと精霊・シルフは外に出た。

 

〝あの人間は、我々以外の精霊に会ったようです。その精霊が、誰かは言いませんでしたが……世界樹が、世界の守り手(ディセンダー)を呼んでいる、と言っていたそうです。〟

〝それって、あの子を……ここから連れ出すって事?〟

〝ええ。この世界のマナが枯渇しているのは、世界に種族が多く居過ぎる為。世界樹が、それに伴う負の想念の処理が遅れている為……と言うのは、我々も知っていますが……その処理を出来るのは、もう一人‥……〟

世界の守り手(ディセンダー)、よね。でも、あの子は多分この村を出ないわね。〟

〝ええ。我々は見守りましょう。あの子の決断を……〟

 

精霊二人は、静かに眠る世界の守り手(ディセンダー)を見つめた。

 

 

次の朝、ディセンダー(エント)はハーフエルフの少年・ミトスと出かけていた。

二人はとてもぎこちない。

と、言っても、ミトスの方が一歩的にディセンダー(エント)の事を嫌っているようだった。

だが、彼のお気に入りの池にきて、二人は初めて本音の話をした。

そんな二人は、とても息が合うようになった。

ディセンダー(エント)にとっては、同い年の友達は彼が初めてだった。

だが、それと同時にディセンダー(エント)は気づいてしまったのだ。

(ミトス)が、彼自身(ミトス自身)としていられる事が。

大切な人達と、ずっと共にいられる(ミトス)が。

精霊・シルフは、そんなディセンダー(エント)の顔をじっと見た。

彼の目の中にある淋しさを感じる。

 

ディセンダー(エント)……。ごめんね。私達、傍に居るのに、貴方に何も出来なくて……〟

 

 

ディセンダー(エント)は、ミトスと仲良くなったのがとても嬉しかった。

そして、今日は自分の自宅に帰って来ていた。

 

『久ぶりに、同世代の子供と話せたなぁー。何か嬉しいや。師匠(せんせい)が、この村にまた来てくれてから、嬉しい事が増えたな。何より、ミトスと友達になれたのが一番嬉しい。』

 

彼はベッドの上で、嬉しそうに微笑んでいた。

そんな姿を、嬉しそうに精霊・シルフと精霊・ウンディーネは見ていた。

すると、玄関から「コンコン」と音がした。

ディセンダーは起き上がり、玄関に向かった。

 

『こんな時間に、誰だろう……』

 

と思いながら、玄関を開けた。

玄関には、一枚の手紙が落ちていた。

そして、地面には魔物の足跡がある。

ディセンダー(エント)は、その手紙を見た。

何も書かれていない封筒の口を開けて、中身を見る。

その中にあった手紙の文を見て、ディセンダー(エント)は一気に顔を青くした。

精霊・シルフ達も気を引き締めた。

手紙には短く〝最早、時間はない。〟と、書かれていた。

 

『この手紙の主は、あいつか……。世界樹の限界が近いのか……それとも、あいつ等自身の待つという事の限界か。どちらにしても、村の結界を強くしておかなくては……』

 

朝早くから、ディセンダー(エント)は結界の弱くなった箇所を回っていた。

それと同時に、村の結界をさらに強くしていた。

 

『手紙を見る限りでは、ラタトスクだけではなく、ダオスも動き出すはずだ。あれは、別の世界では、世界の守り手(ディセンダー)に対して、怒っていたからな。正確には、世界を裏切った世界の守り手(ディセンダー)に、だけど……』

 

その強化を終え、自宅に戻った。

自宅の前には、師匠(せんせい)達が来ていた。

ディセンダー(エント)は、彼等に声を掛けた。

 

「あれ?皆さん、おはようございます。今日は、どうしたんですか?」

 

すると、ミトスはバッと顔を上げて言った。

 

「今日は、ディセンダーに村を案内して貰おうと思って来たんだ。ダメ?」

『……結界の強化はしたし、シルフ達も居るから何とかなるかな。』

 

ディセンダー(エント)は少しだけ考えて、頷いてからミトスに言った。

 

「大丈夫だよ。何所から見たい?」

 

ミトスは嬉しそうに、「何所からでも良い」と言って、ディセンダーの手を引っ張た。

三人は苦笑を浮かべながら、二人の後に付いて行った。

一通り村を案内し終わり、大きな木の下に居た。

と、一人の人間の老人がやって来た。

ディセンダー(エント)は、老人に挨拶した。

老人はディセンダー(エント)に気付いて、嬉しそうに話してきた。

 

「おお。ディセンダー、元気にしておったかい。ワシは散歩をしておたんだが、迷ってしまったわい。歳は取りたくないものよのぉー。……、おや?そっちの方々は、この間来たと言う旅人かい?」

 

ディセンダー(エント)は老人に近付き、優しく言った。

 

「そうだよ、ドイットおじさん。……大丈夫、僕が家まで案内するよ。」

 

ディセンダー(エント)は、後ろを振り向いた。

四人は「大丈夫」と言うように頷いた。

そして、老人の家に向かう事となった。

ディセンダー(エント)は歩きながら、

 

『ドイットおじさんが迷うのも無理ない。僕がノームに頼んで、少し村の地形を変えた。長く住んでいた人でも、気付かないくらい……』

 

おじさんの家に着くと、息子さんがこちらに声を掛けてきた。

 

「ああ、父さん。心配したぞ。朝食に来ないから、部屋を見に行ったのに居ないのだから。」

 

ディセンダー(エント)はおじさんが散歩に出て、道に迷っていた事を教えた。

息子さんは安心したように、彼に言った。

 

「そうか。ディセンダー、父さんを連れて来てくれて、ありがとうな。俺らがこうして居られるのも、お前のおかげだ。」

 

ディセンダーは苦笑しながら、息子さんに言った。

 

「そんなこと無いですよ。僕、一人居た所で、まだまだですよ。」

 

息子さんが首を振って、彼に言う。

 

「そんな事は無い。お前さんが、世界樹に祈りを捧げてくれたから、加護が復活したのだからな。そうでなければ、この村は崩壊していたよ。」

 

ディセンダー(エント)は、その言葉に少し戸惑いながらも、苦笑を浮かべるだけにした。

隣の老人も「そうだ、そうだ」と頷いている。

だが、後ろから以外な言葉が飛んできた。

 

「……この村を包んでいる結界は、世界樹の加護ではないわ。村を覆っている結界は、世界樹に似ているけど……少し波動が違うもの。」

 

その言葉に、ディセンダー(エント)は声の主であるマーテルに振り向き、目を見開いた。

ディセンダー(エント)の近くに居た精霊・シルフと精霊・ウンディーネも息を飲んでいた。

息子さんはおじさんを見て、優しく言った。

 

「さぁ、父さん家に帰りましょう。」

 

と言って、家の方へ向かって行く。

ディセンダー(エント)はそれを見送った後、四人に「池に行きましょう」と言って歩き出した。

池に着くと、ディセンダー(エント)はマーテルに振り向く。

そして、緊張した声でマーテルに聞いた。

そんな彼の顔は、どこか青い。

 

「マーテルさん。さっきのこと、どうしてそう思ったんですか?」

 

マーテルは空を眺めた。

その眼には、結界の波動を詠んでいるようだった。

そして、ディセンダー(エント)を視て言った。

 

「やっぱり……あれは、あなたの波動ね。あなたの力は凄いわね。この村を包んでしまうんですもの。それとも、貴方と共にいる、その精霊に力を貸して貰ったの?」

 

ディセンダー(エント)は驚いた。

精霊・シルフと精霊・ウンディーネはため息を付いた。

ディセンダー(エント)は、マーテルに静かに言った。

 

「マーテルさん……貴女はもしかして、世界樹の神子ですか……」

 

マーテルは頷いた。

すると、ディセンダー(エント)は悲しそうな顔で、マーテルを見る。

 

『まさか、神子だったなんて……。世界樹の神子、確か世界樹の声を聞いたり、憑依させたりする事が出来る者達、だったよな。それに精霊も、視えていたなんて。どうしよう……』

 

何か言おうとして、言葉にならない。

精霊・シルフは精霊・ウンディーネは頷き合った。

彼等に向かって、精霊・シルフが声を出した。

 

「あーあ。なんか変な女、だとは思ったけど、やっぱり神子とはね。」

 

ディセンダー(エント)は、内心ホッとしたような、悲しい気持ちになった。

二人は、ディセンダー(エント)の後ろから現れる。

いや、彼らにも見える姿となった。

彼女等は、マーテルに言い放った。

 

「全く。この子が、村人を安心させる為に作っている結界は、世界樹の加護として置いて居るんだから。黙っときなさいよ!全く、どいつも、こいつも、この子の気持ちも知らないで。」

 

ディセンダー(エント)の横から、精霊・ウンディーネも、ため息交じりに言った。

 

「シルフ……、いくら神子と言えど、世界の守り手(ディセンダー)の事を知っている訳ではありません。それに、村人に対しても、そうですよ。彼等は何も知らない下界人ですから。」

 

すると、精霊・シルフは子供の用に頬を膨らませ、腕を組んで怒り出す。

 

「だからじゃない!ウンディーネ!アンタは、もう少し下界人に対して怒るべきよ。無論、世界の守り手(ディセンダー)、アンタも!」

 

ディセンダー(エント)は苦笑いで、精霊・シルフを見上る。

精霊・ウンディーネは、やれやれと首を振った。

ディセンダー(エント)は、マーテル達を見て、彼等の説明をした。

 

「えっと、何かごめんなさい。シルフは、その、悪気があった訳じゃ無いんだ……」

 

マーテルは、ディセンダーに「分かっています」という顔で頷いた。

そして、精霊・シルフと精霊・ウンディーネを見て慎重に言った。

 

「貴女方は〝水の精霊・ウンディーネ〟と〝風の精霊・シルフ〟ですね。」

 

その言葉に、精霊・シルフは「フン」とそっぽを向く。

精霊・ウンディーネは頷いて、数歩前に出る。

 

「貴女は、最初から私達が視えたのかしら。ここに来てから、我々を視ていましたし。それに、神子の力かしら……結界の事も気付けたのは。エルフである、あの村長は、この子が言うまで気付かなかったもの。世界樹の加護ではなく、この子の力というのを。」

「私に解ったのは、存在だけです。何の精霊までかは、はっきりとは解りませんでした。結界に関しては、私は世界樹の神子として、隣国に仕えていましたからこういうのには少し詳しいのです……。それに結界は、ここに入った時に、波動が違うのに気付けました。」

 

精霊・ウンディーネは手を頬にあてながら、冷たく言った。

 

「そう。私はてっきり、其方の人間が(・・・・・・)我々の事を話した(・・・・・・・・)のかと思いました。」

 

そう言って、クラトスを冷たい視線を送った。

ディセンダー(エント)は、内心焦り出した。

マーテルも、精霊・ウンディーネが殺気めいたモノを出しているのに気付く。

慌てて、精霊・ウンディーネに言った。

 

「クラトスには、『この村に、私達の旅で集めた情報をここの村長様に話してみないか』、と言われたので来たのです。彼からは、精霊やディセンダー君の力については、何一つ教えて貰えていません。」

 

それを聞き、ディセンダー(エント)はホッとした。

すると、マーテルの横でユアンが怒り気味に言った。

 

「もし知っていれば、直接話を出来るように取り繕っていた。クラトスが、早く言ってくれれば。」

 

最後の語句に、怒りが半分入っていた。

が、精霊・ウンディーネは気にせず、明るく言った。

 

「そうですか。それは良かった。もし、貴殿がこの子との約束を破っていたら、この場で殺していたかもしれませんね。」

 

と、笑顔で言ったのである。

ディセンダー(エント)は、顔を青ざめて精霊・ウンディーネを凝視した。

隣では、精霊・シルフが残念と言う顔をしている。

無論、マーテル達も息を飲んだ。

精霊・ウンディーネは、ディセンダー(エント)に笑顔で言った。

 

「フフ。無論、冗談ですよ。……、半分本気でしたけど。」

 

最後の言葉は、マーテル達の方を見て小さい声で囁いた。

ので、ディセンダー(エント)には聞こえ無かった。

が、マーテル達の顔は物凄く引きつったのは判った。

そこで、精霊・シルフが陽気な声で言った。

 

「でぇー。アンタ達は、私とウンディーネに何の用よ。」

 

ディセンダー(エント)は緊張しながら、マーテルの言葉を聞いた。

 

「これは村長様にも言ったのですが、私達はここに来る前に精霊と会いました。その精霊が、この世界のマナが枯渇しているのは世界に種族が多く居過ぎる為だと。なので、世界樹がそれに伴う負の想念の処理が、遅れている為だと。それと世界樹が、ディセンダー君を呼んでいると。」

 

この言葉に、ディセンダー(エント)は、目を見開いて唇を噛んだ。

ある程度は、精霊・ウンディーネから聞いていた。

だが……

 

『前半は、ウンディーネが言った通りだ。でも、世界樹が呼んでいる。最近、世界樹の声を聞かないようにしていたけど……。まさか、相当やばいのだろうか。しかも、人の前にあまり出ない精霊が、そう言ったならば……』

 

それを、精霊達は横目で見ていた。

精霊・ウンディーネからは閉られた目よい、冷たい視線を出す。

そして、冷たく言った。

 

「所詮、あなた方も一緒ですね。まぁ、その精霊が誰とは聞きません。ですが……この子を、この村からは出せないわ。」

 

その言葉に、ユアンが怒り気味に言う。

 

「何故だ。世界樹が、彼を呼んでいるのだろう。理由は良くは解らんが、それでこの世界が少なからず良くなるはずだろう。」

 

精霊・ウンディーネは、より一層深く冷たい視線をし、先程よりも冷たい声で言った。

 

「その精霊が、そう言ったのかしら。それとも、そこの神子が世界樹の声を聴いたから、かしら?どっちにしても、この子がこの村を出れば、ここの結界は壊れる。この子は、まだ力を上手く留める事は出来ないから。」

『そうだ……。僕がここを出れば、村の結界は壊れる。折角、皆だいぶ良くなってきたのに。それを、また壊す何って出来ない……』

 

ディセンダー(エント)は、拳を力強く握りしめた。

精霊・シルフが優しくなだめる。

しかし、ユアンから冷たく言い放たれた。

 

「それでも、世界とこの村とでは図る天秤は解りきっている。村人を捨てきれないのであれば、どこか安全な場所に置いて置けば良いのだからな。」

 

その言葉に、ディセンダー(エント)は静かに、それでいて怒りめいた声で言った。

 

「この村は……っ、村人は、僕にとって大切なんだ!見捨てる事何て出来ない‼」

『この村に残った人達は、外の世界に出られないんだ!裏切り続けられたせいで……‼』

「では、お前は世界樹を裏切り、世界より、この村を選ぶという事だな。」

 

その言葉に、ディセンダー(エント)は涙を流した。

それに気付き、ユアン達に背を向ける。

 

『解っている。解っているけど、僕はっ……僕は……‼』

 

精霊・シルフは、ユアンに殺気めいた目を向ける。

精霊・ウンディーネは攻撃しようとした瞬間、笑い声が響き渡る声が聞こえた。

 

『っ‼ダオス、まさか……そんな!』

 

その笑い声に、ディセンダー(エント)は泣くのを止め、剣に手を掛けて辺りを見渡した。

精霊・ウンディーネ達も周囲を警戒していた。

と、そこに精霊・ダオスが森から出て来た。

ディセンダー(エント)は、あきらかな殺気と怒りを出していた。

ダオスは、何か蔑みにも似た目で、ディセンダー(エント)を見る。

そして彼に冷たく言った。

 

「そこのハーフエルフの言う通り、この村を見捨てる事だな。世界樹の言う通りにすれば良い。貴様は所詮、その為の存在だろう。それとも、そこのハーフエルフの言うように、世界樹を裏切るか……。いや、裏切り続けるか、哀れな世界の守り手(ディセンダー)よ。」

 

その言葉に、エルフは怒りながら言い放った。

 

「黙りなさい、ダオス。アンタ何かに、この子の気持ちは解らないわよ!」

 

ダオスは、精霊・シルフに鼻で笑い、冷たい声で言った。

 

「笑止。そもそも、世界の守り手(ディセンダー)は世界樹の道具だ。道具に感情など要らん。感情があるから、こんな事になるのだ。そして災厄の場合、世界を壊すのだから。」

 

最後の言葉には、怒りにも似た声で言った。

精霊・ウンディーネは冷たい声で、ダオスに言った。

 

「それでも、この子は悩んでいる。それに、何故あなたは、ここに入れたのです‼結界を強固したとゆうのに!」

「あんな弱い結界なんぞ、潰すのは簡単だ。」

 

そう言って、ダオスはディセンダー(エント)に〝ダオスレーザー〟を撃った。

ディセンダー(エント)は剣で、それを防いだ。

しかし、防いだ時には、ダオスに首を絞められていた。

一瞬の出来事に、全員が息を飲んだのが解る。

ダオスがディセンダー(エント)の首を絞めたまま、彼にしか聞こえない声の大きさで言った。

 

「弱いな……。私の知る世界の守り手(ディセンダー)は、強かった。それこそ、世界を壊すほどに……」

 

ダオスは、ディセンダー(エント)の耳元で冷たく言った。

 

「何故、そんなに弱いか……私が教えてやろう。この村の結界に力を使い過ぎた。この村を満たすマナを、己が命で生み出した。何より、世界樹とのリンクを切っているからだ。」

 

ディセンダー(エント)は顔を引きつった。

 

『確かに、あの世界の守り手(ディセンダー)は、君と対等だった。でも、あの世界の守り手(ディセンダー)は世界を壊す事を望んだ……』

 

首を絞める力が強く、何も言い返せない。

精霊・シルフと精霊・ウンディーネもまた、ディセンダー(エント)がダオスの手の中にいる事で、攻撃が出来ないのだ。

 

〝今動いたら、ディセンダー(エント)が殺される!いくらディセンダー(エント)でも、アイツとでは相性が悪い!〟

〝ほんの一瞬で良い、隙が出来れば……我々が、攻撃出来るのですが!〟

 

精霊・ウンディーネは、クラトスとユアンを見た。

彼等は隙を見つけようとするが、見つけられず額に汗が浮かんでいる。

精霊・ウンディーネが、ある事に気が付いた。

マーテル(世界樹の神子)が何かに集中し、その後、前に出てきた。

その瞬間、ディセンダー(エント)と精霊達は何かに気付き、表情を変えた。

 

〝この気配は……世界樹だ!二人とも、僕より彼女の方へ!〟

〝……分かったわ。〟〝……解りました。ディセンダー(エント)、気を付けなさい。〟

 

そしてダオスを見て、マーテル(神子)が静かに言った。

 

「彼を殺す事は、妾が許しません。お願いです、ダオス。その手を放して下さい。」

「下界の神子無勢が、私に指図するな。」

 

と言って、マーテルに攻撃しようとする。

ユアンとクラトスは、マーテルに近付こうとする。

が、間に合いそうにない。

ミトスは「姉様‼」と叫んでいる。

だが、攻撃が当たる前に、精霊達がそれを防いだ。

その瞬間、ディセンダー(エント)はダオスの手から離れる。

急いで、マーテルを背で庇うように剣を構えた。

ディセンダー(エント)は、マーテルを一度見た。

 

『やっぱり、世界樹だ。かなり弱いけど、間違いない。』

 

ディセンダー(エント)は真剣な、それでいて緊張した面持ちで、ダオスに静かに言った。

 

「ダオス、マーテルさんを……いや、世界樹を傷付ける事は許さない。」

 

その言葉に、ダオスは「何⁉」と言う顔する。

そしてマーテルが、纏っている波動を感じ取る。

 

「まさか、憑依しているのか……⁈下界の神子無勢が⁉馬鹿な……」

 

しかし彼は、しばらくマーテルを見た後、背を向けて去って行った。

 

『……、世界樹は僕を許さないだろう。素直に受け入れよう。』

 

ディセンダー(エント)は、マーテルに剣をしまいながら、振り返る。

彼女の前で、膝を付いた。

精霊達は、ディセンダー(エント)の後ろに行き、それを見守る。

するとマーテルが、いや、世界樹が優しい声でディセンダー(エント)に言った。

 

「大きくなりましたね、世界の守り手(ディセンダー)。あなたに、大事無くて良かった。この神子に、感謝せねば……」

 

ディセンダー(エント)は地面を見つめたまま、辛そうに声を出した。

 

「世界樹……。何故、僕を助けたのですか。僕は、あなたを裏切っているのに……」

 

すると、マーテル(世界樹)は膝を折って、彼の顔に触れた。

ディセンダー(エント)は一度、ビクっと震えた。

 

世界の守り手(ディセンダー)、顔を御上げなさい。あなたが、この村の者達を大切にしている事は知っています。だから、あなたの心が決まるまで待って居てあげたかった。けれどもう、妾だけではそう長くは持たないのです。だから、世界の守り手(ディセンダー)……」

 

と、何かを言い掛けるマーテル(世界樹)が、言葉を途絶えて倒れこんだ。

ディセンダー(エント)は、マーテルを抱き抱え、焦った。

 

「せ、世界樹……、マーテルさん、しっかり!」

『……僕のせいで、世界樹とマーテルさんが……』

 

クラトスとユアンが、マーテルを見て「大丈夫」と言うように頷いた。

マーテルをユアンに預け、ディセンダー(エント)が立つと、ミトスが静かに言った。

 

「姉様は、神子の中でもかなり強く世界樹と協調出来るから、時々あんな風に世界樹を憑依させる事が出来るんだ。でも、そんなに長くは持たないし、凄く力を使うみたいで、すぐ倒れてちゃうんだ。……ディセンダー、君も神子だったんだね。だって、憑依したのを瞬時に判断出来るのは、同じ神子くらいだから。」

 

ディセンダー(エント)は、それに頷く事は出来なかった。

彼は、一度世界樹のある方を向き、マーテルを見て言った。

 

「マーテルさんを休ませましょう。ここからなら、長老の家に行くのが早い。僕は、長老に頼みに行って来ます。」

 

そう言って、駆け出して行った。

その後ろを精霊・シルフが、追って行く。

精霊・ウンディーネは、クラトス達を見てから姿を消した。

 

『ごめん、ミトス。僕は、神子じゃない。神子だったら、どれだけ良いか……。僕のせいで、君のお姉さんを……』

 

ディセンダー(エント)は事情を長老に言って、休む場所をすぐに準備して貰った。

クラトス達が、長老の家に着き、マーテルを休ませた。

ディセンダー(エント)はしばらくの間、長老の家には行かなかった。

精霊・シルフには、マーテルの様子を見に行って貰っていた。

 

『長老は、シルフの存在を知っているから大丈夫だと思う。僕は、これからどうしよう。師匠達に付いて行けば、この村は人々は……。でも、世界樹は僕に怒ってはいなかった。世界樹は、まだ僕を信じてくれていた。こんな時、僕と同じ姿をした君は……いや、他の世界の守り手(ディセンダー)はどうするんだろう……』

 

ディセンダー(エント)は、自分が生まれた場所に来ていた。

この場所なら、自分の力を上げられると思ったからだ。

 

「結界を強くしておかなくちゃ……。また、ダオスが来たら大変だ。今度こそ、あいつはこの村を壊しかねない。二人とも、ちゃんと見張っておいてね。」

 

ディセンダー(エント)は、結界の強化を三日三晩行った。

寄り添うように、二人は控えていた。

 

〝これじゃあ、ディセンダー(エント)が持たないわよ……〟

〝これも、ダオスのせいです。あの者が、何故精霊でもないのに、力を持っているのか。……いくら、前の世界の影響とはいえ、ディセンダー(エント)が可哀想です。〟

 

精霊・シルフが、背後にあの人間(クラトス)の気配がしたのに気付いた。

 

〝あの下界人に頼るのは嫌だけど、仕方ない。これも、ディセンダー(エント)の為よ。〟

 

精霊・シルフは、二人に困ったような顔をしながら近づいた。

クラトスは静かに聞いた。

 

「何か、あったのか。」

「うーん、何と言うかね。あれから、あの子、ずっとあそこに立って結界を強めているのよ。時々、休むには休むのだけど、私達が言っても辞めないし……。アンタ、止めなさいよ。」

 

クラトスは、ため息を付けながらディセンダー(エント)に近付いた。

ディセンダー(エント)は、クラトスに気づいて振り返った。

 

師匠(せんせい)。それにミトスも居るって事は、マーテルさんが気が付いたんだね。……良かった。」

 

その顔は、酷く疲れきっている。

クラトスは、もう一度ため息を付いて彼に言った。

 

「そんな顔では、いざ何かあった時に何も出来なくなるぞ。だから少し休め。私とミトスが、ここでお前を見張るから早くしなさい。」

 

ディセンダー(エント)は唸っていた。

が、すぐ傍に来ていたミトスが、ジッと自分を見てきている。

ふと視線を外すと、精霊達も同意しているようだった。

 

『うわっ、師匠(せんせい)達だけじゃなく、二人もですか……。仕方がない、少し休もう。』

 

ディセンダー(エント)は横になった。

すると、すぐに眠ってしまった。

精霊・ウンディーネがそれを確かめると、クラトスに悲しそうに言った。

 

「この子が、こんなに悩むのは我々のせいなのですよ。私達は、この子に言ってしまったのです。……私達が力を貸すから、結界を張れば良いと。でも、結界が張れても、マナは枯渇している世界、世界樹は世界の守り手(ディセンダー)を呼び続けた。でも、この結界を張った事で村人は安堵し、この子の心を縛り付けてしまった。あの子は、世界樹の声聞くのを辞め、ここに居座り続けた。でも、どんどんあの子の心は辛そうに、そして壊れ掛かっている。あの子は、あの子でなくなる日が近いかもしれない。我々は、あの子の笑顔を守りたかった。だた、それだけなのです……」

 

精霊・ウンディーネはそう言って、ディセンダー(エント)の寝ている姿を見つめていた。

クラトスは、何を指しているか知っている。

が、それを知らないミトスは疑問に思っていた。

が、今は気にしない事にしたようだ。

しばらくそうしていたが、いきなり何かが壊れる音がした。

ディセンダー(エント)はガバッと起き上がり、顔を引きつって焦っていた。

 

「そんな、まさかっ……、結界が壊された⁉……こんな事が出来るのは……皆が危ない‼」

 

そう言って、広場へ走り出して行った。

 

『どうか、間に合ってくれ‼』

 

それをクラトス達も、すぐに追い掛けた。

ディセンダー(エント)達が広場に着いた時、そこには悲惨な光景が広がっていた。

大量の魔物が、村に押し寄せていた。

村人の多くが、既にほとんどが死んでいる。

長老はユアン達と居て、応戦していた。

それでも押されている。

ディセンダー(エント)は思った。

これはまるで、五年前のようだった。

そこに駆け付けると、ユアンが「遅い!」と怒鳴っていた。

マーテルは治癒術を、長老と共に村人に掛けている。

しかし、次から次へと死んで逝く。

ミトスは治療の方を手伝った。

ディセンダー(エント)は、この村を襲っているダオスを睨んだ。

ダオスは、ディセンダー(エント)を見下ろし、冷たい目で言った。

 

「喜べ、世界の守り手(ディセンダー)。この村を壊せば、貴様も心置きなく世界樹の命令を聞けるだろう。」

 

息のある村人の口からは、「助けてくれ」という言葉が聞こえてくる。

 

『この村の人々は関係無いじゃないか!あいつが用があるのは、僕のはずだ!あいつは、この村以外にも多くの村を壊した。でもそれは、僕の責任だ!でも!……僕は、あいつのやり方を許せない‼』

 

ディセンダー(エント)は、今までにない以上の怒りを見せている。

それは、村人達も一瞬恐怖する程である。

そして、精霊達も手を抑え、動けなかった。

 

『僕は、何が何でも……この村を守る!』

 

ディセンダー(エント)は、魔物を倒し続けた。

その眼にも、その一つ一つの動きにも躊躇いがない。

だが、斬っても、斬っても、どんどん魔物は湧いてくる。

ディセンダー(エント)は剣を振りながら、叫んだ。

 

「地の精霊・ノームよ。我が声が聞こえるなら……、僕に力を貸してくれ!」

 

すると、地響きがなった。

懐かしい精霊・ノームが現れた。

そして、昔と変わらず、気の抜けたような声で言った。

 

「ほい、ほーい。エント(ディセンダー)、呼んだかなぁー。それにしても、酷い有様ですなぁー。ウンディーネも、シルフも、居ながらダメですなぁー。さてさて、エント(ディセンダー)、何が望みかなぁー。」

「この村の地形を変えて!これ以上、魔物が入って来られないように!」

「りょうーかーい、ですよぉー。ではでは――」

 

そう言って、地震が起こる。

魔物達の動きも、一時的に止まった。

収まった頃には、村の入口は変形していた。

ディセンダー(エント)達は、魔物が動き出す前に残りの魔物を潰しに掛かった。

何とか倒した頃には、村人はもう長老と数名しか、残っていなかった。

ディセンダー(エント)は、拳を握りしめた。

 

『くそっ!僕が弱いばかりに……‼守り切れなかった!ごめん……皆!』

 

そして、ダオスを見上げ、怒りめいた声で言った。

 

「ダオス‼何故、こんな事をした!この村の人々は、ディセンダー()の事も、世界の理の事も知らなかったと言うのに!」

「笑止。たとえ、理を知っていたとしても、この愚かな者共は貴様をここに縛る。そして愚かな貴様も、ここに留まるだろう。だから私が、制裁してやった。」

「ふ、ふざけるなぁ―――――‼」

 

と、叫びながらダオスに跳び掛かる。

彼は怒りの剣を振るっていた。

しかし、彼の剣は簡単に弾き返され、地面に叩き付けられた。

そして、次の攻撃を態勢を整えながら、受けようとした。

が、間に合わず、剣でそれを防いだ。

その剣が、折れてしまった。

次の攻撃を防ぐ術が無く、身構える。

クラトス達は気付いて、傍に駆け寄ろうとする。

が、彼らはダオスに邪魔され間に合わない。

そんなディセンダー(エント)の前に飛び込んで来た者達がいた。

飛び込んで来たのは、長老と、生き残っていた村人だった。

村人達は「すまない、ディセンダー」と言って、息を絶った。

ディセンダー(エント)は目を見開いた。

 

『何で⁉皆……僕を庇うの。僕は……僕が、この村を無茶苦茶にしてしまったのに……』

 

長老は途絶え途絶えながら、ディセンダー(エント)に言った。

 

「ディセンダー、すまんのぉ。ワシ等の……せいで……お前を縛り付けて……しまった。」

 

ディセンダー(エント)は、長老を優しく抱き抱えた。

彼は泣きながら、首を振った。

 

「長老達は何も悪くない。僕が、全て悪いんだ。なのに……どうして皆、僕を助けたの……」

 

長老は震えながら、ディセンダー(エント)の頬を触りながら、懐かしむように言った。

 

「助けるのは……当たり前じゃ。お前は、ワシ等全員の……子供で、孫じゃからな。……ワシは、今でも覚えておる。……お前に、爺様と呼ばれていた時の事も……お前が、村の子達に……ワシの家族では無いのに……一緒に居るのは可笑しいと……虐められては……エミリィやワシには、何も言わなくて……そのせいで、一人で暮らしたいと……言い出した時のお前の顔も……。ワシ等は、お前に助けられて……ばかりじゃった。……すまんのぉ、ディセンダー。これからは……お前の好きなように……生きてくれ。それがワシの‥……最後の願いだ……」

 

そう言って、ディセンダー(エント)に触れていた手が落ちた。

 

『違う。……違うよ、爺様。僕は、何も皆に返せてない。僕が、皆に支えられて助けてくれた……』

 

ディセンダー(エント)は、長老を優しく置いた。

そして、ダオスを睨んだ。

拳を握りしめ、怒りめいた声で叫んだ。

 

「ダオス‼僕は……絶対に、貴様を許さない‼」

 

ダオスは鼻で、それを笑った。

そして、「最後の一撃」だと言うかのように、ディセンダー(エント)に向かって撃った。

 

『力が欲しい。大切の物を守れる強さを!もう、誰も傷かなくても良いように!僕は、誰かを救える力が欲しい‼』

 

そう強く願った瞬間、ディセンダー(エント)は光り輝やく。

そして、ダオスの一撃を切り裂いた。

彼の手には、剣が握られえていた。

その剣を握りしめながら、ダオスに切り掛かった。

ダオスは反応するのに遅れた。

それによって、ダオスは深く傷を負った。

その傷を押えながら、

 

「ぐっ!この私が……手傷をおうとは!だが、私はまだやれる。行くぞ、世界の守り手(ディセンダー)!」

『……、僕は、お前を許さない!でも、ここではもう戦わない。皆が、静かに眠れるように。お前は、しばらく世界樹の所で、大人しくしていて貰う!』

 

ディセンダー(エント)は剣を掲げた。

その瞬間、辺り一面が凄まじい光で覆った。

光が収まった時には、ダオスの姿はどこにも無かった。

ディセンダー(エント)は、クラトス達に振り返り静かに言った。

 

「皆、ごめんなさい。巻き込んでしまって。」

 

クラトスは首を振った。

そして、ディセンダー(エント)に静かに言った。

 

「いや。我々も傍に居たのに、何もしてやれなかった。村人を守ってやれなくて、すまなかった。」

 

ディセンダー(エント)は首を振った。

そして、村人を埋葬した。

その日の夜、ディセンダー(エント)はひたすら村人の、長老の墓の前にいた。

精霊・シルフと精霊・ウンディーネは、そんなディセンダー(エント)を見守っていた。

 

『爺様……、皆と一緒に、リィ姉と共に、見守っていて。僕は、もう迷わない!僕は自分を信じ、恐れない。そうだ……僕は、この村を守る為に誓ったはずだ。僕は後悔しないと!……だから僕は、決めたよ。』

 

ディセンダー(エント)には、強い光を宿す瞳がある。

 

〝シルフ、ウンディーネ。僕は師匠(せんせい)達と旅に出る。この世界を救う為に!だから、付いて来てくれる?〟

〝当り前よ。私達は何があっても、貴方と共に行くわ。〟〝たとえ貴方が拒もうと、我々は貴方に付いて行きます。〟

〝二人とも……ありがとう。〟

 

次の日の朝。

ディセンダー(エント)は、クラトス達を真っ直ぐ見ながら、真剣な顔で言った。

 

「皆さん。……僕を、皆さんの旅に連れて行って下さい。」

 

クラトス達は頷いた。

ミトスが嬉しそうに言った。

 

「ディセンダー、これからは仲間だ。今まで以上に、よろしくね。」

 

二人は握手した。

そして、村の入口まで来ると、ディセンダー(エント)は振り返る。

彼は、悲しそうに言った。

 

「僕の生まれ育った村……ノーム。」

 

そう言うと、精霊・ノームが現れる。

精霊・ノームの気の抜けたような声で言った。

 

「ホイホーイ、何かなぁー。」

「この村を……誰にも見つからないようにして。皆が、もう怖い思いをしないように……」

「りょうーかーいですよぉー。ではでは――」

 

と言うと、地震が起こる。

村は、樹木に覆われた。

そこは、地下へと続く道へと変化する。

 

「これで良いかなぁー。エント(ディセンダー)?」

「うん、ありがとう。皆、今までありがとう。そして、ごめんなさい。……行って来ます。」

 

そう言いながら、クラトス達と共に歩き出した。

ディセンダー(エント)は、誰かに視られている気がした。

だが、それを無視する事にした。

 

『どうせ、ラタトスクだろう。ダオスに手を貸したから、今は絶対許さない。』

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