テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた   作:609

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マイソロ2 初代編~おまけ2~

ディセンダー(エント)は、初めて訪れた町に興味津々で辺りを見渡していた。

 

『へぇー。あ、よく考えれば、僕初めて見るんだよな。町って、こんな感じなんだ。別の世界の町も、こんな感じだったなぁー。あの変な物なんか、あの世界では珍しい物だったな。』

 

と、思いにふけっていた。

そんなディセンダー(エント)に、ミトスが呆れたように言った。

 

「ディセンダー。初めてなのは分かるけど、ちょっとは落ち着きなよ。」

「そ、そうだね……」

 

ディセンダー(エント)は少し照れながら言って、落ち着いた。

でもやっぱり気になり、チラチラとあっちこっち見ていた。

そんな時、ユアンから声を掛けられた。

 

「……仕方がない。ディセンダー。私は買い物をするから、付いて来るか?」

 

ディセンダー(エント)は、笑顔で頷いた。

彼は、ミトスを誘った。

クラトスとマーテルは宿の手配に向かった。

ノイッシュも、クラトスに付いて行った。

彼等は、分かれて行動を始めたのだった。

 

ディセンダー(エント)は、ミトスやユアンに疑問めいた事を言った。

 

「それにしても、町の雰囲気は町へ行く人に聞いていた通りだなぁ。人も大勢居るし、家も多い、何より店が多い!僕、初めて本格的なお店を見たよ。」

 

そう言うと、ユアンが腕を組みながら、ディセンダー(エント)に疑問を言った。

 

「それでは、今までどうやって物を手に入れていたのだ?」

 

ディセンダー(エント)は「うーん」と唸ってから、質問に答えた。

 

「確かに、店に近い物はあったけど、基本村では皆、畑や家畜を育てていたし、それぞれの家の代表者や警護の人が、村で育てた物を売って、お金を入手したり、買い物をしたりして……お遣いをした事もあるけど、基本僕は、お手伝いをして分けて貰ったりしていたから、困る事は無かったよ。」

「よく、それでやっていけたな……」

 

ユアンは感心していた。

買い物も一通り終わった。

クラトスやマーテルと合流する為、宿屋がある方へ向かった。

途中で、もの凄い怒鳴り声が聞こえてきた。

そこに寄ってみると、家族らしい人獣がいた。

町の人々は「化け物」と言って、その家族に石を投げたりしていたのだ。

ディセンダー(エント)はたまらず、彼等を庇うように前に出た。

そして、彼等を怒鳴り付けた。

 

「彼等は、化け物ではない!それに……悪い事も何もしてないのに、ただ『レイモーンの民』を嫌う意味が分からない!あなた達は、それでも心はあるんですか!」

 

すると、人々はなおも怒りながら、いや恐怖しながら言った。

 

「そいつ等は、化け物だ‼『リカンツ』何か、町から出ていけ‼」

 

ディセンダー(エント)は、理解が出来なかった。

 

『僕の村は多種族構成であったが、ここまで忌み嫌われている所は見た事が無かった。でも、村の人が町に行って、怪我をして帰って来ていたが……もしかしたら、こんな感じだったのかもしれない。』

 

そう思うと、やるせなかった。

それが解ったのだろう。

町人はディセンダー(エント)をまじまじと見る。

 

「そうか……。貴様も、こいつらと同じ化け物の仲間だな!こいつ、人間にしては髪も瞳の色もおかしいぞ!」

 

そう言って、ディセンダー(エント)にも石を投げてくる。

ディセンダー(エント)は、後ろに居るレイモーンの家族(彼等)に当たらないように体を動かした。

ユアン達が傍に寄ろうとしたと同時に、石がディセンダー(エント)に直撃する。

彼の頭からは血が流れる。

それを見た精霊・シルフは拳を握りしめ、

 

〝……いい加減にしなさいよ!たかが、下界人の分際でディセンダー(エント)に怪我させるなんて!〟

 

その瞬間、精霊・シルフが突風を起こした。

人々は目を瞑った。

その隙を、ユアンは逃さなかった。

全員を連れ、この場を離れた。

精霊・シルフは、彼らが居なくなったのを確認した後、突風を止めた。

精霊・ウンディーネが、人々に大量の水を落とした。

精霊・ウンディーネは最後、彼等に聞こえないようにボソっと言った。

 

〝……全く。これで、頭を冷やしなさい。それにしても……命があっただけ、良く思いなさい。〟

 

彼等は、ディセンダー(エント)の元に急いで行った。

ユアンは、ディセンダー(エント)の頭の手当てをしていた。

すると、横から悲しそうな声が聞こえた。

 

「ごめんなさいね。私達を助けたばかりに、あなたに怪我をさせてしまったわ。」

 

声の主は、レイモーンの民の母親だった。

ディセンダー(エント)は、兄妹なのだろう子供達を見た。

彼らは母親にしがみ付いて、こちらを警戒している。

 

『まだ、半獣人化していると言う事は、制御がまだ出来ていないのだろうな。この子達にとっては、辛かっただろうな……』

 

ディセンダー(エント)は、小さく首を振った。

 

「これくらい大丈夫。あなた方は、怪我はありませんでしたか?」

 

すると、兄の方の子供が母親にしがみ付いたまま、怒ってきた。

 

「なんでだよ!なんで心配するんだよ‼大体、どうして僕達を助けたんだよ。お前は、人間だろ!助けても、良い事なんて無いのに。」

 

ディセンダー(エント)は、彼の言葉を苦笑して聞く。

兄の方の子供は気持ちをぶちまけて落ち着きを取り戻す。

ディセンダー(エント)の傍にいるミトスとユアンを見て、

 

「……それに、よく見たらそいつらハーフエルフだ……。だからお前は、変な奴なんだな。」

 

最後の方は、悲しそうに聞こえた。

ディセンダー(エント)は、さらに苦笑したが、優しく彼に言った。

 

「僕はただ、理由も無しに差別だけで、虐められているのが許せなかっただけだよ。僕の生まれ育った村は、多種族だったから、君達と同じレイモーンの民を見て育ったし。」

 

と、真顔で言った。

すると、男の子は呆れたように、ディセンダー(エント)に言ってきた。

 

「前って、やっぱりバカだな。」

 

ディセンダー(エント)は「えー」という顔をした。

 

『馬鹿って……素直に言ったつもりなんだけどなぁー。なんか最近、年下の子が本当に解らない。』

 

まぁ、隣ではミトスがお腹を抑えて、笑っている。

ユアンも苦笑いで、見ている。

だが、男の子は照れながら、

 

「でも、助けてくれて……ありがとよ。」

 

それでも、少年がお礼を言われた時はとても嬉しかった。

 

『きっと、他の世界の守り手(ディセンダー)もこういう気持ちだったのだろうな。お礼を貰えるって、嬉しいな……』

 

それから、親子と別れてクラトス達と合流した。

クラトスとマーテルに、市場の事を話した。

それを聞いて、マーテルは傷の手当てを始める。

 

『やっぱり、マーテルさんは雰囲気は違うけど……感じはやっぱり、リィ姉と同じだな。』

 

ディセンダー(エント)が、マーテルに手当てして貰っていると、精霊・シルフが心配そうに現れた。

 

世界の守り手(ディセンダー)の怪我は、どう?」

「問題ありませんよ。もう、手当は終わりました。傷も残らないわ。」

「そう……。それは良かったわ。あんまし、無茶しちゃダメよ、世界の守り手(ディセンダー)。」

 

ディセンダー(エント)は、笑顔でお礼を述べてから、精霊・シルフに頷いた。

 

 

次の日、町を出おうと歩いていた。

そうしたら、ディセンダー(エント)の所に、小さな子供が足に抱き付いて来た。

そして、その小さな子供が泣きながら言った。

 

「お願い‼……お母さんと、お兄ちゃんを助けて‼」

 

歩くのを止め、その子を見る。

その子は、半獣人化した女の子だった。

ディセンダー(エント)は、その子を見て、

 

「君は……、昨日の子だよね。まずは、何があったのか教えてくれる?」

 

女の子は泣きそうな顔で、ディセンダー(エント)に必死に訴えた。

 

「お母さん達、剣を持った鎧の人間に捕まっちゃったの。それで、どこかに連れて行かれちゃった……」

 

と、言って泣き出した。

ディセンダー(エント)はクラトス達を見た。

クラトスは少し考え、静かに言った。

 

「おそらく、帝国騎士の者だろう。鎧を付けているという事は、地方の役所付だろう。異種族を捕まえに来たのだろう。今や、この国は人間以外の者を良しとしていないからな。」

 

ディセンダー(エント)は、女の子をなだめながら優しく聞いた。

 

「お母さん達は、どこで捕まったの?」

 

女の子は辺りを見渡し、「分からない」とまた泣き出してしまった。

ユアンが腕を組みながら、難しそうに言った。

 

「場所が分からないと、救いようがないぞ。」

 

精霊・シルフはディセンダー(エント)を横目で見て、

 

〝私が、飛んで探そうか?〟

〝いや。それじゃあ、時間が掛かる。そうだ、あれなら!〟

 

ディセンダー(エント)は、女の子に「大丈夫」と言って、おでこを当てた。

 

『まずは、この子の波動を覚えて……それを僕の力に乗せて、地脈に飛ばす!』

 

今度は地面に手を当てて、目を閉じた。

 

『これじゃない……っ!あの子と同じ波動……これか!』

 

ディセンダーはカッと目を見開く。

 

「見つけた!こっちだ‼」

 

と、走り出した。

一目散に、反応のあった所に行く。

広場に着くと、大勢の騎士が集まっていた。

そして、その中央には、レイモーンの民の親子の他にもエルフやハーフエルフの姿が見えた。

クラトスはユアン達を下がらせると、町人に聞いた。

 

「彼等は、何の重罪を犯した(・・・・・・・・)のだ。」

 

村人はこちらを振り向かず、自分と姿が違う異種族を、おぞましい者を見るような目で答えた。

 

「ああ。この村に入った事(・・・・・・・・)が、重罪だよ。」

「……、彼等はどうなる。」

「簡単さ。帝都に連れられ、尋問されるか、殺されるか、さ。」

 

その町人は、「当然だ」という顔で答えた。

 

『町に入った事が、重罪⁉何で、こんな事になってしまったんだ……』

 

クラトスは、このままではユアン達も危ないと考える。

それは、ユアン達も感じたようだ。

この場を離れようとした。

が、女の子が大声で「お母さん‼」と叫んでしまったのだ。

町人の一人が、目を見開いて叫んだ。

 

「っ‼ここにも、化け物がいるぞ!」

 

それを聞いた騎士達数人が、近寄って来た。

そして、ユアン達を囲む。

ディセンダー(エント)は、クラトスの顔を見る。

クラトスの顔は「どうしたものか」と言う顔だった。

その瞬間にも、ユアン達が連れて行かれる。

 

『……どうして皆、自分以外の者を受け入れられないんだろう……』

 

ディセンダー(エント)は、騎士達の前に飛び出した。

精霊・シルフと精霊・ウンディーネは、姿を消したままディセンダー(エント)の横に付く事にした。

 

「騎士様、教えて下さい。何故、彼等は咎人でもないのに、檻車に入れられるのですか?」

 

騎士の一人が、ディセンダー(エント)を見て、一瞬悩んだようだが「面倒だ」と言うように言った。

 

「少年よ。彼等は、我らの国に居る事自体(・・・・・・・・・・)が、罪なのだ。あの者達は、我々と違う化け物だ。君も、さぞあの化け物が恐ろしいだろう。君も、その姿だ。さぞ、苦労したのだろう。」

 

ディセンダー(エント)は、その言葉に目を見張った。

 

『何を言っているんだ……。この国の人達には、もう何も残っていないのか……』

 

拳を握りしめて、怒りながら言った。

 

「……恐ろしい?僕は、そんなこと思った事はない!彼等は、人間と少し構造が違うだけだ‼あなた達は、自国の無害な民を傷付けているだけだ!あなた達は、それでも本当に騎士ですか‼僕は、こんなこと許さない!僕は、彼等を……そして、僕の仲間を返して貰う!」

 

それを聞いた騎士達は激怒し、剣を抜いて来た。

クラトスが、ディセンダー(エント)の横に立ち、共に剣を抜いた。

騎士達が、斬り掛かって来る。

その間にも、ユアン達は連れて行かれる。

ディセンダー(エント)は応戦しながら、大声で精霊・シルフと精霊・ウンディーネに叫んだ。

 

「シルフ、ウンディーネ、力を貸して!」

 

精霊・シルフと精霊・ウンディーネは、騎士達の前に現れる。

精霊・シルフが、ディセンダー(エント)に叫んだ。

 

「時間は、私達が稼いであげるから、今の内に助けなさい!」

 

ディセンダー(エント)は頷き、クラトスと共に駆ける。

まず、彼らはユアン達を助けた。

それから、他の者達を助けに入った。

彼等を救い出し、町の入り口まで急いで逃げる。

そして騎士達を振り切り、森の中に入った。

彼等の治療を終え、レイモーンの家族以外の者達と別れた。

クラトスは、周りの者に気付かれないようにディセンダー(エント)に合図を送る。

ディセンダー(エント)は、精霊・シルフ達に呼び掛けた。

 

〝シルフ、ウンディーネ、もう大丈夫。戻って来てくれる?〟

〝分かったわ、すぐ戻る。〟

 

その数分後、精霊・シルフ達は姿を現らわした。

ディセンダー(エント)は苦笑いで、彼等にお礼を述べた。

 

「さっきは、ごめんね。でも助かったよ、ありがとう。」

 

精霊達は、嬉しそうに頷いた。

すると、最後の治療を終えた男の子が興味深く言った。

 

「そいつ等は、耳尖っているけど……エルフ?それとも、ハーフエルフ?」

 

精霊・シルフは宙に浮いたまま、男の子に近付き、怒った顔で言った。

 

「ちょっと!私達を、あんな奴らと一緒にしないでくれる。私達は精霊よ、精霊!全く。これだから、下界人共は――」

 

と、文句をブツブツ言いだし始めた。

男の子は「精霊?」と首を掲げた。

その疑問には、ディセンダー(エント)が優しく、分かりやすく答えた。

 

「精霊は、君達とは違って各場所の祠や遺跡に居る者達だよ。その土地のマナを守ってくれたり、管理してくれたり、してくれているんだ。」

『まぁー……実際は、精霊界に居る事が多いんだけど。例外は、あるけど……』

「へぇー、じゃあ、凄いんだ‼」

 

と、男の子は目を輝けせながら、言った。

精霊・シルフは「当然!」という顔をしている。

それから歩き始め、森の分かれ道で彼等と別れた。

ディセンダー(エント)達は砂漠に向かって、再び歩き出す。

そこで、ユアンは先程疑問に思っていた事をディセンダー(エント)に向かって言った。

 

「そう言えば、ディセンダー。あの子の家族が広場に居ると解ったのは、やっぱりあの行動か?どうやったのだ。」

 

精霊達は、ユアンを物凄い目で射抜いた。

が、ディセンダー(エント)は歩きながら、それに気づかず答えた。

 

「えっと、あれは何と言うか……世界の守り手(ディセンダー)特有の能力で、うーん……、そうそう!親子とか、家族というのは波動が一緒なんですよ。だからそれを覚えるだけ。その後は、地脈を辿れば解るんですよ。」

 

更に続きを話そうとするディセンダー(エント)に、精霊・シルフが慌てて止めた。

 

ディセンダー(エント)!そこまで‼〟

〝っ‼いけない。〟

 

ユアンは更に深く追求しようとして、精霊達の殺気に負けた。

「そ、そうか」と、小さく言った。

今日は森の出口近くで、休む事にした。

火の番を、ディセンダー(エント)が名乗り出た。

皆が眠ると、精霊・ウンディーネが静かに言った。

 

「それにしても、ディセンダー(エント)。先程はヒヤッと、しましたよ。あなたが、彼等に全て話す(・・・・・・・)のではないか、と。」

 

ディセンダー(エント)は、彼等に苦笑交じりな顔で答えた。

 

「ご、ごめん。さすがに僕も、師匠(せんせい)にすら全部教えていない事を……、ううん。彼等には、知らなくても良い事を、言う訳にはいかないよ。それにあれは、僕もさっき出来るようになったから。君達の知る世界の守り手(ディセンダー)は、あの辺のことは得意だった?」

 

精霊・ウンディーネは、思い出すように言った。

 

「私の知る世界の守り手(ディセンダー)は、得意でした。視ただけで、その者の記憶まで読んでしまうほどに……。それ故、あの子はよく物探しとかもしていましたね。」

「それは凄いね。」

 

と言って、精霊・シルフを見た。

精霊・シルフは、ディセンダー(エント)に背を向け、

 

「忘れた。」

 

と、悲しそうに言った。

ディセンダー(エント)は小さく笑い、それから空を見ていた。

そして三人で、夜が明けるのを待った。

 

 

彼等は今、帝都に向かう為に砂漠越えをしていた。

そして彼等は、その砂漠のど真ん中にいた。

強い日差し、暑さが彼らを襲っていた。

ミトスが汗だくで、辛そうに言った。

 

「それにしても、暑すぎだよ……。シルフとウンディーネが守ってくれていなかったら、確実に干からびいてたよ。」

 

ユアンは腕を組んで、こちらも汗だくで言った。

 

「そうだな。私も、ここまでとは思ってはいなかった。ディセンダー、君は初めてだが大丈夫か?」

 

ディセンダー(エント)も、汗を拭いながら明るく言った。

 

「僕は大丈夫です。それにしても、砂漠は他の地面と違って、やっぱり歩き辛いんだね。確か砂漠では、サボテンかオアシスで水を確保して、戦う時も足場が不安定だから、重心がずれないようにしないといけないんだよな。」

 

と、話したディセンダー(エント)に、ユアンは意外そうに言った。

 

「初めて来たのに詳しいのだな。誰か、砂漠越えした人がいたのか。」

 

ディセンダー(エント)は、急に焦り出した。

 

『しまった‼また別の世界の事、思い出して……少し浮かれ過ぎているのかも。』

 

かたや、精霊・シルフに関しては「まずい」という顔をもろに出している。

 

ディセンダー(エント)、また口が滑って!〟

 

と、精霊・シルフに怒られる。

ディセンダー(エント)は、手を上下左右色々な方向に動かしながら、

 

「あー、えーと、その……」

 

と、言葉に詰まる。

それを、精霊・ウンディーネが「やれやれ」と言うようにした後、平然とした顔でエント(自分)の代わりに答えた。

 

「本で読んでいたのです。それに、詳しいのは我々も教育していたからですよ。」

 

ディセンダー(エント)と精霊・シルフは、息を合わせて頷き合っている。

さらにディセンダー(エント)は、ユアンにから笑いで、

 

「そ、そうなんですよ‼あははははは。」

 

と、笑っている。

ユアン達は不思議そうな顔をしている。

クラトスが、話を変えるように口を開いた。

 

「……しかし、以前はこんなに暑くはなかった。これも、マナの枯渇によるものなのか。」

『確かに師匠(せんせい)の言う通りだ。少し探ってみるか?それに、砂漠に入ってから魔物を見ていないし。』

 

そして、ディセンダー(エント)が辺りを見渡す。

マナを探ってから、答えた。

 

「これは……負が、何処かに集まっている?それにマナが圧縮して、異常なまでの濃密になっていますね。もしかしたら、イフリートがこれをしているのかもしれない……。」

 

ディセンダー(エント)は、隣にいる精霊・ウンディーネを見る。

 

「うーん……ねぇ、ウンディーネ。これは、直接イフリートに聞いた方が早いかな?」

「その方が早いですが……おそらく、無理でしょうね。」

 

精霊・ウンディーネは頬に手を当て、ため息を吐きながら静かに言った。

ディセンダー(エント)は苦笑いをしていた。

そんな様子から、ミトスが不思議そうに聞いた。

 

「なぜ、ダメなの?」

 

ディセンダー(エント)は「うーん」と唸る。

表情が渋くなり、複雑そうに答えた。

 

「あの村での事で、かなり怒らせたからなぁー……。多分、今呼び出せても……ここが、火の海になるね。この暑さで、そんな事になったら、僕達干からびちゃうよ。」

 

と、精霊達も同意した。

ミトスは、かねてより疑問に思っていた事を彼に聞いた。

 

「と言うか、ディセンダー詳しいね。案外、全部の精霊と契約していたりして。」

「直接契約したのは、シルフとウンディーネだけだよ。後は……呼び出したり、話したりするのは、僕の前の世界の世界の守り手(ディセンダー)が、そういう能力だったからだと思うけど――」

世界の守り手(ディセンダー)‼」

 

話の途中で、精霊・ウンディーネが大きな声で怒鳴った。

ディセンダー(エント)はビクッと一度震え、小さい声で「ごめん」と俯いた。

 

〝……気を付けなさい、ディセンダー(エント)。全く、貴方は少し浮かれ過ぎです。〟

〝ごめん……。でも、彼等は良い気がするんだよな……〟

〝……、彼等を、管理者(・・・)にするのですか?〟

〝出来ればしたくない。彼等には、彼等の人生を歩んで貰いたいから。〟

〝そうですか……。まぁー、その辺は、あなた次第ですよ。〟

 

と、精霊・ウンディーネのお説教が思念会話で始まる。

二人がそうしている間、追及しようとする彼等に精霊達は、「追求したら八つ裂きにする」と言う殺気を出した。しばらく黙って歩いていたが、辺りが暗くなってくる。

なので、その前に野営の準備を始めた。

辺りが少し暗くなり、夕飯を作り出すユアンを手伝おうとするマーテル。

そのマーテルを、ミトスは困らせて引き留めている。

ディセンダー(エント)は、そんな様子を見てから、そっとテントから少し離れた場所に向かった。

 

「……本当、ミトス達を見ていると面白いね。」

「良く、あれだけ騒げるものよね。良く分からないわ。」

「ミトスにとって、マーテルさんは大切なんだよ。……僕は、リィ姉がバトとあんな風になっても、多分止めないだろうけど……あんな事も、あったのかもしれないね。」

「確かに、ディセンダー(エント)は見ているだけでしたね。」

「うん。記憶が戻る前は、リィ姉が僕以上にバトに取られた感があったけど……それでも、バトも大切だったから、何となくミトスの気持ち分かるな。世界の守り手(ディセンダー)の意味を知ってからは、彼等をずっと見守っていたかった……」

ディセンダー(エント)……」

 

ディセンダー(エント)は小さく笑うと、昔聞いていた子守唄を鼻歌で歌い出した。

後ろの方では、エント(自分)を探しに来たのだろうクラトスがやって来たのが解る。

そこに精霊・シルフが向かう。

そんな中、子守唄を鼻歌で奏でるエント()の瞳には、夜空に輝く星が映っている。

それを見ながら、しばらく歌っていた。

すると、何かの気配がした。

鼻歌を止め、暗闇始めた場所を見た。

底から現れたどこかで見た事あるような、魔物のようなものが出て来た。

その猫のような魔物が、ディセンダー(エント)の前に座る。

頭を一回下げてから、話し始めた。

 

「初めまして、世界の守り手(ディセンダー)様。私、〝精霊・ラタトスク〟様に仕えている〝闇のセンチュリオン・テネブラエ〟と申します。ラタトスク様より、言付けを預かっています。」

『……村で無視したから、直接言いに来たな。とりあえず、無視したのは悪いから、謝っとこ。』

 

ディセンダー(エント)は、闇のセンチュリオン・テネブラエに笑いかけながら言った。

 

「初めまして。センチュリオンの事は、ラタトスクから聞いた事があるよ。じゃあやっぱり、村を出た時に僕を視ていた魔物は、ラタトスクの指示かぁー。無視しちゃった。帰ったら、謝っといて。で、ラタトスクが何?」

「ゴホン。では……、〝お人好しの世界の守り手(ディセンダー)。あの村から出たという事は、人間ゴッコは辞めたのか?で、村の外に出た感想も聞きたい所だが、外に出て気付いただろう。マナが枯渇し、さぞ生きにくいだろう。これは、お前が世界樹を裏切り続けた代償だ。無論、それも(・・)、な。クハハハハハ。〟と。」

 

ディセンダー(エント)は、表情を固めていた。

横に居た精霊・ウンディーネは、恐ろしい程の殺気を出している。

 

『……相変わらず、意地悪だな。やっぱり村の件で、相当怒っているな。僕の、この翼(・・・)に付いては、精霊の中では、ラタトスクとオリジン、マクスウェル辺りが詳しいとはいえ……、相当痛い所を付いて来る。でも僕は……』

 

ディセンダー(エント)は小さく、それでいて苦しそうに言った。

 

「僕は、人間だ……」

 

闇のセンチュリオン・テネブラエは表情を変えず、ディセンダー(エント)に静かに言った。

 

「いいえ、世界の守り手(ディセンダー)様。あなた様は、姿こそ人間でも、中身は人ではありません。あなた様は、世界の守り手(ディセンダー)なのだから。」

『……、センチュリオンの事は、僕も知っている。それは良いとして、それは、ラタトスクが言ったのだろうか。今の、僕の気持ちを知っているのかどうかは知らないけど……』

 

精霊・ウンディーネは、その言葉に怒鳴ろうとして、ディセンダー(エント)に止められた。

ディセンダー(エント)は低い声で、俯いたまま闇のセンチュリオン・テネブラエに言った。

 

「……そうだね。今はそうしておく。ラタトスクに、伝えておいてくれるかな。今度身勝手に、ダオスに魔物を操らせたら、魔物を一掃してしまうかもしれないから注意しておくように、と。」

 

それはいつもと違うディセンダー(エント)の雰囲気。

そのいつもと違う彼の姿に、精霊・ウンディーネは息を飲んだ。

遠くで、精霊・シルフも目を見開いた。

闇のセンチュリオン・テネブラエも、一瞬ビクッと動いた。

が、平静を取り戻した顔で静かに答えた。

 

「……分かりました。伝えておきます。では、私はラタトスク様の所へ帰ります。」

 

立ち上がる闇のセンチュリオン・テネブラエに、いつものディセンダー(エント)が止めた。

 

「あっ!ちょっと待って。君は、今この砂漠で起きているマナの事について、何か知っている?それに、この砂漠に入ってから、一度も魔物に遭遇していないんだ。」

 

闇のセンチュリオン・テネブラエは振り返り、辺りを少し探ってから、首を振った。

 

「私にも、これは解りません。しかし、魔物達の気配がしないのは、確かにおかしい。帰ったら、ラタトスク様にも聞いてみましょう。」

「そう……。じゃあ、そうしてくれる。ああ、後……ラタトスクに、町を出て、僕自身は新しい経験を体験しているよ。でも、それ以上に下界に住む者達の感情は、やっぱりどこも同じだと。これも、言っておいてくれるかな。」

 

ディセンダー(エント)は苦笑いで、そう言った。

闇のセンチュリオン・テネブラエは、ひとつ頷いてから闇の中に消えた。

 

『それにしても、流石だったな。ラタトスクの元に居るだけあって、すぐに平静を取り戻したか。それにしても……僕も少しヤバい、かな。()に近付き過ぎているのかも……』

 

ディセンダー(エント)は、しばらく前から精霊・シルフと共にいたクラトスの方へ歩いて行った。

ディセンダーは苦笑いで、クラトスに言った。

 

「……師匠(せんせい)、もしかして夕飯出来ました?でも良かった。今のを、もしミトス達に見られていたら、危なかった。」

 

クラトスは腕を組みながら、こちらも苦笑しながらディセンダー(エント)に言った。

 

「ミトス達には、教えないつもりか?……まぁ、それでも良いが、自分から暴露したら自ずとばれるぞ。」

「そ、それには、気を付けます。さっきも、ウンディーネにこっ酷く叱られましたし……」

 

と、子供のようにうなだれた。

二人と精霊は、テントに戻った。

 

 

一行が、砂漠に挑んで三日が経ったある日のこと。

ついに、魔物を一匹見付けた。

しかし、近付いて様子を確かめに行こうとしたら、いきなりその魔物が消えたのだ。

ディセンダー(エント)は、魔物が消えた瞬間ビクッと体を震わせた。

 

『っ!あの魔物の所に、何かいる。それよりも、何だあそこ……負の想念が、集まっている⁉』

 

消えた魔物の所まで、走った。

そして、すぐに伏せた。

クラトス達も近付き、同じように伏せた。

彼らの見るその先には、驚く程大きな魔物が砂の穴の底にいる。

その姿は、あまり良い物では無い。

精霊・シルフが姿を現し、「うえー」と唸る。

姿もそうだが、魔物をむさぼっている姿も、あるからだろう。

ディセンダー(エント)が、小声で静かに言った。

 

「……っ、あれは『ギルガリム』‼でも、どうして……門が開けば、ラタトスクが黙っている訳がない。……成程!少ししかない力を、負の想念と魔物が運んでいるマナを使って、あんなに大きくなったのか。それでイフリートは、マナを凝縮して、この砂漠に入れないようにしたのか!」

 

ディセンダー(エント)はすぐに理解した。

だが、それでも解らない事がある。

 

〝でも、何でいるんだろう……。あれは、前に見た奴(・・・・・)と似ている、よね。……シルフ?〟

〝何で、私に聞くのよ‼〟

〝だって、前の時は平気だったよね?〟

〝あの時は、あの変なディセンダー(・・・・・・・・・・)の方が、インパクトがあったからよ!〟

〝ですよねぇ……。それにしても、どうしようか。〟

 

じっと、ディセンダー(エント)は、それを見ていた。

が、ディセンダー(エント)は大声で叫び、走り出した。

 

「うわっ⁉目が、合っちゃった‼皆、早く逃げて‼」

 

再び、ディセンダー(エント)が魔物に視線を戻すと、砂を這い上がって来る所だった。

見ると、ユアンが一人遅れて逃げている。

ユアンが、こちらに来たその瞬間、魔物が飛んで来た。

全員戦闘モードになった。

ディセンダー(エント)とクラトスが至近距離で戦う。

ユアンが中距離で応戦。

ミトスは魔術で応戦し、マーテルは支援援護をしている。

 

〝シルフとウンディーネは、あれの動きを止めて。〟

〝わかった。任せておきなさい。〟

〝油断しないように、するのですよ。〟

 

精霊・シルフは風を操り、精霊・ウンディーネは水で、それぞれ魔物の動きを止めた。

戦闘も半分いった所で、魔物の動きが鈍くなった。

 

『今なら、魔術で動きを完全に止められるはずだ!はぁー。きっと、後でどやされるけど……仕方ない。今は仲間を守るのが、優先だ!』

 

ディセンダー(エント)は魔物に向かって、魔術を打ち出した。

 

「サンダーブレード‼」

 

すぐ近くで、精霊・ウンディーネが怒っているのが解る。

しかし、先に魔物を倒す事にした。

魔物の動きを完全に止め、止めをクラトスと共に刺した。

ミトスは肩で息をしながら、ディセンダー(エント)に質問した。

 

「さっき、ディセンダー……。詠唱無しで、魔術発動した?」

 

これまた肩で息をしながら、ディセンダー(エント)は答えた。

 

「あー……うん。僕の前の人(・・・)が、魔術得意だった人みたいで……」

『本当、こういう時は前の人の力は助かる。使えるかどうかは、賭けみたいなものだけど……良かった。でも、僕自身も頑張らなくちゃ。』

 

ユアンが、同じく肩で息をしながら、彼等に言った。

 

「積もる話は、後にしよう。ここをすぐに、離れるぞ。」

 

ディセンダー(エント)は、ユアンに声を掛けた。

 

「ああ!ちょっと待って下さい。」

 

ディセンダー(エント)は倒した魔物に近付き、手をかざした。

 

『まずは、こいつの瘴気を僕の中に入れて、瘴気をマナに変換しながら、マナだけを取り出すっと……』

 

ディセンダー(エント)が光出し、魔物から黒い何か(瘴気)が浮き出し消える。

ディセンダー(エント)は、精霊・シルフと精霊・ウンディーネに振り返り、手早く言った。

 

「これで良いはずだ。このマナを、ここら一帯に流して。そうすれば、ラタトスクが魔物達を召喚すると思うから。」

 

精霊・シルフ達は頷き、消えた。

 

『それ以前に、僕を監視していた時点で、あれを倒したのは知っていると思うな。それに、動いて貰わないと、何の為の監視なんだか……』

 

ディセンダー(エント)は、戦闘中に見た空高く飛行しながら、こちらを見ている魔物に気付いた。

どう考えても、意思があっての行動だ。

 

 

ディセンダー(エント)達はオアシスを見つけ、今日はそこで休む事にした。

今日の火の晩はユアンが行っている。

 

『はぁー……。それにしても、ギルガリムがこんな所に居たなんて。そう思うと、彼女はかなり強い(・・・・・・・・)な。ギルガリムを、一人で倒してしまったもんな。……あ、シルフとウンディーネが帰って来た。……イフリートも、一緒か。イフリートには、後で謝っとかなくちゃ。』

 

ディセンダー(エント)は、起き上がった。

どうやら、ミトス達も起きてしまったようだ。

 

『あー……、ごめんなさい。でも、丁度良いや。このまま行こう。』

「ご苦労様。もう休んで。後は、あいつの仕事だから。……それと、イフリートも、ああ言うのは早めに教えてよ。おかげで、凄く苦労したんだから。」

 

そう言うと、精霊・イフリートが腕を組んで、現れた。

 

「うむ。実は、先程お主が力を使うまで、来ている事に気づかなんだ。それに来ているなら、〝来ている〟と一言言わんか。まったく……。まぁー、それはさておき、あの村から出て来たようだな。うむ。我は、解って貰えて嬉しいぞ。」

 

と、何度も頷いている。

精霊・シルフは「バカ!」と言ったが、既に遅い。

精霊・ウンディーネは、殺気を出している。

ディセンダー(エント)は苦笑いをしながら、精霊・イフリートに言った。

 

「……守るべき村を失ってしまったしね。本当は、あの村で生きたかったけど。ああ、でも……今でも、君達の言葉を忘れた訳じゃ無いから安心して。君達が、僕の事を心配してくれていたのは知っているから。」

 

精霊・シルフは、悲しそうな顔をディセンダー(エント)に向けてから、精霊・イフリートに向き直る。

彼の前で、腰に手を当て、怒った。

 

「ダオスが、村を壊したのよ。全く。何で、あんな奴がいるのよ!」

 

精霊・イフリートは知らなかったので、物凄く驚いた。

腕を組んだまま、静かに言った。

 

「何⁉そうか……。しかし、あ奴なら確かにやるだろうな。……すまなかったな。そんな時に、居てやれなくて。」

 

ディセンダー(エント)は首を振った。

そして、精霊・イフリートに笑顔で答えた。

 

「気にしないで。……もう終わった事だから。それにしても、イフリート。君さ、僕の事怒っていたんじゃないの?」

「うむ。……当たり前だ。しかしそれ以上に、今はダオスに対し、怒りが増幅している。それに、お主が心配なので、我も付いて行く。」

『……良かった。イフリートと仲直り出来て。』

 

精霊・イフリートが加わり、やっと砂漠を超えた一行。

彼らは、小さな港町に来ていた。

ディセンダー(エント)は、初めて見る海に興奮していた。

ミトスとノイッシュと共に、海の底の魚を見ていた。

 

『わぁー。この目で、海を見るのは初めてだな。村にいた魚とは、だいぶ違うな。あ!あの魚、別の世界にいた奴だ。そっか、因子を受け継いだんだ。』

 

しばらくそうやって、昔の事も思い出していた。

と、ミトスがつまらなそうに言った。

 

「クラトスとユアン、遅いな。僕、もう飽きてきた。」

 

ディセンダー(エント)はしばらく考え、周りで釣りをしている者達を見て、

 

「じゃあ、釣りでもする?僕、釣りした事ないんだ。」

 

ミトスは嬉しそうに笑い、荷物を漁り始めた。

 

「良いよ。確か、道具がここに……あった!姉様は、どうする?」

 

マーテルは微笑んで、

 

「私は、良いわ。ここで、見ている事にするわ。」

 

ミトスとディセンダー(エント)は、釣りを始めた。

二人と一匹は楽しそうだ。

すると、何かが、マーテル(自分)に近付いて来たのが解る。

 

「お主が、神子か?」

 

と、精霊・イフリートが姿を現さず、言った。

マーテルは、他の者に気付かれないよう、精霊・イフリートが居る方へ小声で言った。

 

「はい。マーテルと言います。昨日は、真面に自己紹介も出来なくて、すいません。」

「……いや、世界の守り手(ディセンダー)達から昨日聞いた。世界の守り手(ディセンダー)が、明るくなった事に対し、そなた等には感謝している。」

「それには及びません。私の弟も、ディセンダー君に会ってから、とても明るくなりましたから。ディセンダー君は、あの子にとって初めての友達なので。むしろ、私の方がお礼を言いたいくらいです。」

「……そうか。世界の守り手(ディセンダー)も、中々同世代の友と言うものを持てなかったからな。」

「そう言えば、そうですね。同年代は、初めてですね。」

 

と、精霊・イフリートの言葉に、精霊・ウンディーネが思い出したように言う。

マーテルは村での事を思い出す。

 

「それはやっぱり、村長様が言っていたような事で、ですか?」

「それもあるけど……まぁー、色々あったのよねぇー。」

 

そこに、精霊・シルフも入ってくる。

マーテルは一つ頷き、

 

「……そうですか。では、私はこれ以上は何も聞きません。」

 

なぜなら、精霊達は昔話に盛り上がり始めたからだ。

それからしばらくして、ユアン達が戻って来た。

ミトスは帰って来た、ユアンにだけに怒りながら、指を差し怒鳴った。

 

「遅いよ!僕達、飽きて釣りしていたんだから!」

 

そして落ち着いてから、船に乗って旅立った。

今度の港は、浜辺があった。

ので、ディセンダー(エント)はダッシュして、波打ち際まで行ってしまった。

ミトスとノイッシュも行ってしまったので、今日はここに泊まる事になった。

浜辺では、ディセンダー(エント)が嬉しそうにミトスに言った。

 

「ミトス。海って、普通の水と違って、しょっぱいね。」

「それはそうだよ。何でかは、知らないけど。」

 

と言っているミトスに、ディセンダー(エント)は水を掛けた。

ミトスは「お返し」とばかりに、ディセンダー(エント)に水を掛けた。

二人は、掛け合いを続けた。

最終的には、ノイッシュを標的に、水を掛け始めた。

そんな姿に、精霊達は呆れる。

 

〝本当、子供ねぇー。〟

〝良いではないか。本人が、楽しいなら。だが……〟

〝……、びしょ濡れですね。全く、後で怒らねば。〟

 

戻ったディセンダー(エント)とミトスは、びしょ濡れだった。

二人は、マーテルにこっ酷く叱られた。

途中、何か同じ事を思ったのか、精霊・ウンディーネと精霊・イフリートが姿を現し、一緒に怒り出す。

一晩泊り、港を出た。

 

〝それにしても、海では楽し……かったな……〟

 

しばらくして、ディセンダー(エント)が話始めたと思ったが、彼の言葉が聞きづらい。

精霊・シルフがその異変に気付いた。

 

ディセンダー(エント)?〟

 

近づいてみると、熱がある。

今にも、倒れそうな様子をしている。

ディセンダー(エント)をノイッシュに乗せる。

彼は、ノイッシュの背でぐったりしていた。

 

「私、どこか休める所を探してくる!」

 

精霊・シルフが飛んでいく。

帰って来た精霊・シルフが、指を差しながら言った。

 

「あの、山の奥に小さな村があるわ。そこに行くわよ。ほら、早くしなさい!」

 

急いで、精霊・シルフの言った場所に向かう。

ディセンダー(エント)は、心の奥底のような暗い場所で、自分と同じ姿をした世界の守り手(ディセンダー)を見ていた。

そのすぐ傍には、誰か居るような気がしたが、良く見えない。

 

『……、何だろう。凄く懐かしいけど、とても悲しいのは……』

 

ディセンダー(エント)が一度目を覚ますと、マーテルが居た。

マーテルは優しく言った。

 

「良かった。気が付いたのね。調子はどう?」

 

ディセンダー(エント)は辺りを少し見渡して、虚ろな顔でマーテルに聞いた。

 

「……大丈夫……です。……それと、ここは?」

 

マーテルは視線を下げ、

 

『来たばかりの事、多分覚えていないのね。』

 

マーテルは優しく微笑んで、ディセンダー(エント)にゆっくり教えた。

 

「ここは、山奥のエルフの隠れ里のようです。大丈夫、今日はしっかり休むのよ。」

「はい。……ありがとうございます。マーテルさん……リィ姉……」

 

そう言って、ディセンダー(エント)はまた寝出した。

マーテルは布団を掛けなおして、

 

『ディセンダー君、最後に『リィ姉』って言っていたけど……誰かしら。ううん、詮索は止めましょう。』

 

そして、部屋をそっと出た。

 

 

ディセンダー(エント)は眠る少し前、マーテルがエミリィに見えたのである。

前に一度、熱で倒れたあの時のように……

そして、しばらく眠っていると、こちらに何か来る気配を感じた。

ディセンダー(エント)は起き上がった。

 

『大分、良くなってきた。それにしても、久々に彼を見た気がするな。』

 

と、自分と同じ姿をした、世界の守り手(ディセンダー)を思い出す。

彼の前に現れたのは、闇のセンチュリオン・テネブラエ。

闇のセンチュリオン・テネブラエはお座りをして、頭を一度下げてから、

 

「大丈夫ですか、世界の守り手(ディセンダー)様。先日、あなた様の力が多いに使われたから倒れたと聞き、ラタトスク様が笑って仰っていましたよ。」

 

ディセンダー(エント)は苦笑いをして、闇のセンチュリオン・テネブラエに言った。

 

「……大丈夫。僕も、あんな風に沢山の負の想念やら、魔族の瘴気をマナに変換したのは、初めてだったから少し疲れただけ。……それで、ラタトスクは何て?」

世界の守り手(ディセンダー)様が、ギルガリムを倒した後、ラタトスク様が門を調べました。門には、開いた形跡はありませんでした。……ラタトスク様は、〝おそらく、負の想念が集まった所を中心に、小さな穴を作ったんだろう〟との事です。……ああ。それと、世界の守り手(ディセンダー)様が作り出したマナは、しっかり流したので大丈夫ですよ。」

「……そう。マナの枯渇だけではなく、魔族達も、この世界に入って来たら終わりだろうね。その小さな穴、多分一つでは無いだろうし。魔族と契約する者が現れる前に、何とかしないと……。ラタトスクには、魔物達に穴を見付けておいてくれるように、言っておいて。」

「その点は、大丈夫です。既に、魔物達を通し、ラタトスク様が探しております。〝どうせ、あのお人よし世界の守り手(ディセンダー)が探しておいてくれ、と言ってくるだろうしな。ククク。むしろあいつが、魔族と組まない事を願っておこう。どうやら、あいつの能力のようだしな。今から、より一層魔物達に探させておくか。〟と仰りながら、命令されておりましたから。」

 

陽気に言う闇のセンチュリオン・テネブラエだが、ディセンダー(エント)は『それは言っちゃダメだろう。』と思ったが、言わない事にした。

闇のセンチュリオン・テネブラエは、首を少し傾げて疑問をぶつけて来た。

 

「……それにしても、世界の守り手(ディセンダー)様の熱は、人間でいう熱ではないのでしょう。ラタトスク様も、心配しておりましたよ。」

 

ディセンダー(エント)は膝を抱えながら、悲しそうな声で言った。

 

「一言で言えば、人間とは違うね。これは、力を急激に使ったから、その反動の様なもの。……不思議そうな顔をしているね。でも、本当だよ。世界の守り手(ディセンダー)は、万能じゃない。時には、世界樹を守り切れない事だってある。」

『まぁー、半分は確かに力の反動……。もう半分は多分、別の世界の守り手(ディセンダー)の記憶を思い出しつつあるからだろうな。僕と彼は、どうやら同じ感じが、するし。』

 

闇のセンチュリオン・テネブラエは「そうなんですか」と言った。

ディセンダー(エント)は、ふと思ったことをそのまま口に出した。

 

「それにしても、僕の事を嫌っているラタトスクが、僕のこと心配しているなんて何か面白いな。」

「おや、知りませんでしたか?ラタトスク様は、世界の守り手(ディセンダー)様の事を気に入っていますよ。それこそ、お生まれになった時から、〝外に出さず、成長するまでは、世界樹の中に居れば、俺様が面倒を見てやっても良い。〟とさえ仰っていましたよ。世界の守り手(ディセンダー)様が、あの村で暮らしている時なんか、しょっちゅう魔物に様子を見に行かせていました。ああ。無論、私も行かされましたよ。いやー、あんなに小さかったあなた様が、こんなに大きくなるなんて……泣けちゃいますね。そうそう。最近は、早く世界樹に帰って来いと、常々言っていますよ。」

『あの、ラタトスクが⁉……そう言えば、昔何かラタトスクと会ったことあるような、無いような……。でも、素直に、嬉しいかも。』

 

ディセンダー(エント)は目を見開いた後、嬉しそうに「そう。」と言った。

闇のセンチュリオン・テネブラエは、何だか嬉しそうだ。

彼は立ち上がり、最後にディセンダー(エント)に、

 

「ラタトスク様もそうですが、私も心配しておりますから。世界を救う前に……いえ、救った後にも、あなた様が死んでしまっては意味が無いですからね。」

「それについては、大丈夫。僕を殺せるのは、僕と同じ存在か、君の主のような存在。そして、僕を創った世界樹くらいだから。ああ。でも、心臓や脳を貫かれたりしたら、死んじゃうかもしれないね。怖がらなくても良いよ。僕は、この世界が好きだから。それに、皆もね。」

『体が何故か、怠い。それに僕、最後の方……何て言ったかな。いや、最後の方の言葉は、僕からじゃないな。全く、僕は負けないよ……』

 

闇のセンチュリオン・テネブラエは、それ以上何も言わず、一度だけお辞儀してから姿を消した。

ディセンダー(エント)は自分の掌を見て、苦笑してから再びベッドに横になった。

 

 

次の日、元気になったディセンダー(エント)は、皆にお礼を言った。

しかし、皆は何処か警戒をしているのが解る。

 

『あれ?皆、何かを気にしている?それに……村人の人も、何か気が立っているし。』

 

ちらほら居るエルフが、こちらを見て何か話し合っている。

ディセンダー(エント)は気付かない振りをして、ミトスとノイッシュ共に、ここでしか咲いていないと言う花を見ていた。

すると、長老らしい人が来たので、ディセンダー(エント)はお礼を言おうとして近づいた。

 

『ミトス達が、何かを気にしているのは知っているけど……お礼はきちんとしないと。』

 

話し掛けようとして、ミトスが止めようとしているのが分かった。

が、止められる前に、村長に声を掛けた。

 

「あ、もしかして村長さんですか?昨日は、ありがとうございました。おかげで、元気になりました。」

 

村長が手で何かを合図しながら、ディセンダー(エント)に振り返った。

ディセンダーは、武装した村人がこちらに来ているのに気が付いた。

村長が「そうですか」と言った瞬間、ディセンダー(エント)達は囲まれた。

 

「大人しくして下さい。そうすれば、怪我はしませんゆえ。」

 

ディセンダー(エント)は、村人が詠唱をしているのを確認した。

そしてクラトス達が、緊迫した雰囲気を作っている事も。

ディセンダー(エント)は、村長を見ながら静かに聞いた。

 

「これは……どういう事ですか?もしかして、僕達何かここで悪い事しました?」

「いやいや。そう言う訳では無いぞ、少年。ただ、そこの精霊達が欲しいのだ。精霊さえ居れば、この村は世界樹に守って貰える。」

『成程。そう言えば昔、爺様が言っていたなぁー。帝国では、精霊はマナの象徴。精霊が現れるという事は、その場所はマナが溢れている証拠、と。昔は気まぐれに、精霊が姿を現し、帝国の民は喜んでいたって。でも、マナが枯渇してからは、精霊を見る事は無くなったと。でも、イフリート達が出た時、長老達は逆に焦っていたな。僕が神子だと思っていたから、かな……』

 

ディセンダー(エント)は、これ以上想う事を後回しにした。

エルフの長老に、ディセンダー(エント)は笑顔で言った。

 

「ああ、成程ね。でも、駄目だよ。彼等は僕の大切な家族……の様な存在だから。」

 

クラトス達の所で、精霊達は目に涙を浮かべ語り始めたのを見た。

そして、エルフの村長はそれを聞き、納得したようだ。

ディセンダー(エント)は、精霊達に手早く言った。

 

〝君達は、師匠(せんせい)達の方を宜しく。僕は、ミトス達を何とかするから。〟

〝ええ、構いませんよ。今は、気分が良いので。〟

 

と、皆嬉しそうだ。

ディセンダー(エント)は、ミトスとノイッシュの位置を確認した後、詠唱している村人の位置を見た。

そして村長が、口を開き叫んだ。

 

「成程。では、貴方がいれば、他の者は用無しですな。皆!人間とハーフエルフなんぞ、殺してしまえ!」

 

その瞬間、詠唱を終えていた村人が攻撃してきた。

だが、ディセンダー(エント)はミトス達を助け、精霊・ウンディーネ達はクラトス達を助けた。

エルフの村長と村人は驚いていた。

 

「残念だったね。僕は、声に出さなくても精霊と話せるんだ。それが、僕の能力だから。僕の大切な仲間に、手を出さないで。僕は、助けて貰ったあなた達を殺したくないんだ。」

 

その最後の言葉には、恐ろしい程のオーラが出ている。

それは、普段の彼からは想像がつかない程に。

そして精霊達は見た。

エルフの村長や村人を見る、ディセンダー(エント)瞳の色が赤い(・・・・・・)

エルフの村長達は固まっていた。

ディセンダー(エント)はエルフの村長達に笑い掛け、明るく言った。

 

「お世話になりました。また会えた時は……仲良くして下さいね。」

 

そう言って、村を出た。

ディセンダー(エント)は歩きながら、反省していた。

 

『はぁー、不味いな……。彼が、僕になりそう(・・・・・・)だ。違う。僕が、彼になりそう(・・・・・・)なんだ。彼は、誰よりも世界を信じていた人だから、裏切られた時の気持ちは凄かった。』

 

精霊達は、ディセンダー(エント)に付いて話していた。

 

〝……さっき、ディセンダー(エント)の瞳……赤かったよね。あれって……〟

〝シルフ。まだ決まってはいません。それに、あの子は決して落ちませんわ。〟

〝ラタトスクには、言っておいた方が良いかもしれんな。我らより、その手の事は詳しいからな。〟

〝……そうですね。〟

精霊・イフリートが、精霊・ラタトスクに連絡した。

しばらくして、ディセンダー(エント)が振り返る。

苦笑交じりな顔で、

 

「……でも、良かった。僕、どうしようかと思いました。頑張った甲斐ありました。」

「そうだな。私達も、少し驚いたが無事だったのだから良いだろう。」

 

いつものディセンダー(エント)に戻った事に、精霊達は安堵した。

彼の瞳の色も、金色に戻っていた。

ディセンダー(エント)は、ミトスがマーテルの後ろから出て来たのを見た。

ディセンダー(エント)はミトスと話し始めた。

 

『やっぱり、怖がらせちゃったかぁー……。何も知らないミトスを、これ以上怖がらせないようにしよ。』

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