テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
あの村から、しばらく順調に旅が進んだ。
しかし、帝都に着いた時、恐ろしい事になっていた。
『人間以外の種族が、奴隷のようになっている⁉特に、子供や年寄り、女性が多い……。こんな事を、王はやっているのか。もしそうなら、許せない。爺様の言った王は、もういないのかも知れない……』
〝ねぇー、皆。さっき、ここに入ってから魔族の気配を感じた。〟
〝……位は?〟
〝中級かな……。それも、契約しているよ。〟
〝そうか……それでは、注意しよう。特に、
〝心掛けます……〟
クラトス達は、取り敢えずユアン達がばれないようにしながら、王のいる城へ向かった。
城まで来たクラトス達は、門番に止められる。
しかし、クラトスの顔を見ると「申し訳ありません」と、姿勢を正した。
『何とか、ばれずには入れたなぁー。でも、王に会うまでは油断できない。それに、
王の謁見の間の前に立ち、クラトスは中に入る。
「騎士団長、クラトス・アウリオン。只今、戻りました。」
すると、女性が立ち上がり、嬉しそうに声を上げた。
「クラトス‼良く、戻って来てくれました。体に大事ありませんね。」
クラトスは、その女性に一度頭を深く下げてから、答えた。
「姫こそ、ご無事で何よりです。……王の容体は如何に?」
『あれが、この国の姫君か。
姫はその言葉に一度、首を振る。
そして、クラトスの周りの者達を見て、
「その者達が、そうなのですね。すぐに人払いと、父の面会を取り付けます。少し時間を下さい。」
そう言って、姫は謁見の間を出て行った。
クラトス達は、小さな個室に通された。
ユアンは手を組んで、思い出しながら、
「あれが、この国の姫君か……。床に伏せている王に代わって、齢十八の少女が政治を行うか。よく、これくらいで済んでいたものだ。」
『それは……そうだな。齢十八の姫と言えど、貴族が黙っていないだろう。その為の奴隷、か。中には、彼等を殺したい者も、いるだろうからね。』
だが、ミトスは怒っていた。
「これくらい⁉人間以外の種族を、奴隷のように扱っているこれが!」
ユアンは、腕を組み静かな声で言った。
「あの姫が、貴族達から異種族を、形はどうあれ守っているのだ。でなければ、貴族共の言い分で、おそらく異種族は、全員処刑されていただろう。」
ミトスは「でも‼」と、涙目になっている。
『あの森……成程。あそこに、召喚した穴があるのか。それにしても、ここから見る限り、薄い瘴気に包まれつつある。何とかしないと……でも、それは
部屋に、兵士が一人入って来て、
「クラトス様。姫様より、準備が出来たので、王の寝室まで来るように、との事です。」
王の部屋の警備兵に、クラトス以外の者は武器を預ける。
部屋に入る前に、
〝……ここに、魔族契約者がいる。シルフは、災厄魔族を追って、穴を見付けて。〟
〝分かったわ。〟
王の寝室へと入った。
王は、大きなベッドの上にいた。
顔色は凄く悪いようだ。
王の横には、先程の姫と年寄りの大臣、陰険顔の宰相がいた。
『あの宰相……村にあった世界樹の宝珠を奪った人だ。それにしても、王の病は瘴気か。……全く。隙あれば、僕を殺す気か。それならそれで、炙り出すのは簡単かな。』
王は、クラトスを見てから、ユアンを見て言った。
「クラトス、よく無事に戻った。其方の者が、お主が言っていた者だな。」
クラトスは王にお辞儀し、ユアンが一歩前へ出て、緊張した声で言った。
「我が名は、ユアンと申します。こちらは、我が国の世界樹の神子だった、マーテルとその弟です。」
マーテルは一度お辞儀し、ミトスはマーテルの後ろへ下がった。
「……早速ですが、帝国王。我が国は、もうこの国を落とす事しか考えていないようです。我が国の王は、正気を失った。まるで、何かに憑りつかれているかのように、人が変わってしまった。私は、この戦争を何とか阻止したいのです。我が国の民の為。そして、かつては良好だった、異種族同士の関係を取り戻したいのです。」
『……隣国王も、同じか。どこの王も権力に溺れ、国が壊れるのは、幾つも見ていたけど……この世界は、どうなるかな。出来れば、平和になってくれると良いけれど……』
王は、一つ頷く。
「貴殿の申し出は、大いに解った。其方のあなたは、神子と言いましたな。貴方は、今のご自身の国を、どう思いますかな。」
マーテルはユアンの横へ立ち、もう一度王にお辞儀をしてから、
「……私も、王は変わられたと思います。以前は、私以外にも、異種族の神子は多かったのです。ですが、王が変わられてからは、神子を排除するようになりました。今や、世界樹への恩恵も忘れて……」
『……
王は悲しそうに、
「そうか……。我が国にも、神子はおった。しかし、世界のマナが枯渇し始めてからは、世界樹の声を聴ける者も、憑依出来る者も、居なくなってしまった。今や、世界樹の恩恵も、この帝国には無いに等しい。」
王は十分に考えてから、ユアン達を見つめて力強く言った。
「解った。我が国にできる事は、最後までやろう。貴殿の国の王も、思い出してくれる事を願って。」
「「王の御心に感謝します。」」
ユアンとマーテルは、声を揃えて言った。
話がひと段落した所で、
王の前で一礼した。
クラトスが動いたが、王が止めた。
王が優しい声で、
「うむ、少年。君は、我が国の者かな。まずは、名を教えてくれ。」
「僕の名前は、
「その者が、我に何を聞きたいのかな。」
「王は、今のこの国を……いえ、この国に住む異種族を、どう思いますか。」
王は
「彼等も、我が国に住まいし、大事な民だ。今は、我がこんな事になってしまったせいで、異種族の者達には辛い思いをさせてしまっている。多くの者が、無罪で連行され、処刑されてしまった。今では、奴隷のように扱われている者も多い。我が不甲斐無いばかりに、多くの村や町を守ってやる事が出来なかった。おそらく、君の村も、そう言った所なのだろう。本当に君にも、そして、その村の者にも、すまない事をした。」
そして、泣きながら王に言う。
「王、正直に言います。もしあなたが、己が身だけを心配する者で、異種族に対し、何も思っていないようなら……殺そうと思いました。」
「そう思うのは、当たり前だ。こんな頼りない王なのだから。それで、お主はどうするつもりだ?」
「……殺しません。あなたが良き王である事も、解りました。良かった。長老や
その言葉に、この場にいる全員が驚いた。
精霊達は、魔族を注意深く見ていた。
姫が、半信半疑で言った。
「救うって……お父様の病が、あなたに解るの?どんな有名な医師にも解らない、この病が⁈……本当に?」
いや、その奥の魔族を見て、冷たい声で言った。
「……僕が、この城に入った時……違うかな。この王都中心地に入ってから、気付いたのかな。ずっと、その短剣を握っているよね。隙が出来たら、殺そうとしていたのかな。それにしても……良く気付いたものだよ。魔に連なる者以外は、瘴気に耐えられないし。今の君クラスでも、生き物一つ壊すくらい簡単だもんね。何より、魔物や精霊以外には、このくらい薄い瘴気は視えないし――」
そう言った瞬間、宰相は……いや、魔族は宰相の体を使い、
しかし、小刀は
魔族は、その瞬間宰相の体から飛び出し、窓から逃げ出した。
「あー……ダメだよ、イフリート。こっちじゃなくて、あっちを捕まえないと。」
すると、精霊・イフリートが怒りながら、
「あっちは、シルフが行った。お主も、挑発したからには避けろ!」
そして、精霊・ウンディーネも姿を現し、
その傷を心配した後、魔族に怒り出していた。
「イフリートの言う通りです。……ああ、こんなに斬れて。捕まえたら、絶対に八つ裂きにしなくては!」
「八つ裂きにするのは構わないけど、ちゃんと穴を見つけてからじゃないとラタトスクに怒られる。」
そう言って、窓から視線を外した。
姫が、精霊を見て声を出した。
「……ま、まさか、精霊⁉まだ存在していたのですね。良かった……我が国は、まだやり直せる!」
『さて、王の瘴気を取りあえず、僕の中に入れ替えるか。』
光輝き、その光が終わった頃、王の様子が変わった。
「……おお!おお‼体が、軽くなった!さっきまでとは違う。これは……どう言う事だ?」
「王、あなたは瘴気に蝕まれていたのですよ。あれは、生き物が触れれば、死に至るもの。この人間に、憑りついていたある者が、あなたを苦しめていたのです。」
「……そ、そうか。ところで、この者は無事なのか?」
そう言って、王が宰相に視線を向けた瞬間だ。
陰険顔の宰相は、苦しみ出した。
「助けてくれ」と叫んでいる。
「……あなたは、僕の村の事を覚えていますか?あなたが、隣国に売り渡した村ですよ。今の貴方のように苦しんでいた僕の村の人を捨て、世界樹の御魂を奪っていったあの村です。そのせいで、世界樹の加護を失った村は、魔物と王都騎士団に襲われた!」
精霊・イフリートが、宰相を押さえながら。
そして、精霊・ウンディーネも
〝……
〝心の底から、それを望むでしょう。ですが、助けるでしょうね。だってあの子は……〟
〝そうだな。あ奴は、優しい子だからな……〟
精霊は彼の行動を見守る。
だが、
「嘘⁉宰相……あ、あなた……あれは遺跡で、見付けたと言っていたのは、嘘だったのですね。」
悲鳴めいた声で、そう言った。
宰相は目を見張り、わなわな震えている。
だが、苦しみが強いようで、最早話を聞けるような状態ではない。
精霊・イフリートは、それを見届けた後、姿を消した。
元気になった宰相に、王は静かに言った。
「こやつを、牢へ連れて行け。」
「あ、ありがとう。き、君の村には……ひ、酷い事をした。す、すまなかった。ほ、本当に……」
宰相はそう言い続けて、兵に連れて行かれた。
『これで良かったんだよね。……爺様、リィ姉……』
王は「申し訳ない」と言う感じで、
「宰相が、すまない事をした。しかし君は、一体何者だ。精霊を操り、我が病を治した。其方は――」
「申し訳ありません、王様。これは、御教え出来ません。」
王は静かに「そうか」と言い、大臣に言った。
「今すぐ、全貴族及び、民に伝えよ。〝
大臣は王に一礼した後、急いで出て行った。
王はベッドから起き上がり、
「今日は、この城で休まれよ。すぐに、部屋を用意しなさい。」
それ以外は、まだ王と話をしている。
ついでに、精霊・ウンディーネも、だ。
〝……イフリート。〟
〝何だ、
〝僕、決めたよ。僕、ミトス達に話す。理と名を。それに師匠にも、もう少しだけ理について話すよ。〟
〝そうか。お主が、そう決めたならそうすると良い。〟
「ねぇー、ミトス。」
ミトスはソファーに座った状態で、答えた。
「何?」
「今の、この状況が終ったら……ミトスに教えたい事があるんだ。」
「……教えたい事?」
そして、笑顔でミトスに言った。
「うん。僕の……僕の、もう一つの名前。僕だけの、ね。」
ミトスは良く解っていないようだが、笑顔で言った。
「解った。楽しみに待っているね。」
王が会議を始めてから、急激にこの国の内情は変わった。
異種族を開放し、土地と権利を与えた。
この国に、平和が訪れた。
『王が、異種族に土地と権利を与えても、そんなすぐには皆受け入れられないだろう。お互いの関係が、これ以上悪化しない事を祈ろう。』
〝……あ、ラタトスク?実は、今シルフが帰って来て、やっぱり森が怪しいみたいなんだ。それで、ラタトスクにも協力して欲しいんだ。〟
〝……俺様が、何を手伝えと言うんだ?〟
精霊・ラタトスクは不機嫌だった。
だが、
〝魔物の排除と、穴がある場所を探して欲しいんだ。……駄目かな。〟
〝……、解った。手伝ってやる。今から、行ってやろう。〟
〝本当⁉ありがとう。森の入り口で、待っているね。〟
と、大喜びで言った。
「……ウンディーネ、君は
「……解りました。シルフ、イフリート。
二人は頷いた。
精霊・ラタトスクは腰に手を当て、口の端を上げてから言った。
「魔物共が、既に穴を見付けた。この森の最奥くらいの所だ。あれくらいなら、お前達だけで事足りる。俺様は、高みの見物をさせて貰おう。」
と言った途端、精霊・シルフが怒り出すのをなだめる。
「それにしても、この森瘴気が出てきているね。」
「ああ。下界人には見えんだろうが、これではマナまで、汚染されるだろうな。」
「さっさと、終わらせましょう。」
奥まで行くと、穴を見つけた。
周りには、下級魔族が集まってきている。
「取り敢えず、こいつ等を何とかしよう。」
精霊・イフリートと精霊・シルフも、応戦を始めた。
その頃、精霊・ウンディーネの方は、クラトス達と謁見の間に来ていた。
王が、クラトス達を見渡す。
玉座に座ったまま、隣国の事について話している。
精霊・ウンディーネは、周りに気付かれないよう平然とした顔のまま、考えていた。
『……それにしても、
「そういえば、今日はあの少年はおらんのか?」
すると、王が
「
「……何かな、精霊殿。」
「貴殿が、あの病に蝕まれた時の事です。あれはいつ頃からですか。」
王は必死に思い出しながら、
「うーむ……あれは、二年くらい前からかのぉー。」
「二年……、そうですか。では、この地区で一番貴殿と同じ、もしくは体調が悪くなるような場所はありますか。」
これは、姫が想い当たる事があるらしく、
「それは、おそらく貴族の一部の者と下町の者達ですね。後、この帝都の奥の森ですね。」
「やはり森ですか……」
精霊・ウンディーネが小さく答えた。
その後、精霊・ウンディーネは
〝
〝……そう。元々、
〝下界人で多いのは、貴族や下町らしいです。それと、今あなたのいる森だそうです。〟
〝やっぱり、そうか……。解った。ありがとう、ウンディーネ。〟
クラトス達は、
「……ウンディーネ。ディセンダーが、今どこに居るか分からないか?」
「……、今は森にいます。」
精霊・ウンディーネは、静かに答えた。
クラトスが腕を組んだまま、確認するように言った。
「……それは、奥の森の事か?」
精霊・ウンディーネは頷いた。
『出来れば、私も早く
精霊・ウンディーネは、早いルートを通りながら彼等と共に行った。
途中で、精霊・ラタトスクを見付けた。
精霊・ウンディーネは『この場を離れたい』と、心の底から思ったが気付かれた。
精霊・ラタトスクがニヤニヤしながら、声を掛けてきた。
「はっ。ウンディーネじゃないか。こんな所で会うとは奇遇だな。お前も、あのお人好しも、どうしてこんな屑共の為に頑張るのか、解らんな。」
『相変わらず、嫌な言い方ですわ。全く。
精霊・ウンディーネは静かなる殺気を出し、静かに言った。
「……私も、です。ラタトスク。下界人を嫌うあなたが、自らこんな所へ出向いて来るとは。……ディセンダーには、会ったのですか。」
精霊・ラタトスクは腕を腰に当て、胸を張り威張って言った。
「ああ、会ったぜ。……まぁー、あの程度なら、あいつ等だけで十分だろうからな。俺様は、高みの見物だ。」
「……とか言いながら、心配で来たのでしょう。全く、素直じゃありませんね。」
精霊・ラタトスクは背を向けながら、怒りながら言った。
「っは!そんな訳じゃねぇー。今のあいつは、色々と危なっかしい奴なだけだ。」
すると闇のセンチュリオン・テネブラエが、即座に精霊・ラタトスに言った。
「ラタトスク様。それを、心配していると言うのですよ。」
「うるせー、テネブラエ!ほら、行くぞ!」
精霊・ラタトスクは闇のセンチュリオン・テネブラエを蹴り、怒りながら歩いて行った。
闇のセンチュリオン・テネブラエを置いて行く精霊・ラタトスク。
闇のセンチュリオン・テネブラエは慌てて、追いかけて行った。
「ああ、待って下さい。ラタトスク様‼」
彼らが去った後、精霊・ウンディーネは頬に手を当て、悲しそうに思った。
『はぁー……、危ないという事は、相当ギリギリなのでしょうね。』
精霊・ウンディーネはクラトス達に振り返り、明るい声で彼等に言った。
「さ、
そして、また歩き出す。
森の入り口辺りから、薄い瘴気が出て来ている。
森に入った瞬間、一気に瘴気が濃くなった。
『ここまで、瘴気が出てきているとは……。おそらく、下界人には息苦しいでしょうね。』
奥に進んだ所で、
精霊・ウンディーネは急いで、そこに向かった。
『やっぱり、この国の負の感情が上がっている事も原因かな。ここには、多くの人がいるし。人々は恐怖と怒り……そして、悲しみがある。』
と、考え込んでいた。
下級魔族を一掃した。
それに伴い、また穴から下級魔族が出てきた。
魔族の一匹が、
「っ!うわぁー、イフリート!に、逃がすな‼」
クラトス達の加勢もあり、戦闘を何とか終わらせた。
光輝き、それが収まった時、穴は消えた。
その瞬間、森の中の空気が綺麗になる。
精霊達は各々言った。
〝うむ。空気を清浄出来たな。〟
〝結構、危なかったけどね。〟
〝……それより、魔族がここまで堂々と出てくるとは思いませんでした。〟
その後、後ろから精霊・ラタトスクの笑い声が聞こえる。
そこに振り返ると、精霊・ラタトスクと闇のセンチュリオン・テネブラエが戻って来たのだ。
「クハハハハ。
そのセリフに、精霊・シルフは怒りだす。
精霊・ラタトスクを指さしながら、怒鳴った。
「この、俺様め‼自分は、高みの見物していたくせに偉そうなのよ‼」
精霊・ラタトスクは腕を組んで、鼻で笑った。
そして、精霊・シルフに怒りながら言った。
「はっ!あの程度の魔族共くらい、貴様らでやれ!大体、そこの
精霊・シルフは「ムキー‼」と怒っている。
「
クラトスが剣をしまいながら、精霊・ラタトスク達の方を見て言った。
「ああ、それは構わないが……あれは大丈夫か?」
「ああ、あれはほっといても大丈夫です。」
と笑顔で、言った。
ユアンが、
「まぁー、あれは取り敢えず置いといて。ディセンダー。実は王都騎士団が、この帝国に攻めてきたようなのだ。」
そう言った瞬間、広場の方で爆発音が聞こえてきた。
『なっ‼さっきは気付かなかったけど、魔族が多くこの帝都に入って来てる!それにこれは……上級魔族‼』
「皆、広場に急ごう!ラタトスク、君も来て‼」
「はー⁉何でこの俺様が、屑の為に……解ったよ。だから、そんな目で俺様を見るな。ほら、さっさと行くぞ。」
と言って、先陣を切る。
広場に着き、帝国騎士団と王都騎士団が壮絶な戦いをしていた。
王も、互いに戦っていた。
「まさか……王自ら、魔族と契約したのか⁉……、違う。でも、あれは……」
と言って、王達の元に走って行く。
王の傍に着いて、王都王から出ている黒いオーラを視ていた。
『あれは契約によるものじゃない。憑りつかれているんだ。』
ユアンが悲痛な声を上げた。
「陛下⁉何故、こんな事を‼」
「うん?貴様は、ユアンか。騎士団を逃げ出したと聞いたが、まさか敵国に寝返っていたとはな。」
「寝返ったつもりはありません!しかし、私は今のあなた様を、王都王とは認めたく無かっただけです!」
「はっ。貴様に、認められるつもりは無いわ。しかし、まさか貴殿が復活しているとは思わなかった。」
「うむ。ある少年に助けて貰ったのでな。王都王よ。其方は何故戦争をする。何故、手を取り合えない。」
「帝国王よ。我は気づいたのだ……世界樹は、この世界を見捨てた。ならば、多くでも自分の国を広めれば良い。残り少ないであろう少ないマナを、独占出来るようにな!クハハハハハハ‼」
『……成程。大本は王そのものだが、既に魔族に飲まれている。あれは危険だ!それに、兵の多くも既に乗っ取られている。』
『まさか、魔族の力をここまで出してくるなんて……』
マーテルは、ユアンの治療を始める。
その間にも、敵は襲ってくる。
ミトスは、ユアンとマーテルを守る。
クラトスは、王から離れられなかった。
精霊達(ラタトスク以外)も、何とか応戦してくれている。
〝ラタトスク!王の傍にいる魔物の動きを止めておいてね。〟
〝……良いぜ。せいぜい、殺られるなよ。〟
と、王都王へ襲い掛かった。
魔物は、精霊・ラタトスクが封じる。
騎士は、精霊・ウンディーネ達が止めた。
しかし、
「まさか貴様は……あの方の⁉いや、しかし……そうか……クククク。落ちかけた
その瞬間、王都王の剣が重くなった。
『っ!こいつ、僕を知っている⁉……いや、僕じゃない。
彼の剣は、黄金の光を帯びた。
「門は壊れていないのに、何故ここに上級魔族がいる!貴様らは、何をするつもりだ‼」
王都王は、否、王都王に憑りついている魔族は片手で顔を覆い、笑いながら言った。
「ククク。簡単な事だ。
「……残念だけど、それはしないよ。僕は、
「それは、教えられんな。しかし、落ち切れないなら、この我が落としてやろうか?」
そして、剣を交え始める。
王都王に対し、全員やはり苦戦している。
帝国王も、かなり危ない。
『こいつ強い!僕が本気を出しきれれば、何とかできるか……。こうなったら、もう!』
空に手を掲げ、精霊・ノームを呼ぶ。
「地の精霊・ノームよ、我が召喚に応じよ!」
すると、地響きが鳴る。
だが、それと同時に吹っ飛ばされた。
「ほいほーい。久々に登場だぞー。おや?おや?いつの間にかぁー、イフリートとラタトスクもいるのだぁ―。まぁーいいや。僕チンは、何をすれば良いのかなぁー。あれ?あれ?そう言えば、
『……、召喚時は隙が出来るとはいえ、僕もなめられたものだ。それに災厄だ。吹っ飛ばされる瞬間、僕と
「ノーム。いや、四大よ。
そう言って、四大は帝国を囲むように飛んでいく。
そして、暖かな光が満ちる。
「ラタトスク!君は、魔物達をこの町から排除して!」
「……嫌だな。この屑共の為に、動くのはお断りだ。大体、こうなった原因は下界の屑共のせいだろうが。自業自得だ。」
屋根の上からそう言った。
その顔と声は冷たい。
『……相変わらず、頑固だな。昔と変わらない……って、僕は何を言っているんだ。』
「……お願いしても、駄目みたいだね。解った。じゃあ、これが終ったら、ラタトスクの言う事を一つ聞くから!」
その言葉に、精霊・ラタトスクは口の端を上げて降りてきた。
「クハハ、良いだろう。その言葉、忘れるなよ。おい、テネブラエ!」
そういうと、闇のセンチュリオン・テネブラエが「はい、ラタトスク様。」と、言って宙に浮いて姿を現す。
精霊・ラタトスクは闇のセンチュリオン・テネブラエを横目で見て、
「ほら、行くぞ。」
と言って、嬉しそうに歩いて消えて行った。
その瞬間、この場にいた魔物達は、帝国の外へ出てくように移動を始める。
「はぁ……はぁ……魔物は居なくなったが、こんなに強いとは!」
と、ユアンが肩で息をしながら言った。
帝国王を治しているマーテルとミトスも、かなり消耗している。
クラトスも肩で息をしながら、
「このままでは、我々の不利だな。撤退しようにも、王都王をこのまま見過ごす訳にもいかない。」
『……確かに、このままではらちが明かない。ここまで来たら……もう、やるしかない!』
「……僕が、隙を作ります。その間に、二人とも斬り込んで下さい。」
二人は頷き、
そして、剣を掲げ叫んだ。
「レディアント解放‼」
光が収まった時、
自分の背と同じくらい、もしくは、それ以上の大きさはあろう剣を持っている。
『……レディアントを解放出来たけど、それでも隙が出来ない!魔術の詠唱破棄!あれを使えば何とかなるかも。』
「サンダーブレード‼」
クラトス達は『今だ‼』と、斬り込みに掛かった。
そして何とか、王都王から剣を弾いた。
しかし、王の中から魔族本体が出て来た。
その魔族は、ユアンを吹っ飛ばし逃げようとする。
『本体が、出てきた!逃がさない!あれを討てば‼』
だが、魔族は
そしてそれが刺さった瞬間、光が輝き出す。
辺り一帯から、魔族を一掃した。
王都兵達は正気を取り戻す。
『王都王だけでは、他の兵の中の瘴気は取り除く事は出来ない。なら、多少無理はしても、全体を包むか……』
光が王都王の体を包んだ後、その光は帝都全体を包む。
光が弱まり、王都王は目を覚ます。
辺りを見渡しながら言った。
「うう……私は何を?……っ!何故、帝国に攻撃を⁉全軍、直ちに戦闘を止めよ‼」
そして、帝国王が近付き、王都王に言った。
「おお、王都王……そうか。其方は、操られていたのだな。良かった。」
「っ‼……帝国王。どうやら私は、貴国に対し、申し訳ない事をした。この無礼は、我が首にて勘弁して欲しい。我が兵と民には罪はない。」
『……王都王には、記憶が無いのか。それでは、何時から操られていたのか聞けないな。でも、今の王達はちゃんと民を想っている事が解って良かった。それなら、僕の取る行動は一つだ。』
「いやいや、その言葉で良い。しかし、このままともいかんだろう。よって、ワシは貴国に対し、同盟を申し込む。お互いに、種族の壁を壊して行こうではないか。」
「ああ、帝国王。しかし、我が国は恐らく、今の私のようになっている事だろう。私は、それを先に何とかしなくては――」
「それに関しては、僕が何とかします。」
そう言った
彼は、クラトス達に治療をして貰っている。
戻った、四大が心配そうに傍に寄って来ている。
「恐らく、王都国にはかなりの数の小さな穴が出来てしまっている。それも何とかしないと。これ以上、上級魔族が入ってこないように。だから王、あなた達は、これからの国の事を話し合って下さい。」
王達は迷っていた。
そして、彼らにどう言うか悩んだ。
『それもそうだよな……。訳の分からない者に、国を預けるのは。こうなったら、僕の正体を明かすか……』
そう思った
「陛下。どうか、この者を信じて下さい。我々も、力を出す所存です。両国の未来の為に‼必ずや助けます。」
王達はその言葉に頷く。
会議を始める為、この場を離れた。
王達がいなくなって、兵達が「我々も手伝おう」と、言った。
が、それを精霊が断った。
そして誰も居なくなったのを確認し、精霊・ウンディーネが静かに言った。
「
そう言って、
マーテルは目を見張った。
「マナが……、集まってきている⁉」
「この事は内緒ですよ。さぁー、これだけのマナが集まれば大丈夫でしょう。」
マーテルは頷き、治癒術をめいいっぱいかける。
治療が終わと、
お礼と謝罪を彼らにした。
「ありがとうございます。それと、ごめんなさい。それで、僕は明日には王都国へ向かいます。その、不甲斐無い僕だけど、僕に力を貸して下さい。」
「ああ。頑張っていこう。」
彼らは、王都国に向かう準備を始める。