テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた   作:609

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マイソロ2 初代編~おまけ3~

あの村から、しばらく順調に旅が進んだ。

しかし、帝都に着いた時、恐ろしい事になっていた。

 

『人間以外の種族が、奴隷のようになっている⁉特に、子供や年寄り、女性が多い……。こんな事を、王はやっているのか。もしそうなら、許せない。爺様の言った王は、もういないのかも知れない……』

 

ディセンダー(エント)は歩きながら、精霊達に言った。

 

〝ねぇー、皆。さっき、ここに入ってから魔族の気配を感じた。〟

〝……位は?〟

〝中級かな……。それも、契約しているよ。〟

〝そうか……それでは、注意しよう。特に、ディセンダー(エント)。〟

〝心掛けます……〟

 

クラトス達は、取り敢えずユアン達がばれないようにしながら、王のいる城へ向かった。

ディセンダー(エント)は街を歩きながら、魔族や負の想念、瘴気を探っていた。

城まで来たクラトス達は、門番に止められる。

しかし、クラトスの顔を見ると「申し訳ありません」と、姿勢を正した。

 

『何とか、ばれずには入れたなぁー。でも、王に会うまでは油断できない。それに、この城に魔族がいる(・・・・・・・・・)。』

 

王の謁見の間の前に立ち、クラトスは中に入る。

 

「騎士団長、クラトス・アウリオン。只今、戻りました。」

 

すると、女性が立ち上がり、嬉しそうに声を上げた。

 

「クラトス‼良く、戻って来てくれました。体に大事ありませんね。」

 

クラトスは、その女性に一度頭を深く下げてから、答えた。

 

「姫こそ、ご無事で何よりです。……王の容体は如何に?」

『あれが、この国の姫君か。師匠(せんせい)の話では、あの姫が今、この国を動かしているのか。』

 

姫はその言葉に一度、首を振る。

そして、クラトスの周りの者達を見て、

 

「その者達が、そうなのですね。すぐに人払いと、父の面会を取り付けます。少し時間を下さい。」

 

そう言って、姫は謁見の間を出て行った。

クラトス達は、小さな個室に通された。

ユアンは手を組んで、思い出しながら、

 

「あれが、この国の姫君か……。床に伏せている王に代わって、齢十八の少女が政治を行うか。よく、これくらいで済んでいたものだ。」

『それは……そうだな。齢十八の姫と言えど、貴族が黙っていないだろう。その為の奴隷、か。中には、彼等を殺したい者も、いるだろうからね。』

 

だが、ミトスは怒っていた。

 

「これくらい⁉人間以外の種族を、奴隷のように扱っているこれが!」

 

ユアンは、腕を組み静かな声で言った。

 

「あの姫が、貴族達から異種族を、形はどうあれ守っているのだ。でなければ、貴族共の言い分で、おそらく異種族は、全員処刑されていただろう。」

 

ミトスは「でも‼」と、涙目になっている。

ディセンダー(エント)は、外の風景を眺めながら、その会話を聞いていた。

 

『あの森……成程。あそこに、召喚した穴があるのか。それにしても、ここから見る限り、薄い瘴気に包まれつつある。何とかしないと……でも、それは王を見極めてから(・・・・・・・・)だ。』

 

部屋に、兵士が一人入って来て、

 

「クラトス様。姫様より、準備が出来たので、王の寝室まで来るように、との事です。」

 

王の部屋の警備兵に、クラトス以外の者は武器を預ける。

部屋に入る前に、ディセンダー(エント)は精霊に言った。

 

〝……ここに、魔族契約者がいる。シルフは、災厄魔族を追って、穴を見付けて。〟

〝分かったわ。〟

 

王の寝室へと入った。

王は、大きなベッドの上にいた。

顔色は凄く悪いようだ。

王の横には、先程の姫と年寄りの大臣、陰険顔の宰相がいた。

 

『あの宰相……村にあった世界樹の宝珠を奪った人だ。それにしても、王の病は瘴気か。……全く。隙あれば、僕を殺す気か。それならそれで、炙り出すのは簡単かな。』

 

ディセンダー(エント)は、王を見極める為に王とクラトス達の会話を黙って見ていた。

王は、クラトスを見てから、ユアンを見て言った。

 

「クラトス、よく無事に戻った。其方の者が、お主が言っていた者だな。」

 

クラトスは王にお辞儀し、ユアンが一歩前へ出て、緊張した声で言った。

 

「我が名は、ユアンと申します。こちらは、我が国の世界樹の神子だった、マーテルとその弟です。」

 

マーテルは一度お辞儀し、ミトスはマーテルの後ろへ下がった。

 

「……早速ですが、帝国王。我が国は、もうこの国を落とす事しか考えていないようです。我が国の王は、正気を失った。まるで、何かに憑りつかれているかのように、人が変わってしまった。私は、この戦争を何とか阻止したいのです。我が国の民の為。そして、かつては良好だった、異種族同士の関係を取り戻したいのです。」

『……隣国王も、同じか。どこの王も権力に溺れ、国が壊れるのは、幾つも見ていたけど……この世界は、どうなるかな。出来れば、平和になってくれると良いけれど……』

 

王は、一つ頷く。

 

「貴殿の申し出は、大いに解った。其方のあなたは、神子と言いましたな。貴方は、今のご自身の国を、どう思いますかな。」

 

マーテルはユアンの横へ立ち、もう一度王にお辞儀をしてから、

 

「……私も、王は変わられたと思います。以前は、私以外にも、異種族の神子は多かったのです。ですが、王が変わられてからは、神子を排除するようになりました。今や、世界樹への恩恵も忘れて……」

『……神子を排除(・・・・・)?そんな事をするなんて……隣国王は、世界樹を敵に回したのか(・・・・・・・・・・・)。それとも……』

 

ディセンダー(エント)は眉を寄せる。

王は悲しそうに、

 

「そうか……。我が国にも、神子はおった。しかし、世界のマナが枯渇し始めてからは、世界樹の声を聴ける者も、憑依出来る者も、居なくなってしまった。今や、世界樹の恩恵も、この帝国には無いに等しい。」

 

王は十分に考えてから、ユアン達を見つめて力強く言った。

 

「解った。我が国にできる事は、最後までやろう。貴殿の国の王も、思い出してくれる事を願って。」

「「王の御心に感謝します。」」

 

ユアンとマーテルは、声を揃えて言った。

話がひと段落した所で、ディセンダー(エント)が王の前に立つ。

王の前で一礼した。

クラトスが動いたが、王が止めた。

王が優しい声で、ディセンダー(エント)に言った。

 

「うむ、少年。君は、我が国の者かな。まずは、名を教えてくれ。」

「僕の名前は、世界の守り手(ディセンダー)。この国と、王都の国の国境にある捨てられた今は亡き村の者です。師匠(せんせい)……いえ、クラトスさんに剣を教えて貰った者です。……王に、聞きたい事があります。」

「その者が、我に何を聞きたいのかな。」

「王は、今のこの国を……いえ、この国に住む異種族を、どう思いますか。」

 

王はディセンダー(エント)から目を逸らさず、真剣に答えた。

 

「彼等も、我が国に住まいし、大事な民だ。今は、我がこんな事になってしまったせいで、異種族の者達には辛い思いをさせてしまっている。多くの者が、無罪で連行され、処刑されてしまった。今では、奴隷のように扱われている者も多い。我が不甲斐無いばかりに、多くの村や町を守ってやる事が出来なかった。おそらく、君の村も、そう言った所なのだろう。本当に君にも、そして、その村の者にも、すまない事をした。」

 

ディセンダー(エント)は、王の言葉に涙を流していた。

そして、泣きながら王に言う。

 

「王、正直に言います。もしあなたが、己が身だけを心配する者で、異種族に対し、何も思っていないようなら……殺そうと思いました。」

「そう思うのは、当たり前だ。こんな頼りない王なのだから。それで、お主はどうするつもりだ?」

「……殺しません。あなたが良き王である事も、解りました。良かった。長老や師匠(せんせい)の言う通りの人で……。その言葉で、僕の村の者は救われました。だから、あなたを救います。」

 

その言葉に、この場にいる全員が驚いた。

精霊達は、魔族を注意深く見ていた。

姫が、半信半疑で言った。

 

「救うって……お父様の病が、あなたに解るの?どんな有名な医師にも解らない、この病が⁈……本当に?」

 

ディセンダー(エント)は姫にひとつ頷いて、陰険宰相の方を見た。

いや、その奥の魔族を見て、冷たい声で言った。

 

「……僕が、この城に入った時……違うかな。この王都中心地に入ってから、気付いたのかな。ずっと、その短剣を握っているよね。隙が出来たら、殺そうとしていたのかな。それにしても……良く気付いたものだよ。魔に連なる者以外は、瘴気に耐えられないし。今の君クラスでも、生き物一つ壊すくらい簡単だもんね。何より、魔物や精霊以外には、このくらい薄い瘴気は視えないし――」

 

そう言った瞬間、宰相は……いや、魔族は宰相の体を使い、ディセンダー(エント)に襲い掛かった。

しかし、小刀はディセンダー(エント)の頬をかすめただけで、押さえ付けられた。

魔族は、その瞬間宰相の体から飛び出し、窓から逃げ出した。

ディセンダー(エント)は割れた窓の外を見て、残念そうに言った。

 

「あー……ダメだよ、イフリート。こっちじゃなくて、あっちを捕まえないと。」

 

すると、精霊・イフリートが怒りながら、

 

「あっちは、シルフが行った。お主も、挑発したからには避けろ!」

 

そして、精霊・ウンディーネも姿を現し、ディセンダー(エント)の頬に手を当てる。

その傷を心配した後、魔族に怒り出していた。

 

「イフリートの言う通りです。……ああ、こんなに斬れて。捕まえたら、絶対に八つ裂きにしなくては!」

 

ディセンダー(エント)は苦笑いで、精霊・ウンディーネに言った。

 

「八つ裂きにするのは構わないけど、ちゃんと穴を見つけてからじゃないとラタトスクに怒られる。」

 

そう言って、窓から視線を外した。

姫が、精霊を見て声を出した。

 

「……ま、まさか、精霊⁉まだ存在していたのですね。良かった……我が国は、まだやり直せる!」

『さて、王の瘴気を取りあえず、僕の中に入れ替えるか。』

 

ディセンダー(エント)は王に近付き、手をかざした。

光輝き、その光が終わった頃、王の様子が変わった。

 

「……おお!おお‼体が、軽くなった!さっきまでとは違う。これは……どう言う事だ?」

「王、あなたは瘴気に蝕まれていたのですよ。あれは、生き物が触れれば、死に至るもの。この人間に、憑りついていたある者が、あなたを苦しめていたのです。」

「……そ、そうか。ところで、この者は無事なのか?」

 

そう言って、王が宰相に視線を向けた瞬間だ。

陰険顔の宰相は、苦しみ出した。

「助けてくれ」と叫んでいる。

ディセンダー(エント)は、宰相を見ながら怒りを込めて言った。

 

「……あなたは、僕の村の事を覚えていますか?あなたが、隣国に売り渡した村ですよ。今の貴方のように苦しんでいた僕の村の人を捨て、世界樹の御魂を奪っていったあの村です。そのせいで、世界樹の加護を失った村は、魔物と王都騎士団に襲われた!」

 

精霊・イフリートが、宰相を押さえながら。

そして、精霊・ウンディーネもディセンダー(エント)を見たまま、二人は会話をしていた。

 

〝……ディセンダー(エント)は、この下界人を見捨てると思うか?〟

〝心の底から、それを望むでしょう。ですが、助けるでしょうね。だってあの子は……〟

〝そうだな。あ奴は、優しい子だからな……〟

 

精霊は彼の行動を見守る。

だが、ディセンダー(エント)の言葉を聞いた姫は、

 

「嘘⁉宰相……あ、あなた……あれは遺跡で、見付けたと言っていたのは、嘘だったのですね。」

 

悲鳴めいた声で、そう言った。

宰相は目を見張り、わなわな震えている。

だが、苦しみが強いようで、最早話を聞けるような状態ではない。

ディセンダー(エント)は一度拳を握りしめた後、宰相に手を当て、王と同じ事をした。

精霊・イフリートは、それを見届けた後、姿を消した。

元気になった宰相に、王は静かに言った。

 

「こやつを、牢へ連れて行け。」

「あ、ありがとう。き、君の村には……ひ、酷い事をした。す、すまなかった。ほ、本当に……」

 

宰相はそう言い続けて、兵に連れて行かれた。

 

『これで良かったんだよね。……爺様、リィ姉……』

 

王は「申し訳ない」と言う感じで、ディセンダー(エント)に言った。

 

「宰相が、すまない事をした。しかし君は、一体何者だ。精霊を操り、我が病を治した。其方は――」

 

ディセンダー(エント)は王に向き直って、苦笑いで人間として、答えた。

 

「申し訳ありません、王様。これは、御教え出来ません。」

 

王は静かに「そうか」と言い、大臣に言った。

 

「今すぐ、全貴族及び、民に伝えよ。〝()の病は治った。直ちに会議を始める。〟と。貴族達には、早急に集まるよう伝達せい。」

 

大臣は王に一礼した後、急いで出て行った。

王はベッドから起き上がり、ディセンダー(エント)達に言った。

 

「今日は、この城で休まれよ。すぐに、部屋を用意しなさい。」

 

ディセンダー(エント)とミトスは部屋に通された。

それ以外は、まだ王と話をしている。

ついでに、精霊・ウンディーネも、だ。

ディセンダー(エント)は外を見ながら、精霊・イフリートに言った。

 

〝……イフリート。〟

〝何だ、ディセンダー(エント)。〟

〝僕、決めたよ。僕、ミトス達に話す。理と名を。それに師匠にも、もう少しだけ理について話すよ。〟

〝そうか。お主が、そう決めたならそうすると良い。〟

 

ディセンダー(エント)は外を見たまま、ミトスに声を掛けた。

 

「ねぇー、ミトス。」

 

ミトスはソファーに座った状態で、答えた。

 

「何?」

「今の、この状況が終ったら……ミトスに教えたい事があるんだ。」

「……教えたい事?」

 

ディセンダー(エント)はミトスの横に移動し、座った。

そして、笑顔でミトスに言った。

 

「うん。僕の……僕の、もう一つの名前。僕だけの、ね。」

 

ミトスは良く解っていないようだが、笑顔で言った。

 

「解った。楽しみに待っているね。」

 

 

王が会議を始めてから、急激にこの国の内情は変わった。

異種族を開放し、土地と権利を与えた。

この国に、平和が訪れた。

ディセンダー(エント)は、王がこんなに早く動いた事に、正直驚いていた。

 

『王が、異種族に土地と権利を与えても、そんなすぐには皆受け入れられないだろう。お互いの関係が、これ以上悪化しない事を祈ろう。』

 

ディセンダー(エント)は、精霊・ラタトスクに連絡を取った。

 

〝……あ、ラタトスク?実は、今シルフが帰って来て、やっぱり森が怪しいみたいなんだ。それで、ラタトスクにも協力して欲しいんだ。〟

〝……俺様が、何を手伝えと言うんだ?〟

 

精霊・ラタトスクは不機嫌だった。

だが、ディセンダー(エント)は続けて言った。

 

〝魔物の排除と、穴がある場所を探して欲しいんだ。……駄目かな。〟

〝……、解った。手伝ってやる。今から、行ってやろう。〟

〝本当⁉ありがとう。森の入り口で、待っているね。〟

 

と、大喜びで言った。

ディセンダー(エント)は精霊・ウンディーネに、この後の事を頼んだ。

 

「……ウンディーネ、君は師匠(せんせい)達と王の元へ行って。ああ。それと、王にそれとなくで良いから、いつ頃から、瘴気に蝕まれ始めたのか聞いておいてくれるかな。」

「……解りました。シルフ、イフリート。ディセンダー(エント)を頼みます。」

 

二人は頷いた。

ディセンダー(エント)達は森に、精霊・ウンディーネはクラトス達共に王の所へ行った。

ディセンダー(エント)が森の入り口で、精霊・ラタトスクと合流した。

精霊・ラタトスクは腰に手を当て、口の端を上げてから言った。

 

「魔物共が、既に穴を見付けた。この森の最奥くらいの所だ。あれくらいなら、お前達だけで事足りる。俺様は、高みの見物をさせて貰おう。」

 

と言った途端、精霊・シルフが怒り出すのをなだめる。

ディセンダー(エント)達は森に入って行った。

ディセンダー(エント)は、辺りを見渡ながら言った。

 

「それにしても、この森瘴気が出てきているね。」

「ああ。下界人には見えんだろうが、これではマナまで、汚染されるだろうな。」

「さっさと、終わらせましょう。」

 

奥まで行くと、穴を見つけた。

周りには、下級魔族が集まってきている。

ディセンダー(エント)は二人に言いながら、剣を抜いて戦い始める。

 

「取り敢えず、こいつ等を何とかしよう。」

 

精霊・イフリートと精霊・シルフも、応戦を始めた。

 

 

その頃、精霊・ウンディーネの方は、クラトス達と謁見の間に来ていた。

王が、クラトス達を見渡す。

玉座に座ったまま、隣国の事について話している。

精霊・ウンディーネは、周りに気付かれないよう平然とした顔のまま、考えていた。

 

『……それにしても、ディセンダー(エント)は大丈夫でしょうか。怪我をしてなければ良いのですが……。私もあちらに行って、ディセンダー(エント)を傷付けたあの魔族を八つ裂きにしたかったわ。』

「そういえば、今日はあの少年はおらんのか?」

 

すると、王がディセンダー(エント)の事を話したので、その問いには精霊・ウンディーネが答える事にした。

 

世界の守り手(ディセンダー)は朝から別件でいません。……それより、貴殿に聞きたい事があります。」

「……何かな、精霊殿。」

「貴殿が、あの病に蝕まれた時の事です。あれはいつ頃からですか。」

 

王は必死に思い出しながら、

 

「うーむ……あれは、二年くらい前からかのぉー。」

「二年……、そうですか。では、この地区で一番貴殿と同じ、もしくは体調が悪くなるような場所はありますか。」

 

これは、姫が想い当たる事があるらしく、

 

「それは、おそらく貴族の一部の者と下町の者達ですね。後、この帝都の奥の森ですね。」

「やはり森ですか……」

 

精霊・ウンディーネが小さく答えた。

その後、精霊・ウンディーネはディセンダー(エント)に連絡を取った。

 

ディセンダー(エント)……、王は、二年前くらいからだそうですよ。〟

〝……そう。元々、師匠(せんせい)が村に来ていた頃には病気をしていたそうだから、そこを使ったんだろうね。場所や他の事はどうだった?〟

〝下界人で多いのは、貴族や下町らしいです。それと、今あなたのいる森だそうです。〟

〝やっぱり、そうか……。解った。ありがとう、ウンディーネ。〟

 

クラトス達は、ディセンダー(エント)を探す為、城を出る事にしたようだ。

 

「……ウンディーネ。ディセンダーが、今どこに居るか分からないか?」

「……、今は森にいます。」

 

精霊・ウンディーネは、静かに答えた。

クラトスが腕を組んだまま、確認するように言った。

 

「……それは、奥の森の事か?」

 

精霊・ウンディーネは頷いた。

 

『出来れば、私も早くディセンダー(エント)の元へ行きたいのですが……仕方ないですね。』

 

精霊・ウンディーネは、早いルートを通りながら彼等と共に行った。

途中で、精霊・ラタトスクを見付けた。

精霊・ウンディーネは『この場を離れたい』と、心の底から思ったが気付かれた。

精霊・ラタトスクがニヤニヤしながら、声を掛けてきた。

 

「はっ。ウンディーネじゃないか。こんな所で会うとは奇遇だな。お前も、あのお人好しも、どうしてこんな屑共の為に頑張るのか、解らんな。」

『相変わらず、嫌な言い方ですわ。全く。ディセンダー(エント)の事が心配で来たのでしょうが。いえ、それもあるかもしれませんが、ディセンダー(エント)のあの目についても、調べに来たのでしょうね。』

 

精霊・ウンディーネは静かなる殺気を出し、静かに言った。

 

「……私も、です。ラタトスク。下界人を嫌うあなたが、自らこんな所へ出向いて来るとは。……ディセンダーには、会ったのですか。」

 

精霊・ラタトスクは腕を腰に当て、胸を張り威張って言った。

 

「ああ、会ったぜ。……まぁー、あの程度なら、あいつ等だけで十分だろうからな。俺様は、高みの見物だ。」

「……とか言いながら、心配で来たのでしょう。全く、素直じゃありませんね。」

 

精霊・ラタトスクは背を向けながら、怒りながら言った。

 

「っは!そんな訳じゃねぇー。今のあいつは、色々と危なっかしい奴なだけだ。」

 

すると闇のセンチュリオン・テネブラエが、即座に精霊・ラタトスに言った。

 

「ラタトスク様。それを、心配していると言うのですよ。」

「うるせー、テネブラエ!ほら、行くぞ!」

 

精霊・ラタトスクは闇のセンチュリオン・テネブラエを蹴り、怒りながら歩いて行った。

闇のセンチュリオン・テネブラエを置いて行く精霊・ラタトスク。

闇のセンチュリオン・テネブラエは慌てて、追いかけて行った。

 

「ああ、待って下さい。ラタトスク様‼」

 

彼らが去った後、精霊・ウンディーネは頬に手を当て、悲しそうに思った。

 

『はぁー……、危ないという事は、相当ギリギリなのでしょうね。』

 

精霊・ウンディーネはクラトス達に振り返り、明るい声で彼等に言った。

 

「さ、世界の守り手(ディセンダー)の元へ急ぎましょう。」

 

そして、また歩き出す。

森の入り口辺りから、薄い瘴気が出て来ている。

森に入った瞬間、一気に瘴気が濃くなった。

 

『ここまで、瘴気が出てきているとは……。おそらく、下界人には息苦しいでしょうね。』

 

奥に進んだ所で、ディセンダー(エント)の叫び声が聞こえた。

精霊・ウンディーネは急いで、そこに向かった。

 

 

ディセンダー(エント)は、精霊・ウンディーネから連絡を受け、考えていた。

 

『やっぱり、この国の負の感情が上がっている事も原因かな。ここには、多くの人がいるし。人々は恐怖と怒り……そして、悲しみがある。』

 

と、考え込んでいた。

下級魔族を一掃した。

ディセンダー(エント)がさらに考えようとした時、その隙を付いて中級魔族が襲い掛かって来た。

それに伴い、また穴から下級魔族が出てきた。

魔族の一匹が、ディセンダー(エント)を押し倒して逃げ出した。

ディセンダー(エント)は叫びながら、精霊・イフリートに言った。

 

「っ!うわぁー、イフリート!に、逃がすな‼」

 

ディセンダー(エント)が体制を立て直した時、クラトス達が加勢した。

クラトス達の加勢もあり、戦闘を何とか終わらせた。

ディセンダー(エント)が、穴に近付き手をかざした。

光輝き、それが収まった時、穴は消えた。

その瞬間、森の中の空気が綺麗になる。

精霊達は各々言った。

 

〝うむ。空気を清浄出来たな。〟

〝結構、危なかったけどね。〟

〝……それより、魔族がここまで堂々と出てくるとは思いませんでした。〟

 

その後、後ろから精霊・ラタトスクの笑い声が聞こえる。

そこに振り返ると、精霊・ラタトスクと闇のセンチュリオン・テネブラエが戻って来たのだ。

 

「クハハハハ。世界の守り手(ディセンダー)、なんだぁーそのなりは!無様だな。」

 

そのセリフに、精霊・シルフは怒りだす。

精霊・ラタトスクを指さしながら、怒鳴った。

 

「この、俺様め‼自分は、高みの見物していたくせに偉そうなのよ‼」

 

精霊・ラタトスクは腕を組んで、鼻で笑った。

そして、精霊・シルフに怒りながら言った。

 

「はっ!あの程度の魔族共くらい、貴様らでやれ!大体、そこの世界の守り手(ディセンダー)が、随分引き籠りをかましていたから、こうやって穴が出来たんだろうが‼むしろ、この程度で済んだ事を光栄に思え。」

 

精霊・シルフは「ムキー‼」と怒っている。

ディセンダー(エント)は、クラトス達に振り返り、お礼を言った。

 

師匠(せんせい)、それに皆さん、どうしたんですか?ああ。いや、その前にありがとうございました。おかげで、何とかなりました。」

 

クラトスが剣をしまいながら、精霊・ラタトスク達の方を見て言った。

 

「ああ、それは構わないが……あれは大丈夫か?」

 

ディセンダー(エント)もそこを見ながら、苦笑いで言った。

 

「ああ、あれはほっといても大丈夫です。」

 

と笑顔で、言った。

ユアンが、ディセンダー(エント)に真剣な顔付きで言った。

 

「まぁー、あれは取り敢えず置いといて。ディセンダー。実は王都騎士団が、この帝国に攻めてきたようなのだ。」

 

そう言った瞬間、広場の方で爆発音が聞こえてきた。

 

『なっ‼さっきは気付かなかったけど、魔族が多くこの帝都に入って来てる!それにこれは……上級魔族‼』

 

ディセンダー(エント)は、精霊達に向かって叫んだ。

「皆、広場に急ごう!ラタトスク、君も来て‼」

「はー⁉何でこの俺様が、屑の為に……解ったよ。だから、そんな目で俺様を見るな。ほら、さっさと行くぞ。」

 

と言って、先陣を切る。

ディセンダー(エント)達も急いで、走り出す。

 

 

広場に着き、帝国騎士団と王都騎士団が壮絶な戦いをしていた。

王も、互いに戦っていた。

ディセンダー(エント)は王都王を見て、蒼白しながら言った。

 

「まさか……王自ら、魔族と契約したのか⁉……、違う。でも、あれは……」

 

と言って、王達の元に走って行く。

王の傍に着いて、王都王から出ている黒いオーラを視ていた。

 

『あれは契約によるものじゃない。憑りつかれているんだ。』

 

ユアンが悲痛な声を上げた。

 

「陛下⁉何故、こんな事を‼」

「うん?貴様は、ユアンか。騎士団を逃げ出したと聞いたが、まさか敵国に寝返っていたとはな。」

「寝返ったつもりはありません!しかし、私は今のあなた様を、王都王とは認めたく無かっただけです!」

「はっ。貴様に、認められるつもりは無いわ。しかし、まさか貴殿が復活しているとは思わなかった。」

「うむ。ある少年に助けて貰ったのでな。王都王よ。其方は何故戦争をする。何故、手を取り合えない。」

「帝国王よ。我は気づいたのだ……世界樹は、この世界を見捨てた。ならば、多くでも自分の国を広めれば良い。残り少ないであろう少ないマナを、独占出来るようにな!クハハハハハハ‼」

『……成程。大本は王そのものだが、既に魔族に飲まれている。あれは危険だ!それに、兵の多くも既に乗っ取られている。』

 

ディセンダー(エント)は、ユアンが吹き飛ばされたのを見た。

 

『まさか、魔族の力をここまで出してくるなんて……』

 

マーテルは、ユアンの治療を始める。

その間にも、敵は襲ってくる。

ミトスは、ユアンとマーテルを守る。

ディセンダー(エント)も、カバーしている。

クラトスは、王から離れられなかった。

精霊達(ラタトスク以外)も、何とか応戦してくれている。

ディセンダー(エント)は、ユアンが動けるようになったのを確認し、精霊・ラタトスクに手早く言った。

 

〝ラタトスク!王の傍にいる魔物の動きを止めておいてね。〟

〝……良いぜ。せいぜい、殺られるなよ。〟

 

と、王都王へ襲い掛かった。

魔物は、精霊・ラタトスクが封じる。

騎士は、精霊・ウンディーネ達が止めた。

ディセンダー(エント)の剣を、王都王は余裕の顔で受け止める。

しかし、ディセンダー(エント)の顔を見て驚いていた。

 

「まさか貴様は……あの方の⁉いや、しかし……そうか……クククク。落ちかけた世界の守り手(ディセンダー)か。ならば、連れていく‼」

 

その瞬間、王都王の剣が重くなった。

 

『っ!こいつ、僕を知っている⁉……いや、僕じゃない。あのディセンダー(前の自分)の事を言っているんだ。』

 

ディセンダー(エント)は、王都王の剣を弾いた。

彼の剣は、黄金の光を帯びた。

ディセンダー(エント)は王都王に、いや、その上級魔族に言った。

 

「門は壊れていないのに、何故ここに上級魔族がいる!貴様らは、何をするつもりだ‼」

 

王都王は、否、王都王に憑りついている魔族は片手で顔を覆い、笑いながら言った。

 

「ククク。簡単な事だ。ある人間(・・・・)が、我々を呼び出したのだ!今のこの世界なら、精霊よりも我の方が強い。お主も、早く落ちてはいかがかな?」

「……残念だけど、それはしないよ。僕は、世界の守り手(ディセダー)だからね。それより、君達をこっちに呼んだのは、何処で、誰なの?」

「それは、教えられんな。しかし、落ち切れないなら、この我が落としてやろうか?」

 

そして、剣を交え始める。

王都王に対し、全員やはり苦戦している。

帝国王も、かなり危ない。

 

『こいつ強い!僕が本気を出しきれれば、何とかできるか……。こうなったら、もう!』

 

ディセンダー(エント)は神経を集中させる。

空に手を掲げ、精霊・ノームを呼ぶ。

 

「地の精霊・ノームよ、我が召喚に応じよ!」

 

すると、地響きが鳴る。

だが、それと同時に吹っ飛ばされた。

 

「ほいほーい。久々に登場だぞー。おや?おや?いつの間にかぁー、イフリートとラタトスクもいるのだぁ―。まぁーいいや。僕チンは、何をすれば良いのかなぁー。あれ?あれ?そう言えば、エント(ディセンダー)がいないぞぉー。」

『……、召喚時は隙が出来るとはいえ、僕もなめられたものだ。それに災厄だ。吹っ飛ばされる瞬間、僕と同じ姿の彼(・・・・・)が笑っていた。……いや、今は置いとこう。』

「ノーム。いや、四大よ。世界の守り手(ディセンダー)の力を貸す。だから、魔族の攻撃を弱らせて!」

 

そう言って、四大は帝国を囲むように飛んでいく。

そして、暖かな光が満ちる。

 

「ラタトスク!君は、魔物達をこの町から排除して!」

「……嫌だな。この屑共の為に、動くのはお断りだ。大体、こうなった原因は下界の屑共のせいだろうが。自業自得だ。」

 

屋根の上からそう言った。

その顔と声は冷たい。

ディセンダー(エント)は起き上がり、精霊・ラタトスクに言った。

 

『……相変わらず、頑固だな。昔と変わらない……って、僕は何を言っているんだ。』

 

ディセンダー(エント)は一度首を振り、

 

「……お願いしても、駄目みたいだね。解った。じゃあ、これが終ったら、ラタトスクの言う事を一つ聞くから!」

 

その言葉に、精霊・ラタトスクは口の端を上げて降りてきた。

ディセンダー(エント)に振り返り、

 

「クハハ、良いだろう。その言葉、忘れるなよ。おい、テネブラエ!」

 

そういうと、闇のセンチュリオン・テネブラエが「はい、ラタトスク様。」と、言って宙に浮いて姿を現す。

精霊・ラタトスクは闇のセンチュリオン・テネブラエを横目で見て、

 

「ほら、行くぞ。」

 

と言って、嬉しそうに歩いて消えて行った。

その瞬間、この場にいた魔物達は、帝国の外へ出てくように移動を始める。

ディセンダー(エント)は、王都王の元へもう一度、斬りに掛かる。

 

「はぁ……はぁ……魔物は居なくなったが、こんなに強いとは!」

 

と、ユアンが肩で息をしながら言った。

帝国王を治しているマーテルとミトスも、かなり消耗している。

クラトスも肩で息をしながら、

 

「このままでは、我々の不利だな。撤退しようにも、王都王をこのまま見過ごす訳にもいかない。」

『……確かに、このままではらちが明かない。ここまで来たら……もう、やるしかない!』

 

ディセンダー(エント)が肩で息をしながら、提案する。

 

「……僕が、隙を作ります。その間に、二人とも斬り込んで下さい。」

 

二人は頷き、ディセンダー(エント)は前に出た。

そして、剣を掲げ叫んだ。

 

「レディアント解放‼」

 

ディセンダー(エント)は光に包まれる。

光が収まった時、ディセンダー(エント)の衣装は変わった。

自分の背と同じくらい、もしくは、それ以上の大きさはあろう剣を持っている。

ディセンダー(エント)はその剣を振り、再び王都王と剣を交え始めた。

 

『……レディアントを解放出来たけど、それでも隙が出来ない!魔術の詠唱破棄!あれを使えば何とかなるかも。』

 

ディセンダー(エント)は、詠唱破棄で魔術を繰り出した。

 

「サンダーブレード‼」

 

クラトス達は『今だ‼』と、斬り込みに掛かった。

そして何とか、王都王から剣を弾いた。

しかし、王の中から魔族本体が出て来た。

その魔族は、ユアンを吹っ飛ばし逃げようとする。

 

『本体が、出てきた!逃がさない!あれを討てば‼』

 

ディセンダー(エント)は、レディアントを突き出しながら突っ込む。

だが、魔族はディセンダー(エント)の腹を貫いた。

ディセンダー(エント)はそれでも、レディアントを魔族に刺した。

そしてそれが刺さった瞬間、光が輝き出す。

辺り一帯から、魔族を一掃した。

王都兵達は正気を取り戻す。

ディセンダー(エント)は傷を押えながら、王都王に近付き手をかざす。

 

『王都王だけでは、他の兵の中の瘴気は取り除く事は出来ない。なら、多少無理はしても、全体を包むか……』

 

光が王都王の体を包んだ後、その光は帝都全体を包む。

光が弱まり、王都王は目を覚ます。

辺りを見渡しながら言った。

 

「うう……私は何を?……っ!何故、帝国に攻撃を⁉全軍、直ちに戦闘を止めよ‼」

 

そして、帝国王が近付き、王都王に言った。

 

「おお、王都王……そうか。其方は、操られていたのだな。良かった。」

「っ‼……帝国王。どうやら私は、貴国に対し、申し訳ない事をした。この無礼は、我が首にて勘弁して欲しい。我が兵と民には罪はない。」

『……王都王には、記憶が無いのか。それでは、何時から操られていたのか聞けないな。でも、今の王達はちゃんと民を想っている事が解って良かった。それなら、僕の取る行動は一つだ。』

「いやいや、その言葉で良い。しかし、このままともいかんだろう。よって、ワシは貴国に対し、同盟を申し込む。お互いに、種族の壁を壊して行こうではないか。」

「ああ、帝国王。しかし、我が国は恐らく、今の私のようになっている事だろう。私は、それを先に何とかしなくては――」

「それに関しては、僕が何とかします。」

 

そう言ったディセンダー(エント)を見る王達。

彼は、クラトス達に治療をして貰っている。

戻った、四大が心配そうに傍に寄って来ている。

ディセンダー(エント)は、王達を見つめながら言った。

 

「恐らく、王都国にはかなりの数の小さな穴が出来てしまっている。それも何とかしないと。これ以上、上級魔族が入ってこないように。だから王、あなた達は、これからの国の事を話し合って下さい。」

 

王達は迷っていた。

ディセンダー(エント)は息を落ち着かせながら、王の返答を待った。

そして、彼らにどう言うか悩んだ。

『それもそうだよな……。訳の分からない者に、国を預けるのは。こうなったら、僕の正体を明かすか……』

 

そう思ったディセンダー(エント)が声を出す前に、ユアンとクラトスが膝をつき王に言った。

 

「陛下。どうか、この者を信じて下さい。我々も、力を出す所存です。両国の未来の為に‼必ずや助けます。」

 

王達はその言葉に頷く。

会議を始める為、この場を離れた。

王達がいなくなって、兵達が「我々も手伝おう」と、言った。

が、それを精霊が断った。

そして誰も居なくなったのを確認し、精霊・ウンディーネが静かに言った。

 

世界の守り手(ディセンダー)、もう良いですよ。我々が、見張っています。」

 

そう言って、ディセンダー(エント)が光出した。

マーテルは目を見張った。

 

「マナが……、集まってきている⁉」

「この事は内緒ですよ。さぁー、これだけのマナが集まれば大丈夫でしょう。」

 

マーテルは頷き、治癒術をめいいっぱいかける。

治療が終わと、ディセンダー(エント)が起き上がる。

お礼と謝罪を彼らにした。

 

「ありがとうございます。それと、ごめんなさい。それで、僕は明日には王都国へ向かいます。その、不甲斐無い僕だけど、僕に力を貸して下さい。」

「ああ。頑張っていこう。」

 

彼らは、王都国に向かう準備を始める。


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