テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
レイノアは世界樹の森に帰って来た。
彼女はあの日、クラトスと別れた場所を見渡した。
『……クラトス≪父さん≫は帰って来ていないのか。父さん≪クラトス≫……』
レイノアは空を見ていた。
夜空には綺麗な満月が出ていた。
彼女は、前にクラトスに空について聞いた。
今日はそのクラトスが言っていた星が輝いている。
彼女は星を見ながら、自然と泣いていた。
そこに、クラトスが走ってやって来た。
彼は、レイノアが泣いている姿に驚いたようだった。
彼女は、近付いて来たクラトス≪父親≫に抱き付く。
そして泣き続けた。
クラトスは、そんな彼女の頭を優しく撫でる。
しばらくそういた後、彼女はクラトスから離れた。
彼女はポツリと問いかける。
「……クラトス≪父さん≫。この世界は救う意味が、価値はあるのか?」
クラトスは一瞬、固まった。
だが、真剣な顔付きになって彼女に言った。
「……お前がそう思うなら、そうなのかもしれんな。お前は、ここでの暮らしの方が長かった。だから、そう思っても仕方ない……。それでも、お前は世界を救った。頑張ったな。」
「……世界は救えなかったよ。四代目を取り逃した。その為のディセンダー≪私≫だったのに……」
彼女は、クラトスを見つめる。
彼は目を反らさず、レイノア見続ける。
「クラトスの言うように、私は下界人との接点がほとんど無い‥。でも、今のこの世界を取り敢えず救う事にしたのは、クラトス≪父さん≫の為だ‥。」
私は一度、深く深呼吸する。
「父さん≪クラトス≫が、初代を大切に想っている事は知っている。初代が人柱になって、この数百年以上……。いや、もう千年を超えるかもしれない。父さん≪クラトス≫が……いや、初代の仲間達が、オリジンに無理矢理監視者へさせられたのも知った。それでも、私は私としていようと心に決めたのは、クラトス≪父さん≫を侮辱したオリジンを倒す為だ。それは今も変わらない。例え……クラトス≪父さん≫が、私を初代の代わりに育てていたとしても。」
しばらく沈黙が流れた。
レイノアはクラトスを見つめ続ける。
彼は黙って彼女を受け止めていた。
彼女は再び、泣きながら話を……いや、想いをぶつける。
「初代が、人柱として正したマナを……下界人共は己の欲で壊した。二代目は大切に想っていた仲間を守る為、そして下界人共の為に……自らの命を対価にした。それによって、初代のバランスを元に戻した。そんな中、また戦火が起こる。二代目が亡くなってから、まだそんなに経っていないのに……。だからこそ、三代目はそんな世界を嫌っていた。初代は決して、自分の記憶を持たせないようにしていたけど、二代目の強い想いが、その記憶の一部を甦らせた。二代目の全ての記憶と共に‥…。だから彼女は、自分が自分である為に、自分に厳しかった。クラトス≪父さん≫、知っていたか。三代目の名前を付けたのは、初代だよ。」
クラトスは驚いていた。
それで知らなかったと解る。
なら、他の監視者達もそうだろうと彼女は思う。
彼女は、なおも続きを語る。
「三代目は、この世界の全てを見て感じ、この世界を審判していた。そんな彼女に、世界を救う事を選ばせたのは……二代目の仲間達の二代目に対する想いと彼らの子供たち……。あの彼女が、命を賭けて戦ったのだ。凄いな……」
彼女は一呼吸置き、
「そして、四代目が世界の守り手≪ディセンダー≫だった時は、新時代を生きている下界人達の想い。それが、四代目の心の元だった。なにより、先代≪過去のディセンダー≫達の想いが、彼の心を自由にさせた。それ故に、仲間を……恋人を失った彼は、絶望した。世界を滅ぼそうとした。世界を愛していたからこそ、許せなかったんだ……」
レイノアは拳を握りしめる。
そんな彼女に、クラトスは悲しそうな顔で、
「……レイノア。それはつまり、お前はその記憶も、思い出したという事か。初代の事も……」
レイノアは思う。
記憶を持っていた初代や三代目。
なにより、四代目世界の守り手≪ディセンダー≫・レオンの事も知っているからこその質問だ。
さらに、四代目もまた先代達の記憶を持っていた。
それだけではない。
他の世界の世界の守り手≪ディセンダー≫の記憶も持っていた。
これは、この世界グラニデでは初代のみだった。
記憶を持つディセンダー≪世界の守り手≫は記憶に、感情に飲まれる。
飲まれて、狂う。
自分を見失い、自分を忘れる。
役目も、存在も忘れ、世界を壊す。
現に、四代目世界の守り手≪ディセンダー≫は狂った。
監視者である彼らは、四代目との接点が二代目、三代目より多いとも言える。
故に、余計に気に掛けていた。
彼女は頷いた。
そして彼女は拳をさらに握りしめて訴えた。
「この世界も、過去の世界も、違う世界も、下界人は……いや、全ての者は世界を壊す。それを、世界の救世主≪ディセンダー≫はそれを直す。いくら、その世界を救う事が使命でも、好きでも、私には理解できない!何度、同じ事をすれば気が済むのだ……下界人と言う者は‼」
彼女は激しくそう言った。
それを、クラトスはやはり黙って聞いていた。
彼のそんな気持ちと顔を見て、彼女は唇を噛んでいた。
『私は馬鹿だ……。こんな事を言っても、何も変わらない。それこそ、クラトス≪父さん≫に言っても意味がないのだ。これはただ愚痴を、怒りをぶつけているだけに過ぎない!』
レイノアはクラトスに背を向けた。
「あいつはまた戻って来ると言った。今度こそ打ち倒す!それが、私が創られた理由だ……」
それだけ言って、世界樹の森の深くに走って行く。
クラトスが止める声が聞こえる。
だが、彼女がその声に応える事はしなかった。
ただ、彼女やクラトスの悲しい思いに触れたかのように、雨が降り出した。
綺麗に輝いていた星空も、雨によって見えなくなった……
――それから数十年としないうちに、四代目世界の守り手≪ディセンダー≫が再び現れた。
世界は再び闇に飲まれようとしていた。
レイノアは空を眺めた。
その後、世界樹を見る。
彼女の中では、最早世界樹を母親だとは思わない。
そして、世界樹を主だとも思わない。
ただ、ディセンダー≪自分≫と言う存在を生み出した世界の母にして主。
この世界そのものであり、世界の調律者。
世界の守り手≪ディセンダー≫の存在理由は、世界を救うこと。
世界を、世界樹を守る剣と盾。
自身の生まれたその世界を調律する世界樹に代わりにして、世界を正す者。
彼女は心の中で言う。
『私は、レイノア≪光を知りし者≫。クラトスが……父さんが付けてくれた、この名こそ私だ。私は、決して飲まれない。だが、この記憶はビジョンでは無く、記憶と感情そのもの。記憶を消せれば一番良いのだが、それをする事も出来ないだろう。』
彼女は薄く笑う。
それはまだ自分だからか、それとも飲まれているのか、彼女自身では解らない。
『まぁー、それなりに必要なさそうなものは消せた。……仕方ない、感情を捨てるか。そうすれば、この記憶と感情はデーターのような存在へと変えられる。』
彼女は歩き始める。
もう一度、空を見上げる。
薄暗い空。
始めて見た空と似ている。
『……クラトス≪父さん≫ともう一度、星空見たかったな……』
レイノアは足を止めた。
その理由は簡単だ。
クラトスが森の入り口手前で、立っていたからだ。
レイノアはあれから、クラトスとはあまり会わないようにしていた。
会っても、前ほど一緒に居ない。
だが、彼は彼女の名を前のように呼んでいた。
彼女にとって、それは嬉しかったし、そのおかげで自分を見失わずにいられた。
でも、レイノアの方が彼から距離を取ってしまう。
そして、気まずい雰囲気になってしまうのだ。
そうなるのが嫌で、彼女はすぐに彼から離れるのだ。
レイノアが声を掛ける前に、クラトスが先に口を開いた。
「レイノア……お前が、この世界の事を嫌っている事は……いや、世界自身を嫌っている事は分かった。お前が一人で行くのが嫌なら、私が供をしよう。世界を救うのに、理由が必要なら……お前自身が見つかるまで、私が供に探してやる。だから――」
「クラトス、安心して良い。私は、四代目世界の守り手≪ディセンダー≫を必ず打ち倒す。この世界も、父さん≪クラトス≫がいるから救う。……それが、今の私が世界を救う理由だ。」
レイノアは、クラトスを見つめて言った。
その眼は本気だ。
それは彼を父ではなく、管理者として向けた瞳。
彼は、それを感じ取ったのだろう。
クラトスは悲しそうな、それでいて辛そうな顔をしていた。
だから、彼女は静かに告げる。
「無論、前の世界の守り手≪ディセンダー≫達の記憶の事も、対処は決めた。私が感情を捨てる事で、彼らの記憶と感情を切り離す。だから安心して良い。……初代のように、クラトスにはもう愚痴は言わない。クラトスは、他の監視者の所に居たら良い。……私は、一人で大丈夫だ。」
クラトスは目を見開いていた。
そして辛く、悲しい顔が続く。
私は、クラトス≪父さん≫の悲しい顔は見たくない……
それに、自分はこの森から出た瞬間、今までの感情は失われる。
今の私≪レイノア≫が、違う私≪レイノア≫になる。
そんな姿も、クラトスに……父さんには見せたくない。
だからこそ、彼女は早く彼から離れようとする。
彼の横を通り過ぎようとした。
が、彼はそんな彼女の腕を掴んだ。
レイノアは、クラトスに顔を向ける。
彼が自分の目を見る。
彼の、その瞳は真剣だった。
そして静かに言った。
「……供に行くのが無理なら、これを持って行け。」
と、一本の剣を彼女に手渡す。
今持っている剣より、少し重めだ。
彼女は、剣を鞘から出す。
剣は普通の剣より、刃の先が少し細く、長い。
それを隅々まで見ていく。
と、彼女はあるものを見つけた。
剣と握りの所に、古代文字が彫られていた。
それを読むと〝この剣を我が娘に捧げる〟と、書かれていた。
彼女は、その部分を無意識に優しく、何度も撫でた。
同じように、クラトスが彼女の頭を撫でながら、
「今まで何だかんだ言って、お前を娘と言ってやった事が無かった。オリジン達が何を言っても……お前は、私の娘だ。レイノア……」
レイノアは、彼に抱き付いた。
彼女は、しばらくそうしていた。
そして、クラトス≪父親≫から離れる。
レイノアは、今まで以上の笑顔で彼に礼を言う。
「……父さん≪クラトス≫、ありがとう。父さん≪クラトス≫、これで私は……私≪レイノア≫でいられる。行って来ます!」
そう言って、彼女はこの場を離れた。
彼女は森の入り口寸前で、一度止まる。
彼女は、クラトス≪父親≫のいる方へ振り返る。
彼は、まだ自分を見送っている。
彼女は入口へと向き直る。
そして笑みを浮かべる。
『最後に、クラトス≪父さん≫と共に過ごしたレイノア≪私≫で別れを言えて良かった……。それに、最後の感情をクラトス≪父さん≫に向けられたから良かった。ありがとう、父さん≪クラトス≫……我が父よ。』
と、最後に腰に掛けてある剣を、優しく撫でる。
そして、彼女は再び森を出る。