Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
リンネ・ルーン・ゴーント。サラザールスリザリンの末裔。
今彼女は、買い物リストとマクゴナガルに貰った、魔法界のお金のみが入った黒いリュックを背負い、手に地図を持って、ロンドンのチャリング・クロス通りに立っていた。
忙し気に歩き続ける人ごみの中、リンネの視線は本屋と派手なレコード店の間に行っていた。
そこには、ちっぽけなみすぼらしい古いドア、その近くには「漏れ鍋」という看板がチョコンと下げてあるパブがあった。
だがそのパブは、普通の人間ーーそう、非魔法族(魔法の使えない人間)であるマグルには全くもって見えていない。誰しもが皆、本屋からレコード店へと目を移す。
誰も、その間にあるパブなんかに気がつくものはいない。
「此処がそうなのか...?」
リンネは、一歩踏み出して「漏れ鍋」の今にも壊れそうな腐ったドアを開け、中に入った。
気がついていないのか、ただ単に興味がないだけなのか、誰もリンネに目を向けなかった。
「漏れ鍋」には、数えきれないほどのたくさんの魔女や魔法使いがいた。
否、それだけではない。耳の長いエルフのような美人の女性もいたし、背の小さなおっさんのゴブリンーー
奥には、バーカウンターがあった。客が数人座り、ビールようなものや赤いドロドロとした液体を口にしていた。
カウンター内では、歯の抜けて嗄れた老人が、真っ白なハンカチでゴブレットを磨いている。
リンネは酔いつぶれて倒れている魔法使いを跨いで、内蔵を食べている鬼婆にチラと目をやりながら、老人の方に近づいて行った。
丁度ビールを飲んでいる魔法使いの近くまで行くと、リンネは老人に話しかけた。
「お前がトムか?」
「そうでございますが、一体何方...ッ!」
老人...トムはリンネの見ると、急に息が出来なくなり、目には恐怖の色が見えた。ようやく息が出来るようになったと思ったら、次は震えだした。
「ま、まままマクゴナガル校ちょ...か、から、お、おおおおおお話は伺ってお、ります。ど、どどどうぞここちらへ」
「フン」
トムはゴブレットを置こうとしたが、うっかり震えて割ってしまった。だが、彼はそんな事を気にしている場合ではなかった。何故かと言うと、あの恐ろしい「名前を言ってはいけないあの人」と同じ瞳をしているーー
トムは震えながらも、カウンターから出てそのまた奥へとリンネを誘った。
店内を抜けると、壁がレンガで、ゴミ箱が一つ置いてある裏庭だった。
「こ、このゴミ箱のう、ううう上から...上の左から三段目を叩くとダイアゴン横丁へ抜けられますっ!」
トムはそう言うと、ダッシュでその場から立ち去った。その後、店内では息を切らし冷や汗をかいたトムを心配する声が上がっていたが、リンネには関係のない話だ。
「左から...三段目か」
リンネはトムの言う通りに、ゴミ箱の上の左から三段目を叩いた。すると、壁がガタンゴトンと変形したりなくなったりと...気がつくとアーチ型の入り口が出来ていた。
石畳の通りが、くねくねと見えなくなるまで続いている。
ショーウィンドウは、他店よりも栄えようとキラキラと装飾が施され、ローブを着た魔女や魔法使いの買い物客でごった返していた。
リンネはダイアゴン横丁へと降りた。
すると、レンガアーチの入り口は閉じたが、リンネは気にも止めなかった。
ダイアゴン横丁の今まで見た事もないものに、目を奪われていたからである。
「おい、見ろよ。ニンバス2008だぜ。すっげー速いってよ」
「こっこの蛙の卵一個が一つ五シックル?! 値上げもほどほどにしなさいよ...」
「ハリー・ポッター、ハリー・ポッターの新しい伝記が出荷されたよー! リータ・スキーターの書いた最新の奴だ!」
リンネは、「フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店」の前で立ち止まった。シルクハットを被った少年が、メガネをかけ、額に傷のある青年の動く拡大写真を上へと掲げ、新しく出荷された本を宣伝していた。
その少年の近くでは、四十代半ばだと思われる魔法使いが、写真を見つめて笑顔でうんうんと頷いていた。
「ハリー...ポッター...?」
「おや、君は彼を知らないのかい?」
縦長のハンサムフェイスをリンネに向け、魔法使いは言った。
「ハリー・ポッターは、我ら魔法族の大英雄さ。魔法界を暗黒に陥れた、サラザール・スリザリンの末裔である、闇の魔法使い『ヴォルデモート卿』を倒したんだ!」
まるで、自慢でもしているかのように身振り手振りの魔法使い。周りの人達がビクついて、彼から距離を置いているのはいざ知らず...。
それより、スリザリンの末裔? ヴォルデモート卿? リンネは何だか腹の中からどす黒いものが溢れて来た気がした。
「あぁ、急にごめんね。不審者じゃないよ。だからーーあ、ちょ行かないで...」
「ア、ワタシエイゴワカリマセーン。オヒキトリクダサーイ」
正直リンネ的にはこういう人には関わりたくなかった。しかし、先ほど彼が口にした言葉が気がかりだった。
男は、逃げられたら追いたくなるものだと、ナルが言っていた。
さて、その心理が正しいのかじゃ分からないが、試してみる。
「あ、お願い待って。僕はホグワーツの教授! 『薬草学』教授のネビル・ロングボトムだ!」
「え...教授?」
これは好都合かもしれない、と少し考えるリンネ。これは、先生に贔屓目で見られるためのチャンスかもしれない。
いざという時は叫んで涙目になれば良いわけだから。
「え、そうだったんですか?! あ...私英語喋れます」
「うん、知ってる。君の名前は?」
「えと...リンネ・ゴーントです、教授」
「うん、リンネか。服装からして...マグル出身の子かな。新一年生だよね、一人なのかい?」
ロングボトム教授は、笑顔で聞いた。だが、リンネの答えでその顔は引き攣った。
「...私は孤児ですので」
「え、あーーごめん! そ、その...」
「大丈夫です」
リンネが微笑むと、ロングボトム教授の顔が緩んだ。
オドオドして気が弱そうなので、こういう人間は引き込むのは簡単だ。
「あの...教授、よろしければ、もっとポッターさんの事について教えていただけないでしょうか。それと...この横丁もご案内していただけると嬉しいです。此処は初めてなものですから...」
「あぁ、勿論良いよ」
リンネは、ロングボトム教授に着いて行って、買い物を済ませた。残るは杖のみ。道を歩いている時や商品を選んでいる時、ロングボトム教授はハリー・ポッターの話をしてくれた。
彼の功績や偉大さ、今は「闇祓い」をしているとの事などだ。
面白い様々な店の中で、特にリンネの印象に残ったのは、「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ(WWW)」だった。
目が痛くなるほどチカチカしたショウウィンドウ。店の上の方には、おかしな顔をした大きなピエロが、店の看板を持って同じ動きを繰り返していた。
さらに店の中は、ダイアゴン横丁よりもーー特に学生でーーごった返していた。
「この店は、『悪戯専門店』。ハリーの親友、ロンのお兄さんの店なんだ。かなり大盛況でね」
どうやら、ロングボトム教授はハリー・ポッターの友達らしい。
「何か買おうか?」
「いえ...お気遣いなく。案内してくださるだけでも十分なのに...これ以上贅沢は言えません」
「そうかい...僕は別に構わないんだがね」
リンネは最後に、魔法を使うのに必須の「杖」を買いに行った。紀元前三百八十二年創業の、高級杖メーカー「オリバンダー店」だ。
「リンネ、僕ちょっと用事思い出しちゃって。君が終わる頃には戻って来るから」
「はい...」
ロングボトム教授は笑顔でそう言うと立ち去って行った。リンネは彼の背中が見えなくなると、店の中に入った。
【ネビル・ロングボトム】
ホグワーツ魔法魔術学校「薬草学」の教授。
多分、これからも出て来ると思う。今回の件で、リンネはかなりのお気に入り。
キーボード打つたびによく「ろんぐぼとも」となってしまう。
さて、ろんぐぼとも...ロングボトム教授は、中々良い人です。