Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
蒸し暑いロンドンの郊外。リンネは重いトランクを引きずり、地図を片手に歩いていた。物静かで人の少ないこの地区は、「チャイリストン」というらしい。森林と大きなお屋敷の多い場所で、美しい赤目の少女は完全に「迷子」になっていた。本来ならばルークが迎えに来るはずだったというのに、用事が出来たという事で、地図のみ渡された。
そんな事より、さっきから同じ道を何度も歩いているような気がする。ナルはカゴの中。バジルはホグワーツでお留守番。非常に困った状態だった。
魔法は使ってはいけない、地図は分かりづらい、流石に疲れた。リンネはその場で立ち止まり、小さくため息をついた。いくら「闇の帝王」とて、熱帯林を思わせる暑さの中歩き回るのは辛いのだ。
「ハァ…ルークめ、私を家に招き入れるつもりも初めからなかったのでは…」
ルークに不穏な気持ちを覚えずにはいられなかった。地図をグチャグチャに丸め、ローブのポケットに入れた。マグルの服で純血家に入ったらおかしいので、とりあえず途中で着替えたのだ。もう孤児院に戻ろうと、そう思ったその時、目の前のレンガ造りの屋敷が崩れていった。驚きに言葉を失った瞬間、その場所には黒い禍々しい屋敷が現れた。こんなにも近くにあったなんてーー変な隠し方は止めてほしい。
「この屋敷か…聞いた通りだ」
あの男から以前聞いていた外見と同じ。どうやらこの屋敷が、ルークの家らしい。大きさは、ホグワーツのクィディッチ競技場くらいか。魔法は本当に凄い。外周は高い石の塀で、リンネの目の前には鉄の大きな門があった。
「凄いな…」
ホグワーツの凛々しさにも感嘆したが、この屋敷も相当なモノだった。孤児で、ロンドン内しか見て回った事のないリンネにとって、こういう建物などは新鮮なのだ。
そういえば、孤児院で友人宅に行くと院長に伝えた時、かなり笑顔で見送ってきた。あんな気持ち悪い笑みを、リンネは初めて見た。確実に喜んでいる。厄介者であるリンネがすばらくいないという事は、孤児院にとってこの上なく平和なのだ。しかし、リンネは別に悪さをしてなどいない。周りの人間が勝手に狂っていくだけの話だ。そして、表情を見せないという事だけ。
リンネは、取り入れたい人間の前(先生方など)では可愛らしい笑顔を見せるが、通常は頑として無表情だ。しかし、悪い顔だけは見せる。
リンネは門に触った。すると、門は鈍い音を立てながらゆっくりと開いていった。リンネもそれに合わせて歩いた。屋敷の前に広がる庭は何故だか白黒に見えて、ちっとも美しくはなかった。しかし、「闇の魔法使い」らしい風貌だった。
実を言うと、今日はリンネの誕生日だった。それは誰にも言った事はない。ナルさえも知らない。リンネしか知らない。正直、興味はなかった。年齢を重ねるという事に関心などなかった。
彼女はゆったりと上品に歩き、周りの風景を見ながら屋敷の入り口までやってきた。ズカズカと入るのはマナー違反なので、リンネは扉をノックする。こんな大きな屋敷で小さなノックが聞こえるのか一瞬疑問に思ったが、魔フィアのリーダーの家なのだ。使用人くらいいるだろう。
すると扉が全開になり、黒いスーツ姿の男ーー執事だろうーーがリンネの目の前でお辞儀をした。
「ようこそいらっしゃいました、リンネ様」
「…分かりづらい場所に屋敷を建てるな」
「誠に申し訳有りません」
リンネは執事にトランクとカゴを渡すと、屋敷の中に入った。中は冷たく、涼しかった。粘った甲斐あったという事だ。孤児院にはクーラーなど皆無なので、とても気持ちが良かった。これも魔法なのだろう。
玄関ホールが広がっていた。真っ黒な床には魔力が敷き詰められているような気配がした。真っ直ぐ先には大きな階段があり、二階へと上がれるようだった。ホールには様々な肖像画や風景画が並べられ、どれも見慣れぬ客人に目を向けていた。
「ルーク様とガディ様がお待ちでございます、彼女に客間へ案内させます」
執事が手を向けた先には、メイド服を着た背の高い女性が立っていた。威厳のある堂々とした佇まいに凛々しいつり目。一見して美しい女性だが、中々頑固そうだった。
「メイド長をしております、レキシー・イシュレールと申します。リンネ様」
「ああ、そう」
名前なんかに興味はなかった。ただ今は、ルークがいるという事に腹立だしさを覚えた。用事とは何ぞだ。ただリンネが暑かっただけだ。ホグワーツに戻ったら殺してやると心に誓い、リンネはレキシーの背を追った。ただ者ならぬ雰囲気は、とても興味をそそられた。しばらくはその背中を見つめ、怠い足を動かした。
レキシーが止まったのは、豪奢な扉の前だった。この屋敷の入り口にもあったような美しい蛇達が装飾された、スベスベとした素材の扉だった。レキシーは扉をノックして中に呼びかけた。
「リンネ様がいらっしゃいました」
すると、中からルークの若々しい声が聞こえてきた。それは明らかに、「どうぞ」と言っていた。ため息をつきつつも、リンネは扉を開けて中に入った。
客間と呼ばれたそこは、スリザリン寮の談話室をもっと豪華にしたようだった。緑色のフカフカとしたソファには、ルークと知らない男性が座っていた。ルークの緑色の髪とは打って変わるような白髪。若いので、生まれつきだろうか。
「…嘘つき。一時間ほど迷った」
「いやぁ、リンネがどのように我が家に辿り着くか見たかったのですが、此処までかかるとは思いませんでした」
ルークはメガネを外し、黒いハンカチで拭いた。彼は爽やかな笑顔で微笑むが、その裏には大きな薄黒い影が見え隠れしていた。
「そもそも、この屋敷に辿り着くにはどうすれば良い?」
「えっ…あのレンガ屋敷の前で『帰りたい』と思えば現れますよ」
「…」
「すみませんね、ちょっとした遊び心ですよ」
突然寒波がやってきて、とても寒くなりましたね。友人に誘われて散歩に出かけたのですが、かなりの銀世界となっていました。
暇だったので、そこらの雪を使って郵便ポストの隣に50㎝くらいの高さの雪だるまを作りました。そして、その後小学生の男子に悲しい事に壊されました。私の一時間を返せオイ。ついでにみかんも供えておきました。
私の住んで居る地域はあまり雪は降らないのですが、久しぶりに見ましたね。それでも作中は真夏。羨ましいぜオイ!
カドナ「それに小中学校は休校っていうじゃないか」
リンネ「私は夏休みだぞ」
カドナ「殺ス...」
リンネ「お手柔らかにな」