Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
リンネは小さくため息をつくと、彼等の目の前のソファに腰掛けた。散々振り回されたのだ。初対面の人間への礼儀なんて知らない。…とも言えず、リンネは律儀にも挨拶を始めようと白髪の男を見た。ルークと、あまり歳は離れていないようにも見える。訝し気な表情ではあるがリンネを舐めるように見つめ、そして口角を上げた。それでも彼は言葉を発さなかったので、リンネから挨拶を始める。
「リンネ・ゴーントと申します。この度はお屋敷にお招きいただき、誠にありがとうございます…ミスター」
「堅苦しい挨拶は嫌いだ。素で構わない。俺はガディナールス・シンシア、現『フラッド』リーダーであり、この愚息子の父だ」
「…そうか」
ルークはリンネが敬語を使った事に驚いた様子だったが、彼女は基本的に取り入りたい相手には敬語を使う。ガディに対しては使わないと思っていたのか、酷く戸惑っているようだった。しかし、リンネにしてみれば敬語を使うなと言われたのは初めてだった。12歳というまだ年端もいかぬ少女に、プライドの高い純血族の魔法使いがタメ口をきかせるだろうか?
リンネは自分の血筋をよく知らないが、周りの口ぶりからすれば”純血”なのだろう。図書館などで自分の家系について調べてみた事はあった。「ゴーント」というのはサラザール・スリザリンの末裔の血筋らしいが、もう何十年も前に滅んでいる。彼女の母親は、父親は、一体何者なのだろうとふと考えた事はあった。
前の帝王の「血縁者」ではあるが、どのような立場かなど分からない。子? 孫? 姪? 自分の素性などどうでも良いが、そこらは明らかにいておきたいとは思っていた。
「リンネ・ゴーント…偉大なるサラザール・スリザリンの血を引く唯一の人物。君は『許されざる呪文』を知っているか?」
ガディはリンネの考え事を遮り、唐突な問いを投げかける。「許されざる呪文」というと、人に行使すれば魔法界最強の監獄”アズカバン”で終身刑に値すると言われている。闇の陣営が使ってきた「闇の魔術」の中でも最もタチの悪いモノと言われている。リンネ自身も習得したいとは考えていたが、それが一体何だと言うのだろうか。
「知っている。確か、『服従の呪文』『磔の呪文』『死の呪文』」
「その通り。本来ならば、俺なんかが本来魔法界の頂点に立つべき君に敬語を使わないのは、死に値するかもしれないが…どうだ? その三つを、この屋敷に滞在中に自在に操ってみないか?」
ガディの言葉に、リンネは敏感に反応した。
「あぁ、勿論だ。しかし、学校外での未成年の魔法使用は禁じられているはずだが」
「その程度、魔法省にコネがある俺にとって、簡単にもみ消す事が出来る」
「確かにあれは、個人を特定するモノではないからな。あくまでも未成年がその場で魔法を使ったと分かるまでで」
「その通りだ。今の時代で珍しい純血に、稀に見る才能、美貌、冷酷さ…」
「お褒めいだき光栄だな。それにしても、魔法省にコネがあるなんて…素敵だ」
リンネと目を合わせた途端、ガディの世界は紅蓮で満たされた。目の前の少女が何よりも美しく感じて、彼女のためならば何だって差し出せる、全てを捨てる事が出来るような気がした。否、心からそう感じたのだ。
リンネは敬語など使わずとも相手を魅了する事が出来た。この瞳、言葉、声ーーリンネの体全てが魔法だった。
「俺には財力も人望もある。君が魔法界を支配するのを補助しよう。ナニ、手助けが嫌だと言うのならば、全てを貴女に捧げても構わない」
「…父上?」
「ルーク、お前もそうだろう? 彼女こそが闇の支配者にふさわしい。磨けば磨くほど黒く輝く宝石だ」
「…そうですね」
ルークも同意するかのように頷く。だが内心、隣の父の豹変振りに違和感と恐怖を感じていたのは言うまでもない。リンネは満足気に冷たく笑うと、ガディを見た。
「そうかそうか…ミスター、私は必ず魔法界を支配し、マグルや穢れた血共にお辞儀でもさせてやる」
「お辞儀か。良いな、ひれ伏す姿を見てみたいモノだ」
*
ガディは、リンネに部屋で休んでいてくれと優しく声をかけてくれた。ルークに部屋に案内される間、屋敷の事について説明された。この屋敷には様々な設備が整えられており、魔フィアも結構うろついているから変な場所に行くなという事、部屋はルークの部屋と隣だから何かあったら声をかけてくれという事、そして地下に大図書館があるからそこは自由に使ってくれという事だった。
リンネが案内された自分の部屋に入る直前、ルークがこんな事を言ってきた。
「魔法は好きに使って構いませんからね。校則なんてクソ食らえ〜って思ってもらって全然オーケーです。そうだ、ナルは変身させても構いませんよ。どう足掻いても蛇ですし。そうだ、ベッドの上に着替えを置いておいたので、良ければきてください」
「そうか、ひと段落済ませたらとりあえずダイアゴン横丁へ行きたい」
「分かりました、隣にいるので声をかけてくださいね」
短く返事をすると、リンネは部屋に入っていった。寮の部屋と同じような大きさで、真ん中に天蓋付きの大きなベッド、床には蛇の絵が万遍なく描かれており、踏んで良いのか戸惑うほどの傑作振りだった。リンネはベッドの近くに並べられたトランクを横に押し倒し、ナルの入ったカゴの入り口を開けた。
緑色の蛇はスルスルと床を這いずり、リンネに鎌首をもたげた。
『早く人間にしてください』
『嫌だ。時々は広いベッドで一人占領したいと思うのが人間だ』
『全然違うと思います』
リンネはトランクの蓋を開け、中からお金を取り出した。学校から支給された今学期分のお金だ。それをベッドに放り投げると、その上に置かれた真っ黒な魔法使いのローブを見た。学校のローブと似たり寄ったりだが、何だか「死喰い人」のような雰囲気まで醸し出された。
新しいローブに着替え終わると、彼女はナルを見つめ、杖を取り出した。尤も、あまり人間には変身させたくない輩だという事は確かだが、今は仕方ない。
ナルを人間に化けさせ、お金をローブに入れ、部屋の外に出た。隣のルークの部屋のドアをノックすると、中からうわっという驚きの声が漏れた。
「り、リンネですか…準備は整いましたね?」
その後、ルークとナルと共に暖炉でダイアゴン横丁へと向かった。そこである程度の学用品を揃えた。ルークにしてみればリンネとのデートのようだったが、隣にドヤ顔のナルがいるのでそうもいかなかった。両手に花のリンネといえば、ただ引き込まれそうな赤い瞳を、妖しく光らせていただけだった。
一通り買い物が終わったと思ったら、ルークはリンネに袖を掴まれた。
「ルーク、私に奢ってくれ。七ガリオンほど」
「えっ…いくら強請っても買ってあげるつもりですので構いませんが、何を買うんですか?」
「んー?」
リンネはルークとナルの腕を引き、「オリバンダーの杖店」の前までやってきた。ルークは訝し気な表情をした。
「リンネは杖を持っているでしょう? 誰用ですか?」
「こいつ」
リンネの指の差した方向には、きょとんとしたナルの姿があった。ルークは一瞬ながら反抗した表情を見せたが、リンネと目を合わせた途端そんな気は失せてしまった。リンネが頼むならば、どんな事でもしてあげたくなった。
オリバンダーの店の戸を開け、彼等は中に入った。店内には、去年見たやせ細った今にも死にそうなオリバンダー老人がいた。リンネを見た途端に手に持った杖を箱を取り落とし、足は酷く震えていた。あの戦いから、ヴォルデモートが滅んでから三十年以上経っているのに、彼と会った者や彼を知る者にとって、リンネは恐怖の象徴でしかないのだ。おまけに死喰い人のような格好で来られれば、過去のトラウマが蘇る。
薄暗い横丁、荒れた店、空っぽの杖箱、苦痛の叫び声ーー全ての記憶が呼び起こされた。しかし、今目の前にいる少女はあくまでも”客”であり、ヴォルデモートではない。
「いらっしゃいませ…ゴーント様」
「今日は、こいつの杖を」
そう言うとリンネはナルの背中を押し、老人の目の前まで連れてきた。老人はナルの体を巻尺で測り始めた。
不思議な事に、ナルは魔法が使える事が出来るのだ。リンネが試しに杖を握らせて魔法を使わせてみれば、リンネには及ばずとも強い威力で魔法を使う事が出来たのだ。一応、授業を受ける事は許可されているので、杖さえあれば魔法を覚えてもらえると思ったのだ。流石にリンネの杖を貸し続けるわけにもいかないので、この店に来た。
「ほう…これは珍しい方ですな。しかし、”客”の要望ですからね」
そう言うと店を奥へと駆けていき、やがて数箱の杖箱を持ってきた。その後、いくつもの杖を試したが、中々彼に合うのは見つからない。ルークは楽しそうな様子でそれを眺めていたが、やはりナルは蛇だから、人間の使う杖はあまり相性が良くないのかもしれない。
そういえば、魔法省の法律で確か「人以外の者は杖を持ってはならない」みたいなモノがあったような気がするが、記憶が途切れてしまった。気がついた頃には、ナルに合う杖が見つかった様子だった。
「桃の木にドラゴンの心臓の琴線、攻撃呪文に適しています」
ナルは嬉しそうに杖を持ち、リンネに褒めてもらいたかったのか、その場で一回転グルリと回った。見た目はルークとそう変わらないのに、精神的には熟していないのか。そもそも蛇の年齢がどうなのかは知らないが、魔力を有しているという事はナルは魔法生物の一種になるのかもしれない。もしかするとバジリスクのように何百年も生きているのかもーー
リンネは老人に七シックルを支払い、店を後にした。
先に一言申しておきますと、私はチートが大好きです。
今回は、リンネとガディとの会話、ナルの杖購入のお話でした。「許されざる呪文」は、本作では大きくストーリーを左右します。人を操り、苦しめ、殺める三つの魔法は、リンネの人生をどう分けるのか...それは、神のみぞ知る。否、いずれ分かる事なのですが。
湿っぽい雰囲気は嫌い。頑張ってコメディーを書きたいけど、私にはシリアスしか書けましぇん。じゃあ紹介へレッツゴー。
【未成年魔法使いの魔法を感知する魔法】
その名の通りの魔法。これにより、魔法省は未成年魔法使いの魔法不正使用の取り締まりを行う事ができる。未成年魔法使いが学校外で魔法を使う事を禁じられており、1度目は警告、2度目は退校処分及び杖破壊となる。
ちなみにこの魔法は、一個人を特定するわけではなく、ただ単にその場所で未成年魔法使いが魔法を使用したという事が分かるだけである。
だから、知らない土地で魔法を使っても、逃げ出せば捕まえられないという事である。これを利用すれば、罪をなすりつける事だってできるのは悲しい事だね。魔法省、君たちもっと抜け穴のない魔法を開発したまえ。
また、未成年魔法使いには「匂い」というモノがついており、それにより感知が可能。
【許されざる呪文】
人間に行使するだけで、魔法使いの監獄アズカバンで終身刑に値する。「服従の呪文」「磔の呪文」「死の呪文」どの魔法も闇の魔術の中で特に厄介であり、暗黒時代には魔法省が散々振り回された代物である。
どの魔法も、ぶっつけ本番で使えるような魔法じゃない。いやマジで。
ハリポタ×東方projectの二次創作が書きたい。ただでさえ連載二つ抱えているのに、これ以上増えたらたまらない...おまけに別サイトで7つも連載持て余しているからな...じゃあ、ばいにゃら