Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
「オリバンダーの店」は、本当に狭くてみすぼらしかった。
積み上げられた細長い箱は、整然と天井まで続いている。
少し埃っぽく、しばらく放置された廃墟のようだった。
「いらっしゃいませお嬢さん」
リンネが辺りを見回していると、声が聞こえた。気がつくと、目の前には銀色にギョロッと光る目を持った、老人の魔法使いが立っていた。
彼は、興味深そうな顔でリンネを見た。
「これは...あの方の血縁者ですか...」
「あの方?」
「『例のあの人』でございます」
「ヴォルデモート卿だな。だが、何故それが分かる」
老人は、リンネの言葉を聞くとビクッとした。そして、恐れ戦きながらも答えた。
「目で...ございます...あの方と全く同じ。失礼」
老人は銀色の目盛りの入った巻き尺を、震える手で取り出した。
すると巻き尺は、リンネの体の寸法をはかりだした。
「利き手は何方でございましょう?」
「右だ」
「では...」
老人は巻き尺を掴んで内ポケットに入れると、店の奥へと入っていった。
何かガサゴソと音がしていたが、戻って来るにはしばらくかかるようだ。
リンネは辺りを見回して、箱を何個か手に取ってみた。ズッシリとしたものや、羽のように軽いものーー
此処は「杖」の店なのだから、当然これらは杖なのだろう。
さてーーしばらくすると悩んだ挙げ句なのかーー、老人はようやく一つの箱を持って来た。
「梅の木に、ユニコーンの毛。三十八cm。しなりずらい」
老人はそう言うと、箱を開けて中に入っている杖をリンネに渡した。
リンネは、振ってみた。
すると、何も起こらず(?)老人は唸って杖を回収してしまった。
彼女は、次々に杖を試した。
だが、その度に老人は何も言わずに、新しい杖を渡す。それの繰り返しだった。
だが、とうとう終わりがやってくる。
「松の木に...不死鳥の尾羽根。三十cm。どんなものよりも魔力を扱いやすい。わしの最高傑作なのですが...今までこの杖は誰も選んでは来ませんでした」
リンネは、杖を受け取った。何か懐かしいものを感じ取った。
そして、振ってみた。すると、杖先からは緑色の火花が散り、銀色の蛇のようなものが現れ、空中をグルグルと飛び回った。
蛇はしばらくすると消えた。その間、老人は魅入られたかのように蛇を見つめていた。老人は口を開いた。
「その杖はですね、非常に危険なモノなのです。貴女様に売るのは少々戸惑いますが...仕方ありません。どうか、貴女様があの方のように道を踏み外す事のないよう...お祈りしております」
**
杖代に「七ガリオン」を払い、店の外へ出たリンネ。外では、ニコニコ笑顔のロングボトム教授が居た。
「先生、終わりました。...お待たせしましたか?」
「いや、大丈夫。僕も今来たばっかりだから」
買い物も一通り済ませたので、二人は「漏れ鍋」へ向かった。
道ゆく人々とぶつかり、人ごみの中に紛れる。
途端に、近くのホウキ店のショーウィンドウに押し付けられた。
込み合った横丁の中、ロングボトム教授を見失っては大変だ。
急いでリンネは辺りを見回したが、教授の姿はなかった。
リンネの押し付けられたショーウィンドウには、高速ホウキの「ニンバス2008」が展示されていた。
近くでは、まだホグワーツに入るのには幼い少年達が、ショーウィンドウに鼻をくっつけて、ホウキに見とれていた。
「先生...一体何処だ?」
対して、ロングボトム教授もリンネを見失っていた。
こんな事なら、手首を掴んで引っ張っていけば良かったと思う教授だった。
しかし、セクハラ教授と呼ばれるのは絶対に嫌だったし、別に大丈夫かなーと思っていた。ちょっと後悔。
「リンネはシッカリした子っぽかったからな...多分大丈夫だとは思うけど...」
リンネは平気だ。だが、一番オロオロしていたのは教授だった。
「でも...あぁどうしようどうしようどうしよう...!!」
案外、三mも離れていないのだが、身長の高い魔法使いと人ごみで隠れてお互いが見えない。
仕方無いなとリンネは杖を取り出し、空へ向かって杖を振った。
すると、真っ黒な小さな花火のようなものが飛び散った。
しばらくすると、教授が走って駆けつけて来た。
**
お互いを見つけた二人は、すぐに「漏れ鍋」へ向かった。
今度は人ごみに流されないようにーー真っ直ぐ行くだけなのでーー、リンネが教授の前で歩く事になった。
「漏れ鍋」についた。
ロングボトム教授は、アルコールのないビールような人気の飲み物ーー「バタービール(クール)」を買ってくれた。
かなり甘かったが、とても美味しい。
「何方へいらしていたんですか?」
「あぁ、僕が『薬草学』教授なのは知ってるよね。実は、一年生の課題で使うはずだった『鶴亀草』の調子が悪くてね。気付け薬みたいなものを、買って来たんだよ」
「そう、ですか...」
ロングボトム教授は、リンネの様子を伺いながらも「ファイアウイスキー」をバーテンに頼んだ。
バーカウンターに座って話しているのだが、トムは何時の間にかいなくなっていた。代わりに、黒いチョビヒゲのメガネをかけたおじさんがコップを拭いていた。
バーテンは黙って頷くと、大きめのコップを取り出して、炭酸のような泡のある真っ赤なウイスキーを入れた。
「ありがとう」
ロングボトム教授は「ファイアウイスキー」を受け取ると、ゴクリと勢い良く飲んだ。
喉がやけるような感覚だ。まるで、コショウを丸呑みしたみたいなーー
「先生、ポッターさんの事で、他にも聞きたい事があるんです」
「何かな?」
「ヴォル...いえ、『例のあの人』の事です」
ヴォルデモートの名前は、彼が死んだ今でも恐れられていた。なので、公の場では彼の名前は出さないようにと言われた。人の事言えないロングボトム教授に。
「彼は、一体何をした人なのでしょうか? 教授の話からして。もの凄い悪人のようなのですが...」
リンネが言うと、教授はまた「ファイアウイスキー」を口の運んだ。
「まぁ、その通りだよ。でも、僕の口からそれを言うのも...君にはまだちょっと言うには早いかもしれないし...」
「もう11歳です。貴方は先生でしょう? 『モノを教える』仕事ではないのですか?」
「ううむ...」
「ある程度で構いません」
彼女の真剣な瞳を見て、遂に教授は諦めた。
仕方無いなとため息をつくと、ゆっくりと話し始めた。
「彼はね、簡単に言うとそう...人殺しに躊躇いを持たず、『死喰い人(デス・イーター)』という下僕を引き連れ、魔法界を征服しようとした世界最強の闇の魔法使い。みんなは今でも、彼の事を恐れて名前さえ口に出来ない人が大多数なんだ。死んだっていうのに...ただ、」
「ただ?」
「今年の一年生には、どうやらサラザール・スリザリンの末裔が入学するらしいよ。気をつけてね。う〜ん、まだ生き残りが居たんだね」
サラザール・スリザリンの末裔、生き残り、今年の一年生。
リンネは、最強の闇の魔法使いの血縁だという事に、少し喜びを感じていた。
幼い時から、人よりも優れ、特別な存在であるものになる事に熱望していた。
そして、裏で劣った奴らを見下すのが大好きだった。
自分は、世界最強の魔法使いと同じ血が流れている、そう思うだけど、彼女の口元には邪悪な笑みが浮かぶのだった。
今回は、杖を買うお話で〜した。
【ギャリック・オリバンダー】
超超超一流の杖作り。
今まで売った杖は、買った人から特徴まで全て覚えている。
ヴォルデモート卿のような赤い瞳が若干トラウマ。
そして、前回紹介を忘れたトム。
【トム(漏れ鍋のバーテン)】
原作終了後、「漏れ鍋」の亭主はハンナ・アボットとなったが、名残惜しかったのでバーテンになった。
彼がリンネを恐れたのは、マクゴナガル先生から詳細を聞いていたから。
さて、リンネはヴォルデモート卿の「血縁者」なわけですが...一体どういう関係なんでしょうねー(遠い目