Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜   作:カドナ・ポッタリアン

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第三 杖

 

 

 

 

「オリバンダーの店」は、本当に狭くてみすぼらしかった。

 積み上げられた細長い箱は、整然と天井まで続いている。

 少し埃っぽく、しばらく放置された廃墟のようだった。

 

 

「いらっしゃいませお嬢さん」

 

 

 リンネが辺りを見回していると、声が聞こえた。気がつくと、目の前には銀色にギョロッと光る目を持った、老人の魔法使いが立っていた。

 彼は、興味深そうな顔でリンネを見た。

 

 

「これは...あの方の血縁者ですか...」

「あの方?」

「『例のあの人』でございます」

「ヴォルデモート卿だな。だが、何故それが分かる」

 

 

 老人は、リンネの言葉を聞くとビクッとした。そして、恐れ戦きながらも答えた。

 

 

「目で...ございます...あの方と全く同じ。失礼」

 

 

 老人は銀色の目盛りの入った巻き尺を、震える手で取り出した。

 すると巻き尺は、リンネの体の寸法をはかりだした。

 

 

「利き手は何方でございましょう?」

「右だ」

「では...」

 

 

 老人は巻き尺を掴んで内ポケットに入れると、店の奥へと入っていった。

 何かガサゴソと音がしていたが、戻って来るにはしばらくかかるようだ。

 リンネは辺りを見回して、箱を何個か手に取ってみた。ズッシリとしたものや、羽のように軽いものーー

 此処は「杖」の店なのだから、当然これらは杖なのだろう。

 

 さてーーしばらくすると悩んだ挙げ句なのかーー、老人はようやく一つの箱を持って来た。

 

 

「梅の木に、ユニコーンの毛。三十八cm。しなりずらい」

 

 

 老人はそう言うと、箱を開けて中に入っている杖をリンネに渡した。

 リンネは、振ってみた。

 すると、何も起こらず(?)老人は唸って杖を回収してしまった。

 

 彼女は、次々に杖を試した。

 だが、その度に老人は何も言わずに、新しい杖を渡す。それの繰り返しだった。

 だが、とうとう終わりがやってくる。

 

 

「松の木に...不死鳥の尾羽根。三十cm。どんなものよりも魔力を扱いやすい。わしの最高傑作なのですが...今までこの杖は誰も選んでは来ませんでした」

 

 

 リンネは、杖を受け取った。何か懐かしいものを感じ取った。

 そして、振ってみた。すると、杖先からは緑色の火花が散り、銀色の蛇のようなものが現れ、空中をグルグルと飛び回った。

 蛇はしばらくすると消えた。その間、老人は魅入られたかのように蛇を見つめていた。老人は口を開いた。

 

 

「その杖はですね、非常に危険なモノなのです。貴女様に売るのは少々戸惑いますが...仕方ありません。どうか、貴女様があの方のように道を踏み外す事のないよう...お祈りしております」

 

 **

 

 杖代に「七ガリオン」を払い、店の外へ出たリンネ。外では、ニコニコ笑顔のロングボトム教授が居た。

 

 

「先生、終わりました。...お待たせしましたか?」

「いや、大丈夫。僕も今来たばっかりだから」

 

 

 買い物も一通り済ませたので、二人は「漏れ鍋」へ向かった。

道ゆく人々とぶつかり、人ごみの中に紛れる。

途端に、近くのホウキ店のショーウィンドウに押し付けられた。

込み合った横丁の中、ロングボトム教授を見失っては大変だ。

 

急いでリンネは辺りを見回したが、教授の姿はなかった。

リンネの押し付けられたショーウィンドウには、高速ホウキの「ニンバス2008」が展示されていた。

近くでは、まだホグワーツに入るのには幼い少年達が、ショーウィンドウに鼻をくっつけて、ホウキに見とれていた。

 

 

「先生...一体何処だ?」

 

 

対して、ロングボトム教授もリンネを見失っていた。

こんな事なら、手首を掴んで引っ張っていけば良かったと思う教授だった。

しかし、セクハラ教授と呼ばれるのは絶対に嫌だったし、別に大丈夫かなーと思っていた。ちょっと後悔。

 

 

「リンネはシッカリした子っぽかったからな...多分大丈夫だとは思うけど...」

 

 

リンネは平気だ。だが、一番オロオロしていたのは教授だった。

 

 

「でも...あぁどうしようどうしようどうしよう...!!」

 

 

案外、三mも離れていないのだが、身長の高い魔法使いと人ごみで隠れてお互いが見えない。

仕方無いなとリンネは杖を取り出し、空へ向かって杖を振った。

 

すると、真っ黒な小さな花火のようなものが飛び散った。

しばらくすると、教授が走って駆けつけて来た。

 

**

 

お互いを見つけた二人は、すぐに「漏れ鍋」へ向かった。

今度は人ごみに流されないようにーー真っ直ぐ行くだけなのでーー、リンネが教授の前で歩く事になった。

「漏れ鍋」についた。

 ロングボトム教授は、アルコールのないビールような人気の飲み物ーー「バタービール(クール)」を買ってくれた。

 かなり甘かったが、とても美味しい。

 

 

「何方へいらしていたんですか?」

「あぁ、僕が『薬草学』教授なのは知ってるよね。実は、一年生の課題で使うはずだった『鶴亀草』の調子が悪くてね。気付け薬みたいなものを、買って来たんだよ」

「そう、ですか...」

 

 

 ロングボトム教授は、リンネの様子を伺いながらも「ファイアウイスキー」をバーテンに頼んだ。

 バーカウンターに座って話しているのだが、トムは何時の間にかいなくなっていた。代わりに、黒いチョビヒゲのメガネをかけたおじさんがコップを拭いていた。

 バーテンは黙って頷くと、大きめのコップを取り出して、炭酸のような泡のある真っ赤なウイスキーを入れた。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ロングボトム教授は「ファイアウイスキー」を受け取ると、ゴクリと勢い良く飲んだ。

 喉がやけるような感覚だ。まるで、コショウを丸呑みしたみたいなーー

 

 

「先生、ポッターさんの事で、他にも聞きたい事があるんです」

「何かな?」

「ヴォル...いえ、『例のあの人』の事です」

 

 

 ヴォルデモートの名前は、彼が死んだ今でも恐れられていた。なので、公の場では彼の名前は出さないようにと言われた。人の事言えないロングボトム教授に。

 

 

「彼は、一体何をした人なのでしょうか? 教授の話からして。もの凄い悪人のようなのですが...」

 

 

 リンネが言うと、教授はまた「ファイアウイスキー」を口の運んだ。

 

 

「まぁ、その通りだよ。でも、僕の口からそれを言うのも...君にはまだちょっと言うには早いかもしれないし...」

「もう11歳です。貴方は先生でしょう? 『モノを教える』仕事ではないのですか?」

「ううむ...」

「ある程度で構いません」

 

 

 彼女の真剣な瞳を見て、遂に教授は諦めた。

 仕方無いなとため息をつくと、ゆっくりと話し始めた。

 

 

「彼はね、簡単に言うとそう...人殺しに躊躇いを持たず、『死喰い人(デス・イーター)』という下僕を引き連れ、魔法界を征服しようとした世界最強の闇の魔法使い。みんなは今でも、彼の事を恐れて名前さえ口に出来ない人が大多数なんだ。死んだっていうのに...ただ、」

「ただ?」

「今年の一年生には、どうやらサラザール・スリザリンの末裔が入学するらしいよ。気をつけてね。う〜ん、まだ生き残りが居たんだね」

 

 

 サラザール・スリザリンの末裔、生き残り、今年の一年生。

 リンネは、最強の闇の魔法使いの血縁だという事に、少し喜びを感じていた。

 幼い時から、人よりも優れ、特別な存在であるものになる事に熱望していた。

 そして、裏で劣った奴らを見下すのが大好きだった。

 

 自分は、世界最強の魔法使いと同じ血が流れている、そう思うだけど、彼女の口元には邪悪な笑みが浮かぶのだった。




今回は、杖を買うお話で〜した。

【ギャリック・オリバンダー】
超超超一流の杖作り。
今まで売った杖は、買った人から特徴まで全て覚えている。
ヴォルデモート卿のような赤い瞳が若干トラウマ。

そして、前回紹介を忘れたトム。

【トム(漏れ鍋のバーテン)】
原作終了後、「漏れ鍋」の亭主はハンナ・アボットとなったが、名残惜しかったのでバーテンになった。
彼がリンネを恐れたのは、マクゴナガル先生から詳細を聞いていたから。

さて、リンネはヴォルデモート卿の「血縁者」なわけですが...一体どういう関係なんでしょうねー(遠い目

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