Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜   作:カドナ・ポッタリアン

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第三十二 爬羅剔抉

 

 

「まぁハリー、貴方のファンからクリスマスプレゼントがたくさんきているわよ」

「君にも来てるじゃないか」

「…僕にもいっぱい来てるよ」

 

 闇の魔術に対する防衛術の教室の机の上には、たくさんのクリスマスプレゼントがあった。小さいモノから大きなモノまで、数多と転がった贈り物は、英雄達を興奮させた。まさかこんなにも生徒達が贈り物がされるとは、思ってもみなかったからである。

 夕食が終わった後なので、早速開けてみようという話になったハリー達は、自分のプレゼントの一つを手に取った。3人共、その箱を絶対に開けなければならないという気持ちに震えた。体が勝手に動き、リボンをスルスルと解いた。フタと取り、中のモノを取り出す。それぞれ箱の中には、綺麗に揃えられた美味しそうなお菓子が入っていた。

 

「わぁ! スコーンだわ!」

「僕は糖蜜パイだ」

「おぉ…動かない蛙チョコレート…しかも、今までどうしても手に入らなかった”アグリッパ”のカード付き…よし、これで全種揃った!」

 

 3人は口角を上げて目を合わせた。夕食後だが、やはりスイーツは別腹だ。しかも大好物とあれば、食べない手はないだろう。目の前のお菓子が何よりも美しく思えて、彼等は腹を空かした猛獣の如くかぶり付いた。

 

「生物だからね。食べようか。…う〜ん! やっぱり糖蜜パイは世界一だね!」

「そうね、手作りかしら? あらッ…とても美味しいわ」

「蛙チョコレートはやっぱり美味しいなぁ…久しぶりに食べたよ。ねぇ、蛙チョコレートのカードって、全種で何ガリオンかな?」

 

 思い思いの感想を述べ、3人は満足そうな様子のまま他の箱も開け始めた。お互いに、心の深層が黒で侵され始めたとも知らずに。

 

 その頃、リンネはいつもは何の表情も見せないというのに、溢れる微笑みを隠そうともせず、数名の取り巻きと共にホグワーツの廊下を歩いていた。もう夕食の席は終わったが、門限までは時間があるので、散歩をしているのだ。今日は、月明かりが幻想に煌めく美しく涼しい夜だった。

 リンネがこんなにも機嫌が良いのは初めて見たので、取り巻き達は生唾を飲み込んでいた。見れば見るほど美しい闇の支配者。いつも纏わり付いているナルはいないので、彼等はその姿を眼に焼き付ける事が出来た。

 しかし、下手に煽てたりすると逆に反感を買う。取り巻き達は、黙って彼女の後をついていった。中庭に出ようとすると、リンネが手で静止した。

 

「お前達は、此処で待て」

「はい、閣下」

 

 取り巻き達をお辞儀をすると、リンネを送り出した。リンネはゆっくりと中庭の芝生の上を歩いた。半ば引きずるように足を動かしているが、視線だけは中庭の隅から隅までを見渡していた。何かを探しているかのようだった。しかし、何の姿も見当たらないし、特に何かが落ちている様子もない。リンネはため息をつき、こう呼びかけた。

 

「アティナ、丸見えだ」

 

 そう言うと、中庭のベンチの上に、アティナが現れた。足を組んで座っていたが、リンネの鋭い眼差しを向けられると、肩をすくめて立ち上がり、頭を下げた。

 

「流石ヴォルデモート卿ですね…何で『目くらまし呪文』が分かったんですか?」

「私の”目”を騙せると思ったら、大間違いだ。しかし、教授にこの対面が見つかると面倒な事になりそうだ。その魔法は、あながち間違いではないな」

「お褒めいただき、光栄です」

 

 アティナ・グリフィンドールは、ゴドリック・グリフィンドールと末裔としても、リンネの下僕としても力を蓄えていた。自分の持ちうる全ての時間をほぼ魔法と勉強に費やし、知識量も多かった。全てはリンネのようになりたいという願望、野心、そして帝王の瞳の魔力ーー其れらがアティナを動かす動力となっていた。

 

「『マフリアート 耳塞ぎ』」

 

 リンネを杖を持ち、辺りに「耳塞ぎ魔法」をかける。聞いた事のない呪文に、アティナは首を傾けた。

 

「その魔法は一体…」

「グリフィンドール、その好奇心は素晴らしいモノだが、いつか貴様自身の身を滅ぼしかねない。少し注意した方が良い」

「申し訳ありません」

 

 アティナはこの長い間で、すっかり前の自分を捨ててしまった。今はリンネに忠実な者の一人となっている。人間らしい欠点は目立つが、よく出来る下僕だった。確か今年は6年生のはずだ。ホグワーツの5年生で行う「O.W.L(ふくろう)」試験では、トップの成績を取ったとの事。監督生に首席の座まで。正に魔法界の将来を担う事を期待される、優秀な魔女として見られている。それはリンネにとって、酷く都合の良い事だった。

 

「それで、話がある」

「はい」

「この間…と言っても何ヶ月も前の話だが、私の周りをコソコソと探っている人間がいた。日本の『忍』というモノのような奴等だ。貴様には、心当たりがあるだろう? アティナ・グリフィンドール」

「『忍』?!」

 

 主人の言葉が、アティナは信じられなかった。しかし少し考えた後、口を開いた。

 

「それは恐らく…べアウト・ファンクスの召使でしょう」

「べアウト・ファンクス…? 聞いた事のない名だ」

「ファンクスは聖28一族にはないけれど、由緒ある純血一族の分家のようなモノです。そして…私の元婚約者でもあります」

「元婚約者?」

 

 アティナは苦笑を浮かべながら頷く。嘘をついている様子はなかった。

 

「えぇそうです。グリフィンドールの末裔は、私しかいませんから。しかも女ですからね。この血を途絶えさせないために、両親が選んだ婚約者です」

「元、というのはどういう事だ?」

「捨てられたんですよ。別の恋人ーーサキって人と結局」

 

 彼女の話だと、サキという女は日本の純血一族の一人だという。そのファンクスとやらは、日本の魔法界の文化である召使の「忍」を自らも使い、諜報活動などに割り当てているとの事だ。

 べアウト・ファンクスは現在レイブンクロー寮の7年生。リンネとは特に接点はないはずだが。

 

「そう…ファンクスはサキという女も捨てたんですよ。『飽きた』の一言で済ませて。今は新しい婚約者を探しているとの事ですが…それはそれは酷い女癖があって…容姿と血筋が良ければ良いほど彼が狙うんですよ」

「随分と詳しいな」

「婚約者でしたからね。彼には別れる時に呪いをかけてやったんですが」

 

 アティナは楽しそうに笑って、リンネに言った。

 

「実は、私の忠実なる下僕の一人が、その忍とやらを捕らえた。拷問で色々と聞き出そうとしたが、隠し持っていた刀で自らの腹を刺して死んでしまったらしい。故に、学校情報に精通しているお前に聞いたわけだが…あながち間違った判断ではなかったようだ」

「光栄です。しかし、忍は義理堅い魔法使いだと聞きました。自殺も躊躇はしないとの事。ファンクスとの関係を知られないようにするためでしょう」

「だろうな。では、今度褒美でもやろう。楽しみにしておけ」

「ありがたき幸せ」

 

 リンネは杖を降り、「耳塞ぎ呪文」を解いた。お辞儀をするアティナを尻目に、彼女は楽しそうに笑っていた。

 




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