Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜   作:カドナ・ポッタリアン

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第三十七 大行事

 

 

 

 シンシア邸に着くと、リンネは手厚くもてなされた。事情を話す前に、彼女は客間へと通された。今当主のガディは留守のようで、ルークが案内をしてくれた。

 客間に入ると、温かい紅茶が出された。ルークはリンネの向かいの席に座り、笑顔で話しかける。

「で、どうしてこんな夜に? もしかして…私が恋しくなりました? 誘っていたり?」

「いや、孤児院が焼失していた。寝泊りする場所がないから、夏休みの間泊めろ。そして…紅茶に何を入れた」

「フフッ…」

 

 ルークは眼鏡を取り、不敵にも微笑んだ。出された紅茶からは、魔法薬の独特の香りが少しだけ漂ってきた。飲むまでもなく、リンネはそれが一瞬で分かった。そもそも、ルークに渡されたモノを確認もせずに食べたり飲んだりしない。何をするか分かったモノではない奴だからだ。

 この間の夏休みなんて、疲れただろうと持ってきた水の中に、「惚れ薬」が入っていたのだ。この薬特有の個人の好む臭いがしてきたので、適当な使用人に飲ましておいた。その後どうなったかは知らない。

 

「『生ける屍の水薬』?」

「正解です。流石ヴォルデモート卿」

「何故こんな事を?」

「聞かずとも分かるでしょうに…そうですねぇ、リンネ様をグッスリ眠らせて、たくさん悪戯しようかなと思ったんですが…」

「次期リーダーが聞いて呆れるな」

 

 リンネはそう言うと、紅茶のカップをルークに押し返した。別にお腹は空いていないし、こいつはもう信用ならない。

 

「…怒らないんですか?」

「貴様は怒っても懲りないだろう。相手が『死の呪文』を使えると知っていても」

「私も使えますからね。リンネ様の方が強いですけど」

「それで…孤児院を燃やした奴は分かるか? どうやら放火らしいが、絶対に魔法使いの仕業だ」

「フフフ…」

 

 またしてもルークは笑う。彼は「開心術」を使わないと、考えている事がわからない。いつも余裕そうで、相手に本性を見せない。彼自身もリンネに「開心術」を使われる事を嫌がってはいないので、いつも通りに過ごしている。

 リンネは彼の心を読み、ため息をつく。

 

「ルーク・シンシア…貴様の父親か? 部下に命令して孤児院を焼かすようにしたのか?」

「多分ですけどね。何で知らされなかったんでしょうか…? 新聞にも載らなかったし、気がついていないのかもしれないですね。魔法省は、情報把握能力が低すぎる。ハリー・ポッターの件は口止めをしましたが…流石リンネ様。あんなに難しい魔法薬を完成させて、英雄全員に盛るだなんて…」

「話を逸らすなルーク。私は別に怒ってなどはいない。マグル共のいる場所は、実に窮屈で退屈だった。好都合だ」

 

 リンネはため息をつくと、無造作に杖を取り出して薬の入った紅茶を混ぜた。

 

「リンネ様に、あんな場所は不必要です。…そうだ、養女になりませんか? シンシア家の」

「養女…遠慮しておく。しかし、この屋敷に留まる程度なら構わないだろう?」

「そうですね。部屋もまだ状態はそのままですので、ご自由にお使いください」

「そうだな。また人間の用意は?」

「出来ます。数名捕らえておきますよ」

 

 ルークは笑い、立ち上がったかと思えばリンネの隣に座った。ナルが警戒して彼女の袖口から飛び出し、ルークを睨んだ。

 

「しかし…タダでとは言えませんね」

「私に金品を要求するのか? 孤児だぞ、孤児」

「分かっていますよ。今すぐにでも払えるモノです…ね」

 

 急に抱きついてきたかと思えば、彼の腕は蛇のようにスルスルとリンネの背中に回り、固く抱きしめた。その力は魔法でも何でもなく、ただルークの愛だけで包まれていた。あまりに突然な事で、リンネは驚いてしまったが、払うのはこの程度かと、とりあえず好きにさせておいた。

 

「良い香りですね…それに、柔らかいです」

「気色の悪い男だ。年端のいかぬ学生に、こんな事をするとは」

「ただ抱きしめているだけでしょう?」

 

 ルークは不機嫌そうな声を上げ、リンネを腕の中から解放した。ナルはルークに噛み付かんばかりだったが、リンネにパーセルタングで注意され、シュンと蜷局を巻いていた。

 

「これ以上先は、もう少し後に取っておきます」

「自重しろ、自重。誰がやらせるか」

 

 リンネはルークを突き飛ばして、紅茶を飲んだ。既に魔法で薬の効力は解いてある。まだ温かな液体が全身を回るような感覚がした。蠢く蛇は舌を出し、リンネの膝の上で自分のモノだと主張するかのように寛いでいた。

 

「蛇にまで嫉妬を覚えるとは…確かに人間化すればそれまでだけど…ぶつぶつ…」

「そういえば、今年度のホグワーツは行事があるようだな。一体何だ?」

「あぁ、『三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)』ですよ」

「何だか聞いた事があるな」

 

「ホグワーツの歴史」という本に、事細かく書かれていた。ハリー・ポッターはその試合で優勝し、ついでに先代のヴォルデモート卿を蘇らせたらしい。今は十年ほどの周期で行われているという、危険ではあるが楽しい行事らしい。

 ヨーロッパに存在する三大魔法学校、ボーバトン魔法アカデミー、ダームストラング専門学校、そしてホグワーツ魔法魔術学校。それぞれの学校から代表選手を一人ずつ出し、優勝を競う。年齢規制は設けられていないらしい。何しろ、公正な審査員が一番能力の高い者を選ぶのだから。

 

「盛り上がりそうだな。他の学校からも生徒が来るのか」

「はい、私も少し覗きに行ってみたいですね。リンネ様も、エントリーしてみてはいかがですか?」

「あまり目立つ事はしたくないが…私の存在を知らしめるチャンスかもしれないな。しかし、私がいるというのに、よく魔法省は開催を許したな」

「まぁ、リンネ様が卒業する以前より計画を進めていたようですからね。今更変更なんて出来ませんよ」

「その審査員とやらは…一体誰なんだ?」

「あぁ、『炎のゴブレット』ですよ」

 

「炎のゴブレット」に学校名と名前を書き込んで入れると、それぞれに適した代表選手を選抜してくれるという。そして、代表選手は「魔法契約」が結ばれ、もし競技に参加しなかったら”死”という最後の舞台に直面する事となる。故に、生半可な覚悟で入れる者は止めた方が良いのだ。

 リンネはそれを聞くと、小さく笑った。

 

「決めるのが人間でないとすれば、私の選ばれる確率がグンと上がるな」

「そうですね。応援していますよ、リンネ様」

 

 *

 

 夏休みの間は、それなりに闇の魔術についても学んだし、また人を殺した。今度は、「亡者」の作成に取り掛かったのだ。普通の亡者とは異なる、強く、忠実で、賢い亡者を。

 完成にはまだ時間がかかりそうだったが、中々充実した休みを過ごす事が出来た。学校側からのふくろう便で送られてきた買い物リストの中に、一枚の紙が挟まっていた。それは、孤児院がなくなった事の連絡が遅れた謝罪だった。リンネはそれをビリビリに破り捨て、暖炉に放り込んだ。買い物リストの中には、「ドレスローブ」と書かれていた。ルーク曰く、行事の恒例「ダンスパーティー」で使用するとの事だ。シンシア家御用達の店で仕立ててもらい、着ると彼等に絶賛された。

 

 そして、新学期が始まった。生徒達はどうやら、「三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)」が行われると知らないようだった。親や家族が魔法省に勤めていたりしている者の子は、知っている者も僅かにいるようだった。

 中には、ドレスローブが必要な事で感づいている者だっている。

 

 新学期の席で、マクゴナガルが「三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)」が開催されると言った時の拍手喝采といったら。十年に一度の大行事だ、遭遇出来た事は何よりも嬉しいのだろう。

 新学期が始まってから数週間が経つと、ボーバトンとダームストラングがホグワーツへと足を踏み入れた。

 




リンネちゃんとルークのキスを期待した方、挙手!! 残念、抱擁だけなんですよね...キスしたら、リンネに殺されると思ったからでしょう。
さて、ホグワーツで行事が行われると記述されてあったので、何なのか予想がついた方もいると思います。「三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)」が、再びホグワーツで開催されます。ハリーや、残念じゃったのう、ふぉっふぉっふぉ。

一応、説明載せておきます。

三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)
ヨーロッパの三大魔法学校、ボーバトン魔法アカデミー、ダームストラング専門学校、ホグワーツ魔法魔術学校の中から一人ずつ代表選手を選び、優勝を競う行事。
夥しい死者が出たため中止されていた時期もあったが、ハリー・ポッターの世代より復活。死なない程度に鬼畜なカリキュラムが組まれている。
ボーバトンやダームストラングは、学校の場所を隠しているので、開催地は毎度ホグワーツ。ドラゴンやらスフィンクスやらニーグルやらを持ち込んで、色々迷惑な行事。
選手の選抜は、「炎のゴブレット」によって行われる。

【炎のゴブレット】
三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)」の代表選手を決めた、公明正大な審査員。
羊皮紙に学校名と名前を書き投入すると、三校の中から最も選手に適していると思われる選手の名を出す。名が出た生徒は「魔法契約」によって縛られ、破った場合は死で償う事となる。
騙すの簡単。超簡単。「錯乱の呪文」でチチンプイ。
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