Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
シンシア邸に着くと、リンネは手厚くもてなされた。事情を話す前に、彼女は客間へと通された。今当主のガディは留守のようで、ルークが案内をしてくれた。
客間に入ると、温かい紅茶が出された。ルークはリンネの向かいの席に座り、笑顔で話しかける。
「で、どうしてこんな夜に? もしかして…私が恋しくなりました? 誘っていたり?」
「いや、孤児院が焼失していた。寝泊りする場所がないから、夏休みの間泊めろ。そして…紅茶に何を入れた」
「フフッ…」
ルークは眼鏡を取り、不敵にも微笑んだ。出された紅茶からは、魔法薬の独特の香りが少しだけ漂ってきた。飲むまでもなく、リンネはそれが一瞬で分かった。そもそも、ルークに渡されたモノを確認もせずに食べたり飲んだりしない。何をするか分かったモノではない奴だからだ。
この間の夏休みなんて、疲れただろうと持ってきた水の中に、「惚れ薬」が入っていたのだ。この薬特有の個人の好む臭いがしてきたので、適当な使用人に飲ましておいた。その後どうなったかは知らない。
「『生ける屍の水薬』?」
「正解です。流石ヴォルデモート卿」
「何故こんな事を?」
「聞かずとも分かるでしょうに…そうですねぇ、リンネ様をグッスリ眠らせて、たくさん悪戯しようかなと思ったんですが…」
「次期リーダーが聞いて呆れるな」
リンネはそう言うと、紅茶のカップをルークに押し返した。別にお腹は空いていないし、こいつはもう信用ならない。
「…怒らないんですか?」
「貴様は怒っても懲りないだろう。相手が『死の呪文』を使えると知っていても」
「私も使えますからね。リンネ様の方が強いですけど」
「それで…孤児院を燃やした奴は分かるか? どうやら放火らしいが、絶対に魔法使いの仕業だ」
「フフフ…」
またしてもルークは笑う。彼は「開心術」を使わないと、考えている事がわからない。いつも余裕そうで、相手に本性を見せない。彼自身もリンネに「開心術」を使われる事を嫌がってはいないので、いつも通りに過ごしている。
リンネは彼の心を読み、ため息をつく。
「ルーク・シンシア…貴様の父親か? 部下に命令して孤児院を焼かすようにしたのか?」
「多分ですけどね。何で知らされなかったんでしょうか…? 新聞にも載らなかったし、気がついていないのかもしれないですね。魔法省は、情報把握能力が低すぎる。ハリー・ポッターの件は口止めをしましたが…流石リンネ様。あんなに難しい魔法薬を完成させて、英雄全員に盛るだなんて…」
「話を逸らすなルーク。私は別に怒ってなどはいない。マグル共のいる場所は、実に窮屈で退屈だった。好都合だ」
リンネはため息をつくと、無造作に杖を取り出して薬の入った紅茶を混ぜた。
「リンネ様に、あんな場所は不必要です。…そうだ、養女になりませんか? シンシア家の」
「養女…遠慮しておく。しかし、この屋敷に留まる程度なら構わないだろう?」
「そうですね。部屋もまだ状態はそのままですので、ご自由にお使いください」
「そうだな。また人間の用意は?」
「出来ます。数名捕らえておきますよ」
ルークは笑い、立ち上がったかと思えばリンネの隣に座った。ナルが警戒して彼女の袖口から飛び出し、ルークを睨んだ。
「しかし…タダでとは言えませんね」
「私に金品を要求するのか? 孤児だぞ、孤児」
「分かっていますよ。今すぐにでも払えるモノです…ね」
急に抱きついてきたかと思えば、彼の腕は蛇のようにスルスルとリンネの背中に回り、固く抱きしめた。その力は魔法でも何でもなく、ただルークの愛だけで包まれていた。あまりに突然な事で、リンネは驚いてしまったが、払うのはこの程度かと、とりあえず好きにさせておいた。
「良い香りですね…それに、柔らかいです」
「気色の悪い男だ。年端のいかぬ学生に、こんな事をするとは」
「ただ抱きしめているだけでしょう?」
ルークは不機嫌そうな声を上げ、リンネを腕の中から解放した。ナルはルークに噛み付かんばかりだったが、リンネにパーセルタングで注意され、シュンと蜷局を巻いていた。
「これ以上先は、もう少し後に取っておきます」
「自重しろ、自重。誰がやらせるか」
リンネはルークを突き飛ばして、紅茶を飲んだ。既に魔法で薬の効力は解いてある。まだ温かな液体が全身を回るような感覚がした。蠢く蛇は舌を出し、リンネの膝の上で自分のモノだと主張するかのように寛いでいた。
「蛇にまで嫉妬を覚えるとは…確かに人間化すればそれまでだけど…ぶつぶつ…」
「そういえば、今年度のホグワーツは行事があるようだな。一体何だ?」
「あぁ、『
「何だか聞いた事があるな」
「ホグワーツの歴史」という本に、事細かく書かれていた。ハリー・ポッターはその試合で優勝し、ついでに先代のヴォルデモート卿を蘇らせたらしい。今は十年ほどの周期で行われているという、危険ではあるが楽しい行事らしい。
ヨーロッパに存在する三大魔法学校、ボーバトン魔法アカデミー、ダームストラング専門学校、そしてホグワーツ魔法魔術学校。それぞれの学校から代表選手を一人ずつ出し、優勝を競う。年齢規制は設けられていないらしい。何しろ、公正な審査員が一番能力の高い者を選ぶのだから。
「盛り上がりそうだな。他の学校からも生徒が来るのか」
「はい、私も少し覗きに行ってみたいですね。リンネ様も、エントリーしてみてはいかがですか?」
「あまり目立つ事はしたくないが…私の存在を知らしめるチャンスかもしれないな。しかし、私がいるというのに、よく魔法省は開催を許したな」
「まぁ、リンネ様が卒業する以前より計画を進めていたようですからね。今更変更なんて出来ませんよ」
「その審査員とやらは…一体誰なんだ?」
「あぁ、『炎のゴブレット』ですよ」
「炎のゴブレット」に学校名と名前を書き込んで入れると、それぞれに適した代表選手を選抜してくれるという。そして、代表選手は「魔法契約」が結ばれ、もし競技に参加しなかったら”死”という最後の舞台に直面する事となる。故に、生半可な覚悟で入れる者は止めた方が良いのだ。
リンネはそれを聞くと、小さく笑った。
「決めるのが人間でないとすれば、私の選ばれる確率がグンと上がるな」
「そうですね。応援していますよ、リンネ様」
*
夏休みの間は、それなりに闇の魔術についても学んだし、また人を殺した。今度は、「亡者」の作成に取り掛かったのだ。普通の亡者とは異なる、強く、忠実で、賢い亡者を。
完成にはまだ時間がかかりそうだったが、中々充実した休みを過ごす事が出来た。学校側からのふくろう便で送られてきた買い物リストの中に、一枚の紙が挟まっていた。それは、孤児院がなくなった事の連絡が遅れた謝罪だった。リンネはそれをビリビリに破り捨て、暖炉に放り込んだ。買い物リストの中には、「ドレスローブ」と書かれていた。ルーク曰く、行事の恒例「ダンスパーティー」で使用するとの事だ。シンシア家御用達の店で仕立ててもらい、着ると彼等に絶賛された。
そして、新学期が始まった。生徒達はどうやら、「
中には、ドレスローブが必要な事で感づいている者だっている。
新学期の席で、マクゴナガルが「
新学期が始まってから数週間が経つと、ボーバトンとダームストラングがホグワーツへと足を踏み入れた。
リンネちゃんとルークのキスを期待した方、挙手!! 残念、抱擁だけなんですよね...キスしたら、リンネに殺されると思ったからでしょう。
さて、ホグワーツで行事が行われると記述されてあったので、何なのか予想がついた方もいると思います。「
一応、説明載せておきます。
【
ヨーロッパの三大魔法学校、ボーバトン魔法アカデミー、ダームストラング専門学校、ホグワーツ魔法魔術学校の中から一人ずつ代表選手を選び、優勝を競う行事。
夥しい死者が出たため中止されていた時期もあったが、ハリー・ポッターの世代より復活。死なない程度に鬼畜なカリキュラムが組まれている。
ボーバトンやダームストラングは、学校の場所を隠しているので、開催地は毎度ホグワーツ。ドラゴンやらスフィンクスやらニーグルやらを持ち込んで、色々迷惑な行事。
選手の選抜は、「炎のゴブレット」によって行われる。
【炎のゴブレット】
「
羊皮紙に学校名と名前を書き投入すると、三校の中から最も選手に適していると思われる選手の名を出す。名が出た生徒は「魔法契約」によって縛られ、破った場合は死で償う事となる。
騙すの簡単。超簡単。「錯乱の呪文」でチチンプイ。