Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
大広間は、ざわめきとどよめきで溢れた。ただスリザリン生とリンネファンだけが、拍手喝采を繰り返している。リンネは特に嬉しそうにも腹立たしそうにもせずに、ただ一人で立ち上がった。グリフィンドールの反スリザリン派達は、リンネに罵倒の言葉を投げかけた。
マクゴナガルは唇をブルブルを震わせ、リンネを見つめた。バグマン氏の口元は、ヒクヒクと水から上がった魚のように痙攣している。
リンネが教職員テーブルの隣のドアを開け、中へと入ろうとすると、クロート教授がリンネにしか聞こえない声で呼びかけた。
「流石帝王だ」
「…」
リンネは何も答えず、中へと入っていった。
トロフィーの立ち並ぶ大きな部屋では、もう二人の代表選手達が待機していた。上から吊るされたロウソクのシャンデリアは、金鍍金のトロフィー等を明るく照らした。それぞれがガラスによって隔てられ、正しく陳列していた。
ボーバトンの代表選手は、リンネの姿を見ると首を傾げた。
「貴女が、オグワーツの選手でーすかー?」
「…あぁ」
「わかーく見えますが、
「…いや、私は十三だ」
「おーやおーや、そーれは、いけない事でーす」
確か名をレノアと言った。彼女は人差し指を顔の前に持ってきて、左右に振った。まるで赤子に対して話しかけられているような気分で、リンネは不快感を覚えた。今にも殺してやっても良い所だが、今は冷静にならなければならない。
すると、トロフィールームのドアが勢い良く開かれ、中に大勢の大人達が飛び込んできた。特にマクゴナガルは切羽詰まった様子でリンネに迫り、大声で怒鳴りつけた。
「貴女! ゴーント!! 一体、我々の警備はどんな意味があったというのですか!!」
「み、ミネルバ、そんなかっかしないで! 落ち着いて…!!」
バグマン氏は慌ててマクゴナガルをリンネから引っぺがすと、深呼吸を促した。いつもは厳格で冷静な校長だというのに、今は普段とは程遠い女性となっていた。周りの教師陣や役人も驚いた様子だったが、やがてファレス氏が口を開いた。
「ミス・ゴーント、君は…あー、ゴブレットに自分の名前を入れましたか?」
「…いいえ。確かに賞金は魅力的ですが」
「では、上級生に頼んで入れてもらったなどは?」
「…いいえ。頼んでなんかいませんよ」
「マクゴナガル校長、どうなさいますか?」
クロート教授は笑いを堪えながら言った。すると、ダームストラングの代表選手クリストが非難の声を上げる。
「ダメです。彼女はまだ十七歳ではないのなら、競技には参加させないべきだ。ヴぉく達はともかく…」
「しかしだねミスター・ジェイコフ。魔法契約というモノは命さえも奪うのです。つまり、ミス・ゴーントは競技に参加しなければならない。構いませんね?」
ファレス氏は周りに同意を求める。リンネも特に文句はない。意見が一致した所で、マクゴナガルが口を開いた。
「取り乱してしまい、申し訳ありませんミス・ゴーント」
「それにしても、皆さん随分と落ち着いていますね。前にもこのような事が?」
「えぇ。ハリー・ポッターも…あ、いえ、何でもありません」
聞いた話、ハリー・ポッターが四年生の時にも「
「彼女が入れていないとすれば…一体誰が? まさか、また誰かが…」
ロングボトムは青ざめる。すると、ユージュは鞭を片手に愉快そうに笑う。
「いや、魔法省の役人が四六時中見張ってたんだぞ? それに、こいつが入れなくても、スリザリン連中なら『リンネ・ゴーント』って入れるだろうな」
「あの…その鞭しまってください」
「何だ怖がりか? ククッ…」
「ユージュ教授が仰った事は、本当なのでしょうか?」
ファレスしは慌てて口を挟む。その瞳はリンネに向いている。少し考えるふりをして、リンネは曖昧に笑って見せた。
「さぁ? …でも、皆さんならやりかねないですね」
「分かりました…しかし、規則は絶対です。参加は絶対にしてください、自分の命が惜しいならば」
「当たり前です」
命に関わると、仕方ないと判断したようで、各校の校長達は何も口を挟もうとしない。ただ目の前の少女の得体の知らない恐怖を感じるだけなのか、何処か懐かしく狂気と黒の空気を感じたのかは分からない。しかし、ダームストラングの校長であるメイツキー・ウィスプはピクリとも動く事が出来なかった。
話がただ刻々と前へと進んでいき、赤の瞳の少女と自分だけの世界に隔離されたような雰囲気に飲み込まれた。
「第一の課題は、皆の精神力と勇気を確かめるモノです。常に警戒を怠らないようにしてください。いつ何処で何者が襲ってくるか、分かりませんからね」
爽やかな笑顔でファレス氏は言う。
「では、寮に戻ってください。…あぁ、ミス・ゴーントは残りなさい」
不満そうな二人の代表選手は、渋々トロフィールームから出て行った。大広間の生徒達も、もう既に寮に戻っているのだろう。大人の魔法使い達に囲まれたリンネは、こっそりと杖を取り出していた。
「…私は、彼女と二人きりで話がしたい。皆さん、よろしければ退室していただければありがたい」
「しかしファレスさん…」
「私は、熟練の魔法使いですよ? ミネルバ」
「…分かりました、部屋の外で待機しています」
まるで、何かリンネがやからすような言い草だが、無理はない。彼女はヴォルデモート卿の血縁者でもあるし、稀有なる才能も魔力も併せ持っている。不安と思っても無理はない。しかし、彼を殺すにしても、今すぐに殺すなんて幼い考え方はしない。殺すなら寧ろ、バレないようにジワジワとーー
教師陣や校長達も、文句を垂れ流しながらも退室した。数名の役人がトロフィールームに残ると言ったが、ファレス氏はすぐにそれを拒否した。
皆がいなくなった所で、ファレス氏はドアに向かって呪文を唱える。
「『マフリアート 耳塞ぎ』」
「…それで、お話とは? ミスター」
「その事ですが…」
彼はニッコリと笑った。白髪混じりの四十代とは思えぬ、思わずため息をついてしまいそうな美しさを持った彼でも、リンネの心を動かす事は出来なかった。リンネはため息をついて、彼に静かな声で問う。
「ご用件は?」
「そうですね、今回の貴女には二人の迷惑をおかけしましたので、この場を借りてお詫びいたします。まずは、孤児院が焼かれた事の伝達遅れ。次に、今回のトーナメントについてです。我々の不備でミス・ゴーントにご迷惑をかけてしまい、大変申し訳なく思っております」
「…国際魔法協力部の部長がする仕事ではないと思いますが?」
「これは、魔法大臣の意向です」
ファレス氏はそう言うと、深々と頭を下げた。悪い気はしない。
リンネはそれを見て鼻で笑うと、ガラスケースにもたれ掛かった。
「確か今の魔法大臣は、パーシー・ウィーズリー…ですたね。弟のロナルド・ウィーズリーが攻撃を仕掛けてきた事に関しても、謝罪はなしですか?」
「その件についても、大臣は深くお詫び申しておりました」
「どうだか。まぁ、あまり気にしていないので。…それで、もっと他に話はあるのでしょう?」
「…まぁ、そうですね」
謝罪は建前だが、実際は一体何だろうか。リンネは興味深そうに耳を傾ける。
「『例のあの人』の血縁者である貴女が、この学校にいて良いのかという話です」
「退学、という意味でしょうか?」
「はい、私としては、貴女が学校を辞める事を検討しております」
「それはミスター・ファレスの判断で決められる事ではないでしょう? 子供には学ぶ権利があるんですよ、魔法省の方にそれを奪われたら…孤児院もなく、学校もない私に一体何が残るというのですか?」
「…陣営です」
ファレス氏は淀む事もなく、ただ真っ直ぐと言った。リンネはその『陣営』というワードに反応を示す。もしかして、「闇の陣営」の事を指しているのだろうか。
「貴女にこの学校は相応しくない。そう考えている人間が大勢いるのです」
「よく話が掴めないのですが…」
「再び、『死喰い人』を呼び戻して勢力を固めましょう。今の貴女の才能と魔力と知恵さえあれば、十分です。ただの無意味な時間だ。さぁ、手をお取りください卿」
ファレス氏は跪き、片手をリンネに差し出した。この男は、クロートと同じ事を言っている。魔法省側の人間ーー特にこのような人間ーーは信用がならない。リンネは迷う事なくファレス氏の手を振り払った。精一杯の憎々しげな表情を浮かべ、一切合切がどうでも良いと思うほどの大きな声で叫んだ。
「好い加減にしなさい! 私はあの人とは違う!!」
勿論、演技だという事に彼は気がついていない。リンネは涙を流しながら、トロフィールームから飛び出した。途中で教師陣とぶつかったが、特に気にも留めずに寮までの道を走り続けた。何事かと追いかけてくる人間はいなかった。
そろそろ寮につくなと思った辺りでリンネは立ち止まり、涙を拭き取った。あれでファレス氏がどう出てくるかが勝負だ。味方か敵か。それを決めるのは今ではない。もう少し考えてからにしよう。
「『紅蓮』」
ただ今は地下の肖像画に合言葉を言い、談話室のパーティーに加わろう。
今回は、サブタイが思い浮かばなかった回です。正直、毎回悩むのがサブタイトル。誰か良いのを考えてくれ頼む...(´Д` )
レノア「フラーや、クラムのよーうな喋りかーたが、サブタイの次ーに大変でーすね。カドナさーんは、私の
人物紹介
【レノア・ブランシャール】
ボーバトンの七年生。美しい滑らかなブロンドが特徴のオランダ系フランス人。マダム・マクシームの自慢の生徒の一人ではあるが、あまり自分に自信を持っていない。まさか自分が選手に選ばれるとは思わず、泣いてしまったくらい。
ボーバトンの生徒はナルシスト気味で傲慢な人間が多いのだが、彼女はきっとそうではないはず。はずだよ。
【クリスト・ジェイコフ】
ダームストラングの七年生。中性的な顔立ちを持った細マッチョ。至って平凡な容姿を持っているが、女装させると完全に男勝りな女の子へと変化する。ちなみに女装癖はない。安心しろ。
無口。空気。いても地の文を読まないと分からないくらいあまり喋らない。
【パーシー・ウィーズリー】
ウィーズリー家三男。赤毛に眼鏡が特徴の若きエリート。出世欲があったモノの、三十三年前の「ホグワーツの戦い」においてダンブルドア側に戻り、正義の味方として戦った家族を想う優しい男。
現在はその実力を認められ、魔法大臣に就任している。魔法省の腐敗政治を取り壊し、再建を試みているモノの、中々上手くいかず。その要因として、リンネ・ゴーントが挙げられる。