Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
リンネが代表選手になった事は、一部の生徒の反感を買ったようだった。反スリザリン派の彼等は、十七歳未満のリンネが代表選手になった事が、どうも気に食わなかった。他の立候補者や生徒は、リンネなら仕方ないと軽く容認していたが、その面の人達はただリンネを敵視しているだけだった。
実際リンネは、勝手に名前を入れられたわけで罪はない。それなのに反スリザリン派の生徒達は、リンネの陰口を言ったり、根も葉もない噂を流したりなどを繰り返していた。これでは何方がいじめているのかが分からない。
この頃のスリザリン生は、先生方には評判だ。リンネの方針で、寮の得点を増やすために定期的に勉強会を開き、自らが教鞭を取る…何か悪事を働く時は、必ずに下準備とバレないようにする事ーースリザリン生ならではの悪知恵と狡猾さと頭の回転の早さを利用して、リンネはスリザリン内ではなくてはならない存在までなった。スリザリンはリンネが入学してから一度も減点の対象となっていない。
それを反スリザリン派は、陰謀があるだの出鱈目ばかりを言う。勿論、誰も信用しないが。
反スリザリン派の熱を冷やし、周りから孤立させるのがリンネの目的だった。今の所、ハリー・ポッターが来た事によってつけあがっていた連中も落ち着いている。
「それで…私の名をゴブレットに入れたのは誰だ?」
リンネの寮に入った時の第一声が、これだった。珍しく騒いでいるスリザリン生達は、リンネの冷たい言葉に感化されて冷や汗をダラリと垂らし、その場で硬直してしまった。リンネの感情を読み取るのは難しい。滅多に感情を露わにしないリンネを顔色を伺うのは、ほぼ不可能なのだ。
「あぁ、別に咎めようとするわけではない。責めもしない。…手を挙げろ。嘘をついたら、すぐに分かるからな」
リンネがそう言うと、七年生やら知恵のある生徒やらが手を挙げた。すると、リンネは珍しく優しく微笑んでみせた。全ての生徒達がその美しさに無言の感激を押し通す中、リンネは言葉を続けた。
「良くやった。丁度、自分の力量を測ってみたいと思っていた所だ。思う存分楽しんでくれ、今日私は気分が良い」
「リンネ様! バタービールはいかがでしょうか!」
「バタースコッチはいかがでしょうか? あ、もう夜か…では、ファイアウィスキーでもお飲みになって、ゆっくりと休んでくださいませ」
「リンネ様〜!」
何だか新一年生達が、やけに媚びてくる。すると、袖口からナルが姿を現し、リンネに話しかけた。
『あれですよ、親が子供に、「リンネ・ゴーント様の機嫌を取れ」って言われたんですよきっと。孤児院に火をつけたのは紛れもない死喰い人ですから、情報は伝わっているはずです』
『…だろうな』
『しかも現在魔法界で最も力の強いと言っても過言ではない「シンシア家」に住み、その次期当主に気に入られているとあれば、機嫌を取りにくるのも当然の構えでしょう』
『…分かっている』
リンネがパーセルタングを話すと、一年生達は一瞬恐ろしさも感じるが、同時に感動も感じた。幼い時より洗脳のように植えつけられてきた「純血思想」。それを満たすモノが「ヴォルデモート」。根本であるというサラザール・スリザリンの血を引いているからこそ、リンネはパーセルマウスなのである。
そんな偉大な血を引くリンネを前に、少年達は崇めるしかなかった。この闇の美しさに一瞬にして囚われた今、それしか考えられないのだ。
「全ては、リンネ様のために」
…悪くない。
*
それから一週間ほど経つと、「日刊預言者新聞」の記者が取材にやってきた。
魔法省はできる限りリンネを世間の目に晒したくないようだったが、その努力は虚しく散っていった。ただ、必要最低限の情報を伏せるようにと、ファレス氏とバグマン女史に言われた。元よりそれほど目立つ気はないし、写真慣れもしていない。故に、ただの授業妨害。迷惑だ。
それでも取材は絶対に受けなくてはならない様子で、仕方なくリンネは授業の途中ではあるが、呼び出された空き教室へと向かった。
約束の場所には、既にメンバーが揃っていた。魔法省の役人と、各校長達、代表選手の二人、何故だかオリバンダー老人。そして、見慣れない二人組。
一人はチリチリに飛び跳ねた金髪に、悪魔のような長い真っ赤な爪、ゴージャスな宝石が散りばめられた眼鏡をかけており、緑色のスーツは無駄にピチピチの女性だった。彼女はリンネを見てつまらなそうな顔をした。彼女が記者なのだろう。
もう一人が、大きなカメラを抱える、小柄な茶髪の男性。恐らくはカメラマンだろう。
「おぉ、揃ったね」
バグマン女史朗らかに言う。マクゴナガルの目は、未だに悲しさと怒りで溢れているようだった。リンネに裏切られた気は、一週間経ってもどうしても晴れなかったのである。
「あぁバグマン、彼女がホグワーツの代表選手ざんすか?」
記者が尋ねる。すると、バグマン女史は大きく頷いた。
「うーんまぁ…読者の気を引くには十分な容姿ざんしょ。まぁ始めましょ。あたくしは、ミーナ・スキーター。『日刊預言者新聞』の記者。勿論ご存知ざんしょ? 貴方達を…知りたいの。読者も記事に飛びつくわ」
スキーターは気味の悪い笑みを浮かべながら、リンネの服を引っ張ってレノアとクリストの間に入れた。
まずは写真を撮るらしく、三人の代表選手を囲むように各校の校長、魔法省の役人が並んだ。リンネは真ん中だったが、とりあえず端へ行こうとすると、
「アンタは真ん中にいるざんす。読者は可愛い女の子が写真を写ってると、すぐに目が入るざんすからね。ボーバトンの選手と一緒だったら映えるでしょ。あ、でも、ダームストラングの選手が、影も形もないくらい空気化してしまっているざんすね…まぁ良いざんす」
クリストは悲しい事に、リンネとレノアの大きすぎる美貌に飲み込まれ、完全にないモノとなっていた。
写真のシャッターは眩しく、リンネは嫌悪の表情しか浮かべなかった。
その後、「杖調べ」の儀式が行われた。生徒達の杖に異常がないかを、オリバンダー老人が見るのだ。リンネは自分の杖を種類を思い出す。確か松の木に不死鳥の尾羽だったはずだ。オリバンダー老人の最高傑作を、リンネはその手に握りしめていた。
「これより、『杖調べ』の儀式を行います」
オリバンダー老人は、リンネを見て小さく悲鳴を上げた。
「ま、まずはレノア嬢からにいたしましょう」
オリバンダー老人は、レノアから杖を受け取った。雪のように真っ白で汚れのない長細い杖だった。か弱いガラス細工のような見た目で、オリバンダー老人はそれを丁寧に受け取った。
「うむ…白樺に、エルフの髪の毛、三十五cm。クセがあるが、美しい魔法に長ける。では…『アグアメンティ 水よ』」
老人が唱えると、杖先から透明な水が飛び出し、教室の床を濡らした。彼は満足そうに微笑むと、杖をレノアに返した。
次はクリストの番で、彼の杖は何だか曲線を描いており、曲げようと思ったが結局無理でしたとでも言いたげな見た目をしていた。
「オリーブに、ヒッポグリフの羽、二十七cm。うむ、中々頑固ではあるが、一度忠誠を誓うと二度とその忠実さが消える事はない。素晴らしい杖だ。『エカーズ 瓶よ』」
すると、近くの机の上に緑色の小瓶が現れた。上々、上々…とつぶやくと、老人はリンネを見て顔を歪ませた。目を合わせさえもしない。リンネの真っ赤な瞳が、老人は嫌いだった。
リンネは自分の杖を、オリバンダー老人に突き出す。その際の笑みは、老人にのみ恐ろしく感じられた。震える手で、老人は杖を調べ始めた。
「ま、松に…不死鳥の尾羽、三十cm。どんなモノよりも魔力を扱いやすい。『オーキデウス 鳥よ』」
リンネの杖先からは、赤い鳥が数羽現れ、何処かへと飛んで行ってしまった。老人は震える手でリンネに杖を返した。特にいう事はないようだった。
「皆、正常ですな」
老人は、早く帰りたくて仕方がないかのように、ソワソワし始めた。マクゴナガルは、その理由が分かった。リンネが怖いという事が、一目瞭然だったからだ。しかし、事情を知らない者からすれば、オリバンダー老人はトイレに行きたくて仕方がないように見える。
「お、オリバンダー老人? トイレならそこの角を曲がって左だけど…」
「い、いえ、そういうわけではなくてですね…」
「ねぇバグマン、儀式が終わったのなら、あたくしが取材をしてもよろしいざんすか?」
スキーターが割り込んでくる。バグマン女史は彼女が苦手な様子で、一m範囲には入りたくないようだった。それもそのはず。スキーターの名前は、リンネも知っていた。デタラメな記事をでっち上げる親子揃って最悪な記者だと。よくクビにされないモノだとも思ったが、そのデタラメ記事のおかげで新聞の伸びが上がっているのも事実。民衆とは恐ろしい。
「んー…まぁ良いわよ。あまり時間を取らないでね。この後は夕食の席があって…」
「分かってるざます。じゃあまずは…アンタから行こうかしらね、リンネ…ゴーント?」
「…はい」
リンネも、このスキーターという女に生理的に受け付けない何かを感じていた。
「じゃあ、此処は人が多いから、何処か別の場所で話すざんす」
「嫌ですよ」
咄嗟に本音が漏れてしまった。マクゴナガル先生は遺憾な表情をまだ見せていたが、リンネには同感のようだった。バグマン女史もリンネの立場になったら自殺したいほど嫌だったので、スキーターを説得してこの教室でインタビューを受ける事になった。
「『自動高速羽ペンQQQ』を使わせていただくざんすよ。こちらの方が、話やすいざんすからね」
スキーターはそういうと、赤い革のバックからメモ用紙と羽ペンを取り出した。するとそれは宙に浮き、今にも文字を書き出しそうな体勢になった。
「じゃあ、何でエントリーしたんざんすか?」
「別に私は自分でしたわけじゃないですけど…自分の力量を知るため? まぁ、単なる好奇心です」
ふと羽ペンに目をやると、こんな文字が書かれていた。「リンネ・ゴーントの血のように赤い瞳には、キラキラと星が輝いているようだった。自慢げに彼女は語った。『私の力をみんなに見せつけてやりたいんです』と」。
かなりのでっち上げ内容だった。別に目は輝いていないし、自慢しているわけでもないし、見せつけたいわけでもない。
しかし特に文句も言わず、リンネは平静を保った。
「ゴーントという名は古くから魔法界に存在する、由緒ある血筋ざんすが…孤児って聞いたざますよ」
「えぇ。詳しい事は知りませんが」
「もしご両親がご存命だったら…貴女はどうする? 自慢する?」
「別に自慢した所で何か良い事があるわけでもないので、別に何も言いませんよ。どうせ新聞で知るでしょうし」
故に、ルークに手紙を出す気はなかった。彼なら『日刊預言者新聞』を読む事が日課なので、言わなくても確実に知るだろう。後で手紙が送られてきても、知った事ではない。
「ねぇ、貴女は十七歳未満のようざんすけど…他の生徒達からの批判とかは、気にならないざんすか?」
「批判してくる人間なんて、ごく僅かですので。みんな応援してくれているので、気にしていませんよ。…もう良いですか?」
「えぇえぇ。あんまり面白い記事にはならなそうざんすけど、良いざんす」
翌朝の新聞には既に、今日の事が載っていた。代表選手のインタビューや集合写真が、新聞の一面を飾っていた。
スキーターは相変わらず嘘記事ばかりを書き、リンネは読んだ感じでは自己顕示欲の強いお嬢様のような扱いになっていた。勿論スリザリン生やリンネファン達は、リンネの写真だけを大事に切り取って、その記事を暖炉で燃やしていた。
『スキーター死すべし』
寮へ入る際の合言葉が、これになっていたのは言うまでもない。
今回は、リータ・スキーター...ではなく、彼女の娘のミーナ・スキーターが出てきました。え、リータ? 彼女は印税で暮らしていますよ。
スリザリン生の減点が少ないのは、何もやらかしていないわけではなく、狡猾故に、バレないだけです。言いがかりをつけて点数を減らす人なんて、このホグワーツにはいませんからね。スリザリンはグリフィンドールとは違ってあまり騒がないと思うのですが、流石にリンネが選ばれたとあればどんちゃん騒ぎなのでしょう。
ちなみに私は、アンブリッチ同様スキーターは好きではありません。嫌なマスゴミですな。それよりも、私はオリバンダー老人が可哀想でならない。
リータ・スキーターは、ハリー達に何か恨みでもあるのか、それともウケが良いからなのか...「ダンブルドア軍団:元団員たちの知られざる闇」という本まで出しています。
おや、ふくろうが「日刊預言者新聞」を持ってきました。どれどれ、リンネの欄は...
*『ホグワーツ魔法魔術学校』の代表選手、リンネ・ゴーントのインタビュー*
リンネ・ゴーントの血のように真っ赤な瞳には、キラキラと星が輝いているようだった。自慢げに彼女は語った。「私の力をみんなに見せつけてやりたいんです』と。何所か物悲しい瞳の奥には、自信が満ち溢れていた。本記者が調べた所によると、彼女は聖28一族に登録されている「ゴーント」一族の末裔である。
その点について尋ねると、「やっぱり血筋ですよね。私はゴーントの末裔だから、選ばれるのは当然というか? 他の奴が選ばれるなんてありえませんよ」と中傷していた。
教師方に彼女のいつもの様子を聞いてみると、真面目な優等生という印象を受けるらしい。
人物紹介
【ミーナ・スキーター】
「日刊預言者新聞」の記者。かの有名な出鱈目記者リータ・スキーターの一人娘であり、母親と同じように嘘の記事を書き続けている。
完全に親の七光りで入社したわけだが、その執念は確か。お金に目がなく、母親にプレンゼとされた愛用の眼鏡を大切にしている。
呪文紹介
【アグアメンティ 水よ】
水を出現させる魔法。単純ながら、中々難しい。少し喉が渇いた時にオススメの魔法。
術者の力量によっては、ホースのように勢い良く噴出させる事も可能。
【エカーズ 瓶よ】
オリジナル魔法。瓶を出現させる魔法。
一度杖をヒュイッと横に振ると、より透明度の高い瓶を出現させる事が出来る。
【オーキデウス 鳥よ】
鳥を出現させる魔法。大きさや色は、その杖の性質によって異なるが、基本的に青い小鳥が出現する。