Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜   作:カドナ・ポッタリアン

42 / 52
第四十二 第一の課題

 

 ホグワーツ魔法魔術学校は、興奮に満たされていた。課題が近い事で、先生方でさえも理由なくリンネに加点をしていた。口では文句をいう人間も、心では期待していた。ホグワーツ連続優勝を、皆望んでいたのだ。

 しかし、他校は面白くない。未成年のリンネを批判し、悪口を投げつけた。ホグワーツ生はリンネをいつまでも庇い、他校の生徒を睨んでいたが、あまり効果はないようだった。リンネは特に悪口も気にしていないので構わないのだが、周りの連中がそれを気にするのだ。

 

 リンネは基本、大勢に囲まれている。スリザリンの特に力の強い取り巻き達が、リンネの周りを囲っていた。シンシア家という強大な後ろ盾がある今、彼女に逆らう人間は少なくなった。

 孤児院についてだが、リンネは魔法省の人に新しい魔法界の孤児院を紹介された。しかし、ルークに自分の屋敷に住んで欲しいとしつこく言われ、リンネはシンシア家に滞在する事にしたため、断った。

 シンシア家は魔フィアの家系ではあるが、魔法省に多く貢献している一族なので、魔法省の役人もリンネを邪険にするわけにはいかなくなった。出来る限り媚を売れとバグマン女史と、派遣された魔法省の役人は上に命令されたようで、リンネにすり寄ってくる事が多くなった。取り巻きが出来る限り追い払っているのだが、ある時バグマン女史が「私のボーナスが…」という言葉を発したのをオールが聞いたらしい。

 

 そして等々、第一の課題の日がやってきた。

 バグマン女史は相変わらずリンネに課題の内容を話したがっていたが、取り巻きの説得によって諦めた。

 生徒達は朝食後すぐにクィディッチ競技場に行き、ワクワクしながら始まるのを待った。代表選手は先にクィディッチ競技場の外にある、大きなテントに呼び出された。リンネが行った頃には既に二人の代表選手と魔法省の役人達、校長方がいた。

 

「あぁミス・ゴーント、来ましたね」

 

 ファレス氏はリンネに手を振った。すると、レノアが話しかけてきた。

 

「序盤から遅刻なーんて、良い度胸してまーすね」

「別に遅刻はしていない。周りに激励の言葉をかけられて、少し遅れただけだ」

「どうでしょーうか」

 

 レノアはリンネを見下すかのように鼻で笑う。紅蓮の薔薇と純白の百合を並べたような状態で、皆両者の何人にも比べようがないほどの美しさに、ただただ酔いしれていた。

 二人の美しさに飲まれるクリストは、小さくため息をついた。すると、レノアが食ってかかる。

 

「何かご不満でーすか?」

「い、いや、別に…」

 

 女って怖ぇー、と誰かがつぶやくのが聞こえた。マクゴナガル校長がキュッと口を紡ぐと、ファレス氏が口を開いた。

 

「それでは、第一の課題を発表したいと思います」

 

 代表選手達は、ゴクリと唾を飲みこ…まなかった。リンネは別に心してかかっているわけでもないし、他の代表選手は課題の内容を既に知っているだろう。このカンニングは、所謂暗黙の了解になっているようなので、ファレス氏もバグマン女史も何も言わなかった。

 

「第一の課題は…グリフィンです」

 

 グリフィン…前足と頭は巨大なワシ、胴体と後ろ足がライオンである、生肉を食す幻の生物だ。さて、そのグリフィンをどうしろと言うのだろうか。

 

「クィディッチ競技場に、グリフィンを放出します。グリフィンの背中には、次の課題につながるヒントが箱に入れられ、鎖で縛り付けられています。皆さんには、それを取ってきてもらいます。それでは、順番をクジで決めましょう」

 

 ファレス氏は革の袋を取り出す。まず一番近かったリンネに差し出してきたが、リンネが手を入れようとするとレノアが彼女を押し、我先にと袋に手を突っ込んだ。流石にこれは教師陣も嫌悪を抱いたが、今は口には出さなかった。

 マダム・マクシームが、自分の生徒の至らない嫉妬心に羞恥を抱き、後でリンネに謝っていた事は言うまでもない。

 クリストは案外紳士的で、リンネに順番を譲った。リンネは袋に手を入れると、生暖かい空気に包まれたような気がして、手を抜くとその中には、「三」と書かれた羊皮紙が握られていた。

 

「三番目ですか」

 

 マクゴナガルが羊皮紙を覗く。怒っても仕方がないと理解したようで、努めていつも通りに過ごした。レノアは一番目、クリストは二番目だったようだ。

 

「ミス・ゴーント。もし危険だと感じたら、すぐに助けを呼ぶのですよ」

 

 他の選手がグリフィンと戦っている間、リンネは一人でグリフィンに対する戦い方を考えていた。誰とも喋らず、話しかけられても耳には入らなかった。

 グリフィンは、スフィンクス同様魔法使いが宝物を守る際に使うとされているが、その凶暴さは折り紙付き。ごく一握りの熟練魔法使いならば、これを手なずける事も出来よう。しかしリンネは学生だし、相手は幻の生物とも言われる凶暴な奴だ。下手すると食われる。

 グリフィンと馬が交尾をすると、「ヒッポグリフ」が誕生する。要は親戚というわけだが、何方も危険な事には変わりない。一体どうやって倒そうか。

 

 すると、ボロボロになったレノアがテントに戻ってきた。テントの外は歓声で溢れ、解説をしているバグマン女史の声はかすれていた。こんなにうるさかったなんて、リンネは今まで気付きもしなかった。

 レノアはテントの中に設置されたベッドに横になる。慌ててマダム・ポンフリーがかけつけてきて、彼女の治療を始めた。バグマン女史の声が響く。

 

『ブランシャール選手! 見事、次の課題へのヒントを手に入れました!! しかし、酷い傷を負っています! 審査員の得点はァア?!』

 

 得点制という事は、時間、術の洗練度、状態なども踏まえて競技が行われるという事か。リンネは、レノアがどうやってグリフィンから次の課題へのヒントを奪ったかを、知りたいとは思わなかった。レノアは起き上がりざまにリンネを見て、フンと鼻で笑った。

 顔も擦り傷だらけ、腕からは血が流れているのに、よくもまぁそんな事が出来るモノだ。却って凄いと思う。

 

 次はクリストの番だった。彼は特に秀でた点のないごく普通のーーしかし成績は優秀なーー生徒だ。それなのに何故ゴブレットに代表選手として選ばれたのか、リンネはスリザリン生に調べさせた事があった。

 結果はというと、クリストは「守護霊の呪文」に特化しているというのだ。それは吸魂鬼(ディメンター)に限らず、敵に襲い掛からせる事の出来る素晴らしい出来栄えだという。リンネは守護霊を作り出せない事はないが、作る必要などない。自分の側に属する者を脅かす存在だ。それを強い効力を持ってして使うとあらば、クリストは嫌悪の対象だった。

 きっと、グリフィンからヒントを奪う際も、「守護霊の呪文」を使うのだろう。リンネはこの呪文の凡庸性をそれなりに理解していた。敵に襲い掛からせるだけでなく、伝言を伝えたり、危険を知らせたりしてくれる便利な魔法なのだ。まぁ、代わりはいくらでもあるから構わないのだが。

 リンネが考え事をしてしばらくすると、クリストが戻ってきた。彼は傷を負ってはいないが、酷く憔悴しているようだった。レノアは包帯を巻きつつも元気になっており、マダム・ポンフリーは、今度はクリストを治療し始めた。

 レノアは自分の点数を見ようとベッドから飛び降り、リンネを見て嫌味ったらしく笑った。

 

「貴女が私に勝てるはーずが、ありませーん」

 

 自信過剰なお姫様は、周りの制止も聞かずにテントの外へと飛び出して行った。別にリンネは怒ったり落ち込んだりはしない。後で痛い目見るのはあっちなのだから。

 魔法省の役人がテントの中に入ってきて、解説のバグマン女史に合わせて入場をお願いしますとだけ告げて、去って行った。

 リンネは小さくため息をついて立ち上がり、杖を抜いてテントの出口で立ち止まった。闇の魔術を使ってはならない。杖以外のモノは持ち込めない。十八番が使えないとすると…仕方ない、か。

 

 バグマン女史の声が聞こえた。

 

『それでは皆さんお待ちかね! ホグワーツきっての秀才であり美少女、ホグワーツ魔法魔術学校代表選手リンネ・ゴーントの入場です!!』

 

 リンネは魔法でテントの出口をバッと開け、会場へと足を踏み入れた。美しい少女の登場に競技場は歓声という名の爆音に包まれた。特にスリザリン生は、いつにも増して激しく興奮している。いつもは大人しい生徒達が騒いでいる。

 ホグワーツだけではなく、ボーバトンやダームストラングにもリンネの虜となった者はいた。彼等のまた、周りの言葉など聞かずに騒いだ。

 

 競技場の真ん中ーー青々とした芝生の上には、白金の体を持った美しい生物がいた。神話に登場する幻の生物は、今リンネの瞳の中に写っていた。もう試合は始まっている。観客席の方には、被害が及ばぬようにと強力な守りが張られている。

 リンネは、グリフィンの青い瞳を見つめた。グリフィンも、リンネの赤い瞳を見つめた。引き込まれるような秀麗さは、観客そのものを飲み込んでいた。バグマン女史も実況をする事を忘れ、ただ見つめ合う二つの魂に心を奪われた。

 

 リンネは杖を持ちつつも、ゆっくり、ゆっくりとグリフィンに近づいた。グリフィンはその場から少しも動こうとせず、リンネの瞳だけを真っ直ぐに見つめていた。

 あっという間に、リンネとグリフィンの距離は縮まった。もうほんの数メートル。もしグリフィンがその気になれば、美味しそうな肉を食べる事が出来る。しかし、グリフィンはそんな事をしなかった。

 噛みつこう所か、ゆっくりと頭を下げたのだ。ヒッポグリフと同様、グリフィンも頭を下げたのだ。

 ヒッポグリフは、相手が敬意を示せば自らも敬意を示す。それとグリフィンは似て異なる存在ではあるが、こんな場面は誰も見た事がなかった。熟練のグリフィン使いでさえも、グリフィンが人に敬意を示すのを初めて見たのだ。

 

 そんなグリフィンの様子を見て、リンネは満足げに優しく微笑んだ。その魔力は会場全体を包み込み、全員の朝食に惚れ薬を仕込んだかのように、ウットリとした雰囲気に仕立て上げた。

 リンネはグリフィンの嘴を撫でた。ツルツルとした金色の嘴、綿のような銀色の毛並みーー剥製にして飾っておきたい美しさを備えたグリフィンの瞳は、今や紅蓮に染まっていた。

 

「グリフィン、最初私はお前を殺すつもりだったが…綺麗な生物だったから止めたぞ。背中の箱を寄越せ」

 

 すると、グリフィンは小さく鳴いて、背中に鎖でくくりつけてあった宝箱を地面に落とした。

 リンネは「良い子だ」と言って宝箱の方まで行き、その厳重な蓋を開けた。そこには、貝殻のような装飾が施された光り輝くガラス細工があった。光っているという事以外は、ごく普通のガラス細工。一体これが、何のヒントになるというのだろうか。

 

『最年少のゴーント選手! 最短時間で次の課題のヒントを獲得! しかもグリフィンを手なずけた! ゴーント選手は並外れた才能を持ち合わせているようだ! グリフィン使いが無茶苦茶興奮してるッ、あ、ちょっとーー観客席から飛び出さないで』

 

 リンネの結果には文句の付け所が全く見当たらなかった。故に、審査員全員が満点を提示し、リンネの口元には何よりも不敵な笑みが浮かび上がった。




今回は、リンネがグリフィンを手なずける回です。リンネ的には、グリフィンは綺麗な生物だとは思うけど、グリフィンドールを連想させるからあまり馴れ合いたいモノではない...といった感じ。
ちなみに魔法省は、まだそれなりに腐っています。ゴーントは聖28一族ですが、リンネと親しくなれと命令されている役人は、それだけしか知らされていません。しかし本当は、魔法省の上の人はゴーント=ヴォルデモートの一族という認識です。保護でもあるし、何かをしていないかの見張りでもあります。ハリーの事もありますし、闇祓いだけでは不安なのでしょう。

ボツ案
① グリフィンをぶっ殺す。
リンネがついつい闇の魔術を使って、本性がバレてしまいそうなのでボツ。

② リンネ八百長疑惑。
バグマン女史は、かなりの賭け好き。勝つためならどんな手でも使う。でも、リンネのキャラに合わないのでボツ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。