Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜   作:カドナ・ポッタリアン

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第四十四 才能と髪の毛

 

 リンネは兎も角して、ダームストラング代表選手であるクリスト・ジェイコフは、ダンスパーティのパートナー探しに苦労していた。クリストには、特に秀でた点は見当たらない。平均的な容姿、平均的な才能、平均的な知性ーー完全にお店の標本のような見本で、ダームストラング校の選ばれた生徒達の中で、最も劣る生徒だと皆答える。

 ゴブレットに選ばれるわけがないと、ダームストラングの生徒達はクリストの事を馬鹿にしていた。しかし、いざゴブレットから出てきた名前はクリスト・ジェイコフだったのだ。ダームストラングの生徒達は寄ってたかって不正だのおかしいだのと騒ぎ立てたが、校長が一蹴したらしい。

 おまけにリンネとレノアの影に隠れてしまい、新聞でも全く取り上げられなかった。

 

「クリスト・ジェイコフ? 彼はとても才能のある生徒だよ」

 

 ダームストラング校長であるメイツキー・ウィスプは、自分の従者として連れてきた弟、チェイスにそう語る。大船の船長室にある大きなソファに寝転がり、片手にはワインを握っていた。彼の弟はそんな傍若無人な態度の兄を前に、ただため息しか漏れなかった。

 

「兄さん、その格好は良いとして…あのジェイコフが才能のある生徒? そんな馬鹿な。確かに彼はゴブレットに選ばれたけど、あの平均過ぎる生徒に才能ねぇ…」

「チェイス、君には人の才能を見抜く能力がないね」

「僕はどっちかって言うと、ボーバトンの選手が一番才能がありそうだな。ホグワーツの代表選手は可愛いし優秀だけど、僕は美人系の方が好みだなぁ」

 

 メイツキーはそれを聞くと、深く眉間に皺を寄せた。

 

「代表選手達はとても優秀に見えるが、実際レノア・ブランシャールは代表選手の中でも一番才能がない。容姿は良く、魔力も高い。だがそれだけの女だ」

 

 チェイスは自分が馬鹿にされていると思い、無言で癇癪を立てる。メイツキーはそれでも弟には目も向けず、グラスに入ったワインを飲み干した。

 

「クリストの才能は素晴らしい。これからの試合で露見されるかは知らないけどね。問題はさ、リンネ・ゴーントなんだよ」

「あぁ、ホグワーツの代表選手? うん、幼い風貌はまだ残してる感じだけど、グリフィン手懐けたくらいだから、相当な強い力を持ってるんだね」

「彼女が持っているのは、『強い力』だけじゃない。血筋、容姿、魔力、才能、人望ーー申し分ない女だ。しかも、由緒正しい家の出。孤児はあるが、今の世では珍しい純血。それに、恐らくヴォルデモート卿と同じ血が流れている」

 

 校長は薄気味悪い笑みを浮かべ、グラスを天井のライトに透かした。その目は闇に覆われ、光が完全に失せている。

 

「ヴォルデモート卿の復活。見てみたいと思わないか?」

 

 *

 

 男子にとって、「女子を誘う」というミッションは最難関のものだった。イギリスの淑女は、自分から相手を誘う事は少ない。故に、ダンスパーティに行きたければ男子を待つしかないのだ。

 しかし、女子はグループ行動が基本。彼女等の冷たいクスクスといった目線を回避するためには、一人きりを狙うしかない。ホグワーツの人間は、それほどまでに勇敢な者ではないのである。

 ただ、スリザリン生はリンネに感化されて、生徒会のメンバーを挙って誘いまくっていた。それはリンネからナインへの命令を多くの人間が盗み聞きしていた事でもあるし、リンネが満足すると考えたからだ。

 

「リンネ様の影響力は凄いですね」

 

 談話室で本を読むリンネの隣で、オールは呆れたようにため息をつく。リンネは顔を上げて、緑色の談話室を見回した。

 皆自分の誘ったパートナーについて話している。下心なしに、完全にリンネへの忠誠心が出た結果だ。特に迷惑でも何でもないが、反スリザリン派が牙をむく。特にパートナーの出来ない連中が。そこ等は放置で良いだろうが、数日は背後に気をつけた方が良い。

 

「そうか? 私は何も言っていないがな」

「無言の命令ですよ。その綺麗な赤い瞳を見ると、リンネ様が望んでいる事が分かるような気がするんです」

「同感だ。私もお前等を見ると、考えている事が分かるぞ」

 

 実際は相手にバレない「開心術」なのだが。しかし実際、この赤い瞳に何人の人間の心が堕ちてきた事か。

 

「じゃあ、今僕が考えてる事分かりますか?」

「うーん…『オール超ウケるwwwあの眼鏡地味子と行くとか超ウケるんだけどwww』」

「何で…!!」

「双子のくせに仲が悪いな」

「そんなもんですよ。双子って」

 

 そんなもんなのか? 双子って。

 ナインの姿が見かけない。オールに聞いてみると、今現在地味子と交流を深めているらしい。地味子はすっかりナインの虜のようで、一日に三回は必ずイチャついている所を見かける。元々女誑しだから、誰も気にしていないが。

 

「知ってるかオール。サラザール・スリザリンは禿げていたらしいぞ」

「何故唐突に…そうなんですか…?」

「先代も破げてたからな…私も髪薄くなるのかな…」

「まだ髪の毛の心配はしなくて大丈夫ですよ。魔法育毛剤もありますし」

「何で先代それ使わなかったんだろ…?」

 

 曰く、先代のヴォルデモート卿は、禿げ頭、蛇顔、ガリガリ、唇無しという、色男台無しのあられもない姿となっていたらしい。リンネはそんな状態だけは、絶対に避けたかった。容姿に自信を持っている身として、あんな顔にはなりたくはなかった。手始めに若くして禿げ始めるかもしれない。先代は言うまでもなくツルッ禿げだ。

 

「そ、そちらの方が、威厳があり、威圧しやすかったのではないですか? 僕としては、綺麗な顔で睨まれた方が言う事聞きたくなりますが」

「そうだな。まぁ、先代は慕っているが、あの顔だけは慕えないな」

「あはは…」

 

 今此処で下手な事を言えば、リンネに殺されてしまう。リンネは先代のヴォルデモート卿を、心から慕っていた。統率力、才能、魔力ーー全てが輝かんばかりに黒く染まっており、まさに闇の魔法使いの鑑のような人物。

 リンネはヴォルデモート卿を超越したい。しかしスリザリン一族の血筋が禿げる血統だとしたら、容姿面でこれから苦労するかもしれない。

 

「今のうちに、『毛髪増量呪文』を開発しておこう…オール、メモしておけ」

「はい!」

 

 オールがメモ帳に書きこんでいる間に、リンネは自分の髪をいじり始めた。髪量は多いけれど、人よりも一本一本太いけれど、やはり心配だ。髪の毛。

 

 




髪の毛は大事です。ヴォルちゃんもサラザールもツルッ禿げだったので、リンネは髪の毛の事を心配しています。女の人はあまり禿げませんが、やっぱり心配しています。

【チェイス・ウィスプ】
メイツキー・ウィスプの弟で、従者。一度忠誠を誓った者にはどんな命令でも従う従者の鑑。美人が好き。
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