Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
先ほど、オールに不可解な事を質問された。
不死への興味? 確かに将来闇の帝王として君臨するためには、最強であり無敵、死を克服した神と等しい存在にならなくてはならない。しかし先代は生に縋りすぎた故に終わりを迎えた。先代が如何にして死を克服しようとしたのは分からないが、同じ手段を使うのは出来るだけ避けたい。その点もまぁ、調べた方が良いだろうが。
いくらリンネでも、死の呪文をぶっ放されれば死ぬ。大量に出血すれば死ぬ。窒息すれば死ぬ。そう、完璧ではないのだ。
『ご主人様、どうしたのですか?』
ベッドに寝転がって考えていると、リンネの足首にナルが巻きついてくる。
『死について考えていた』
『まだ早いんじゃないですか?』
『いや…オールに、不死に興味はないのかと聞かれてな。確かに不死は魅力的ではあるが、私が目指すのは先代を越える事であるから、不死になる必要性もないような…』
『そこは世界征服目指しましょうよ』
ナルは軽く言うが、先代でもイギリスを一時期牛耳るだけで精一杯だったのだから、もっともっと力を蓄えなければ、世界征服など出来るわけがない。世界を敵に回すのだから、今の内からも各国にパイプを繋げておかなければならないな。そのためにも、このトーナメントでーー
『…ナル、お前は私が不死になったら、お前も不死になってくれるか?』
『そりゃあ勿論。私常に、ご主人様と一緒におります。ずっと一緒です。命ある時も、消えゆく時も尚』
『そうか。良かった』
『あれぇ、デレ期ですかぁご主人様〜?』
『殺すぞ』
命ある時も消ゆく時も尚…か。かつての闇の帝王は、人々を恐怖で操り、陣営を築き上げた。だからこそ、最後の最後で裏切られた。そのような事はないようにしなくては。
恐怖政治では何も生まれない。力で人々を従えても心は離れ続ける。もっと別の方法で人の心を掴まなくてはならない。
「まぁ、今考えてもどうしようもないがな」
そういうとリンネは目を閉じた。
*
フッと目を開けると、そこはいつもの寮の部屋ではなかった。辺り一面が黒の世界だが、自分やベッドの姿は見る事が出来る。此処は一体何処だろうか。
少し辺りを見回してみるも、家具もナルの姿も見えない。ただ漆黒が続くだけで、それ以外には何もない。夢の中なのかもしれないな。
リンネは小さくため息をついて、ベッドから降りた。脱いだ靴がないので裸足だが、黒い地面は全く冷たくない。寧ろ何も感じる事が出来ない。
大きく伸びをして、彼女は歩き始めた。このままベッドの上で寝転んでいても、何もならない。
「夢の中ならば…何でも自分の思い通りになる、か?」
その場で立ち止まり、試しにお洒落なソファを想像してみた。
好奇心と共に目を開けると、リンネは顔をしかめた。そこには心地良いソファではなく、真っ白な肌に細く赤い瞳、ナイフで切れ目を入れたかのような鼻を持ち、唇のない口を持った黒いローブの不気味な男が立っていたからだ。
「…貴様、何者だ」
「俺様を事を知らないというのか? 我が思想を持った継承者よ」
不気味な男は、舐めるような声でリンネに話しかける。
「まさか…ヴォルデモート卿?」
「いかにも。…ふむ、敬意を示そうとは思わないわけだな?」
「私は卿を尊敬はしているが…それはあくまでも越える存在として、だ」
目の前の男は、自分が聞いた先代の姿に酷似していた。しかし、肖像はあまりの恐ろしさに残されていない。リンネは姿をみた事がないのだから、本当にこれが先代とは限らない。
「それで…一体何用だ先代」
「お前が『不死』について考えていると聞いてな。アドバイスを授けに来た」
「待て。”聞いた”とはどういう事だ。貴様は死んだはずだろう」
「あぁそうだ。俺様は死んだ。あの憎きポッターに殺された。しかし俺様は今、こうしてお前の前にいる。夢の中だけではあるが、お前の前に立つ事が出来る」
「まずはその容姿をどうにかしろ。少々気分が悪い」
リンネがため息混じりにそう言うと、先代は少々顔をしかめて杖を抜いた。彼がブツブツと何かをつぶやくと、先代の容姿は見る見るうちに別人かと思うほど豹変した。
黒い髪、凛々しい顔立ち、赤い瞳ーー先ほどの面影は全く感じられない。
「夢の中なのに、魔法を使うのか?」
「あぁ、若い体は気分が良い。容姿を変えたから、口調くらいも戻そう。なぁリンネ」
「質問に答えろ」
「此処はあくまでも、君の頭の中だ。僕が勝手に色々と出来るわけじゃない」
「…貴様は、生きているのか?」
彼女の問いに、若返った先代は少し悩んだ様子で答える。
「生きているけど、死んでいるようなものだ」
「何方だ」
「僕は、君の中にいるからこそ生きられる。しかし君の目から物を見る事しか出来ないけれどね。僕は死んでしまった。しかし、『・・』という言葉があってだね」
「…」
「まぁ、詳しくは今度教えてあげるよ」
先代は嫌味な作り笑顔を浮かべたままリンネの頭を撫でる。しかし、その態度が気に食わなかったのか、彼女は舌打ちをしてその手を振り払った。
「変態め」
「魔フィアの男や蛇だって変態だろ」
「初対面の人間に触れられるのは寒気がする。近寄るな。半径一メートル範囲に入るな」
「手厳しい娘だ」
それにしても、姿を若くしてからはすっかり性格も口調も変わってしまった。あの「俺様」という小者感は一体いつから発動したのだろうか。
「そういえば、何故貴様はあのようなキモい顔になった」
「キモいって…まぁ自覚はしているけど口には出さないでもらいたいね。これでも最高の美青年と謳われたほどだから。君も僕に似て、とても美しい姿を持ってるよ」
「嬉しくない。というか、容姿に関して蛇顔に似ているなど言われたくない」
確かに、ナルやルークを平気で打ち負かすほどの美形だ。しかし将来あのような頭と顔なのだから、似ているとはあまり言われたくない。お互い血縁という事しか知らないが、同じパーセルマウスだけあって、流れている血は濃いのだろう。
「僕の容姿は…そう、『不死』に関係がある事だ」
「一体どんな禁術を使った」
「『
「分霊箱」といえば、少しだけ読んだ事がある。図書室の闇の魔術に関する禁書に、存在だけ書かれているだけだ。調べてみれば、人を殺して魂を引き裂く事でそれを別の物に移し、全ての魂を破壊するまで死ぬ事がないという代物。
完全なる「不死」ではないが、永遠にこの世界に君臨する程度は出来るものだ。
「私は『不死』に興味はない。ただ貴様を越えるだけだ」
「越えたらどうするんだい? 世界征服? やるなら僕も全力でサポートするけど」
「それはまだ考えていない。しかし、イギリスだけでなく世界を支配してこその超越者であろう?」「そうだね。何だか気に食わないけど、仕方ないか」
先代は無邪気に笑う。目が覚めたら、先代の写真を探してみよう。もしくは絵を。もし違ったらそれまでだ。もし本当に合っていたら…正直寒気がする。自分の中に変態が一人潜んでいるなんて嫌だ。
しかし何方にしろ、先代は「分霊箱」を用いていたのは事実だろう。というか、今となってはそれ以外は考えられない。
「おや、時間みたいだリンネ」
「気安く名前で呼ぶな」
「君はポピュラーな名前じゃなくて羨ましいよ」
「そうだな厨二病」
捨て台詞を吐いて、リンネはそのまま瞳を閉じる。
次に瞳を開けたその場所は、スリザリン寮の自分の部屋のベッドの上だった。