Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜 作:カドナ・ポッタリアン
「「ま、末裔?!」」
間の抜けた二人の少年の声が、コンパーメントの中で響いた。
うるさい、とリンネは顔をしかめると、ナルが話しかけて来た。
『ねぇねぇご主人様、彼等に話してしまっても大丈夫なのでしょうか?』
『何れ分かる事だ。それに、かの有名な伝説であり最強の魔法使い、ヴォルデモート卿の血縁だと分からせておけば、少なくとも恐れるものだろう?』
リンネはフンと鼻で笑うと、ナルのスベスベした皮を撫でた。
しばらく、このコンパーメントは静まりかえっていた。
リンネは、彼等と特に話す事も、話すつもりもなかったので、「パーセルタング」以外は口に出さなかった。
そして、ついにその静寂を破ったのは車内販売のおばあさんだった。
「車内販売はいかがですか?」
白髪でしわの多い、幸せそうなふくよかな笑顔と体型。
優しい老人女性の理想像とも言うべきか。
おばあさんの引くカートには、見た事もないような大量のお菓子やジュースが詰め込まれていた。
彼女は、コンパーメントのドアを少し開けて話しかけてきた。
すると、ナインは言う。
「り、リンネ様は何か食べられますか?」
「いらない」
「じゃあ、『蛙チョコレート』を三つと、『かぼちゃジュース』三本、『百味ビーンズ』を五箱」
ナインはドアを全開にすると、おばあさんにそう言った。
「1ガリオンと7シックルだよ」
「はい、ども」
ナインは、オールに菓子とジュースを投げ渡して座った。
そしてリンネに「かぼちゃジュース」を一本渡した。
「ずっと飲まず食わずだと、お腹減りますよね。いらなかったら、飲まないでも全然大丈夫ですよ?」
「...」
リンネは無言でジュースを受け取った。
さて、此処で魔法界の単価の紹介だ。
魔法界の単価は、ガリオン、シックル、クヌートがあり、1ガリオンが17シックル、439クヌート。1シックルは、29クヌートだ。
ガリオンは金貨、シックルが銀貨、クヌートが銅貨だ。
「り、リンネ様、リンネ様は、どの寮に入られるおつもりでしょうか?」
どうにか話題を切り出そうと、オールが聞いて来た。
ホグワーツの寮は四つあり、それぞれ四人の創設者の名前から分けられている。
グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、そして...スリザリンだ。
蛇を膝に乗せ足を組み、真っ赤な瞳を持つリンネに、その質問は寧ろヤボだと言える。
「貴様は馬鹿なのか?」
「あ、はい...そうでしたね、スリザリン寮ですね」
「フン...」
リンネは外方向くと、ゆっくりと目を閉じてナルを撫でた。
**
ボーっという大きな汽笛の音が鳴り響き、汽車はブレーキをかけて止まった。
既に、学校のローブに着替えている。
ナルは、リンネの袖からスルスルと入り、服の中に収まった。
「此処が、ホグズミード駅...」
汽車から一人で降りたリンネ。
荷物は置きっぱなしでも良いらしい。
汽車は、「ホグズミート駅」に到着した。
ランプと汽車の窓から漏れ出る明かりで照らされる駅は、嫌に薄暗かった。
「イッチ年生(一年生)! イッチ年生はこっちに集まれや!」
駅の一番端っこでは、髪も髭もモジャモジャの、ランプを持った大男がいた。
大男の斜め左奥には、青白い月明かりに照らされて妖しく輝く、大きな城の塔の一つが見える。
「ほら早く!」
大男の声が、漆黒の闇に木霊した。
リンネは彼に向かって歩き始めた。
彼女は大男を見た。すると、大男はリンネの真っ赤な目を見つめた。
「お、お前さん...!!」
「フッ」
顔を青ざめて息を飲む大男を見て、リンネはニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
「い、行くぞみんな!!」
大男は急いで叫んだ。どうしたのだろうと、周りにざわめきが走った。
途端に、汽車の中から黒いローブを着た魔法使いが数人降りて来た。
「九と四分の三番線」で見た連中と、同じような奴らだった。
「ハグリット、まだ全員が降りて来ていないのだけど」
怪しい魔法使いの一人が、大男...ハグリットに耳打ちした。
それを聞いたハグリットは、冷や汗をかきながらも彼に訴える。
「だ、だがよアル。あいつが...」
「うん、分かってるよ。でも僕等がいるから大丈夫。安心してハグリット」
魔法使いは、リンネの方をチラッと見た。
その瞬間、視界の中にはリンネ以外真っ黒になった気がした。
リンネも、その真っ赤な目で魔法使いを見据えた。
紅蓮の瞳に魅了され、引き込まれていく魔法使い。
血のように冷たい彼女の瞳は、彼を虜にした。
視覚以外の全ての感覚が遮断され、彼女の瞳を見つめる事しか出来ない。
あぁ、あの瞳以外に美しいものが、この世に存在するだろうか。
「アル、アル!」
ハグリットが、魔法使いの肩を強く揺らした。
その途端、彼の全ての感覚が戻って来た。
もう一度、魔法使いはリンネの美しい瞳を堪能すべく彼女を見たが、既に目を閉じていた。
落胆した彼は、初めて自分が大勢の生徒からの視線を受けている事に気がついた。
「あ、行っても良いよ」
それだけハグリットに告げると、彼は小走りで何処かへ消えてしまった。
一年生は、ハグリットに促されて大きく広がる湖で、ボートに乗り込んだ。
ボートは勝手に動きだし、水面を震わせながら、美しい城へ向かって水の上を滑り出した。
リンネは、湖の中に大きなイカのような陰を見たような気がした。
しばらくすると、巨大な城が姿を露にした。
城の根元には、真っ白な大理石が見えた。
歴代最高の校長であり、ヴォルデモートが恐れた唯一の人物である偉大な魔法使い、アルバス・ダンブルドアの墓だ。
リンネは、まだそれが何なのかを理解していない。ハグリットは墓を見ると涙ぐんだ。
ボートから降りると、目の前には尖塔の立ち並ぶ壮大な城があった。
ハグリットはその城の正面玄関の巨大な樫の扉を開けた。
この一年生の集団は、好奇心とワクワクにかき立てられる生徒でいっぱいいっぱいだった。
中は、天井の高い玄関ホールが広がっていた。
左右には、甲冑の鎧がたくさん並んでいた。
「こっちだ、みんな」
ハグリットは、玄関ホールの右手にある両開きの扉の前で、城内に圧倒されている一年生達に向かって手を振った。
「ええかみんな?」
全員が彼の前に集まると、彼は言った。
「今から、『組み分けの儀式』が始まる。知っているとは思うが、組は四つだ。グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリンだ。あ〜、ちょっと待ってろ」
ハグリットはそう言うと、スタスタと扉を奥へと消えていった。
途端に、一年生達にはお喋りの渦が巻き起こった。
『ご主人様は、孤独な一匹狼ですか?』
『どういう意味だ、ナル』
リンネは一人(と一匹)で石の壁に背中をつけ、生徒達を眺めていた。
他の一年生は、最低二人で固まっている。
オールとラインは、気まずそうにこちらをチラチラを見て来る。
『ね? 独りでしょ? 孤独でしょ?』
『私は友人など作らない』
『作れないだけでは?』
『友情というのは、感情の一つであり、簡単に捨てる事が出来る。つまり、広い友情も狭い友情も...深さは同じだ』
『どうだか』
リンネはナルの言葉を聞いてフッと笑うと、仲良く喋っている一年生を見下ろした。
『見ろ。あんな見せかけのみの友情や愛情など、脆くて壊れやすい。もし命の危機に直面したとしたら、相手を犠牲にでもして自分を助けるだろう。それが人間だ』
『...そんな事ないですよ。私は、自分の命を犠牲にしてまでご主人様を守る覚悟があります。そして、貴女様がどんな道を進もうとも、私は着いて行きます』
『それは当たり前だ。お前は私のペットなのだからな』
『だ・か・ら! 私はペットじゃないですってば!』
ナルが叫ぶと、ハグリットが扉を向こうからチマチマと出て来た。
「よしみんな! 『組み分けの儀式』の準備が整ったぞ! さぁさぁ、入った入った!」
ハグリットは、両開きの扉をバンッと大きな音を立てて全開にした。
今回は、リンネ、汽車に乗るのお話でした。
ナインの紳士的な所が印象に残りましたねー(笑)
ちなみに、彼に貰ったあの「かぼちゃジュース」は、リンネは飲みませんでした。代わりにナルがこっそり飲みました。
さて、そろそろ終わr...え? ハグリット? 紹介しろと? ん、あの魔法使いは何なんだって? まぁまぁ...
【ルビウス・ハグリット】
本作品では、あまり重要人物ではない森の番人。
巨人と人間のハーフで、モジャモジャ髭。背はもの凄く高い。
愛犬ファングと共に、日夜生徒達の安全を見守っている。
あの魔法使いは、後々紹介する事になるでしょうね。
さて、今回リンネちゃんの「THE 魔眼」が発動されました。おー怖い怖い。