Nightmore named the blood relative 〜新たな「闇の帝王」となった少女〜   作:カドナ・ポッタリアン

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第五十 感情

 

 人は常に自由を求める生き物である。しかしそれは、人だけには留まらない。

 鳥も魚も、獣も魔法生物もーー生きるからこそ自由を求める。自由こそが生きる者の真の核なのだ。だからこそ私は自由でありたい。自由に好きに飛び回りたい。自由にご主人様について回りたい。

 

「それがお前の言い分か」

「はい! その通りでございます!」

「よし、磔をかけてやる。そのまましゃがんで土下座して私の靴を舐めながら請え。ほら、リピートアフターミー、『磔の呪文をかけてくださいご主人様』」

「どんなドMですかリンネ様、それより、ナル様を責めないでやってくださいませ。全てリンネ様の事を想ってなのです」

 

 ナルが今にもそれをリピートしようとしていた所にオールが割り込んでくる。「磔の呪文」をかける気満々だったリンネは杖をそのままオールに向け、目を細めた。

 

「くだらない。茶番は嫌いだ」

「リンネ様、嘘をつくのは止めてください。本当は十分以上経っても誰も気づいてくれなかったから、拗ねてるんでs「『クルーシオ 苦しめ』」ぎゃあああ!」

 

 平気だ、本気は出していないと、倒れたナインをリンネは見下ろす。そう、決して自分の機嫌を取る大会について難を申しているわけではない。ただ、ただそこにいたのに中々気づいてくれなかったのがちょっと悔しかっただけだ。

 とりあえず腹いせに軽く「磔の呪文」をかけてやったので、満足してリンネは近くの椅子に座る。

 

「べ、別に、拗ねているわけじゃないからな...! あの楽しそうな輪の中に入りたいなぁなんて、絶対に思ってなかったからな...!」

「ご主人様、隠さなくて結構ですよ」

「そうですよリンネ様。あ、バタービールどうぞ」

「あぁ」

 

 とりあえず倒れるナインの上に足を乗せて、近くの生徒からバタービールを受け取る。まだ入れ立てで温かい。

 

「リンネ様、結構バタービール好きですよね」

「そうだな。私は甘い物が好きだし」

 

 すると周りにいたスリザリン生達は顔色を変え、何処かに行ったかと思えば、すぐさまお菓子を抱えて戻って来た。いや、甘い物が好きだとは言ったが、お腹いっぱい食べたいわけではない。

 太るし。いくら魔女と言ったって食べすぎたら太るし。この美貌を脂肪やら炭水化物やらで消したくない。...が、リンネはいくら食べても太らない体質だ。

 

「丁度腹が減っていた頃合いだ。気が利くな」

『ッし!』

 

 少し褒めてやれば、生徒一同がガッツポーズを決める。随分と懐柔されたものだ、スリザリンも。

 従順な下僕というよりかは、多少上下のある仲間...というような空気も感じる。リンネは正直、堅苦しい形式ばった組織よりも、このような笑顔でいられるようなものも好きだ。仲間内だけの幸せ、とは言わないが、リンネが自分だけの幸福を祈るのかといえばそうでもない。

 自分の中で、自分が矛盾しているような気がする。

 

 彼等と一緒にいると、どうも自分の中の歯車がおかしくなる。

 彼等と一緒にいると、どうも楽しく覚えてしまう。今までになかった感情が芽生えてくる。

 先代が成し得なかった事を達成させんと画策しているというのに、自分の中で何かがそれを阻んでくる。さして何かを憎むわけでも、愛するわけでもない。ただひたすらに、存在意義を求めているだけなのかもしれない。

 

「ご主人様、どうかなさいましたか?」

「...いや、何でもない」

 

 しかしそれを口に出すわけにはいかない。

 皆、リンネの野望あってこその忠誠だ。迷いを見せてしまえば、それは仇となり、隙となる。ハリー・ポッターがいないからといって安心出来るわけでもない。本心を口にするのはまだ早い、か。卒業までには、全て決めてしまおう。

 

「リンネ様、何か不安事がございましたら、包み隠さず我等に教えてくださいませ。どんなものであっても、親身に相談に乗ります故」

「そうですよ、ヴォルデモート卿。我々は貴女様に忠誠を誓っております。それが消える事はございません」

「貴女様は一人ではありませんから」

 

 そう言って、皆ワラワラとリンネの周りを囲む。何だろうか、この込み上げるような気持ちは。

 リンネの表情に何ら変化はない。ただ、心は何故だか揺れていた。彼等の言葉一つ一つが少し嬉しくてーー嬉、しい? 

 誰かの言葉に喜びを感じるなんて初めてだ。

 それにしても、随分と頼もしい味方が増えたようで。これならばこれからも安泰といえよう。仮に何かしら事件が起こっても、スリザリン一同で揉み消せば何とかなるし。

 

 この頃、スリザリンの学力水準が上がってきた。

 リンネが定期的に勉強会を開いているからでもあるだろうが、将来ホグワーツを卒業してからリンネに認められ、共に動くためには知識を身につけ、魔法の力を強めなければならないと皆が思っているからだ。おかげで寮に得点が溜まるは溜まる。他寮も負けじと張り合おうとしているが、リンネパワーには敵うまい。

 というわけで、リンネは皆に話しかける。

 

「そういえば、宿題は終わったか? 確か週末だからレポートが多かったはずだが」

『...』

 

 黙り込まれた、どうやら何も手をつけていないらしい。

 いつもならば苦言を申し立てる所だが、今日は自分を祝おうと集まってくれたのだ、文句は言うまい。

 

「ならば良い、さぁ、早く甘い物を持ってこい。今日はやけ食いをしたい気分だ」




リンネのデレ回。
前に比べて、リンネの表に出る感情が増えてきました。スリザリン生達は純粋にリンネを応援していますし、彼女もそれを嫌だとは思っていません。
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