Fate/Zero/Over   作:ふふん

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Fate/Zero/Over

 一月の中旬、アインツベルン本城にて。アイリスフィールは、城の中を歩いていた。

 特に目的はない。昼食後に、少し重くなった腹を軽くするための、ただの散歩だ。あえて、そこを歩いていた理由をつけるとするならば。外出して、凍えながら歩くのは非常に馬鹿馬鹿しかった、その程度。つまりは、何のことは気まぐれ、昨日までそうであり、明日もそうであるだろうというだけ。

 歩き慣れた自宅を散策し、小さくあくびをしながら歩く。心なし、周囲を重要に、瞳に納めながら。

 はっきり言ってしまえば、この場所には大した思い入れはなかった。しかし、そこは愛する夫――切嗣との時間を過ごした場所であり、娘であるイリヤスフィールが育った場所でもある。城のどこを見ても、そこには必ず家族との思い出がある。そう思えば、味気ない風景も記憶に止める気になろうというものだ。

 ましてや、情報が正しいのであれば――あと一月もしないうちに、聖杯戦争が始まる。アインツベルン本城から、日本に移転したアインツベルン城へ。そうなれば、アイリスフィールは、二度とこの場に帰ってくる事ができない。

 とは言え、それももう少し先の話だ。それまでは、いつもより少し注意深い程度に、見て回れば良い。もっとも、目前に迫ったからと言って、どれほど変わるとも思えなかったが。

 と、歩いている所に。微妙にいつも通りとは違う、異物があった。異物はのしのしと、巨体に似合った歩き方で迫ってくる。

「あら、ライダーどうしたの?」

 クラス名、ライダー。その真名を、征服王イスカンダル。

 アインツベルンの当主、ユーブスタクハイトは、当初から必勝を狙えるサーヴァントとして、アーサー王を欲しがっていた。その聖遺物として聖剣の鞘を探し出したものの、既に確保された後。横槍を入れて奪うことも考慮したが、相手はアインツベルンに匹敵する名家だったらしい。しかも、時計塔の中枢に近いというおまけ付き。他に、確実にアーサー王を狙える聖遺物は発見できず、泣く泣く諦めた。

 次点として選ばれたのが、既に確保済みであった征服王イスカンダルの聖遺物だった。確かに、世界に名を轟かせる大王であれば、霊格も申し分ない。日本での名声も、アーサー王に匹敵する。

 そして、予定よりも遙かに速くライダーを呼び出すように、ユーブスタクハイトは言い出した。はじめ、切嗣はそれに反対していた。彼に取って、道具でしかないサーヴァントと長く顔を合わせるのは、面倒以外の何者でもなかったからだろう。しかし、ユーブスタクハイトの希望に押し切られ、召喚を行った。

 結果的に、ユーブスタクハイトはステータスに満足したのだが。自由奔放すぎて、しかも英雄という名の虐殺者を肯定するライダーとは、相性が悪すぎる切嗣。彼の精神を犠牲にしながらも、聖杯戦争の準備は進んでいき。

 そして、全く会話も無く今日に至る訳だった。

「アイリであるか。すまぬが、キリツグの奴がどこにいるか知らんか?」

「え? 彼ならすぐそこの角を左に曲がったところに……それよりも、今日はイリヤと遊ぶ約束をしていなかったかしら?」

「そいつはもうちょい後だ。それまでに終わらせる」

 ライダーは、彼に似合わない厳つい顔をしながら問うてきた。

 普段は不敵とも取れる、にやりとした笑みを零しているのだが。どうも、今日はそれより真剣味が表に出ていた。しかし、アイリスフィールが気になったのは、それよりも下。彼が手に持っている、一本の酒瓶だ。

「あと、それは?」

「こいつか?」

 指さされた酒瓶を顔の横に掲げて、初めて彼らしい笑いが見える。いや、いつもよりも少々子供っぽいか。

「アハト爺の酒蔵から、ちょいと拝借をな。あやつ、良いものを持っておる」

「ちょいとって、あなたそれで何本目なのよ……」

「ふはは、細かいことは気にするな!」

 がははは、と大きく口を開けて笑うライダー。そこに悪びれた様子はなく、本心からそう思っているのだと分かる。

 ライダーの被害者一位は、間違いなく切嗣だが。実は、二位にユーブスタクハイトが上げられる。主に、経済的や物資的な面で。本人は、ライダーを呼ばせたことを、かなり後悔しているようだった。物の少なくなった酒蔵や倉庫を見ながらぼやいていたのは、何故か恐ろしく印象的で、哀愁が漂っていた。

(とは言え……切嗣の方は、殆ど自業自得なのよね)

 それは、アイリスフィールの悩みの種でもあった。ライダーは果断かつ自己中心的ではあるが、理解のない人物ではない。事実、頑なに会話をしようとしない切嗣に、何度も話しかけようとしたのだ。今場所を聞いたのも、恐らくそれであろう。

 ライダーは多少ならず自分を折っている。ならば、それでも話さないのは完全に切嗣の責任。

 彼にしてみれば。サーヴァントはただの道具であり、同時に嫌いな相手でもある。話す必要性がないのだろうが。それでも、相手は意思を持った一個人なのだから。相互理解の重要性が、分かっていない訳がないのだが……

「やあ、アイリ」

 と、どこか疲れた顔色に、微笑を浮かべて言ったのは、切嗣だ。先ほどは、距離が遠かったのと、恐らく考え事をしていたのとで、気付かなかったらしい。ここまで、当然ライダーは無視している。

 アイリスフィールの脇を抜けて、ずんずんと切嗣に向かっていくライダー。

 意気込むのはいいが、今日も無駄に終わるのだろう。そう思いながら、ひっそりとため息をついた。彼も、いい加減諦めれば良いのに。

「おい、マスターよ」

 そんな、多少ならず険のある言葉に、しかし切嗣は表情一つ変えない。

 完膚無きまでに、徹底してライダーを無視して歩き去ろうとして――

 その頭に、特大のげんこつが落ちた。

「~~~~~っっ!」

「巫山戯るのもいい加減にせぬか! 貴様はどこの小娘だ! マスターだと思って甘やかせばつけあがりおって、今日という今日は、徹底的に話し合ってくれる!」

 頭に落とした拳を、ぐっと掲げながら。近所の悪ガキにそうするように、切嗣をしかりつけた。

 ライダーとしては軽く叩いたつもりだろうが、そもそも軽く力を入れただけで岩をも砕けるのがサーヴァント。切嗣が頭を抱えて、小さく丸まるのも無理なからぬ事だ。なにしろ、アイリスフィールは彼が殴られた瞬間、確かに体が一瞬沈むのを見た。その痛みは、想像しただけで思わず頭に手を当てた程。

 涙目になった切嗣が、怒りを込めてライダーを睨み付けた。

「お前っ!」

「なんだぁ? ちょいと小突かれた程度で、もう無視は終わりか? その程度で余と張り合おうなど、片腹痛いわ!」

 襟の後ろ側をぐっと掴んで、切嗣を持ち上げた。ライダーに比すれば小さいが、彼もそれなりに身長はある。足が届かなくなる、という事はないが、しかし抵抗できぬのに変わりは無い。

「アイリよ、そこの部屋を借りるぞ」

「え、ええ、分かったわ」

 また調度品が、壊されるか持って行かれるかして無くなるんだろうな。そんな、のんきなことを考えながら。アイリスフィールは、引きずられていく切嗣を見届けた。助ける気は最初からない。

 ある意味これで良かったのだろう。これから戦いに行くのは、聖杯戦争という何でもありの殺し合いの場だ。いつどこで狙われるかも分からないのに、仲間同士いがみ合うなどというのはぞっとしない。あのアグレッシブなサーヴァントは、ある意味で最も切嗣に必要なサーヴァントなのだろう。

 叩き閉められる扉と、割れる皿か何かと、止まらぬ怒号。騒音を聞きながら、アイリスフィールはそんな事を思った。決して、現実逃避ではない。

「お母様、こんな所でどうしたの?」

 後ろから声がかかる。ちょこちょこと小走りに近づいて来る、天使と見間違う程に愛らしい娘。勢いのまま足にしがみつくのを受け止めて、そっと頭を撫でた。

「なんでもないわ。イリヤこそ、どうしたの?」

「あのね、ライダー探してたの。雪で遊ぶ前に、何かで遊ぼうと思って!」

「そうなの。でも、ちょっと用事があるみたいだから、約束の時間まで待ちましょうね」

「えー、なんでライダーにやることがあるの? むしょくのあそびにんで、むだめしぐらいなんだから、遊び相手くらいすべきだわ」

「どこでそんな言葉を覚えたの……!」

 何と称すればいいか分からない、イリヤスフィールから飛び出た言葉に戦慄する。教育方針を間違えたかもしれない。

「ところでお母様」

「なあに?」

 かわいらしく聞いてくる愛娘。くっと小首を傾げた。いや、実際には傾げていない。そうしたように思える仕草を見せた、というだけだ。実際にできなかった理由がある。

「なんで、わたしの耳を塞いでるの?」

「……何でもないわよ」

 背後から響き続ける騒音と、それ以上の大声。「よく分かった! 貴様は小娘などという上等なものではない! いじけて腐っている赤子だ!」「虐殺者を英雄などと称して祭り上げたお前にだけは言われたくない!」「そもそも敵サーヴァントの事は余に任せておけばいいのだ!」「敵を支配下に取り込むなんて言ってる奴に任せられるか! 聖杯戦争のルールを百回音読して出直せ!」「大馬鹿者が! このっ、馬鹿が!」「うるさいバカ! ええと、バーーカ!」

 言い合いは、最早ただの罵りあいにまでランクダウンしている。それも、極めて低俗な。考え得る限り、情操教育に最悪な状況だった。語彙の少なさに、ちょっと泣けてくる。

「時間まで、私と遊びましょうか?」

「お母様が!? やったー!」

 ぴょん、と飛び跳ねようとするが、それはアイリスフィールが耳を押さえる手によって止められた。腰を折って耳を塞ぎながら、ちょろちょろと動き回る少女に合わせるのは、正直つらい。それを堪えながら、アイリスフィールは彼らが入った部屋と反対方向に、進んでいった。

 彼女に出来ることなど、この場から可能な限り速く、娘を離脱させる事だけなのだから。

 

 

 

 からん、と。壁に掛かった絵画が、空しい音を立てて床に転がった。

 部屋の中には、息を荒らげた男が二人。互いに服が大きくほつれているが、外傷は見当たらなかった。しかし、その代わりを勤めるかのように、テーブルやら椅子やら、あとか壁。それらが大きく破壊されている。

 一応、両者ともこれから聖杯戦争が迫っていることは分かっていた。だから、服を掴み上げる程度に止めて、周囲に当たり散らしていたのだろうが……調度品にとっても、良い迷惑でしか無いだろう。

 切嗣は、相手を威嚇するように息を吐く。引き寄せた半壊の椅子に、体を落とした。椅子が大きくきしみを上げたが、知ったことでは無い。同じように、ライダーも壊れかけた椅子に座っていた。傾いて、体が斜めになり座りづらかったが、彼もやはり知ったことではないと無視をする。

 間に挟まった足が一本のテーブル。根元が砕けかかり、バランスが崩れれば今すぐにでも転がり落ちそう。その左右に、ワイングラスと灰皿が置かれた。奇跡的に、バランスは取れたようで、テーブルが壊れる様子は無い。

 マスターである男はいつもよりも遙かに憮然とした表情で、たばこに火をつける。サーヴァントの方も似たようなものであり、ワイングラスを放置してラッパ飲みし始めた。

 たばこが半ばまで燃えて、灰を灰皿に落とし。切嗣は口を開いた。

「……ふん。作戦会議に参加するのは、許可してやる。感謝するんだな」

「最初からそう言っておれば良かったのだ、この強情者め」

 苦々しい表情の切嗣とは裏腹に、ライダーのそれは幾分晴れたもの。今後の方針について、一定の勝利を収めたのだから、それは当然だが。

「しかし、本当に良いのか?」

 空になったワイン瓶をそこらに投げ捨てて、ライダー。酒により顔色は赤らんでいるが――その表情は、ひたすら痛ましげだった。

「貴様が目的を達すると言うことは、つまり最愛の命を差し出すと言うことだ。それを、本当に許せるのだな」

「お前がそれを言うのか?」

 切嗣は、アイリスフィールの秘密について、漏らしてしまっていた。失敗した、という思考はある。上手くやり過ごすのであれば、適当な事を言ってあとは無視すればいい。

 しかし、彼にはその言葉が許せなかった。何よりも、英雄などと言う存在に、そんな事を言われたのが。

「人を殺して、人から奪って、そんなものを寄せ集めて夢に走ったお前が? 夢以外の全てを放置して、後のことなど顧みもしないで国を割り、さらに多く無駄な血を流したお前が?」

「……いや、すまんかった。そうさな、貴様からしてみれば、いや、奪われる側からしてみれば、それが何のためだったかなど関係ない。殺戮者という意味では、余は貴様など及びもしない大悪党であろうよ」

 言葉だけは穏やかな、しかし今にも銃を抜きそうな形相の切嗣に言う。実際、それはライダーが言っていい言葉では無かっただろう。英雄とは、つまり犠牲を踏み越えて栄光を掴んだ者の総称。その中でもひときわ多くの犠牲を生み出した大英雄にして大悪党、征服王イスカンダル。人のことを言える立場では無いのだ。

 しかし、だからこそ言える事もある。

「余は知っている。愛する者を死に至らしめてまで得る栄光が、どれほど空しいかを。はっきり言っておこう、衛宮切嗣。貴様は余のような存在になろうとしている。それでも、やるのか?」

「……当然だ。僕は、そのために生きている」

 それは、熱望や願望と言うよりも。悲鳴の類いだった。

 狂気すら宿る意思。正気など、最初から捨てている。それでも進むのだと、まるで『英雄』の様な瞳が告げている。

「ならば、何も言うまい。余も自らの行動は、なるべく控えておこう」

「そこは完全に控えて、指揮下に入る所だろ」

「そいつは無理だ。これから行く場所に、どれほどの男たちがいるのか分からん。そ奴らを前にしては、余が止めようとしても、足が勝手に向いてしまう」

「チッ。やはりお前なんて、呼ぶんじゃなかった」

「はははっ! そう言うな!」

 馬鹿みたいに機嫌がいいライダーをよそに、二本目のたばこを取り出した。口に咥えた所で、やたらに太い腕が伸ばされる。

「余にも一本くれ」

「お前、吸えるのか?」

「そいつを今から試すのよ」

 半ば呆れながら、くしゃくしゃになったソフトケースを叩く。飛び出た一本をライダーが受け取って、同じように口に咥えた。

 まず自分のそれに火をつけた切嗣は、火が付いたままのライターを伸ばす。切嗣が頻繁に吸っているので、それを見て覚えたのだろう。ライダーは慣れているかのように火をつけて、煙を肺一杯に吸い込んだ。多少咳き込みはしたが、それだけ。

「ううむ、たまにはこういうのも悪くない」

 切嗣も同じように、ニコチンを脳一杯に楽しむ。ここ最近、本数がやたらと増えていた。ストレスのせいだろう。しかし、それもあと少し。聖杯戦争が始まってしまえば、思い悩む余裕も無い。

 灰皿を叩いて、テーブルの中心に寄せる。バランスが崩れた分だけ、テーブルが傾いたが。まだ何とか、均衡を保っている。

「ライダー。戦車の宝具の発動権は、お前に預ける。必殺を狙えると思ったら、迷わず仕え」

「おうよ、承知した」

 鼻から主流煙を吹くという、みっともない姿で鷹揚に頷く。

「だが軍勢は駄目だ。必ず僕の指示で展開して貰うぞ」

「理由は、当然あるのだな?」

 ライダーの表情には、あからさまに嫌悪の色があった。当然だろう、彼が王であるという自信の根底、それが王の軍勢という絆なのだ。それを、戦争のためとは言え他者の制御下に置く。そんなものが、面白いわけが無い。

「お前の軍勢は、かつての仲間を呼び出すものであり、宝具の再現まではできない。そうだな?」

「かつてではない。我らは今でも、切れぬ絆で結ばれた朋友だ。……まあ、そうだな。余と絆が繋がっているのは、あくまで『人』だ。宝具とは人と武器との絆だ。余と呼び出した者の宝具には、繋がりが無い」

「ならはっきり言っておく。お前の宝具は、この聖杯戦争において欠陥品だ」

 一瞬、怒りに剣を抜きそうになったライダー。それほどまでに、切嗣の言葉は許せなかった。それでも、剣を納められたのは。彼の言葉は、理論に基づいて考えた場合、正しかったからだ。

 ライダーの宝具の能力は、一言で言ってしまえば軍の展開。やっている事は規格外であっても、それ以上でもそれ以下でもないのだ。対するものが同じく軍で会った場合は、正しく無双の働きをするであろう。しかし、英霊には全くの無意味。なぜならば、一対無限の絶望を超えたからこそ、英霊は英霊たり得るのだから。

 さらに言えば、対軍以上の宝具は、軍勢にとって天敵である。固有結界を展開するという性格上、相手の宝具使用の際に必要となる制約を、一切取っ払ってしまいもする。どのような効果の宝具でも、存分に振るえる場所を提供してしまうのだ。半数が消えれば維持できなくなる、というもの良くない。弱い部分を積極的に狙っていけば、それだけで崩壊できるだろう。

 何より問題なのが、相手の大火力を防ぐ手段が全くない、という事だ。ライダーの信ずる軍勢は、宝具に対してあまりにも無防備すぎる。

 サーヴァントに対抗できるのはサーヴァントのみ。そして、宝具に対抗できるのも宝具のみ。この原則に逆らって、弱点を晒しているに等しい宝具なのだ。

 ならば、使用を禁じてしまえばいいのだが。

 ライダーのもう一つの宝具、戦車も十分強力なのだ。それだけでも、戦えないわけでは無い。しかし、切嗣はそうしなかった。

「だから、これを使う」

 言いながら、掲げられる令呪。

「そいつでどうすると言うのだ」

 ライダーの目は、未だ険しい。ここで、問答無用に切り伏せる程短絡的では無いが、場合によっては拳の一つもくれてやろうと思っていた。

 しかし、切嗣には必殺の策があった。

「令呪を使って、お前の縁を拡張する。広義に解釈させてしまえばいいんだ。そうすれば、お前の軍勢は宝具を持った者達で満たされる――真の意味で、無敵の軍勢だ」

 ライダーの目が、かっと開かれた。王の軍勢、そこに宝具まで合わさったとすれば。

 確かに、宝具を持っている者はごく一部。しかし、中には防御に特化した宝具を持つ者もいるのだ。いや、それだけではない。支援を得意とする者、火力を持つ者、一対一に優れる者。あらゆるスタッフが揃っている。何よりも、その者達が一丸となって連携するのだ。数十体のサーヴァントが数千の配下を連れて、完璧な統制の元に敵と戦う。今度こそ、弱点など存在せずに。

 それは。上手く使えば。たった一度の宝具使用で、他の全てのサーヴァントを倒しきれるほどのものだ。

「面白い、面白いぞ衛宮切嗣! それでこそ余を呼び出したマスターだ!」

 ぴくりと、笑いもしない切嗣。彼にとっては、あくまで勝利の為に最善を模索しただけに過ぎない。

 見た目には何も変わらずとも、ライダーには分かっていた。彼も満足していると。ライダーを呼び出して、よかったと思っていると。

 さらに言ってしまえば、ライダーは恰好の囮だった。切嗣が暗殺を敢行するのに、これほど派手で都合が良いサーヴァントは存在しない。

 彼らは確信する。我らは、間違いなく今回最高の組み合わせだと。

 

   ●○●○●○●○

 

 ウェイバー・ベルベットは今、異国の地に潜んでいた。

 そこは、聖杯戦争が開催される土地、日本。もしかしたら、それほど慎重に隠れる必要ななかったのかも知れない。だが、彼は念には念を入れた。これから戦争を行う土地が分かっているならば、どの陣営も少なからず手を入れているだろう。そうでなくとも、魔術師の家系がニ家も拠点にしている場所。気をつけて損は無い。

 開催地から僅かに離れた場所で、彼は箱を開帳した。中には、何かの化石。それが何かは分からなかったが、まあ、気にする必要はないだろう。あのいけ好かない教師が使おうとしていた媒介なのだ、弱い訳が無い。

 呼び出した英霊は、正しく金と言える者。一瞬、あっけにとられて、しかし気を取り直し、胸を張る。

「ぼ……ワタシがオマエを呼び出したマスターだ!」

 最初から舐められぬようにと、胸を張って宣言し。

 そしてその横っ面に、強力な裏拳がめり込んだ。

 

 

 

(最悪だ……)

 自らが呼び出したサーヴァントを前にして、ウェイバーは内心うめいた。

 彼が呼び出した英霊、英雄王ギルガメッシュは、どう表現しようともめちゃくちゃだった。住居を用意しようと思えば「このような薄汚いあばら屋を、まさかこの我の住居にすると言うのではあるまいな」と言われ(これについてはウェイバーが悪かったが)、従わせようと思えば「雑種……我に命を下すなど、余程死にたいらしいな?」と脅され、逆に従わされ。とにかく、全てが上手くいかなかった。

 今も、こうして。

 アーチャーの用意した、豪華に飾られた拠点で、おまけのように扱われている。

 ステータスは、大して高くないくせに(アーチャー曰く、貴様が無能なせい)やたらに尊大。まあ、宝具は強力無比であり、どのサーヴァントにも優位に立ち回れる。正しく、英雄王の力を持っていたが。

 なにより問題なのが、アーチャーにやる気がない事であった。参加したのだから、下々の者に顔を見せるくらいはしてやってもいい。万事そういう態度なのである。

「お、おいアーチャー、今日こそボクの言う事を聞いて貰うからな!」

「また貴様か。懲りぬ奴だ」

 応えるアーチャーの顔からは、純粋に呆れの色。最初の幾度かは殺意と嫌悪に、ひるみもしたのだが。それでも諦めないウェイバーに、感情はだんだんと薄れていっていたようだ。

 マスターを立たせておきながら、自分はゆるりと寛ぎ。侮るように見ながら、やはり口から漏れる内容も侮ったものだった。

「いい加減に諦めたらどうだ。貴様が黙ってみていれば、聖杯は勝手に我の懐に入ってくる」

「なんでそんな事が分かるんだよ」

「戯け。この世の全ては、我の所有物である。ならば、放置していても最後には我が下に戻るのが道理よ」

 めちゃくちゃな理論である。そもそも、聖杯を奪い合うのが聖杯戦争なのだが、それすら分かっていない。いや、分かっていても、歯牙に掛けていないのだ。それが英雄王である。

「そもそも、貴様のような矮小な者が万能の釜に何を願う?」

 片眉を上げて、鼻で笑いながら。大層な願いなどないのであろう、そう言外に言っている。その目で見られて、ウェイバーがぐっ、と唸った。視線に怯んだわけでは無い。ただ、大層な願いなどない、その言葉の通りであっただけだ。

「願いなんてないよ、悪かったな!」

「はぁ?」

 何を言っているのだと。馬鹿を見る目のアーチャー。おそらくは、評価を大幅に下方修正している。

「ボクは、自分が優れた魔術師だと証明するために参加するんだ。時計塔でふんぞり返り、いい気になってる連中を見返してやるのが目的だ。だから、どうせ願いなんてないさ」

 いじけたように、視線をそらすウェイバー。いつもそうだ、このサーヴァントは、何もかもを見透かしたようにしていて、事実本質を見間違う事が無い。彼がマスターの話を聞かないと言うのは、ただわがままな訳では無いのだ。単純に、その優れた観察眼から見て、従う価値なしと判断を下している。それが、ひたすら悔しかった。

 正直に言って、罵倒が飛んでくるのを覚悟していたのだが。しかし、アーチャーの反応は違った。

「は、ははははははははっ! 何を言うかと思えば、命がけの戦場に身を投じて置きながら、そこに宿す意思は自己証明だと? 馬鹿は馬鹿でも大馬鹿の類いであったか!」

「な、何だよぅ」

 時計塔では無能と誹られ。苦労して書いた論文は、見る価値も無いと捨てられ。挙げ句の果てに、自らが屈服させるはずのサーヴァントに笑われる。情けなさすぎて、泣きそうだ。

 しかし、

「いいだろう、貴様に付き合ってやる」

「……は?」

 アーチャーは立ち上がり、ウェイバーの前に立ちながらそう言った。

「何の心変わりだよ」

「馬鹿というのは救いようがない。だが、大馬鹿まで突き詰められれば、そこに価値はなくとも面白さはある。貴様は踊り狂って死ぬのか、それともその先に栄光を見いだすのか。この我自身が見てやると言っているのだ」

 相変わらず、よく分からないサーヴァントだ。自分が認められた訳ではなく、むしろ暇つぶしの道具として見られているというのも分かる。だが、とウェイバーは流れかけていた涙を拭った。とりあえずでも、従うならば何でもいい。自分が認められない事には慣れていた。これから認めさせればいい。

「しかし」

 アーチャーが、指で手の甲を叩く。

「令呪で我を従わせようとは考えなかったのか? その方が手っ取り早かったぞ」

 ――もっとも、その時は貴様を殺していたがな。裏に含めた意味は、精神的な重圧となって押しつぶそうとしてくる。しかし、それにも何とか耐えた。今までさんざんアーチャーのプレッシャーを受けたおかげだ。全然嬉しくない。

 それがそうだと張れていても、強がりながら胸を張る。ばればれでも、取り繕うというのは大事だ。自分さえ騙せれば、とりあえず動くことはできる。

「使うわけないだろ。それは他のサーヴァントに対する切り札なんだ。こんな無駄な事に使えるか」

「ククク……そうか『無駄な事』か。いいぞ雑種、俄然貴様に興味が湧いてきた」

 ひたすら、面白そうに笑いながら。アーチャーはウェイバーを通り過ぎた。

「お、おい。どこに行くつもりだよ?」

「貴様こそ、いつまでもここにいるつもりか? 聖杯戦争に向けて、やることがあるのだろう。付き合ってやると言っているのだ」

 なんで、いきなりアーチャーがやる気を出したのかは、やはり分からない。それが、彼が王であるためか、それとも時代が違うためか。だが、少なくともウェイバーにとっては好都合だった。

 これでやっと、ウェイバー・ベルベットの聖杯戦争を始められる。

「おい待ってくれ! 行くなら最初は柳洞寺だ。キャスターあたりがあそこに籠もった場合の対策と、できれば抜け道を作っておきたい」

 歩調の大きなアーチャーに、急いで追いすがる。いつの間に用意したのか、彼は現代風の服装になっていた。

 霊体化しないのか、とは思った。しかし、アーチャーは既にこの街で、かなり派手に動いていたのだ。少なくとも二つの陣営には、ウェイバーがマスターだと割れているだろう。未だ聖杯戦争は始まっておらず、今仕掛けてこられるとは考えづらい。だが、用心するならば、具現化していて貰った方が安心できる。

「あ、それと」

 ウェイバーは立ち止まった。アーチャーが声に振り向く。

 彼のすました顔に指を突きつけて、全力で気合いをはき出した。

「ボクはまだ何もしちゃいない。だから、オマエに侮られるのも仕方ないだろう。けど! 聖杯戦争が終わる頃には、オマエにもボクを認めさせてやるぞ! 覚えておけ!」

 そして。一瞬きょとんとしていたアーチャーは、空に向かって大笑いをする。とても、とても面白そうに。

「いいだろう、雑種。その時は、改めてこの我直々に、名前を聞いてやる。まあ、楽しみにしておいてやろう」

「あと、オマエはすぐに油断するからな。聖杯戦争が始まったら、気を引き締めろよ」

「戯け。王たる者が、気を張ってどうする。慢心もできずに、王を名乗る資格ないと知れ」

「なんだよそれ」

 つい先ほどまでちぐはぐだった主従。それがかみ合って、動き始める。

 最強のサーヴァントと、最弱のマスターの、これが本当の始まりだった。

 

   ●○●○●○●○

 

 最近は調子がとても良い。

 たとえば、キツめの靴に踵がすんなりと入った。チョークの粉末が、いつまでも指に張り付くことが無い。魔力量は多少圧迫されているが、その代わり魔術のキレはすこぶる良かった。思わず、鼻歌を歌ってしまいそうなほどに、全てが上手く回っている。今であれば、愚図で無能な生徒達にも優しくしてやれるし――あの忌々しいウェイバー・ベルベットにも、感謝をしてやってもいい。

 最初は、かなり本気で殺そうと思ったものだ。まさか、人が聖杯戦争の為に取り寄せた触媒を奪うなど、誰が予想するものか。あまつさえ、それを利用して聖杯戦争に参加しようなど……殺してくれと言っているようにしか思えない。

 いいだろう、望み通り殺してやる。ウェイバーがやったことは、ただ触媒を奪ったというだけではない。アーチボルトの財を掠め取るという、こそ泥の所行。一流の魔術師の家系、一流の魔術師の顔に泥を塗ると言うことが、どういう事か教えてやる。強烈な怨念と殺意を、参加への意気込みとしていた。

 当初、ケイネスの怒りたるや、婚約者のソラウすら近づくのを躊躇う程だった。

 しかし、それも先日まで。

「ふ……思えば私も、ずいぶん大人げなかったものだ」

 時計塔より少し離れた、郊外のテラス。ロード・エルメロイが入るには、少々格式の劣る喫茶店。それでも通うのは、そこから除く風景は彼のお気に入りだからだった。

 口につけた紅茶も、中々薫り高い。満点とは言えなかったが、及第点はやってもよかった。

 ケイネスが最初に求めた触媒は、最古の王にして最古の英雄。間違いなく最強の英霊、ギルガメッシュのものだった。絶対王なだけあって、その気位は高いだろう。面倒な相手ではあるだろうが、その分強いのであれば堪えられる。そう考えて取り寄せたのだが、結局は手から離れていった。

 結果的には、それこそが最善である。そう断言できた。

 怒りも醒めやらぬ中、次に求めたのがアーサー王だった。征服王イスカンダルも考えはした。しかし、その触媒は既にアインツベルンが確保済み。ならば、と全力を持って聖剣の鞘を手に入れ、そしてセイバーとして召喚し。

 彼女の能力は、壮観の一言だった。

 全てのステータスが、ほぼAランク。スキルも申し分ない。宝具はバランス良く、最優に相応しいサーヴァントである。それに比べれば、霊体化できないなど些細な欠点だ。

 そして、セイバー自信も中々に見所があった。本人は魔術を使えないものの、マーリンという優秀な魔術師と交友があったためか、ケイネスがどれほど力を持つ魔術師かを理解していた。それに、時計塔の教授だと知れば、それについても見事だと賛辞を送ってくる。サーヴァントなど、所詮過去の栄光に縋った遺物。そう思っていたが、その考えは改めなければならないようだ。少なくとも、アーサー王は確かな見識を持っている。

 アーサー王が女であった、というのもプラスに働いた。いくらソラウにその気が無いと言っても、異性であれば少なくない不安がある。しかし、同性であるならばその心配はいらない。

 まるで、ケイネスに配られるべくして配置されたサーヴァント。彼女に比べれば、どんなサーヴァントでも見劣りする。アーサー王が配られる為だったと思えば、ウェイバーのような愚か者にも、寛大に許してやれる。

 とは言え、彼女にも、まあ。欠点がない訳ではなかった。

 からん、という涼やかな音。テラスへの扉が開かれたのだ。続いて、近づいてくる足音。

「ケイネス、探しました」

「セイバーか、何の用だね?」

 今の彼女は、美しくも威厳のある鎧姿では、当然ない。そして、青を基調としたドレス姿でもない。金色の髪を慎重に梳かれて、装飾の少ないパンツ姿ではあるものの、どこからどう見ても令嬢のそれ。今の彼女は、華奢な少女にすら見えた。少なくともその姿を見せて、下手な吸血鬼など一撃で屠ると言っても、誰も信じない。

 指を叩いて、セイバーに座れと指示した。大人しく座った彼女に、メニューを渡す。

 店員は、呼ぶまでもなく座席まで寄ってきた。

「これと、あとこれをお願いします」

 手早くメニューを決めるセイバー。

 彼女は、現代の食事をいたく気に入っていた。最初は食事に対する反応に、眉を顰めもしたのだが。ブリテンの食事事情を思い出して、細かい事を言うのはやめにした。特に何か思ったのでは無く、普通に哀れになったからだ。それに、サーヴァントの世話を見てやるのも、貴人の勤めである。

「ケイネス、今は講義の時間ではないですか?」

 店員が十分下がったのを確認して、セイバーが言った。遮音の結界でも張った方が確実なのだろうが、小話をするのにそれは効率的では無い。

「代理は立てている。これから聖杯戦争に行くのだ、こういうゆっくりする時間も必要なのだよ」

「準備は万全だ。貴方の能力にも憂いは無い。ならば、貴方の講義を待っている者達にも時間を割いてやるべきです」

「む……」

 セイバーの欠点。それは、彼女が真面目すぎ、かつ口うるさい点だった。

 ブリテンという斜陽の王国を支え、なおかつ円卓というくせ者揃いの――はっきり言ってしまえば人の言う事を聞かない――者達を束ねるには、そうである必要があったのだろうが。それが自分に向くとなると、さすがに疲弊してしまう。正しいのは彼女であるだけに、反撃もできない。

 押し黙るケイネスを尻目に、店員が注文の品を持ってきた。二つのケーキと、ティーカップその両方がセイバーの前に置かれた。

 セイバーが小さく感謝を述べて、店員が戻っていく。紅茶で一息つきながら、言葉を続けた。

「休んでしまったのは仕方ありません。しかし、貴方の評判は日に日に高くなっているのです。こんな事で評価に陰りを落としては、もったいない」

「ふん、貴様に言われずとも分かっている。節度は保つさ」

 現在、生徒の間で評価が上り調子の教授。それが自分である事は知っていたし、同時にその理由も把握している。

 一言で言ってしまえば、機嫌がいいから面倒をみてやった。その一言に尽きる。ケイネスは自他共に認める天才であった。普段は、出来なければ才能が無いと切り捨てていた生徒。それに、ちょっと才能を傾けてやったのだ。つまり、できなかった理由の解明に、手を貸してやった。

 本人にとっては、どうという事の無い気まぐれであったし。ましてや下の評価など、限りなくどうでもいい。しかし、評価される事自体は悪い気はしない。これからも積極的に力を貸そうとは、全く思っていない。だが、気分次第で付き合ってやるか、くらいには考慮していた。

 評価が高い理由は、それだけではない。多分に、セイバーの存在もあった。

 ケイネスとセイバーは、事前準備として死徒の討伐を行っている。主にセイバーの希望だった。召喚されてから聖杯戦争までの期間、勘が鈍る事を嫌っての発案だ。

 死徒27祖とすら互角に戦えるセイバーに、並の死徒で勝負になる筈も無く。宝具すら使わずに、三体の死徒を殲滅。流石はロード・エルメロイの召喚したサーヴァントだ、と言わしめる結果になった。ちなみに、これにはケイネスに実践の空気を知っておかせるため、という意味もあったのだが。それに気がついたのは、ずいぶん後になってからだった。

「余計な心配などせずとも、貴様はサーヴァントを倒せばいいのだ。まあ、そうでなくとも、この私が容易く敵のマスターを討ち取ってやるがね」

「む、それは良くありません、ケイネス。油断は死を招く」

 なぜか、食べ物を食べている時はやたらと幼く見えるセイバー。今もケーキにもごもごと口を動かし、真剣に味わいながら言っている。

「油断、だと? これは余裕というものだ。まさか、この私が戦って負けると思っているのかね?」

 己の魔術的能力に、絶対の自信を持つケイネス。面と向かって後れを取ると言われて、黙っていられるほど穏やかでは無い。片眉を釣り投げながら、皮肉げにそう言った。

 相変わらず見事な動作でケーキを口に運びながら、器用に頭を振るセイバー。

「いいえ、貴方に魔術で勝る者がいるとは思っていません。しかし、不意打ちにだまし討ち。あとは、魔術で戦うと見せかけて、武器を持って圧倒するなど。優れた魔術師でも、殺す方法はいくらでもあるのです」

「不意打ちに、魔術を目くらましにして戦うだと? そんな魔術師がいるものか」

 鼻で笑うケイネス。

 それはもはや、魔術師では無い。魔術を手段としか見る事ができない者は、ただの魔術使いだ。卑賤で卑しい、存在する事自体が害悪。そんなものが、聖杯戦争に参加するという。冗談にしては、つまらない。

 しかし。セイバーはもう一度、頭を振った。今度は、先ほどよりも遙かに深刻そうに。

「残念ながら、いるでしょう。私が剣を合わせた騎士は、全てが騎士たらんとしていた訳ではありません。敵に、時には味方すら、己の領分を汚す者が居たのです。それに……追い詰められた人間は何でもする。ケイネス、誰もが正しく在れるというのは、幻想です。必ず、裏切る者が居る。少なくとも、それは知っておいて欲しい」

 そう言えば――ケイネスは思い出した。アーサー王が死に、そして国が滅んだ要因。その中には、数多くの裏切りがあったのだ。

 誓いに背いた為にカリバーンが折れる。それでもか、だからこそか、正しさを追求し続けたアーサー王。だからこそ、人が理想や誇りを裏切る瞬間を多く見たに違いない。ついでに言えば、彼女は王時代に妻を信頼する騎士に寝取られていた。婚約者持ちとしては、同情を禁じ得ない。

 つまりは。彼女の言葉には、ケイネスにはない重みがあった。経験と言う名の、重みが。

「……いいだろう、今回は貴様を立ててやる。私がマスターと戦うのは、他のマスターの情報を集めてから。それでいいな?」

 ただ言われただけでは、彼も満足しなかっただろうが。幸いにして、彼女は先に己の能力を示していた。とりわけ死徒と戦う際には、その戦術眼の確かさも。

 セイバーがマスターを知って認めたように、ケイネスもまた、サーヴァントを観察し、その技能を認めていた。

「はい。感謝します、ケイネス」

「どちらにしても、私とソラウ、二人がかりで魔力を供給しているのだ。派手には戦えん」

 アーサー王という希代の英霊を前に、ケイネスは一つの決断をした。それは、魔力の二重供給。

 セイバーは最初から、高い能力を持っていた。なにせ、全てのステータスがセカンドランク(B)以上だったのだ。しかし、それ以上にケイネスを喜ばせた事実がある。それは触媒に使った宝具、アヴァロンこそがセイバーの真の宝具と言うに相応しい能力だったのだ。

 究極の、それこそ魔法すら超えると言われているEX宝具。アヴァロンの能力は防御というよりも遮蔽に近く、遍く障害を寄せ付けない、最強の盾。しかも所持していれば、魔法に近いレベルの蘇生が可能だという。

 最強の盾に、最強の矛の両立。これに喜ばぬ理由が無い。

 ただし、一つの問題が浮かび上がってきた。それは、果たして魔力が足りるのか、という点だ。

 エクスカリバーは、A++ランク。アヴァロンはEXランク。両方とも強力ではあるが、同時に魔力を馬鹿食いすると予想させるのも難くない。ソラウ一人の魔力供給で満足できるとは、とても思えなかった。

 解決方法は、至ってシンプル。ケイネスも魔力供給に参加するというもの。敵マスターに対しての優位を捨てる代わりに、サーヴァントで必殺を狙える事を優先したのだ。その結果は、セイバーのさらなるステータスアップに、三つもある宝具。冗談のような、最優にして最強のサーヴァントの誕生だった。

「あとは、拠点についてもです。ホテルのワンフロアを貸し切る、それはいいのですが、工房とそうでない施設が物理的に繋がっているのは、よくありません。攻略の足がかりにされる可能性が高い。ホテル丸ごと貸し切れないのでしたら、他の拠点を見繕った方が良いでしょう」

「……」

 しかし、やはり口うるさかった。

 一つ大きく息を吐いて、感情を整える。

「私が自分で使う分の魔力まで供給してやっているのだ、敗北はゆるさんぞ」

「当然です。貴方たちに捧げた剣こそが最強であると、戦場で証明しましょう」

 満足に魔術を振るえない状況。不満がない訳ではない。

 ケイネスは、姿勢を正したセイバーを見た。彼女を通して、ステータスを脳裏に表示する。それを見れば――思わず、口が笑ってしまう。このサーヴァントに勝てるものなど、居るわけが無い。

 何の憂いも無い聖杯戦争。負ける理由すらない。

 祝杯代わりに、ティーカップを傾けた。その時だった。

「セイバー!」

 テラスの隅から隅まで、大きな声が響き渡った。それを聞いた瞬間、目の前の少女の体が、びくりと震える。

 及び腰に、椅子から腰を浮かせるセイバー。そんな彼女にずんずんと寄ってくる美女。冷淡な表情がとても似合いそうな彼女はしかし、やたら瞳を輝かせている。

「ケ、ケイネス、彼女は貴方の婚約者でしょう。何とかして下さい!」

「君は女性だろう。ソラウの交友関係に、女性までうるさく言う気は無い」

「私は性別など昔に捨てている! それに、王をしていた時は男として振る舞っていました!」

「しかし、性別は女だろう。彼女も女として見ている。何も問題は無い」

「見捨てると言うのですか!」

「知るか」

 静かな主張はだんだん絶叫に、最終的には悲鳴に変わって。助けを求め続けるが、ケイネスはあっさりと無視した。

 彼には理解できなかったのだが。セイバーの容姿は、ソラウにとってクリティカルだったらしい。頻繁に連れ去っては、着せ替えを楽しんでいる。今日も、昨日までと同じように、腕を取られて引きずられ。

 そして、テラスからの美しい風景を眺めた。相変わらずの、気に入っている風景。

 直前の出来事を、脳内から削除しながら。

 

   ●○●○●○●○

 

 体に突き刺さるような倦怠感を感じながら、遠坂時臣は目を覚ました。

「ぐ……」

 体を起こすのも重い。いや、本当に重いわけでは無い。それは感覚のみであり、実際は魔力不足がそう感じさせているだけ。

 思わず、妻である葵を呼ぼうか、とも考えたのだが。それは否定した。

 彼女と、そして娘であり後継者でもある凛。この二人は、徹底的に聖杯戦争と無関係で無ければならない。ただでさえ、遠坂時臣という聖杯戦争参加者と親族なのだ。これ以上に、狙われる理由を作るわけにはいかなかった。

 加えて言えば。サーヴァントを呼び出した、その程度で助けを求めるというのは。常に余裕を持って優雅たれ、という家訓を持つ遠坂当主のする事ではない。

 気を抜けば、悲鳴を上げそうになる体と魔術回路。自制心を総動員して制御しながら、ベッドの上に座った。その体制のまま、精神を落ち着かせて、ラインを探索する。慎重に辿っていけば、そこには目に見えずとも確かにいる。荒々しい意思と、理解不能な絶叫を上げて。恐らく今大会最高の能力を誇るであろう、バーサーカーが。

 隙を見せれば、すぐに魔力を吸い上げようとする。それを制するのも一苦労だ。だが、一流の魔術師である時臣には、不可能では無い。

(やはり、早めに呼び出しておいて正解だったな)

 体にかかる負担という意味では、聖杯戦争が終わるまで楽になる事は無いだろう。しかし、その苦労をするだけの価値が、呼び出したサーヴァントにはある。

 サー・ランスロットという一級の霊格を、バーサーカーというクラスでさらに強化。これにより、異常とも言えるステータスを得る事に成功した。最高と称えられた技量は、狂ってもなお冴え渡っており。しかも、保有する二つの宝具により、正体の割り出しはほぼ不可能。強さという意味では、正しく規格外だ。

 最初は、セイバーとして召喚するのがいいだろうか、とも考えた。しかし、いくら腕があろうとも所詮は裏切り者。忠誠を誓った主から妻を掠め取り、あまつさえ剣を向けるような者を信じられる訳が無く。狂化させる事により妥協した、とも言える。見えぬ裏切りよりも、見えた狂気の方が遙かに与しやすい。

 バーサーカーのマスターは、代々自滅。それは知っている。だがそれは、三流マスターが身の丈に合わぬ事をした苦し紛れ、というのも事実なのだ。一流のマスターが、一流の英霊を呼び出し制御する。この先例は無い。ならば、自分が先例となり、勝ち抜いてしまえば良い。時臣はそう判断したのだ。

 とはいえ、直前にバーサーカーを呼んで制御を完璧にするのは、さすがにギャンブル性が高い。ある程度余裕を持って呼び出し、制御を試しているのだった。

 予想以上のじゃじゃ馬に、手こずってはいる。しかし、成果を掴んでいるのも事実だ。制御を完全とするのも、そう遠くないと確信している。

 体を落ち着かせて、やっと立ち上がり。まずは、鏡の前で構えた。正面から、そして左右から顔を確認する。

「……よし。顔色に変化はないな。これならば、無用な心配はかけないだろう」

 頬はいつも通りの色で、目の下に隈も無い。何かを聞かれても、少し疲れが残っているだけだと言えば、ごまかせる。

 普段よりも大分ゆったりした速度で、クローゼットに向かった。並んでいる服は、常に清潔に保たれている。葵が努力しているおかげだ。これも、あと少しすれば、見られなくなってしまう。

 ゆっくりと階段を下りて、一階に立った。今まで気にしていなかった事実。遠坂邸は、一人で過ごすには大きすぎる。

 聖杯戦争が始まって、妻子を残しておく事はできない。そんな事をすれば、気が狂っているのと大差ない。考慮に値しない思考だ。胸を開ける小さな寂寥感は、なんとも罪深いものだった。

 リビングに踏み込もうとして、一瞬足を止める。

 常日頃から言っている、常に余裕を持って優雅たれ、の家訓。その具現者でなければならない家長が、だらしのない姿で現れるわけにはいかない。服を何度か確認して、姿勢も意識して正す。あとは、ひとつの呼吸に魔術師たるプライドを乗せれば。それで、完璧な遠坂時臣が出来上がる。

「お父様!」

 部屋の中には、凛一人だけがいた。小さな体で飛び込んでくる。

 上目遣いに見上げられた表情は、不安が大部分を占めるものだった。何事か、と思いながらも、笑顔を取り繕って頭を撫でる。

「凛、もう少しおしとやかにしなければいけないよ。葵はどこにいるかな?」

「お母様はさっき出かけたわ」

(出かけた? こんなに早くに?)

 疑問に思いながら、時計を見る。それ自体が大きな歴史を刻んだ、少々の神秘すら宿した柱時計。確認した時刻は、朝と言うには遅すぎる、午前十時だった。

(これは……心配をかけてしまったな。余裕、優雅を旨としておきながら、私もまだまだか)

 葵の神経は細い。恐らくは心配して、人を呼びに行ったのだろう。行き先は医者か――もしくは教会。事が魔術関係である事を考えれば、確実に後者だろう。

 小さな宝石を一粒、手に取る。それを触媒にして、即席の使い魔を作成した。窓を開けて、飛び立たせる。途中で葵に会えば伝言を伝えるし、教会までたどり着いてしまっていても、とりあえず無事は知らせられる。

「私は大丈夫だよ、凛」

「……ほんとう?」

「ああ、この通りだ。今日は、少し寝過ごしてしまっただけだ」

「お父様でも、そんな事があるの?」

「私も人間だからね。たまには気が抜けてしまうのさ」

 未だ、疑わしげではあったが。唇を尖らせながらも一応は納得したようで、掴んでいた服をそっと離した。改めて見えた娘の全体像は、普段よりも大分幼い。

 いや違う、と頭を振る。今が幼いのでは無く、普段が大人び過ぎているのだ。大人になろうと、背伸びをしているのでは無く。遠坂時臣の娘として相応しく、魔術師となるために。むしろ、今の方が年相応なのだ。

 親が望む道、それに応えようと努力する娘の姿。なんとも、胸が熱くなる。

 改めて思わずには居られなかった。この子の期待を裏切らぬ魔術師でなければならない。そして、自分より遙かに優れた才能を持つ娘のために、絶対に聖杯を残さなければならない。

「少し遅くなってしまったが、朝食をいただくとしよう」

 ラップに包まれた食事。サラダはそのままでもいいが、スープは少し温め直して、パンも焼くべきか。

「私が紅茶を入れる!」

「大丈夫かい?」

 時臣の言葉に、少女は大きく胸を張った。

「平気よ。お母様に教えて貰ったもの」

「それなら、一つ頼もう」

 元気よくキッチンに走り去る、小さな影。やはり、すぐに普段通りとは行かないようだ。そういう意味でも、凛はまだ発展途上だ。

 スープを温めながら、真剣に紅茶の計量器と睨め付ける娘を見た。今回の聖杯戦争で、時臣が死力を尽くすと決断したのは、娘の為だと言っても過言では無い。聖杯の獲得は遠坂の悲願――それは変わりないのだが。遠坂としての使命以上に、時臣個人が、才ある娘に何かを残したいと思ったのだ。

 凛の才能は、間違いなく歴代遠坂トップ。いや、それどころか、時計塔に行っても歴史に名を残せる素質を持っている。もしかすれば、彼女で魔法に届くのでは、そう思わせるほどに。

 親を軽々と超える才能を持つ娘に、しかし時臣は、嫉妬などはしない。魔術師の家系とは、最早一個人では無く、一つの群体。それ自体無意味な感情である。さらに言えば、魔術師として完璧を志す遠坂時臣に、そんなものはありえないのだ。

 軽めの食事で胃を慣らし、娘が手ずから入れた紅茶を味わう。少々濃かったが、我が子の味だと思えばそれすら楽しめるというもの。

 しかし、まだ不安が晴れない様子の凛。しばらくもじもじとしていたが、意を決して声をかけてきた。

「お父様、サーヴァントは、その」

「サーヴァントがどうかしたのかい?」

「触媒がないって聞いたから……」

 恐らく、綺礼あたりが漏らしたのを聞いていたのか。

 そんなことか、と時臣は笑って返した。

「凛、触媒はちゃんと私が求めたものを手に入れて、求めた英霊を呼び出したよ。触媒が、というのは、最初の予定を変更しただけだ」

「そうなの?」

「ああ、そうさ」

 その言葉に、偽りは無い。

 最初は、確かに英雄王ギルガメッシュを手に入れようとも考えていたのだ。彼を呼び出して、時臣の資質で動かせば、確かに最強であろう。しかし、制御できぬサーヴァントにどれほどの意味がある。強さと引き替えの臣従。それは、バーサーカーを扱っての自滅よりも、遙かに大きな危険を孕んでいる。

 しかし、別の誰かがギルガメッシュを呼ぶ危険性はあった。事実、ロード・エルメロイがギルガメッシュの触媒を取り寄せたのだし。

 彼の英雄王が、今回の聖杯戦争に参加するのは確定。ならば、英雄王を妥当しうる英霊を呼ぼうと思ったのだ。数いる最上級の中でも、アーサー王伝説屈指の騎士と名高いサー・ランスロットを呼んだのには、そういう事情もある。予想以上の宝具を持っていたのは、嬉しい誤算だった。

「だから、何も心配はいらないよ。聖杯戦争期間中は、少しだけ離ればなれだが、それが終われば元通りだ」

「はい、お父様!」

 いつもの調子を取り戻した凛が、花が咲くような笑顔で笑う。

 それを満足げに見ながら、時臣は考えた。バーサーカーは強力な分、理性的かつ戦略的な行動を、自発的に行うのは望めない。制御が完了したとして、今度は行動の全てを指定する必要がある。極めてタクティカルな判断力を養わなければならないのだ。

 時臣に、実戦経験が無いわけではない。しかし、誇れるほどではないのも事実だった。この誤差は、なんとしても聖杯戦争開始前までに埋めておきたい。

(一度、綺礼君に連絡をしておくか)

 実戦経験の豊富な彼に教えを請うのは、悪くない判断だ。それに、彼が呼び出したサーヴァントは、こういう場合にうってつけの能力を持っている。

 憂いはない。だが、それにあぐらをかいて準備を怠るのも馬鹿馬鹿しい。万全を期して、聖杯戦争に望む。

(なに……難しく考える必要はない)

 第三者の心配が無い、一対一の接近戦。その状況を作るだけでいい。

 なぜならば。バーサーカーは確実に、最強のサーヴァントなのだから。

 

   ●○●○●○●○

 

 教会の境内を、木の葉一つ落ちていないように掃除を終える。

 箒をはいて、一カ所に集め、焼却炉に入れる。一連の行動に意味など求めていないし、ましてや神に祈ることなどなく。毎日毎日積もる草葉を処分したところで、それで得られる御利益もない。きれいに掃除されたその光景が、ささやかな報酬と言えるかも知れないが……生憎と言峰綺礼には、無価値だ。誰かが見て、美しいと言うかも知れない風景にも、心が揺れ動いた事は無い。それこそ、神に誓える。無意味な神だが。

(かつては、悲壮な願いすら捧げながらやっていたと言うのに……私もつくづく、極端だな)

 箒を投げ捨てるように仕舞う。

 全てが、どうでも良くなった――絶望した。それはあからさまに表に出てこなくとも、行動の端々に現れる。

 自覚はある。だが、直す気はない。そうする事に意義があると、信じられなかった。

 信仰、戦闘、そして妻子ですらも埋められなかった、欠陥だらけの感情。いつかは、それが埋まると信じていた。もしくは、同類と思っていた男――衛宮切嗣、奴が持っていると、思っていた。それは、全くの見当違いでしかなかった。こうまで何もかもが空回りし、期待を裏切られれば、もう笑うこともできない。

 教会の中に入れば、そこは早朝の空気よりも静寂。まるで死んでいるようだ、感想を漏らした。いままでそんなことを思わなかったのは、恐らく強力に自重していたから。それが無くなってしまえば、まあ、こんなものだ。言峰綺礼という人間は。

 父、言峰璃正は教会にいないのは、知っていた。あとどれほどもせずに始まる、聖杯戦争の為だ。平和な日本という地で戦争をやらかす以上、根回しはいくらしても足りない。

 屍のような教会。腐ったような空気。嫌悪感が溢れた。空気にでは無い。そう感じながらも、何も思えない自分に。

「――キャスター」

 声と同時、世界にしみこむように具現化する影。言峰綺礼が呼び出したサーヴァント。いや、勝手に出てきた、と言った方が正しいのか。

 彼に呼びかける必要などは無い。少しばかり魔力を通せば、そこに現れるのは分かっている。

 正面に出てくる、陰鬱な顔。

「なぜ、私の召喚に、貴様が応えたのだ」

 回答がないのは分かっている。今も、マスターである綺礼の声に、しかしキャスターは微動だに反応を返さないのだ。

 苦々しい表情で、綺礼は自分の手をさすった。こんなものとの縁である右手の甲、そこにはあるはずの三画の内、一画が欠けている。

 自分が呼び出したサーヴァントがまともで無いのは、初見で分かった。ついでに言えば、精神汚染などというスキルを、Aランクもの高さで所持しているのだ。対話など望める訳が無いし、ましてや制御できるなど、夢にも思えなかった。令呪によって意識を剥奪するのに、躊躇う理由が無い。

 キャスターは既に、自意識を失った、ただの宝具の媒介。

「答えろ」

 返ってこない事など分かっている。そうしたのは他ならぬ自分自身なのだ。

 しかし――綺礼は鉄面皮を歪める。無表情だったそれを、非常に憎々しげに。返ってこないと分かっていても、聞かなければ納得できないのだ。だから、問い詰める。

 何も答えないことが分かっているからこそ、安心して問い詰められる。

「お前と私の、何が似ていたと言うのだ」

 サーヴァントは、マスターと本質が似たものが呼び出される。触媒の程度で、該当する英霊が一人でない限り、この原則に従うのだ。当然、綺礼は狙ってジル・ド・レェを呼び出したのでは無い。

 ――キャスターは、血と恐怖を好む者であった。

 それが、言峰綺礼の本質だとでも言うのか。……知りたい、それが否定の言葉であるのならば。だから、意識がいからこそ、責め立てられるのだ。なぜならば、もし肯定されてしまったら。それはもう、誤魔化すことが出来なくなると言うことなのだから。

「……消えろ」

 魔力をカットすることで、キャスターの姿が揺らめき、やがて消える。

 投げかける必要の無い言葉はやはり、自然と漏れていた。それで、自己矛盾を否定しているつもりなのだろう、そう自己解析する。

「つくづく、愚かしく下らない人間だ」

 他人事のように、そう自分を評して。言峰は、奥へと歩いて行った。今までであったなら捧げる祈りも、もう彼には必要ない。今更神に祈ったところで、何かを取り返せる訳では無いのだ。いや、取り返すというのは変か。単純に欠けていたものを自覚しただけで、それ以上でも以下でも無い。縋る理由が無くなったから、必要なくなった。ただ、無価値になっただけ。それだけ。

 自室に戻って、ふと机を見る。上には、聖杯戦争のための資料。確定しているマスターの、明細情報が並んでいる。その内の、一枚を取り出した。

 衛宮切嗣。言峰綺礼にとって、彼は期待であった。自分と同じ空虚でありながら、それを満たした者。魔術師殺しの経歴を見る度に熱くなった胸も、今は無感動。

 それを破り捨てて、くずかごに落とした。もう綺礼には、彼は必要ない。埋めるべきであった部分は、全て己への失望で満たされてしまっている。

 椅子に腰を掛けながら。今日の朝届いた封筒を開き、中を改めた。聖杯戦争の為のものではあるが、魔術や神秘とは無関係である。中身は、明細書――鶏の、実に五百匹分もの料金が踊っている。決して安くない値段であるが、綺礼が代行者で得た金銭からすれば雀の涙。ついでに言えば、綺礼の魔術の師が宝石に使う金額とは、比較するのも愚かしい。

 黒魔術には、生け贄が付きものである――正確に言うと、キャスターが信じる黒魔術という体系は、魔術には無い。無いのだが、キャスターの宝具がそういうものである以上、敢えて否定しても面倒なだけだ。

 とにかく、キャスターの宝具を真に有効活用するのであれば、生け贄が必要だった。本当ならば、人間が一番効率がいいのだろう。しかし、神秘秘匿の面でも被害の拡大という面でも、それを良しとはできなかった。次に効率がいいのは猫であったが、保健所から引き取るにしても買うにしても、詮索される恐れが高い。畜産ならば、大量に買い失っても、誰も不思議には思わない。

 鶏十匹につき、人間一人と半分の効率。五百匹いれば、七十人から八十人分の生け贄が居ることになる。教会が所有する建物に、遮音結界を敷き、そこに分散して押し込めれば良い。街のどこにいても、大量の海魔を召喚できるだろう。

 キャスターに求められている役割は、至ってシンプルだ。バーサーカーの所持しない、対軍宝具への対処。

 時には宝具の盾となり、時には宝具の発動を阻害し。桁違いの性能を持つバーサーカーが、正面から戦える状況を作る。目標こそシンプルだが、それを達成するのは並大抵ではない。敵がどんな能力を持ち、どんな宝具をどれだけ所持しているか。それに対して、キャスターを触媒に海魔を操り、柔軟に対応しなければいけないのだ。

 キャスター持ち前の魔力だけでも、海魔を召喚できる。他のステータスを最低値にする代わりに、魔力ステータスを限界まで上げているのだ。一匹二匹召喚したところで、消耗にはならない。少しは訓練しておいた方がいいのだろうか……

(何を考えているのだ、私は)

 いつの間にか、真剣に戦うことを検討している自分を笑った。

 少し前までは、いかにして衛宮切嗣と接触するかで、頭がいっぱいだった。目的を失った今でも、真面目に戦おうとしている。

 敢えて言えば、性分なのだろうが……下らない。信心深くあろうとした自分を作る必要も、もうないのだ。

「まあいい」

 手に持った封筒を机に落とす。

 そう、別に構いはしない。聖杯戦争に、既に参加はしてしまったのだ。ならば、キャスターにバーサーカーを援護させ、自分も時臣を守る。義理の分だけ。意味がないならないなりに、上手くこなしてしまえばいい。

 しかし、それは。

 代行者として培った技と経験。それが敵対マスターに、十全に振るわれるという意味でもあった。

 

   ●○●○●○●○

 

 アサシンは、その部屋に足を踏み入れた。扉を開けた瞬間から、凄まじい鉄臭さが鼻孔を刺激する。しかし、目の前に広がる光景は。その刺激臭から考えられるものを、遙かに超えていた。

 床一面に広がっている血液。壁には肉が所狭しと並べてあり、醜悪な筋肉の赤と脂肪の薄黄が壁紙代わりに。しかし、真に驚くべき点は。およそ人間としての姿を止めていない彼らが、しかしまだ生きている、という事実だった。

 か細い悲鳴が、ひっそりと上がる。一つ一つは足音にすら負けそうでも、全て合わされば無視するのも難しい。

 およそ、正気の人間が耐えられない場所で。しかし、部屋の主は、鼻歌を歌いながら、新たな『壁紙』を作っていた。

「龍之介殿」

「ん? おお、センセイじゃん!」

 手に持ったメスを投げ捨てて、龍之介が大仰に両手を広げた。満面の笑みで、アサシンを出迎える。およそ、寸前まで人を解体していた人間のやる事ではない。

 アサシンが龍之介に召喚されて、結構な時間が経つ。その間両者の間に築かれた関係は、良好であると言ってもいいだろう。龍之介はアサシンをセンセイと呼び慕っているが、実体はギブアンドテイクに近い。 

 彼らが最初に現れたのは、血だまりの中だった。当時、龍之介は興奮していたやたら話しにくかったが。とりあえず、悪魔を召喚するための予行練習をしていた、というのだけは聞き取れた。

 明らかに享楽の為の殺戮現場に、しかしアサシンには、嫌悪の感情は無い。快楽殺人であろうと、理想を胸にした殺人であろうと、そこに違いは無い。暗殺という影働きに身を置く者の信条だ。だからこそ、確実に異常者であろう龍之介とも、上手く付き合うことができた。

「今日はどうしたの? もしかして補充?」

 まるでおねだりをする子供のように、龍之介。実際、彼は欲しがっているのだ。新たな生け贄を。

 常に血と恐怖と絶望を求めていたマスター。アサシンが最も危惧したのは、その方法だ。

 生け贄となる人間の獲得方法が、拉致。しかも、何ら後ろ盾のない人間。今まで捕らえられていなかったのは、彼の精神構造があまりに異質で、行動を捕らえきれなかっただけ。きっかけさえあれば、簡単に補足し、逮捕されるだろう。これから聖杯戦争に参加しようというのに、それはまずい。

 だから、アサシンがまず始めたのは、現代での経済と権力を手に入れる事だった。幸いに、聖杯から配られた知識はある。それを利用して、まず金を作る。それで海外マフィアの後ろ盾を作り、警察と交渉。龍之介への干渉をなくす事を約束させた。

 今彼が作業をしている部屋――正確に言えば、建物丸ごと――も、金で買ったもの。変に騒がなければ、通報されもしない。好き放題に振る舞える、龍之介の城だった。安くはなかったが、安全の為と思えば必要な出費である。

 それだけでは、今度は龍之介が満足できない。だからこそ、アサシンは後ろ盾になったマフィアのつてで、人を買う事にする。日本での戸籍どころか、ビザもない。いくら消耗しようと、誰も気にしなく、干渉される事も無い。人を拉致する面倒がなくなり、龍之介としてもその方が楽だったのだろう。

 一度状況が安定してからは、アサシンは技術をねだられる事が多くなった。

 元が暗殺者たる彼らは、当然拷問にも精通している。それは、龍之介を魅了するのに十分だった。龍之介は上手く殺さないように苦しめる技術を得て――驚くべき事に、アサシンにも彼から得る事はあった。ただ痛めつけ心を折るのではなく、精神的に追い詰める龍之介のやり方は、斬新であった。

 元より、現代知識の細かい補足や、種となる物資は彼から譲り受けたもの。それに加えて、意外な共通点があるのならば。ただのマスターよりも、少し親近感が湧く。

 実際、彼はアサシンにとって、ありがたいマスターだった。方針の指示はないものの、その分経験と多数の頭脳を生かして戦えば良い。変な指示を飛ばされるよりは、よほど上手く戦える自信があった。マスターの為に集めた人間の魂を喰えば、とりあえず消えることは無い。ステータスの大幅ダウンが問題と言えば問題だ。だが、逆に言えば下手に正面から戦おうと思わなくなった、とも言える。

 ベストではないが、ベターな共生関係。それがアサシンと龍之介だった。

「ええ、それもありますが……そろそろ始まります。ここに来るのは、今日で最後になるでしょう。

「マジで! っかぁー、そっか、ついにかー」

 大仰に天を仰いで、額を押さえる手で、血がべっとりつくのも気にしない。

 龍之介には、事前に聖杯戦争の事を説明済みだ。時が来れば、接触を可能な限り控える、という事も。

「オレもさ、ちょーっと覗いちゃ……」

「ダメです。絶対に許可できません」

「ああ、分かってるよ。センセイを困らせる気は無いからさ、そんな顔しないで。期間中は、なるべく大人しくしてるって」

 アサシンの一番の弱点は、マスターが魔術回路があるだけの一般人である事。そして、一番の利点は、マスターが魔術と全く関係ない一般人である事。

 人を集めるのに、一度も魔術的な方法をとったことは無い。今では全て、金銭で解決している。つまりは、アサシンのマスターである魔術師を探しても、絶対にたどり着けないのだ。関係を断ってしまえば、危険はさらに下がる。

 例え龍之介が何かしようとも、それはただの殺人鬼のやらかした事。聖杯戦争とは、全くの無関係。自分たちの能力を最大限に生かし、かつ必勝を狙うのであれば。これが最善だった。

「丸薬は持っていますか?」

「ああ、これね。ちゃんといつも持ってるよ」

 小瓶にはいった、三つの丸薬。それをポケットから取り出して見せる。

「連絡があった時、こいつを飲んでつよーく願う! そうでしょ? ちゃんと覚えてるって」

 そもそも魔術師では無い龍之介には、まともな手段で令呪が使えない。しかし、裏技じみた手段であれば利用は可能だ。

 使う必要がある時は、少ないであろうが。しかし、切り札は用意しておいて損は無い。令呪のような強力なものであれば、尚更だ。

「それでは、私もこれで」

「ああ、ちょっと待ってよ」

 背を見せるアサシンに、龍之介の声がかかった。彼はゴム手袋(衛生面からつけて貰うようにしている)を外すと、部屋備え付けの冷蔵庫を開く。取り出したのは、三本のワインだった。

「これ、みんなで飲むのに足りるかは分からないけどさ。景気づけに飲んでよ」

「……ありがとうございます。必ずや、勝利してきましょう」

「おう、その意気だ! センセイの武勇伝、終わったら聞かせてよ!」

 アサシンは思う。きっと自分は、どのような理不尽な命令でも、唯々諾々と従うものだと思っていた。しかし、このような関係も、悪くない。

 分厚い鉄の扉を軋ませながら閉じる。しっかりと閉じられたのを確認して、その場を後にした。

 街の死角にあるビルから出て、物陰に隠れつつ人目に付かぬよう走る。海沿いのそこから僅かにすぎると、下水の通った川にたどり着く。慎重に、視線がないかを確認しながら、下水道の一つに進入した。

 入り組んだそこを、よどみない足取りで進んでいく。

 たどり着いたのは、壁の亀裂。体を小さくして入り込む。最早道とも言えぬような場所を這っていった先には……部屋とも呼べぬような空間に、一つの粗末なテーブルと、あとは薄汚れたランタン。偶然見つけた、世界大戦時の塹壕だった。卓を囲むようにして、数人のアサシンが待機している。

 共通点などは、仮面くらいのものだ。誰一人として同じ体格の者はなく、感じる雰囲気も僅かながらに違う。しかし、彼らは志を同じくした一個の『アサシン』であった。

 手に持っていた酒を部屋の隅(と言っても、床と壁の境などあってないようなもの)に置いて、同じように並ぶ。

「では、報告を」

 アサシンの誰かが言った。誰であるかなど、誰も気にしない。どこまでも別人でありながら、同一人物の集まり。誰が宣言したところで同じだ。

「龍之介殿の様子にお変わりはない。追加で15人ほど閉じ込めておいたし、破棄寸前の者を21人ほど喰っておいた。魔力が十分とは言えないが、当面動くのに問題はない。付いているアサシンも、よく仕事をしている」

 彼らのマスターには、常に二人、アサシンをつけていた。龍之介が下手な真似をしようとした時、静止するための役割という事もあるのだが。それ以上に、万が一敵にマスターの存在を知られた時に、逃がすためである。一人がサーヴァントを引きつけて。もう一人がマスターを抱えて、全力で逃走する。そのために、彼らの中でもとりわけ真面目な者二名が配属されている。

 それぞれのアサシンが、各々頷き。報告は続けられた。

「武器の調達は、少し問題がある。指定した量に問題はない。が、予定の予算を大きく上回っている」

 僅かに、動揺が走った。

「禁じ手に手を出したか?」

 禁じ手、というのは、つまりアサシンらしい手段の事だ。暗殺、脅迫、その他諸々。定数は得られるだろうが、その代わりに足が付く可能性が高い。その中でも最悪なのは、魔術的痕跡を残してしまう場合だ。そうなれば、確実に敵マスターに知られてしまうだろう。

「いや、なんとか金銭で解決できた」

「なら構わない。どれほど消費されようと、金で解決できる限り安い」

 緊張した空気が和らいだ。絶対に必要なものである以上、どんな手段を使ってでも手に入れなければならない。だが、それで自分達がどういう装備をしているか知られれば、優位はかなり減るだろう。

 キャスターにすら、地力で負けかねない以上は。どんなに小さな手札でも、伏せるに限る。

「街の監視装置の配置も、一通り終わった。しかし、こちらも問題がある」

「またか……」

 アサシンの一人が、うんざりしたように漏らした。

「こちらは調達班よりも、急を要する問題だ。街の中に、我々のものとは違う監視装置が配置されている」

「なんだと?」

 今度の緊張は、先ほどの比では無い。全員が確かに、体をこわばらせた。

 現代科学の有効利用というのは、アサシンにとって切り札に近い。そう思わせていた理由は、魔術師は最新技術というものを嫌悪するからだ。まともな魔術師であれば、使い魔を利用し、機械に頼らない。

 つまり、まともでない魔術師が参加しているのだ。それも、おそらくはアサシンに極めて近い。

「設置していたのは、女だった。観察した限り、マスターではない」

「つけたか?」

「いいや。敵サーヴァントに気付かれかねないような事はしない。奴も慎重に移動してはいたが、さすがに監視の全てをかいくぐることは不可能だった。西……恐らくは森の方に抜けていった」

「と言うことは、御三家のどこかだな。厄介な……」

 結界を敷かれた森の中に拠点を構えるなど、ある程度の準備ではできない。つまりは、事前に慎重な準備を繰り返した御三家のどこか以外ではありえなかった。

 高確率でアインツベルンだろうが、そう思い込んで間違っていた時が恐ろしい。最有力候補として覚えておくが、今現在では、まだ未確定だ。

 確実に強力なサーヴァントを送り込んでくる陣営が、同質の手札を持つ。確実に、一番の強敵になるだろう。

「我々が機械を使用している、というのは、既に相手に知られているだろう。より一層慎重に動く必要が出てきた。各自、注意をしてくれ」

「手札が知られてしまったのは痛いが……考えようによっては、今知ることが出来て良かった。同じ事をする相手がいると分かっていれば、対策も取れる」

 例え、機械の扱いで上をいかれていたとしても。アサシンであれば、彼らに絶対不可能な、人海戦術を行使する事が出来る。どう足掻いても、アサシン以上に警戒網を張り巡らせる事は不可能なのだ。

 監視箇所を増やす必要があるだろう。アサシンしか分からないような逃走経路のあぶり出しなど、やることが増える。

「一般人の動員は、順調に増えている。こちらは至って順調だ。何も問題は無い」

「うむ。科学と我らの目に頼らぬ、第三の目か」

「龍之介殿の発想には驚かされる」

 サーヴァントであるアサシンは、派手に監視はできない。非力極まりないのだから、見つかった次点でアウトなのだ。機械で補うのも、限界があった。

 さらに情報収集の量と精度を高めたい――それが高望みであると自覚はあった。しかし、それでも何か無いかと思考を巡らせる。下手をせずとも、正面からではマスターにすら負けるのだから、当然だ。

 それを解決したのが、龍之介だった。

 曰く「自分達でできないなら、誰かにやらせればいいじゃない。お金を渡せば、やる人は結構いるんじゃないの?」である。

 魔術師の監視に、一般人を使うというのは盲点だった。幸い、各陣営マスターの顔写真は入手している。ならば、まずそれを町中に広める。そして、アンダーグラウンドに顔写真の情報を流したら、賞金を渡すとした。当然誤情報も多いだろう、しかし情報の整理さえできるのならば。これほど頼りになる監視も無い。

 単純に、写真を広めただけでも目立つであろう。誰かに見られている、と自覚しても、暗示での対処もできない。皆が知っているのに、その一人だけ記憶が欠け落ちれば。どこで破綻するか分かったものではない。なにしろ、街にいる誰でも、その人物を知っているのだ。きっかけはいくらでもある。破綻すれば、つまりそれは魔術の露見であり。事実上、対象法が存在しなかった。

 なんとかして、顔の広まっていない七人目のマスターを見つけようとするだろうが。それは至難の業だ。痕跡を徹底的に消したアサシンが、証明する。

 そして、この件において、アサシンは何一つ攻められる理由がない、というのが最高だ。

 広めたのは顔だけ。魔術に関係ない、事実無根な噂くらいは並ぶだろうが。あくまで、一般人的な噂の範疇なのだ。もし魔術が発覚したとすれば、それは魔術師本人の責任である。

 それ以降の報告は、さしたる問題なく進んでいく。そして、全ての報告が終わり。また、各自の役割に赴こうとした時だった。一人のアサシンが、静止をかけた。

 取り出すのは、部屋の隅に置いておいた三本のワイン。テーブルの上に置く。

「これは、龍之介殿が我々のために用意しておいてくれたものだ。勝利を願う想いと共に。各自、一口ずつになるだろうが、心して味わえ」

「おお……」

 感動の声すら、部屋に漏れて。

 一人一人が、少しずつ口の中に流し込んでいく。飲み込んでは、次のアサシンに変わり。全てのアサシンが口をつける頃には、ワインはなくなっていた。

 地面に、空になった瓶を転がしながら。女のアサシンが言う。

「それでは、始めよう。暗殺者たる我々の、初めて自分達の為に行う、初めての戦争を」

 そして、ランタンの火が消えて。

 ただでさえなかった気配が、さらに希薄になり。光の届かぬ地中からは、闇以外の全てがなくなった。

 

   ●○●○●○●○

 

 人が動くには、感情が必要である。

 難しい話では無い。要は、モチベーションという事だ。

 欲望から始まり、反骨心や怒りなど。プライドやこだわり、愛というのも、人を動かす理由になる。方向性に意味は無い。問題なのは、持っている感情が、どれほど大きいかだ。惰性、というものでも、人は動けるだろうが。それに支払える代償など、労力くらいのものだ。それこそ、命を賭けるならば。明確な方向と、大きな感情の発露が必要になる。

 ディルムッドにとっても、それは同じだった。彼に取っては、忠誠心という無念と、騎士道という誇り。それらを満たすために、死してなお戦い続けている。

 しかし。

 その想いは今、大きく揺らいでいた。

 栄光とは、つまり人を正しく導くもの。その走者となることが間違いだとは、今でも思っていない。人が正しく進むためには、正しく輝く導が必要なのだ。

 霊体化していても感じられる愛槍。それから感じられる力は、なとも儚いものだ。

 誰しもが憧憬を描く正しさ。

 それがあれば、何でも正しくあれると信じていた。しかし、ランサーは知ってしまった。理想ではどうしようも無いものが、確かにあると。

 主に命じられた通りに、待機していた部屋。その扉が開かれる。崩れ落ちるように入ってくる人物など、ランサーを呼び出したマスター以外にあり得ない。

「主殿、お体に触ります!」

 床にたたき付けられそうだった体を、すんでの所で受け止めた。全身には、もはや痙攣させるだけの力も無い。

 しかし、

「……大丈夫だ」

 消えそうな声で、そう言った。力が入らないはずの手で、ランサーの腕を握りさえしながら。

 確かに、慣れてはいるのだろう。如何なる拷問であっても、同じ事を一年もの長きにわたり続けていれば、慣れもする。しかし、ランサーは全力で叫びたかった。

 慣れているのと大丈夫なのは、全く違う!

 慎重に体を持ち上げて、ベッドに横たえる。苦しげにうめく雁夜を見下ろしながら、ランサーは強く唇を噛んだ。どんな戦であっても、どんな時であっても、これほどの無力を感じたことは無い。

 雁夜がランサーを呼んだのは、昨晩の事だった。呼び出されてまず、ランサーが思った事は。この邪悪の坩堝は何なのだ、という事だった。感情と行動を切り離して、頭を垂れた相手。それは、今にも死にそうな姿で這いつくばる男だった。一瞬、その男が召喚者であると気づけないほど、惨めな姿。

 そのまま昏倒した雁夜とは、まだ碌な話をしていない。それでも分かったことが、一つだけある。

 この家は、悪意の塊だ。この家の空気も、魔術も、土地も、人も。何もかもが、悪意を振りまき、悪意に晒されている。誰も、幸福になどさせない――そう言っているような、最早呪いの域にある家だ。

 唯一の例外、それが事実上の当主である間桐臓硯だった。奴だけは、悪意に晒されず、ただ悪意を与え続けている。

 そのような存在、ディルムッド・オディナが許せるはずも無く。その首を取ってくれようとは考えた。

「桜ちゃん……は?」

「はっ、無事です。お変わりなく、部屋で休まれています」

 答えを聞いて、雁夜が僅かに微笑んだ。しかし、それとは対照的に、ランサーはぎりぃっ、と歯を食いしばる。

 間桐臓硯は、ランサーが召喚されてすぐに、その場に現れた。首に槍を走らせようとする前に、体を虫に分解する。その様子に驚きながらも、ランサーは理解せざるを得なかった。この化け物は、最低でも対軍宝具を持たねば倒せない。

 いくら魔術師に対する絶対の優位、対魔力と破魔の紅薔薇があっても。殺しきれぬのでは、意味が無い。ランサーは理解した。だからこそ、虫の翁は、雁夜にランサーを召喚させることを許可したのだと。

 無論、彼ほどの力があれば、近くに居るだけで虫を寄せ付けない事くらいはできる。それを利用して、桜に対する虐待は一時的に停止していたが。それも、聖杯戦争が終わるまでの話だ。それが分かっているからこそ、臓硯も放置して、あざ笑っているのだ。

「う……」

 うめきながら、雁夜が身を起こそうとする。

「今、起きられては……」

「明日にはもう、聖杯戦争が始まるんだ。休んでる余裕は無い。方針を、決めるぞ」

 動くだけでも――いや、生きているだけでも辛いはずだ。体の内から啄まれ、緩慢に死に行く恐怖など、ランサーには想像できない。そして、そんな仕打ちを受けながらも、なお誰かの為に戦える雁夜の強さも。

 確かに、彼が言うとおりに、もう猶予は無い。臓硯の言葉を信じるならば、他の陣営はとっくにサーヴァントを呼び出しているのだ。戦略という面で、明らかに遅れを取っている。しかし、それは仕方がない事だ。

 雁夜が起き上がるのを助けながら、ランサーは密かに確認した。その体は、昨晩に比べて僅かに軽い。日常生活上での変化、というだけではない。明らかに、虫に食われて、物理的に肉を失っている。サーヴァントの召喚は、確かに負担がかかる。だが、これほど肉体を酷使しなければいけないものでもない。長期間維持するとなれば、それだけで死んでしまいかねなかった。

 そんな状態で、事前に呼び出し準備など出来ようはずも無い。

 しかし、何よりも問題なのが――

「いいか、ランサー。確実に、時臣のサーヴァントを殺すんだ。時臣自身も殺せ。後は、俺たちが勝てば……桜ちゃんは幸せに暮らせる」

 間桐の悪意は、今もなお雁夜を蝕んでいる、という事だった。

 彼が動くための動機にしたのは、嫉妬と殺意だ。ランサーが騎士道を縁としたように、雁夜もまた、それに頼って命をかけた。いや、それだけに縋って、命を長らえている。

 なにより最悪なのが、彼が与えられている苦痛と桜への仕打ち。それが、感情を際限なく加速させている事だ。もしかしたら、臓硯はそこまで計算済みで、痛めつけているのかも知れない。だとすれば――間桐臓硯は、もはや人間では無い。人間のつもりなだけの、ただの化け物だ。

 マスターは間違っている。それは断言できる。しかし、どうすればそれを正せるのかが分からなかった。

 騎士道を見せればいいのだろうか。栄光を見せて、そここそが正当であると示せば済むのか?

 そんな訳が無い。人のために命を賭けようという者が、正しさを知らぬ事などありえない。人の幸福を願う者が、光を知らぬ、そんな下らない話は無い。それを知っていて、正しさに目を眩ませながら、しかし地べたを這いずる。そうしなければ、理不尽に捕われ、前に進むことも出来ないのだから。

「ランサー?」

 声をかけられて、はっとした。いつの間にか、考え込みすぎていたらしい。

「どうかしたのか?」

「いえ……」

 雁夜の前に改めて膝を突き直し、頭を垂れる。苦々しく歪んでいるであろう表情を見られぬように、顔を伏せて。

 どうすればいいのだ。思考がぐるぐると、頭の中を巡る。騎士道では、彼を救えない。今まで頼りにしてきたものが、ここでは何の役にも立たなかった。

 しかし――それでも、と決意した。それが無意味であっても、ランサーには他に、道しるべにできるものがないのだ。

「主よ、恐れながら、発言する許可を下さい」

「あ、ああ。そんなに堅苦しく構える必要はないぞ」

「どうか、遠坂時臣の殺害を、考え直していただきたいのです!」

「……なんだと?」

 雁夜の顔が歪んだ。怨念だ。視線を合わせずとも、それの圧力が後頭部を押しつぶそうとする。負の感情に身を焼き続けた者の執念、それはサーヴァントにさえ届いた。

 降りかかる感情に、口が勝手に閉じる。忠誠を願う感情も、そのまま閉じてしまえと言った。しかし、それでもランサーは言葉を続けた。

 唯々諾々と従うだけが忠誠では無いはずだ。主が道を違えようとしてるのであれば、それを正すのも、忠臣の役割の筈だ。だから、言わねばならない!

「親なのです」

「何を……」

「どのような者であろうと、桜殿にとっては親なのです。もう一度お願いいたします、主殿! どうか、子から親を奪う真似は、おやめ下さい!」

 これで、自害を命じられるのであれば、それでもいい。正気にさえ、戻ってくれるのであれば。

 そして沈黙の時間は。数秒か、数分か、どれほどであっただろう。決して長くはない。しかし、ランサーには、それが一年もの長きにも感じた。

「なら」

 どさり、と音がした。顔を上げる。雁夜が、体から力を抜いて、ベッドに転がった音だ。

「なら、どうしろって言うんだ……。このまま桜ちゃんを帰しても、同じ事の繰り返しだぞ。お前は、どうすれば正しいって言うんだ」

「一つ、考えがあります。遠坂時臣を、遠坂の魔術師として終わらせてしまえば、それで済むのではないでしょうか」

「魔術師として?」

 泣きそうな声で、返してくる雁夜。

「それでは同じだ。魔術回路を破壊すれば、魔術師は生きていられない。全身の神経を壊すのと同じなんだからな」

「それは私も存じております。遠坂時臣を魔術師でなくすのではなく、遠坂の魔術師でなくしてしまうのです。つまりは、魔術刻印の破壊」

 そして。振るえていた雁夜の体が、停止した。転がったまま、ゆっくりと視線だけをランサーに飛ばす。

 魔術刻印とは、つまりは一族の集大成。はっきり言ってしまえば、魔術回路よりも遙かに重要なファクターなのだ。いくら魔術回路が優秀でも、それは所詮、本人が優れているに留まる。しかし、一族の魔術の奥義を記し、集めた魔術回路は。家そのものが優秀であると言わせるのには、不可欠な要素なのだ。

 確かに、それがなくなってしまえば、遠坂の魔術師とは名乗れなくなる。名乗った所で、それを証明する魔術刻印がなければ、誰も相手にしないだろう。刻印を失うというのは、そういう事なのだ。

 遠坂時臣が、魔術師としての地位さえ失ってしまえば。どこに養子に出そうと、買いたたかれるのは簡単に予想できる。子供が優秀ならばなおさら、疑念は絶対に晴れまい。つまりは、もう家から出される事は無い。

「いや、待て」

 雁夜は慌てながら、体を起こす。もうそこに、狂気の色は無い。ただの狼狽と、少しの希望。

「魔術刻印は、ちょっとやそっとの損傷でなんとかなるものじゃ無いって言うのは、俺でも知ってるぞ。傷ついても勝手に治るし、体が駄目になっても、別の位置に移せばいいだけかも……」

 混乱し、言葉が定まらない。

 それを制するように、ランサーは左腕を掲げた。そして、具現化される必滅の黄薔薇。

「我が必殺の槍であれば、どれほど小さな傷であろうとも、決して治りません。それが、例え刻印であろうとも。魔術刻印は、半生物のような設計図。いつまでも損傷したままであれば、元通りにはならないでしょう」

 ――言ってしまった。策を口にしてしまった事に、小さからぬ後悔。誇りを一つ捨てたことの後悔が、胸を痛めつけた。

 それはつまり、ランサーはアサシンの真似事をして、マスターを狙うという事だ。確実を期すならば、戦闘中に漁夫の利を狙うような。そして、少なくとも刻印が壊れきるまでは、逃げ続けなければならない。

 騎士として誇りある戦でもって、主に勝利を捧げる。それを放棄する、という事に他ならない。それは、騎士である事に死の際まで貫き続けたランサーには、自らを殺すのに等しい行為だった。

 ならば。黙って、主を偽って戦うのが正しかったのだろうか。自分に都合がいいものだけ追い求め、密やかに裏切って。この地獄でも生きなければならない、主とその庇護者を見捨てて。それだけは、断じてない。そんなものは、忠誠では無かった。例え、騎士としての姿を放棄しても。騎士の心までは、捨てられない。

「そうか……そうか……! ランサー、頼む、桜ちゃんを……」

 ランサーに縋り、涙を流して縋る雁夜。彼の背中を叩きながら、思う。

 今度こそは、忠義に生きる。そう誓って、聖杯戦争に参加した。

 ならば、これでいい。

(すまぬ、まだ見ぬ武人たちよ。俺はもう、正々堂々とは戦えん)

 心の中でだけ、見たことも無いサーヴァント達に謝罪する。誹るならば、それでも構わない。いくらでも罵ってくれれば良い。しかし、遠坂時臣の刻印と、聖杯だけは必ず手に入れる。

 槍と、地獄を生きる主と、彼の守る娘に誓って。それが、今生のランサーが生きる意味なのだから。

 

 

 

 こうして役者は揃った。誰もが、本来与えられる役割から逸脱して。

 険しい道を、しかし誰もが進み続けるだろう。聖杯という奇跡を欲し、身に余る奇跡を望むのであれば。何が変わろうと、誰にも止められぬ運命。

 そして歯車は――




回りません。これで終わりです。
ふと思いついたの方がちょっとつまったので、気晴らしに書きました。そちらはもう少しお待ち下さい。

よくあるサーヴァントシャッフルネタを、zeroでしてみました。コンセプトは令呪の有効活用。本編では空気だった令呪さんも、この組み合わせなら無双してくれる、といった感じで。
マスター達の、まともに見えながらも匂い立つダメ人間臭を感じていただければ幸いです。
多分海魔集団&バーサーカーVS宝具ライダー軍団とか、原作アーチャーじみたセイバー無双とか、アサシン先生による閉鎖空間で一般人を暴徒化し、マスターを襲わせるとか色々あるのでしょう。そこら辺は皆様の想像にお任せするという事で。


おまけ 各サーヴァントンのステータス

クラス名
ライダー

真名
イスカンダル

マスター
衛宮切嗣

パラメーター
筋力:B
耐久:A
敏捷:C
魔力:A
幸運:D
宝具:EX

備考
鬼チートさんその一。ステータス的は敏捷のみライダーにあるまじき数値だが、総じて高水準。真価は宝具にある。マスター補正で幸運ががた落ちなのは予定調和。
令呪は全て王の軍勢に使用される事に。切嗣は、それで殲滅しきれなくても、可能な限り多くのサーヴァントを封じてその隙にマスター殺しを、と思っている。
もっとも、一番大きな要素は、切嗣がサーヴァントと連携を取れる、という点だろう。時臣を言峰が守り、ケイネスに油断がないので、そう上手くはいかないが。


クラス名
アーチャー

真名
ギルガメッシュ

マスター
ウェイバー・ベルベット

パラメーター
筋力:C
耐久:D
敏捷:C
魔力:B
幸運:A
宝具:E~A++

備考
大幅な弱体化。それでも宝具が宝具なため、戦闘能力的にはさほど問題は起きない。しかもステータスは宝具のバックアップでいくらでも増幅可能であり、あまり意味が無い。
魔力ダウンにより、宝具からEXが消えたのは痛いかも知れない。エアが放てる回数は、恐らく二発が限界。それすら戦闘を極力回避しての話である。
ただし、ギルガメッシュがウェイバーをおもしろがっている為、彼の作戦に従ってやろうとは思っている。勝敗はウェイバーの作戦にかかってるだろう。


クラス名
セイバー

真名
アルトリア・ペンドラゴン

マスター
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ

パラメーター
筋力:A
耐久:A+
敏捷:A
魔力:A+
幸運:A
宝具:EX

備考
鬼チートさんその二。ケイネスの決断により、魔力供給マスターが二人に。総合力は間違いなく今回最高。どのサーヴァントにも優位に立ち回れ、かつ勝てる可能性がある。正しく最優のサーヴァント。
アヴァロン返却済みなので、宝具はEX。鞘の再生力上昇。耐久力も、BからA+まで上昇している。必滅の黄薔薇でダメージを受けても、時間経過で回復可能である。平押しでギルガメッシュに勝ちかねない。
セイバーの進言により、ケイネスも他マスターを警戒しており慢心はない。マスター殺しも通用せず、逆に殺される可能性大。ただし搦め手には弱め。


クラス名
バーサーカー

真名
サー・ランスロット

マスター
遠坂時臣

パラメーター
筋力:A
耐久:A
敏捷:A+
魔力:A
幸運:A+
宝具:A++

備考
鬼チートさんその三。戦闘のステータスは限界いっぱいだったが、魔力と幸運が大幅上昇。宝具なし接近戦は最強。
戦闘持続時間が長く、マスターが良い装備を用意出来る事もあって、原作より遙かに強い。ただし、宝具に偏りがあるので自分の距離で戦えないと弱い。多分セイバーにひっぱたかれる。
魔力が十分で、かつ狂化のステータスが低いので、時臣の制御は万全。己が栄光の為でなくも完璧に使いこなせるが、操縦者が時臣なので多分有効利用される事はない。


クラス名
キャスター

真名
ジル・ド・レェ

マスター
言峰綺礼

パラメーター
筋力:E-
耐久:E-
敏捷:E-
魔力:A+
幸運:E-
宝具:A+

備考
令呪最初の一つにより、意識を剥奪されている。完全に宝具の為の装置。ステータスを犠牲にして、魔力を限界いっぱいまで上げている。
生け贄に購入した鶏を、それでもたりない時は式場に持ち込まれる遺体を利用して、海魔を生み出す。バーサーカーの苦手な部分を補う為に利用される。
言峰は、ジルを呼び出したせいで自分に絶望しやる気がない。そのため切嗣への興味も失った。ただし、その分仕事はきっちりこなす。余談だが、意識の無いキャスターは常に白目。


クラス名
アサシン

真名
ハサン・サッバーハ

マスター
雨生龍之介

パラメーター
筋力:E
耐久:D
敏捷:B
魔力:D
幸運:E
宝具:B

備考
最弱のサーヴァント。分裂すると、マスターの大半に勝てない。宝具とスキルは健在。決断力に欠けるが、その変わり経験を存分に生かす。他の陣営にはない第三の武器、街の情報操作で挑む。
一般人がマスターなので、ステータスは最悪。しかし、それがかえってサーヴァントと戦うという選択肢を完全に排除した。マスター狙いの漁夫の利を得ることにのみ集中。現代の利器を有効活用している。
マスターと主従と言うよりも、友人のような関係。聖杯戦闘と無関係な位置に置いたので、マスターを狙われる事はまずないと踏んでいる。


クラス名
ランサー

真名
ディルムッド・オディナ

マスター
間桐雁夜

パラメーター
筋力:C
耐久:D
敏捷:A+
魔力:E
幸運:E
宝具:B

備考
マスターが三流な上、魔力消費をかなり抑えているので弱い。それでも最大の長所である俊敏だけは残している。
主の惨状を知り、騎士としての忠誠心を戦闘そのものではなく結果で示そうとしている。宝具の特性を利用した一撃離脱戦法を考えているため、ステータスは低くとも厄介。
マスターを哀れみはしたが、同時に願いの歪さも知り進言。それが受け入れられ、騎士道を曲げてでも目的を達する覚悟をしている。強くはないが、厄介な組。


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