龍の花嫁   作:紅裂凛

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幼少期〜雪山での記憶2〜

「ん…ぅ…」

 

 

(あったかい…とくとく音が聞こえて安心する…)

 

 

「ようやく気が付いたか?」

 

「…おっきいねー」

 

「ククッ、第一声がそれか」

 

 

ようやく目覚めたコウが目にしたのは大きな体で 黄色い外殻に青の縞模様が特徴の轟竜 ティガレックスだった。

 

コウの第一声に思わず笑いを零すがティガレックスのその声は鳴き声と一緒に聞こえてくる。

 

よく見ると横たわったティガレックスがコウの体を暖めるように自分の体の方へ抱き寄せているのが分かる。

 

鋭い牙や爪を持つティガレックスは恐怖の対象である筈なのだが、コウにはこのティガレックスが悪い存在には思えず安心したように体を預けた。

 

 

「お外凄いねー」

 

「吹雪だもんな」

 

「でもここはちょっと暖かいね」

 

「洞窟の中だからな」

 

「ドラゴンさんお名前はなんて言うの?」

 

「唐突だな。俺はお前達人間には轟竜やティガレックスなどと呼ばれている」

 

「ごうりゅう?ティガレックス?うーん…長いからティーちゃんでいい?」

 

「て、ティーちゃん…?まぁ、良いだろう」

 

ティーちゃんと呼ばれたティガレックスは困惑した表情を浮かべた(ように見える)が、大人しくその名前を受け入れた。

 

 

「ティーちゃんが私を助けてくれたんだよね?」

 

「あぁ、ポポ肉を食べに雪山に来たら変わった匂いがしたんで辿って行ったらコウ、お前が居たんだ」

 

「そうなんだ…ってあれ?私ティーちゃんに名前教えたっけ?」

 

「覚えてないのも無理はない。俺に名前を言った後すぐに気絶したからな」

 

「そっか…ティーちゃん。ありがとう」

 

 

コウは体制を少し変えるとティガレックスに抱きついた。少しざらついた皮の感触が伝わってくる。

 

 

「ティーちゃん温かいね…」

 

「そうか…もうすぐ朝になる。その前に少し寝ておけ」

 

「分かった…おやすみなさい…」

 

 

一気に疲れが出たのかコウは数分と立たずに寝てしまった。

 

ティガレックスはコウを起こさないように抱きしめ直すと、己の体に寄り掛かって眠るコウを見つめながら朝を待った。

 

その顔は何処か懐かしいような、それでいて寂しそうな顔でもあった。

 

 

 

---------------------

 

 

 

「おい、起きろコウ」

 

「んー…おはよう、ティーちゃん」

 

 

コウが目を覚ますと洞窟の外は明るくなっており吹雪も止んでいた。

 

 

「ほら、行くぞ」

 

「え、うわッ、ちょ!ティーちゃん!?」

 

「ククッ、マヌケな声出してんじゃねぇよ」

 

「急に投げられたんじゃ誰でもびっくりしますー!」

 

 

そう、ティガレックスはコウを傷付けないように爪の尖ってない方で掬うように投げ、器用に背中でキャッチした。

 

 

「落ちないようにしっかり捕まっとけよ」

 

「わ、分かった!」

 

 

コウの返事を聞くと、落とさないように細心の注意を払いながら歩き出した。

 

 

 

 

---------------------

 

 

 

その頃、我が子が村の何処を探しても見付からないためコウの両親が雪山の捜索のためベースキャンプへと来ていた。

 

 

「あぁ…コウちゃん…どうか無事でいて」

 

「母さん、きっとコウは大丈夫だ!さぁ、行こう!」

 

「えぇ、行きましょ…ッあれは!?」

 

「何でこんな所にティガレックスが!?」

 

 

悠然と前から歩いてきたティガレックスに2人の中に最悪の事態がよぎる。

 

ティガレックスは獰猛な性格をしており、我が子がティガレックスの目の前に晒されていたら命の保証はない…と。

 

だがしかし、予想外の事態が起こった。

 

 

「お父さーん!お母さーん!」

 

「「コウ(ちゃん)!!?」」

 

 

今正に雪山へ探しに行こうとしていた我が子が出会わないでいてくれと願っていたティガレックスの背中からひょっこりと顔を出したのだ。

 

 

「コウの親か」

 

「うん、お父さんとお母さんだよ」

 

「なら行って安心させてやれ、俺はここから先には行けない」

 

 

ベースキャンプにはモンスターが近付かないように人間には感知できないような特殊な匂いがしているため、ティガレックスはここから先には行けないようだ。

 

 

「そっか…ねぇ、ティーちゃん」

 

「なんだ」

 

「また会いに行ってもいい?」

 

「…やめとけ、また遭難するぞ。次も俺が助けてやれるとは限らないからな」

 

「うー…じゃあ、私がもうちょっと大きくなって雪山でも迷わなくなったら会いに行く!」

 

「ククッ、大きくなったらか。何時になるか分からないが待ってるさ」

 

「うん!絶対だからね!」

 

 

そこまで言うとコウはティガレックスの背中から降り両親の元へと向かった。

 

両親にはティガレックスの声は鳴き声にしか聞こえなかったが、話をしているようなタイミングで上がる鳴き声と我が子の表情に驚きを隠せないでいた。

 

 

 

「お父さん!お母さん!」

 

「コウちゃん!怪我はしてない?大丈夫?…本当に心配したんだから!!」

 

「あぁ…コウ。本当に無事でよかった!」

 

 

2人はコウを抱きしめ、生きていた事の喜びを噛み締めた。

 

 

「ティーちゃんが助けてくれたんだよ!」

 

「ティーちゃん…?まさかあのティガレックスのことか!?え、何で??」

 

「うん!お名前長いからティーちゃん!」

 

「まぁ!ティガレックスが助けてくれたなんて…それは本当なの?」

 

「本当だよ!ティーちゃんもそう言ってたし」

 

 

父親はコウの言っている言葉を上手く理解出来ていないのか大分混乱している。

 

母親はコウの目を見て本当の事なのだと悟るとコウの頭をひと撫でし、ティガレックスの居る方へと歩き出した。

 

 

「あ、おい母さん!危ないぞ!」

 

「ティーちゃんは危なくないの!」

 

父親は妻がティガレックスへ歩き出したことに驚き止めようとするがコウに阻まれ動けない。

 

 

「なんだ」

 

 

ティガレックスの口から唸り声が聞こえる。

 

母親はその声にビクッと肩を震わせたが意を決してティガレックスへ向かって頭を下げた。

 

 

「私達の愛しい我が子を救って頂きありがとうございます。あなたが助けて下さらなかったらあの娘の命はなかったと思います。…本当にありがとう」

 

 

泣きながらお礼を言う母親の姿を見たティガレックスは言葉は通じないと分かっていたが声を上げる。

 

 

「俺はコウだから助けたんだ。…ま、精々また迷い込まないように見張っておくんだな」

 

 

そう言ってティガレックスはコウの方を見た後、ゆっくりと体を反転させ雪山へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 




ティガレックスことティーちゃんとの初対面の話はこれにて終了です。

次回は再会のお話を書いていきたいと思います。
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