赤き龍の道程 作:盾雪
やり過ぎじゃない? という場合には感想等いただけると幸いです。
まぁ、既にやり過ぎちまった感はあるがな!
日曜日の朝7:30。
「イッセーくーん! あそびに来たよー!」
ご近所付き合いから発展し、両親ぐるみで仲がよくなった紫藤イリナが遊びに来る時間だ。
正確には遊びに来る、というよりも兵藤一家にしてみれば家が離れた娘のような感覚の方が強いだろう。
イリナの家は日曜日の朝早くから仕事のある家庭である。そのため、こうしてまだ幼く、足手纏いにしかならないイリナは兵藤家へ遊びに来るのだ。
「いらっしゃい、イリナちゃん。一誠を起こしてきてくれる?」
「おじゃまします、おばさま! おじさま! イッセーくーん!」
「……一誠は恵まれた奴だなあ、母さん」
「そうですねぇ……」
だっだっだ、と勝手知ったる我が家のように階段を駆け上がっていくイリナの背中に、血の繋がっていない両親は微笑む。
その生暖かい視線には『あぁ、ウチの息子の将来は決まったようなものだなぁ』という期待が篭っていない事もない。
部屋の扉が開け放たれる音と共に苦悶の声が兵藤家の食卓まで響いてくる。
ぐえぇっ、というような声は此処兵藤家の一人息子である兵藤一誠(※以後イッセー)のもの。
「いたいいたい! まって、いりな! 起きるから!」
「ほらぁ! かおあらってこーい!」
可哀想な事に、これが未だ目覚めていない今代の赤龍帝(5)の日曜朝の光景なのである。
-●○●-
――バスタァアアキィィックゥウウ!!
「いっけぇ!」
「やっちゃえ!」
朝食も取り終えた後の兵藤家のリビングで、子供二人のテンションは最高潮に達していた。
日曜朝8時から放送する、変身ヒーローモノの特撮はイリナとイッセーが大好きと言っても過言ではない番組枠である。
「おのれ!!
「くっくっく! このじゃおうしんがんほゆうしゃであるわたしのまえでは、きさまなど……えっと……か、かきたれ? どうぜんよ!」
「くらえ、えくすかりばー!」
「ふっ! きかぬわ! ごるごんのめ!」
そのヒーローを真似した、ちょっとしたごっこ遊びをするくらいには。
……ちなみに前のほうがイッセーで後がイリナである。
痛いセリフ回しと、間違えてではあるが放送禁止的な意味でヤバげな言葉を発しているのだが、本人たちはまだ自覚していない。
見ている側としては微笑ましくも、緊張感漂う光景だ。イリナも一応女の子である。先ほど見ていた特撮の敵役はイケメンで真似をしたくなる気持ちを、様子を見ている兵藤母もわからないでもないが……取りあえずイリナには後でお説教が決定した。
女の子がそんな言葉使っちゃいけません、と。
そもそも、女の子がこんな乱暴な遊びをしていることにも、多少の問題があるかもしれないが……まぁ、しかし元気の良さではイッセーの倍をいくのだから仕方がないと、兵藤母はあきらめている。
その元気がよすぎてイッセー当人はイリナのことをつい最近まで男の子だと思っていたぐらいだ。
知った経緯というのはよくある話で、一緒にお風呂へ入ったときのこと。
イリナに付いてない! と丸出しで風呂から出てきた自分にげんこつを落としてきた母と父がいたためだ。イッセーは身を持って知った。
子供のごっこ遊びというのは喧嘩になりやすい。頃合いをみて母はイリナを止め、父は息子を止める。
「麦茶入れたから、イリナちゃん」
「休憩したほうがいいぞ。イッセー」
そうして止められたお子ちゃまの二人は、冷えた麦茶で火照った体を静めるのだ。
しかし、時計を見れば時間は11:00。
「遊びに行こ、イッセーくん!」
「おう、行くか!」
休憩もそこそこに。
「「行ってきまーす!」」
「いってらっしゃーい!」
「二人とも、道路に飛び出たらだめだぞー!」
呆れ混じりに両親は二人を送り出す。
こうして二人は外へ遊びに行くのだった。
イッセーとイリナが向かったのは公園。その茂みだ。かなり草木が生い茂っているのだが、丁度子供一人くらいが通れるような穴があいている。そう、ちょっとした天然のトンネルになっているのだ。
そこをくぐり抜けると、それなりに広い空間が広がっている。二人の秘密基地とでもいうような場所だ。
大人に見つかれば、子供だけで危ない! と怒られてしまいそうなため、此処のことは二人だけの秘密である。
「イッセーくん、ドライグ出して」
「いいよ。ドライグ!」
『おお、娘っ子。一週間ぶりだな。それにしてもだ。俺は確かにドライグだぞ? だが、コレは
「言いにくいもん」
『ははは、だろうな。俺のことはお前のかーちゃんととーちゃんには言ってないだろうな?』
「うん。言ったらイッセーくんと離ればなれになるんでしょ? それは絶対イヤ」
『それでいい。おう、モテモテだな相棒?』
「おう……? そうなのか??」
『はぁ……娘っ子。頑張れよ』
「うん!(何をがんばればいいかわからないけど!)」
二人しか知らない、二人しか居ないこの場所で厳ついオッサンの声が響くのはおかしな現象だろう。さらにいうと、イッセーの腕に赤い籠手ついているのもオカシイ。だがイッセーとイリナにとっては普通のことだった。
『赤龍帝』
『ウェルシュドラゴン』
『ウェールズの赤い竜』
『二天龍の片割れ』
この神器と呼ばれるモノに宿っているのはドラゴンである。厳ついおっさんの声の主であるこのドラゴンの名をドライグ。
この赤龍帝の宿る神器がイッセーに発現したのは少し前だ。
それは二人が此処を見つけ、此処でのごっこ遊びをし始めた頃。イッセーが俗に呼ばれる変身ヒーローモノのまねをしているとき、この神器は現れた。
「今日は何をする?」
「
「やっぱりね。うん、わかった! ドライグ、一回」
『boost! ……相棒、ちゃんと加減しろよ?』
「わかってるよ。よし、来い! イリナ!」
そんな父親の仕事へイリナは憧れを持っている。将来は悪い奴らを懲らしめたい。自分も神に仕える使徒になりたい。そんな事を考えている。
そのためには経験を積まないといけないことを、イリナは幼いながらにわかっているのだから、そういったことでは頭は回るのだろう。……そう言ったことには。
その退魔の予行の相手は、過去最弱かもしれないが赤龍帝。練習相手にとって不足はない。
「てぇええい!」
「ふぅっ……!」
教会の戦士ごっこ。これは先ほどのごっこ遊びとは一線を画していた。
イリナはジャンプしたまま空中で体をひねり、イッセーに向かって蹴りを入れようとする。
イッセーはイッセーで、狙われているだろう箇所を予測して、手のひらで防御しにいく。
パシッというような音がイッセーの耳元で鳴った。イッセーは反撃に転じる。グーではなくパーで、イッセーは反対の足を殴ろうとするが、イリナは防がれたと同時に離れて着地していた。姿勢を低くし、次の攻撃に移ろうとしている。
イッセーが平手であるにも関わらず、イリナは握り拳を作り殴る気満々。怪我をさせない、という確信があるからだ。させない、というよりは、怪我をさせられない、というのが正しいだろう。
イリナの確信の理由。それには赤龍帝の籠手――その大本であるドライグの力について説明せねばなるまい。
赤龍帝ドライグの持つ能力の<倍化>は使用者の能力を倍々にしていく能力。しかし、今代の赤龍帝であるイッセーは未熟なため、今は一度しか<倍化>ができない。
だがそれでも倍である。握力を例にして考えればわかりやすいかもしれない。元が11キロだとしても22キロになる。二人のこの年齢でこの差は結構デカい。
仮に後一回倍化出来れば、イッセーの握力は44キロということになる。握力だけでも一般成人男性ぐらいの数値になるのだから、そう考えると末恐ろしいものである。
これが運動能力全般、その他非科学的なモノ含めてなのだから、今は無理でも将来的に倍化を繰り返せるようになればどうなるか。
……軽く人間をやめてるんじゃないだろうか?
「ちょりゃあぁ!」
「せぇい!」
しかし、現在五歳の二人がハリウッドスター顔負けの身のこなしと漫画みたいな戦闘を繰り広げている今段階でも大概である。
イッセーはドライグと夜中戦い方を教えられ、イリナは父親から、将来教会の戦士になるため稽古を付けられている。
そのためこんな5歳とは思えないような動きができているのだが……。やり過ぎじゃあないですかね。イリナのお父さん、ドライグさん。
……少なくとも、広場の周りに生えている木々の枝を足場できるような5歳児はいやだ。
『Burst!! ……二人とも、今日はそこまでだ。これ以上やれば怪我をする』
「ふぅ……はーい」
「はぁ、はぁ……はぁい」
息が切れてきた様子の二人を止める役はドライグである。からきし、この赤い竜はこのようなことは苦手だったのだが最近、二人の相手をしているうちに段々慣れてきた。良い父親になりそうだ。声的には良いお父さんとはいえそうにないかもしれないが……。(マダ○しかり、ゲ○ドウしかり)
イッセーとイリナ。この後は公園で5歳児らしく、砂場やブランコで遊ぶのだが……どこか、遊び方がずれているのはご愛嬌だろう。
-●○●-
「おとーさーん! イッセーくん連れてきたよー!」
「やあ、イリナ。いらっしゃい、イッセーくん。元気にしていたかい?」
「こんにちわ、おじさん! うん、元気にしてた!」
「そうか、よかった。これからもイリナの事頼むよ?」
「おう!」
公園で一通り遊んだ二人が向かったのはイリナの父親が詰めている教会だ。
敷地も建物内部もそれなりに広く、荘厳な雰囲気を漂わせているのだが、二人にとっては遊び相手がいてと駆け回ることの出来るいい場所だ。
……怒られることがままあるが。
この教会で少し遊んで、ふたりはお昼を食べに兵藤家に帰る。
その後は時として公園の秘密基地に行ったり、行かなかったり。イッセーの父親が集めているドラグ・ソ・ボールを観たり、観なかったりとその時々である。
夕食はイリナの家にご相伴へ行くことも度々。
これが赤龍帝(5)の休日、その日常であった。
(´・ω・`)バレテナーイ、バレテナーイ。