なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なでこ☆フォックス -14-

          ☆

 

七月七日【七夕】です。

 

放課後の七百一中学校・三年三組には、部活の時間調整をしている生徒が数人残っている他は、ほとんどが下校しました。

 

「わたし」はと言いますと、昨日発足(ほっそく)した修学旅行実行委員会の会議待ちです、時間(つぶ)しに窓から空を(なが)めているのでした。

 

空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降り出しそうな天気です。

 

『これじゃあ、織姫と彦星も会えそうにないね』

 

今年は洒涙雨(さいるいう)になっちゃいそうだな、でも変な話だよね、織姫と彦星は仲睦(なかむつ)まじい夫婦だったのに、織姫の父の天帝が娘夫婦の仲を()くなんてね、ちょっとぐらい仕事をさぼったからって酷すぎだよ。

 

普通に考えたら家出か駆け落ちコースでしょう、一年に一度だけ会わせてくれるからとか言われても絶対無理、しかも雨が降ったら天ノ川が増水して会えませんだよ、こんな条件で仕事に(はげ)めるかっていう話ですよ。

 

などと(つぶや)いてみましたが、今の「わたし」はそんなセンチメンタルなことを考えている余裕は無いのでしたね…。

 

『はぁ…わたしも恋愛とかしたいな…』

 

えっ…と、な・なにを言ってるのでしょうねー「わたし」は、いままで自分以外の誰のことも好きになったこと無いのに、恋愛なんて出来るわけ無いのに…。

 

『なでこちゃんは本当にお兄ちゃんのことが好きなの? お兄ちゃんのことを好きだってことにしていれば、なでこちゃんは楽だからだよね、(かな)わない恋をしているってことで自分が楽をしているだけじゃない』

 

いつだったか「ららちゃん」に言われた言葉ですね、「わたし」は「暦さん」を(した)っていました、もちろん今でもその気持ちは変わりません、ですがその気持ちが恋なのか? と考えると、なんだか違う気もします。

 

永遠に叶わない恋をしたい?…

それが楽な道だから?…

 

分かりません、今の「わたし」としては如何してそんなふうに思ったのか見当もつかないです、ですが「わたし」の身勝手な感情が【クチナワさん】という怪異を生んだことは、言い逃れの出来ない事実なのです。

 

『あ・そっか、このシュシュが【クチナワさん】だったんだ』

 

手首にできた傷を隠すために巻いた白いシュシュですが、以前の「わたし」が怪異として扱っていた物でした。

 

『それで話し掛けられるような気がしたんだね』

 

とは言っても、全部「わたし」の頭の中で起こっていた妄想なのですが、お札を()み込むまでは…。

 

【おいおい・そりゃーねーんじゃねーかー・なー・なでこちゃんよー】

 

『………』

 

【おーい・無視かー・なー聞こえてるんだろう・なーでーこーちゃん】

 

幻聴(げんちょう)、幻聴、何にも聞こえなーい、あーあーあー』

 

【だーかーら・そりゃねーだろーが・俺はなでこちゃんが造り出した人格なんだぜー・いや・蛇に人格ってゆーのも変だから蛇格かー・シャッシャッシャー】

 

(うそ)だ、嘘だ嘘だー、消えろー!』

 

【そーじゃねーかとは思ってたんだけどよー・やっぱり勘違いしてやがったなー・シャーねーから教えてやるぜ・なでこちゃん】

 

幻聴は右手首に巻かれた白いシュシュから聞こえます、たぶん耳を(ふさ)いでも、この声はもう(さえぎ)ることが出来ないのだと、それだけは分かりました。

 

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