なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

25 / 54
なでこ☆フォックス -25-

『はーこれは(みゃく)ないな、でもさー、千ちゃんもいい加減に現実を見ないと、このままお兄さんの影を追いかけても(むく)われないよ』

 

「たまちゃん」の言っている意味が分かりません。

 

『他人顔してないで、千ちゃんの事なんだから、あたしさ・この前見ちゃったんだ、ららちゃんのお兄さんが女の人と歩いてるとこ、すごく仲良さそうに歩いてたよ』

 

知ってます、最近の「暦お兄ちゃん」はいろんな女(ひと)と歩いてます、ただ、その中の一人は…。

 

『べ・べつになでこは、暦お兄ちゃんが女の人と歩いていても、か・関係ないよ…』

 

『それってどっちの意味、お兄さんに恋人がいても変わらずに好きなの、それとも・もうお兄さんのことは、好きでも何でもないってことなの?』

 

『なでこは…、暦お兄ちゃんのこと…』

 

『もう何年も会ってないよね、お兄さん中学生に成ってからは、あたし達とは遊ばなかったし、そもそも千ちゃんのお兄さんが好きっていうのは、言い訳だったじゃん』

 

言い訳、そう言い訳です。

 

『なんでいまだに引きずってるの、もう言い訳にお兄さんを使わなくても、普通に他の誰だって(かま)わないよね』

 

「なでこ」は告白を断る言い訳に、暦お兄ちゃんを使っていました。

 

『もう、千ちゃんも普通に人を好きになって、普通に誰かと付き合ってよ、じゃないとあたしは…』

 

…どうしたんだろう、「たまちゃん」が話の途中で言葉を()まらせるなんて…、あまり記憶にないな。

 

『ごめん、あたし・なに言ってるんだろね、千ちゃんが誰を好きになって、誰と付き合っても、あたしが口出しすることじゃないのに』

 

『たまちゃん…』

 

そっと顔を覗きました、うっすらと涙をにじませています。

 

『えっとね、なでこは暦お兄ちゃんのこと、もうとっくに諦めてるよ、たまちゃんの言った通りで、ずっと会ってないし、それに暦お兄ちゃんには彼女さんが居るし…、そもそも暦お兄ちゃんは、もうなでこのことをたぶん覚えてないよ』

 

言葉にしてみてはっきり分かりました、本当にそうなんだと、暦お兄ちゃんはなでこのことなんて、とっくに忘れているのだということが…。

 

『千ちゃん、無理してない?』

 

分かりません、悲しくないかと言えば、やっぱり悲しいのだと思います、けど、無理をしているのかと言えば、違う気がします。

 

『たぶん、なでこの好きは憧れだと思う、なでこは一人っ子だから、お兄ちゃんが欲しかったのかな』

 

きっと、そういうことだったのでしょう、分からないのだから、しかたありません。

 

『あのね、あたしは、好きな男の子がいるんだー、すっごいがんばり屋でさー、頭も良いし・スポーツも万能で、女の子に対しても優しいし、ルックスだっていい線いってるよ、でもさ、残念ながらその男の子には、片想いの相手がいるの、だからあたしのことは、話しやすいただの友達』

 

たぶん「たまちゃん」は(つら)い話をしているのでしょう、でも、とっても輝いた目をしています。

 

『なんかさー、あいつのことを見てると、応援したくなるんだよねー、何でも一生懸命なんだもん、ほんと、どうしてあんなに頑張るかなー…』

 

そう言いながら「たまちゃん」は天井を見ます、一粒の涙が頬をつたい落ちました。

 

『たまちゃん…、頑張ろう、なでこも応援するから…、とても微力(びりょく)だけど…』

 

「たまちゃん」の応援はしたいです、でも「なでこ」には何ができるのでしょう。

 

『本当! 千ちゃん本当に応援してくれる?』

 

『う・うん、もちろん応援するよ』

 

『良かったー、ありがとう千ちゃん』

 

そんなに喜ばれると、とても不安ですが、「たまちゃん」が元気になるなら、

 

『あのね、千ちゃんに紹介したい人がいるの、明日の放課後に会ってくれないかな』

 

『うん、大丈夫だよ、なでこも頑張るから』

 

「たまちゃん」の好きな男の子に、「たまちゃん」の良いところをいっぱい言うね。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。