翌朝です。
「なでこ」にとっては、とっても久しぶりの使命のある日です。
『今日のなでこは頑張る、たまちゃんの恋を応援するよ、ちゃんと目を見て話すし、どもらずに、たまちゃんの良いところをいーっぱい教えてあげる、ファイトだぞ!』
洗面所の鏡に向かって、「なでこ」は自分を
なので、普段の登校時間は予鈴と同時に教室へ入りますが、今日はクラスメイトの誰よりも早く、学校へとたどり着いたのです。
『目的のある一日っていうのは、なんかすごいよね』
教室には誰もいないので、一人言も話しやすいです。
『なんか、朝からちょっと…、そわそわしすぎかなー』
やっぱり誰もいないので、周囲を見回しても仕方ないのですが…。
『えーと、ホームルームが終わったら、体育館の裏で待ち合わせだよね、ふーーー大丈夫、頑張る』
改めて、自らを
そして、あっという間に掃除も終わり、約束の時間になりました。
『なでこは、学校の体育館裏って初めてだけど…』
恐ろしいのです、「なでこ」は社交性も無ければ、社会経験もありません、まー当然ですが。
『やめやめ、今日だけはネガティブに考えないの』
何も知らないということは、これから何でも知れるってことだよ!
『たまちゃんは、まだかなー』
体育館の裏は誰もいません、当然なのですが心細いです。
『千石!』
ビックリしました、人気の無い場所で急に名前を呼ばれたら、そりゃー
『ごめん、驚かせたよな』
当たり前だよ!
でも我慢です、今日の「なでこ」には使命があるのですから…、でも、あれ?
「なでこ」はこの人を知っています。
『久しぶり…って言うのもおかしいよな、なんて言うかさー、クラスが変わってからあまり顔見てなかったから、ハハッ』
そうでした、一年生の時に同じクラスだった生徒で、たしか名前は…【
『あ・あの…』
『相馬のことならいいんだ、オレが千石に話があって、ここに来てくれるように頼んだんだ』
あーそっかー、この人が「たまちゃん」の好きな人なんだ、そしたら「なでこ」はこの人に「たまちゃん」の良いところを話せばいいんだね。
『ええと、たまちゃん…あー相馬さんは、すっごく話しやすいです、えと…誰とでもすぐに友達になって…、それから…』
『ち・ちょっとごめん、あのさー、千石は今…好きな人は居ないんだよな』
『え…あー・うん…』
『そ・そっかー、えーとオレ…一年の時から千石のことが気になってて・』
あれ? 賀茂君は何を言おうとしてるの、「なでこ」は「たまちゃん」の良いところを話そうとしているのに。
『一年の時はあまり話せなかったけど、二年になってから気付いたんだ、オレ…千石のこと…』
えっ…、この人が「たまちゃん」の好きな人なんだよね、「なでこ」は「たまちゃん」の恋を応援するんだよ、なのに…この人は…。
『好きなんだ、付き合ってください!』
『………』
あーそっかー「なでこ」が悪いんだ…。
「たまちゃん」言ってたね、好きな人は片想いをしてるって…。
その相手が「なでこ」なんだ…。
それじゃー「たまちゃん」は泣くよね…。
なのに「なでこ」はバカだから…。
「たまちゃん」の恋を応援するとか言って…。
「たまちゃん」ごめんね、バカでごめんね。
「なでこ」はもう、自分が大嫌いだよ。
『はっあー・おめー頭大丈夫かー・なに俺様にこくってやがんだよー・あーん』
『せん・ごく…』
『おーおー・呼び捨てたーいー度胸だなー・あー・おめーみてーな小便くせーガキがー・この俺様と付き合おーなんてよー・鏡見てから出直してこいやー・あー』
『急にどうしたんだよ』
『どうしただー・はん・笑わせるぜー・それはこっちが聞きてーよ・オメーは俺様の何を見て・どこを好きになったってーんだ・えー』
『それは…』
『ざけんなよー・今オメーの目の前にいる俺様は・たった今オメーが好きって言った千石撫子だろー・どーだよ・あーん・外見だけで判断してんじゃねーよ・分かったらとっとと消えろー』
はぁ・はぁ・はぁ・はぁ…、「なでこ」が言ったの…。
恐いよ…、助けてよ…、暦お兄ちゃん…。