なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なでこ☆フォックス -26-

翌朝です。

 

「なでこ」にとっては、とっても久しぶりの使命のある日です。

 

随分(ずいぶん)と古い記憶を探索(たんさく)しても、「なでこ」が使命ある一日を迎えるというのは、本当に(まれ)なことです。

 

『今日のなでこは頑張る、たまちゃんの恋を応援するよ、ちゃんと目を見て話すし、どもらずに、たまちゃんの良いところをいーっぱい教えてあげる、ファイトだぞ!』

 

洗面所の鏡に向かって、「なでこ」は自分を(はげ)ましました。

 

なので、普段の登校時間は予鈴と同時に教室へ入りますが、今日はクラスメイトの誰よりも早く、学校へとたどり着いたのです。

 

『目的のある一日っていうのは、なんかすごいよね』

 

教室には誰もいないので、一人言も話しやすいです。

 

『なんか、朝からちょっと…、そわそわしすぎかなー』

 

やっぱり誰もいないので、周囲を見回しても仕方ないのですが…。

 

『えーと、ホームルームが終わったら、体育館の裏で待ち合わせだよね、ふーーー大丈夫、頑張る』

 

改めて、自らを鼓舞(こぶ)する「なでこ」です。

 

そして、あっという間に掃除も終わり、約束の時間になりました。

 

『なでこは、学校の体育館裏って初めてだけど…』

 

恐ろしいのです、「なでこ」は社交性も無ければ、社会経験もありません、まー当然ですが。

 

『やめやめ、今日だけはネガティブに考えないの』

 

何も知らないということは、これから何でも知れるってことだよ!

 

『たまちゃんは、まだかなー』

 

体育館の裏は誰もいません、当然なのですが心細いです。

 

『千石!』

 

ビックリしました、人気の無い場所で急に名前を呼ばれたら、そりゃー(おどろ)きますとも。

 

『ごめん、驚かせたよな』

 

当たり前だよ!

でも我慢です、今日の「なでこ」には使命があるのですから…、でも、あれ?

「なでこ」はこの人を知っています。

 

『久しぶり…って言うのもおかしいよな、なんて言うかさー、クラスが変わってからあまり顔見てなかったから、ハハッ』

 

そうでした、一年生の時に同じクラスだった生徒で、たしか名前は…【賀茂翔琉(かもかける)】だったと思います。

 

『あ・あの…』

 

『相馬のことならいいんだ、オレが千石に話があって、ここに来てくれるように頼んだんだ』

 

あーそっかー、この人が「たまちゃん」の好きな人なんだ、そしたら「なでこ」はこの人に「たまちゃん」の良いところを話せばいいんだね。

 

『ええと、たまちゃん…あー相馬さんは、すっごく話しやすいです、えと…誰とでもすぐに友達になって…、それから…』

 

『ち・ちょっとごめん、あのさー、千石は今…好きな人は居ないんだよな』

 

『え…あー・うん…』

 

『そ・そっかー、えーとオレ…一年の時から千石のことが気になってて・』

 

あれ? 賀茂君は何を言おうとしてるの、「なでこ」は「たまちゃん」の良いところを話そうとしているのに。

 

『一年の時はあまり話せなかったけど、二年になってから気付いたんだ、オレ…千石のこと…』

 

えっ…、この人が「たまちゃん」の好きな人なんだよね、「なでこ」は「たまちゃん」の恋を応援するんだよ、なのに…この人は…。

 

『好きなんだ、付き合ってください!』

 

『………』

 

あーそっかー「なでこ」が悪いんだ…。

 

「たまちゃん」言ってたね、好きな人は片想いをしてるって…。

 

その相手が「なでこ」なんだ…。

 

それじゃー「たまちゃん」は泣くよね…。

 

なのに「なでこ」はバカだから…。

 

「たまちゃん」の恋を応援するとか言って…。

 

「たまちゃん」ごめんね、バカでごめんね。

 

「なでこ」はもう、自分が大嫌いだよ。

 

『はっあー・おめー頭大丈夫かー・なに俺様にこくってやがんだよー・あーん』

 

『せん・ごく…』

 

『おーおー・呼び捨てたーいー度胸だなー・あー・おめーみてーな小便くせーガキがー・この俺様と付き合おーなんてよー・鏡見てから出直してこいやー・あー』

 

『急にどうしたんだよ』

 

『どうしただー・はん・笑わせるぜー・それはこっちが聞きてーよ・オメーは俺様の何を見て・どこを好きになったってーんだ・えー』

 

『それは…』

 

『ざけんなよー・今オメーの目の前にいる俺様は・たった今オメーが好きって言った千石撫子だろー・どーだよ・あーん・外見だけで判断してんじゃねーよ・分かったらとっとと消えろー』

 

はぁ・はぁ・はぁ・はぁ…、「なでこ」が言ったの…。

 

恐いよ…、助けてよ…、暦お兄ちゃん…。

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