なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

27 / 54
なでこ☆フォックス -27-

 

『その様子だと、翔琉のことも忘れていたんだ、可哀想(かわいそう)な翔琉、千ちゃんのことを、一筋に想い続けて、勇気を出して告白をしたのに、記憶にすら残らないなんてね』

 

「たまちゃん」の口許が、いびつな形へと(ゆが)みます。

 

『わたしは、あの時に自分が告白をされるなんて、思ってなくて…』

 

『だから()ってやった! あたしが翔琉を好きだから?』

 

『違う、わたしはバカな自分が許せなくて…』

 

『そうね、あなたはあたしの大好きな男の子を、人間不信(にんげんふしん)(おとしい)れたわ、あの後にあたしがあなたにしたこと、覚えているよね』

 

覚えています、激昂(げきこう)した「たまちゃん」がわたしに呪いを掛けたと言いました。

 

涙を流し、わたしに話したことを(ひど)く、それはそれは酷く後悔(こうかい)しながら。

 

『どうだったのかしら、効き目はあったのかな、今の千ちゃんを見てると、失敗だったのかな』

 

呪いは見事に成功しました、二匹の蛇の呪いによって、わたしの身体は()め上げられたのですから。

 

そんなわたしの窮地を救ってくれたのが、「暦さん」と「神原さん」です。

 

『わたしは…、わたしのしたことで人を苦しめた分は、わたしも罰を受けるよ、でもたまちゃんは…』

 

『なにそれ、もしかしてあたしは罪を犯して無いとでも言うつもりなの? 笑わせないでよ』

 

今にしてやっと「たまちゃん」の目が見えました、(するど)く・(けわ)しい・獲物(えもの)()る・(けもの)の目が。

 

『あなたが罰を受けるのは当然よ、あれだけのことをしておいて、こうしてのうのうと生きているんだもの、不公平じゃない、そうでしょう千ちゃん、翔琉はいまだに苦しんでいるのよ』

 

『賀茂君は、今も苦しんでいるの?』

 

『やっぱり、なにも知らないのね、あなたって本当に腹立たしい、翔琉と同じ苦しみを与えてあげようかしら!』

 

「たまちゃん」の目が金色に光り、瞳孔(どうこう)が縦に細長くなっていきます。

 

そして目の変化に呼応(こおう)するように、「たまちゃん」の周囲が白く輝きだしました。

 

『たまちゃん…、その姿は…』

 

【ほぉー・わっちの姿を見ても・その程度かえー・どうやら初めてでは無いようじゃのー・ほっほほほ・面白いのー】

 

(あで)やかな漆黒の髪を顔に(まと)い、皮膚は()き通るような白い肌で、その背後には、ふさふさとした純白の尾が無数に見えました。

 

『たまちゃんなの?』

 

【わっちのことかえー・わっちの名は・玉藻前(たまものまえ)・かつては京の都にて(おそ)れられた・九尾の妖狐(ようこ)・見ての通り人ではないよのー】

 

妖艶(ようえん)と言う言葉がありますが、まさにその言葉の通りで、「玉藻前」はとても(あや)しくて、またとても艶やかに微笑みました。

 

【おなごのそなたには・わっちは興味ないがのー・この宿主の娘が・そなたを酷く憎んでおるようじゃ・そなたの(たま)は・わっちがくろうてしまうが・悪く思わんでおくれ】

 

身の毛もよだつほどに、恐ろしく、そして美しい怪異です。

 

『玉藻前さんは、たまちゃんの希望(のぞみ)が叶ったら、たまちゃんを解放(かいほう)してくれるの?』

 

【ほっほほほほー・そなたはあほーじゃのー・何故に娘の願いを叶えて・わっちがこの体を放れる・それでは割りに合わんではないかえー】

 

【ばかやろー・怪異相手に何を考えてやがるー・こいつはなでこちゃんの命を喰うっつてんだぞー】

 

それは分かってるよ、でも「たまちゃん」が、

 

【なんじゃー・そなたも化物の類いであったかえ】

 

「玉藻前」は目を細めて「わたし」見つめます。

 

『おーい千石ー、迎えに来たぞー』

 

えっと…、この人は確か「ららちゃん」の彼氏で、「蝋燭沢(ろうそくざわ)先輩」です、そういえば昨日「ららちゃん」が連絡していましたが、卒業生が普通に校内を歩いているのも、なんだかおかしな感じです。

 

【おーやだやだ・そなたは蛇憑(へびつ)きかえー・わっちは長いものは好かんのじゃ・どこへなりと行っておくれー】

 

「玉藻前」は白い手で目もとを隠し、あからさまに顔を背けます、それからもう一方の手で「わたし」を追い払う様に、手を振りました。

 

【ぐわー】

 

『きゃー!』

 

学校の廊下に、風速80m級の突風が吹きました、当然ながら「わたし」は簡単に吹き飛ばされます。

 

「わたし」の後方に居た「蝋燭沢先輩」が、受け止めてくれなかったら、どこまでも転げ回っていたことでしょう。

 

『たまちゃん…』

 

今さっきまで「わたし」が居た場所へと、視界を移しましたが、もうそこには誰も居ませんでした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。