なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なでこ☆フォックス -30-

 

 

半年ほど前まで、「わたし」は北白蛇神社で神様をしていました。

 

神社の名前の通り、蛇の神様として、数多(あまた)の蛇の怪異を使役(しえき)していました。

 

先日、神様時代の「わたし」のヘアースタイルについて、ほんの少しだけ触れましたが、実際にはそれはそれはおぞましいものでした。

 

「わたし」の髪の一本一本が、一匹の蛇・一本の槍・一対の毒牙なのです、「わたし」の意思によって自由自在に伸縮(しんしゅく)増殖(ぞうしょく)も思いのままです。

 

「わたし」の髪がすべて白蛇なのですから、だいたい十万匹の白蛇が()えているのです、もちろん「わたし」の頭には乗らないので、神社のある山全体にうじゃうじゃと。

 

そして「わたし」は頭に生えた白蛇を、一匹掴んで槍に変えます、蛇の毒牙を尖端(せんたん)にして、「暦さん」と「忍さん」をメッタ刺しにしました。

 

蛇の毒は、吸血鬼の回復能力にも効果があります、蛇の槍に(つらぬ)かれた傷は回復することなく、「わたし」に穴を空け続けられるのです。

 

「わたし」の初恋? 「わたし」の憧れ? 分かりません、でも・ずっとそばに居たいと想い続けた人です、「わたし」は自らの手でその人を殺し続けました、何度も・何度も・何度も…。

 

『千石ちゃん、おーい千石ちゃん、目を覚まさないとキスするぞ』

 

『アヒッ…、な・な・な・何をしようとしてるんですか』

 

『眠っている千石ちゃんの、可愛らしい唇の味を確かめたくなってな』

 

『それは犯罪だと思います』

 

『冗談だ、いま参道の入り口に着いたところでな、起こそうとしただけさ、随分と疲れているみたいだな、だいぶうなされていたぞ』

 

『すみません神原さん、運んでもらいながら寝てしまって』

 

『気にすることはないぞ、私も千石ちゃんの抱き心地の良さを満喫したからな、なんならこのままフルマラソンをしても良いくらいだ』

 

いえそれは、「神原さん」が可能でも「わたし」が死にます、肉体的にも、精神的にも。

 

『本当に何から何まで、ありがとうございました』

 

『いや、お礼を言われる程のことはしていないよ』

 

『そんなこと無いです、神原さんとららちゃんが助けてくれなかったら、一人ぼっちだったら…わたしは…、自分の罪の深さに押し(つぶ)されて…、きっとまた逃げ出していたと思います』

 

『それが言えただけでも、千石ちゃんは成長したのではないのか』

 

『わたしは、二人の人間を助けなければいけません…』

 

『それが千石ちゃんの、罪の(つぐな)いなのだな』

 

『はい…、馬鹿なわたしが…二人の人生を…、滅茶苦茶にしてしまいました…』

 

『分かった、私は最後まで千石ちゃんに付き合おう、でもな、私が出来ることはほとんど無いのだ、私も怪異と遭遇(そうぐう)した身ではあるが、私は怪異の専門家では無いからな、千石ちゃんが現在遭遇している物については、やはり専門家を頼るより仕方がないのだろうな』

 

『えっと、でも暦さんだって怪異の専門家では無いですよね』

 

無論(むろん)その通りだ、阿良々木先輩がいかに超人的であろうとも、専門家では無い以上、怪異と渡り合えば、むやみに傷を拡げてしまうだろうな、もしかしたら阿良々木先輩はすでに…、いや・憶測(おくそく)で語るのは止めておこう』

 

「暦さん」がどうなったのか、とても気になりますが。

 

『つまりだ、これから私達が頼るのは、怪異の専門家、もしくわ怪異と同等に渡り合えるものということになるだろう、誰と会うかは分からないが、阿良々木先輩を信じて登ろうじゃないか』

 

「神原さん」は優しく微笑み、「わたし」の手を握ります。

 

『はい』

 

ありがとうございます。

 

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