なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なでこ☆フォックス -33-

          ☆

 

『いやぁ待ちくたびれたよぉ、百合っ子ちゃん、それと・阿良々木君の妹的存在のお嬢ちゃん』

 

『あぁしかし子供の成長というのは早いねぇ、二人とも去年とは随分と印象が違うから、今の呼び方は取り消すよ、百合っ子ちゃんは・単純に臥煙(がえん)先輩の(めい)っ子ちゃんかな、妹的存在ちゃんはぁ…神から人間に戻った普通っ子ちゃんってところかな、でも呼びにくいから、元百合っ子ちゃんと元()れ屋ちゃんと呼ばせてもらうよ』

 

北白蛇神社の境内(けいだい)です、(やしろ)のお賽銭(さいせん)箱の上で横に成りながら、頬杖(ほおづえ)を付いて火の点いていないタバコを(くわ)えた、中年の男性が居ます。

 

今は七月の初旬だから夏といえば夏です、なのでアロハを着ていることは(めずら)しくもないのですが、ここが神社の境内だからなのでしょうか、(ひげ)を生やし・耳にピアスを付けた・アロハ服の中年男性というのは、(あま)りにも不釣合(ふつりあ)いな感じがします。

 

『久しぶりです忍野(おしの)さん、その(せつ)はお世話になりました』

 

この人は怪異の専門家で・名前は「忍野メメさん」です、去年「わたし」が蛇切縄の呪いに(かか)った時に、お守りをくれた専門家の人です、ごめんなさい・失礼な回想(かいそう)をしてしまいました。

 

『お・お久しぶりです、千石撫子です』

 

「忍野さん」は「わたし」を見るというよりは、観察(かんさつ)するような視線を向けます。

 

『まったく阿良々木君は(ひど)い奴だよ、こんなところにまで呼びつけたかと思えば、世捨(よす)て人の僕に対して、自分の作り上げたハーレムを見せびらかそうってんだからさぁ』

 

『いくらお世話になった忍野さんといえども、その言い方は戦場ヶ原先輩に失礼だ、訂正(ていせい)してもらおう』

 

『元気がいいなぁ元百合っ子ちゃんは、何か良い事でも有ったのかい?』

 

茶化(ちゃか)さないで(もら)いたい、私にとって阿良々木先輩と戦場ヶ原先輩は汚してはならない存在だ、他人の口から侮辱(ぶじょく)されることは許し(がた)い』

 

でもそれって、「神原さん」が言うのは問題ないってことだよねー。

 

『はっはぁ、いいよ・訂正するよ、おじさんが悪かった』

 

『そうか、こちらこそすまなかった、目上の人に対しての無礼(ぶれい)な振る舞い、許してほしい』

 

「忍野さん」は左手を振って応えました。

 

『どうやら元百合っ子ちゃんは、普通の人間に戻れたようだねぇ、おめでとう、僕の予想じゃあ二十歳(はたち)くらいまではかかるとふんでたが、いい協力者が現れたのかなぁ』

 

「わたし」は「神原さん」の怪異が取り除かれた経緯(けいい)を知りません、でも「忍野さん」の口振りはすべてを見透(みす)かしているみたいです。

 

『ということは、僕に用があるのは元照れ屋ちゃんってことだね、いいぜぇ話してごらん』

 

「忍野さん」の目は「わたし」に向けられているのですが、なぜか「わたし」とは別のもう一人の「わたし」を見ているように感じました。

 

『その前に、一つ質問をしても良いだろうか』

 

『なぜ僕が此処(ここ)に居てぇ、なぜ阿良々木君が此処に居ないのかぁ、かい』

 

『そう…だが…』

 

『正直あまり話したくないんだけどなぁ、信頼(しんらい)関係は重要だからねぇ』

 

「忍野さん」は片目を(つむ)ったまま言います。

 

『さぁて、どこから話したものか…、以前に僕は元委員長ちゃんに鈴を付けたことがあってさぁ、猫はすぐに姿をくらませるから、チリン・チリン・チリンって何処に居るのか分かりやすくするためにねぇ、まぁ実際には猫が現れる予兆(よちょう)を知らせるための仕掛(しか)けでね、ストレスが溜まると頭痛が起こるようにしておいたのさ、はっはぁ・参ったよぉ、流石は元委員長ちゃんといったところかなぁ、今度は僕の方が鈴を付けられていたんだからねぇ』

 

『元委員長というのは羽川翼(はねかわつばさ)先輩のことでよいな、猫というのは怪異の【(さわ)り猫】ということであろうか』

 

「わたし」も「羽川さん」のことは知っています、超有名人です。

委員長の中の委員長・優等生の中の優等生・すべての教科オール満点・などなど、数え挙げたらきりがありません。

 

『元委員長ちゃん、異形(いぎょう)の羽を持つ猫のお嬢ちゃん、彼女が只者(ただもの)でないことは僕も嫌ってほど知っていたさぁ、なんせ【障り猫】の時は連戦連敗(れんせんれんぱい)したからねぇ、怪異のオーソリティーとしちゃー随分と(へこ)まされたもんだよぉ、もちろん未成年の女の子に怪我をさせる訳にもいかないから、手加減はしたさ、でも手を抜いたりはしていなかった、僕はありとあらゆる(わな)を仕掛けたんだけど、ことごとくかわされてしまったよぉ、まったく・見事としか言いようがなかったなぁ』

 

『たしか元委員長ちゃんの口癖(くちぐせ)って、何でもは知らない・知っている事だけ、だったかなぁ、ところがどっこい元委員長ちゃんは何でも知っていたよ、怪異のオーソリティーであるこの僕と同等か、もしかしたらそれ以上にねぇ』

 

『それで、羽川先輩は忍野さんに何をしたと言うのだ』

 

『せっかちだなぁ百合っ子ちゃんは、まぁいいだろう話を戻そう、僕は今年の春頃まで南極大陸に幽閉(ゆうへい)されていたんだ、今年の春から僕の姪っ子になった忍野扇(おしのおおぎ)によってねぇ、それについての質問は受け付けないよ、話が長くなるからねぇ』

 

『僕にとってはあまり語りたくない話だからさぁ、感想抜きでちゃちゃっといこうかぁ、元委員長ちゃんは去年の後半から僕の行方(ゆくえ)を探した、理由は友達を救う為にだ、世界中を飛び回り当てを二つに(しぼ)った、一つは北極、もう一つは南極、理由は人が住んで居ないこと、しかし場所の当ては付いたが交通手段がない、だが元委員長ちゃんはジェット機で(むか)えに来た、南極を先にしたのは偶然(ぐうぜん)だと言っていたがそれは疑問だな、そして僕はようやく日本へ帰ってこれた、とまぁ彼女のスキルがいかに高いかは理解できただろぉ』

 

『そして僕が元委員長ちゃんに付けられた鈴はねぇ、NASAの軍事衛星ってわけだ、はっはぁ、米軍のジェット機で現れた時に気が付くべきだったよ、でも僕は近代科学には(うと)い方でねぇ、まんまとしてやられたってことさぁ』

 

話が壮大(そうだい)過ぎて、本音を言うと現実感がありません、ただ「忍野さん」を探すということが物凄(ものすご)く難しい事だけは分かりました。

 

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