なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なでこ☆フォックス -36-

『で・でも、たまちゃんは本当に…』

 

『あぁ僕の言い方が悪かったね、元照れ屋ちゃんの話を(うたが)った訳じゃあないよ』

 

『でも、【玉藻前】が忍野さんが言うような、とんでもない怪異だったら…』

 

日本で三本の指に入る大妖怪でしたね…。

 

『分が悪い・なんてぇもんじゃない、単純な能力(スキル)だけを比べれば所詮(しょせん)は狐の怪異だから、幻術(げんじゅつ)特化(とっか)しているに過ぎない、つまり能力面において吸血鬼には遠く(およ)ばない、だが…【玉藻前】となると話は別なんだ』

 

「忍野さん」は両目を閉じて、それからゆっくりと息を吐き出しました。

 

『元照れ屋ちゃん、僕はまだ【玉藻前】に憑かれたという子の名前を聞いていなかったねぇ…、教えてはもらえないだろうか…』

 

「忍野さん」は「わたし」にそう(たず)ねる間も、ずっと目は閉じたままでした。

 

『あ・はい、たまちゃんの名前は【相馬珠美】です』

 

『………はっはぁ、なるほどねぇ、いやぁ疑うような事を言ってすまなかったねぇ、確かに元照れ屋ちゃんの友達に憑いている怪異は【玉藻前】だ』

 

「わたし」がたまちゃんの名前を()げた後、(しばら)くのあいだ微動(びどう)だにしなかった「忍野さん」が、急に体を起こして言いました。

 

『ふぅ、ここは喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか…、【玉藻前】の正体については(いく)つもの説があってねぇ、けっこう有力なのが大陸から渡ってきたって説だったんだけど…、千年以上も経ってどうやら本当の正体がわかったみたいだ』

 

『【滝夜叉姫(たきやしゃびめ)】今から千百年ほど昔のこと、京都の朝廷に対して新皇を名乗り、関東の地で独立国家(どくりつこっか)宣言(せんげん)した武士(もののふ)がいた、桓武天皇(かんむてんのう)の子孫で名は【平将門(たいらのまさかど)】、日本の武家社会が出来上がったのはこの人がいたからとも言われている、だが【平将門】といえばもっとも有名なのが怨霊(おんりょう)としてだろう、【平将門】とはこの国一番の(たた)り神なのさぁ、東京の神田明神(かんだみょうじん)だが・元々は将門の身体(からだ)(まつ)った【からだ明神】だった、次第に五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願う神田となったけど、今でも祭神には【平将門】が祀られている』

 

『また、神田明神からさほど離れていない場所に将門の首塚というものがあってねぇ、こっちは祟り神としての将門を示す話題がふんだんにある、その中でも一つだけ、太平洋(大東亜)戦争に敗戦した日本は米国のGHQによって統治(とうち)された、当時の日本は焼け野はら状態で、GHQはブルドーザーで瓦礫(がれき)を一掃していった、そんな時のこと、将門の首塚を撤去すべくブルドーザーを走らせたところ、ブルドーザーはいきなり転倒する、そして運転手も死んでしまったんだ、そんな事故が続き将門の首塚の怨霊はGHQを恐怖させた』

 

『さて、【滝夜叉姫】だが、彼女はその【平将門】の娘さぁ、そして彼女は生前から妖術を使ったと言われていた、それについては(のう)神楽(かぐら)といった古典芸能(こてんげいのう)演目(えんもく)にもなっている、父親である【平将門】は武力・知力ともに(ひい)でた所謂(いわゆる)天才でねぇ、どこの時代でも同じく天才というものは(ねた)まれ(やす)いものでさぁ、その嫉みは身内同士の権力争いに拍車(はくしゃ)を掛けてしまった、勅命(ちょくめい)を受けた叔父(おじ)従兄弟(いとこ)の手によって【平将門】は命を(うば)われた、だがそれに至るまでの経緯として、朝廷は征夷(せいい)大将軍を任命して将門を()つベく大包囲網(ほういもう)を展開させたのだから、その実力が群を抜いていたことは言うまでもないかなぁ』

 

『朝廷の顚覆を(はか)った【玉藻前】、そして非業(ひごう)の死を()げた父親の雪辱(せつじょく)を晴らす【滝夜叉姫】、両者が得意とする能力は妖術だった、一説に【滝夜叉姫】は貴船神社の荒神より妖術の能力を(さず)かったとされていて、その後は関東の地で反乱を起こした、だがこれも朝廷によって討伐される、貴船神社とは京都の北にある神社でねぇ、関東はもちろん京都の東さぁ、【玉藻前】も京都から東へ東へと追われている、この両者の行動した経緯は酷似(こくじ)していると僕は思う』

 

『僕の推論(すいろん)を長々と話してしまったが、元照れ屋ちゃん、もう一度確認させてくれるかな、【玉藻前】が憑いている友達の名前は【相馬珠美】で間違いないね』

 

『はい…』

 

『………ふぅ』

 

「忍野さん」は沈黙(ちんもく)して、そのから息を吐き出します。

 

『僕は【滝夜叉姫】の怨霊が【玉藻前】だと思っている、だから【玉藻前】は人間社会に対して弓を弾く怪異なんだとねぇ、そしてこの国の三大妖怪とされる九尾の狐が【滝夜叉姫】が、関東の地で反乱を起こした場所は相馬の城、また…【平将門】の幼名は…【相馬小次郎】なんだ…、おそらく【相馬珠美】とは【平将門】の子孫だろうね…』

 

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