なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

37 / 54
なでこ☆フォックス -37-

『わたしが…、たまちゃんを裏切ったから…、だから、たまちゃんは【玉藻前さん】に取りつかれたのでは…』

 

『それは無い、こう言っちゃあなんだけど、その程度の色恋沙汰(いろこいざた)で、三大妖怪クラスが憑依してたんじゃあ、僕らの手には到底負えないよ、元照れ屋ちゃんは【玉藻前】を呼び出す原因にはなったかも知れない、だが直接関与(かんよ)したのはまったくの別人だろうねぇ』

 

「わたし」が原因なのは当然ですよね、たまちゃんが呪いを掛ける切っ掛けを作ったのですから。

 

『しかしだな、忍野さんの考えでは【玉藻前】は元々人間だったのだろう、それも千年以上も前の、それが今更になって現代で何をしようというのだ?』

 

「神原さん」は首を(かし)げながら言います。

 

『……そうか!! 元百合っ子ちゃんは携帯電話を持ってるね、今すぐ阿良々木君に連絡を取ってくれ、元照れ屋ちゃんは念のために阿良々木君の妹に連絡して、二人とも【相馬珠美】と接触(せっしょく)しないように伝えるんだ!!』

 

「忍野さん」の表情が一変(いっぺん)しました、緊張感(きんちょうかん)のある指示が飛びます、「わたし」と「神原さん」はそれぞれの携帯電話を取りだし、すぐに発信ボタンを押しました。

 

……プップップップ…プルルルル…ピッ・

 

『阿良々木先輩か・私だ、いま先輩は何処に居るのだ? 空港・うん・そうか、分かったそのように伝えよう、それと忍野さんからの伝言でな、相馬珠美と会うな・だそうだ、その子は月火ちゃん達の幼馴染でな、では・うん・健闘(けんとう)を祈る』

 

『あ・もしもし・ららちゃん、あのね…』

 

『あーなでこちゃん、私いま・たまちゃんと話してる最中なんだー、急用じゃ無いなら後にしてくれるかなー』

 

『えー・たまちゃんと一緒に居るの…、忍野さん…』

 

『……後手になったようだねぇ、元照れ屋ちゃんはそのまま電話を切らないように言うんだ、話の流れによっては何でも知っている先輩が動くことになるだろうなぁ…』

 

『ららちゃん、このまま電話を切らないで、たまちゃんと話して欲しいの』

 

『いいよー、私も・なでこちゃんに聞いてもらいたい話をしに来たからさー』

 

『いいよねー、たまちゃん』

 

『ららちゃんが、あたしを一方的に待ち()せしてたのに、今さら確認を取るの?』

 

「ららちゃん」が「たまちゃん」を待ち伏せていました、それじゃー飛んで火に入る夏の虫だよー。

 

『はっはぁ…流石は阿良々木君の妹といったところかぁ、イレギュラーさがそっくりだよぉ』

 

「忍野さん」の笑い声が溜息(ためいき)のようでした。

 

『それもそうだね、私が・たまちゃんに会いに来たのってさー、幼馴染との再会を喜びにとかじゃないし、どっちかって言うと喧嘩(けんか)を売りに来た感じだからさー』

 

『ふーん、小学校の時はあんなに仲良く遊んでたのに随分と薄情なのね、ららちゃんもあたしのことなんて忘れてたんでしょう』

 

『どうでいいじゃんそんなこと、それよりさー、変わったね・たまちゃん、キモイよその喋り方』

 

『ららちゃんのそういうところ変わらないのね、人が嫌がることをずけずけと言う、千ちゃんだって本当は嫌だったと思うわ』

 

『言われなくても知ってるからー』

 

『そう? 本当は何も知らないくせに、知った気になって他人のお節介を焼いているだけでしょう』

 

『小学三年の時の小野君、四年の時の土門君、五年は皆藤君だっけ、そして六年の三学期に転校してきた賀茂君だよねー、たまちゃんが好きになった男の子達は、そんでさー、その男の子達はみーんな・なでこちゃんのことが好きでしたー』

 

な・なに…、「わたし」のこと…、「たまちゃん」が好きな人が「わたし」のことを好きなのって、「賀茂君」の話だけど…、その前からだったの?

 

『本当によく見てるのね・ららちゃんは、当の本人は誰からの視線も感じてはいなかったみたいだけど、カマトトぶっているなら対応の仕方もあるのに、千ちゃんの場合は…』

 

「わたし」の場合は?

 

『なでこちゃんは自分のことしか考えていなかったでしょー、誰かに好かれることなんて全然望んでいない、だからー・たまちゃんはどこにぶつけていいか分からなかったんだよねー、その嫉みをさー』

 

『違う!』

 

『違わない! じゃー聞くけどさー、いまの・たまちゃんの姿はどう見たって・なでこちゃんだよねー、どうしてそんな恰好(かっこう)をしているのー、私から見れば・なでこちゃんへの嫉妬にしか見えないんだけど』

 

「わたし」に対しての嫉妬…、そういえば…「たまちゃん」は「わたし」の容姿に憧れていたって…。

 

『違う…、あたしの姿は…翔琉のため…』

 

『好きな男の子が好きになった、その女の子の姿を真似したんだよねー、それで・たまちゃんには何が残るのー、たまちゃんが・なでこちゃんの代わりをしたからってさー、男の子の記憶に残るのは・なでこちゃんの面影(おもかげ)だけだよー』

 

『うるさい…、うるさい・うるさい・うるさい、そんなとこは言われなくたって分かってるんだよ! 余計なこと言うなー! 余計なお節介をするなー!』

 

『なーんだ、やっぱり・たまちゃんじゃん、ちゃんと自分の立ち居地を知ってるじゃん、どうしてそんな辛い選択(せんたく)をするかなー、らしくないって』

 

『何にも知らないくせに…、何にも関係ないくせに…』

 

「たまちゃん」は「賀茂君」のために、「わたし」の身代わりとして…、「賀茂君」が失恋したから…、「わたし」が失恋させたから…、無かったことにしたかったの?

 

『私が何も知らないと思ってるんだー、私の情報網を()めないでよねー、たまちゃんはさー、なでこちゃんに・賀茂くんを紹介する前に言ったんでしょ、大好きな人がいるってさー、その相手の名前を言わずにね、なでこちゃんの性格を知っていてさ、それってー』

 

(だま)れ! それ以上言ったら殺す』

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。