なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なでこ☆フォックス -39-

………ーーーーーーヒュッ・ドッドーーンンン……

 

『きゃあーーーー……』

 

北白蛇神社です、境内の東側が轟音(ごうおん)と共に土煙を上げます、そして山全体が縦に激しく揺れました、次第に振動は治まり土煙が晴れます、そこには「童女(どうじょ)」が「ららちゃん」を抱いたまま立っていました、「童女」の足は(ひざ)の辺りまで土の中に刺さっています。

 

『ららちゃん!』

 

『月火ちゃん!』

 

「わたし」と「神原さん」は同時に駆け寄りますが、「わたし」は「神原さん」の背中が離れて行くのを見ながら走ってます。

 

『気絶しているようだが、どこにも外傷はない、とりあえずは無事のようだ』

 

「神原さん」は、だいぶ遅れて到着した「わたし」に言います。

 

『よ・よかったー…』

 

『やあ・久しぶり忍野のお兄ちゃん、プイッ、いったい今までどこに雲隠(くもがく)れしていたのさ、プイッ、僕が鬼のお兄ちゃんに着せ替えプレイをされているって時に、プイッ』

 

「ららちゃん」を抱えたままの「童女」が、「忍野さん」に話しかけています、一言話す毎に無表情のまま顔をそむけて(プイッ)と言いました。

 

『やぁお人形ちゃん、しばらく見ない間にキャラが変わったねぇ、ここは(ろう)(ねぎら)うべきなんだろうね、だがその()ね方はさすがに分かりにくいよ』

 

「忍野さん」は苦笑いを受けベてます。

 

不躾(ぶしつけ)な質問で悪いが、君はいったい何者なのだ?』

 

『僕は【斧乃木余接(おののきよつぎ)式神(しきがみ)だよ、プイッ』

 

空から降って来たのですから、当然のことながら人間では無いと思っていましたが…、

それにさっき「玉藻前」は物の怪を二つ逃がしてって言ってたけど…、

 

『お人形ちゃんのことも、それから気絶している妹ちゃんのことも、今は詮索(せんさく)している時じゃあない、こう言っちゃあなんだけど、阿良々木君の妹ちゃんの救出にはねぇ、こっちの切り札を使ってしまったからさぁ』

 

『そう言われてもだな、何も知らないのでは動きようが無いではないか』

 

「忍野さん」は火の点いていないタバコを(くわ)えなおしてから、一息つきます。

 

『はぁ…、未成年の子供を巻き込むのは、僕の心情にそぐわないんだけどさぁ、君達はすでに当事者になってしまった以上仕方がない、いいよ・何が知りたい?』

 

『まずは、電話の向こうであった出来事について、教えてもらいたい』

 

『いいだろう…、とりあえず・気絶している妹ちゃんが【玉藻前】に会いに行ったのは理解してるね、僕にとっては痛恨(つうこん)のイレギュラーだったけど…、もちろん妹ちゃんは幼馴染に会いに行っただけのつもりだから、あまり責めては可哀想でもある…か』

 

『さて・その幼馴染である相馬珠美は、まだ完全に【玉藻前】とリンクしてる訳じゃあ無かった、当然と言えば当然さぁ、あのクラスの怪異が力を使うには膨大(ぼうだい)なエネルギーが必要でね、何も修行をしていない一般の子に【玉藻前】が憑依すれば、一回妖術を使っただけでその子は即死(そくし)しかねない、しかし相馬珠美は一般の子では無かった、おそらく相馬珠美は【平将門】【滝夜叉姫】の子孫なんだ、だから【玉藻前】が憑依しても命に係ることがない、だからと言って【玉藻前】の妖術が無制限に使える訳じゃあ無い、たぶん激昂(げきこう)することで魂の力を増大させ、妖術が使えるレベルのエネルギー源を()ていたんだなぁ』

 

『しかしそれも時間の問題さぁ、【玉藻前】が顕現(けんげん)する回数が増せば、しだいに相馬珠美の魂も強くなる、最終的には完全に憑依して【玉藻前】は復活をするだろうねぇ、魂も・身体も・そして意識も乗っ取られる、つまり相馬珠美という人格が消滅する』

 

『次に・僕が携帯電話を借りてメールを送った相手だけど、臥煙伊豆湖という名の・何でも知っている大学時代の先輩でさぁ、元百合っ子ちゃんの叔母(おば)に当たる人だね、やはりと言うか、この事態をちゃんと知っていたよ、急場凌(きゅうばしの)ぎではあったが、援軍と切り札である一対の妖刀を用意していた辺り、かなり深いところまで計算していたのが(うかが)えるねぇ』

 

『メールの内容については至極(しごく)単純なもので、妹ちゃんをしゃがませるまでの時間を書いた、もし返信の内容が違かった場合は、別ルートの救出作戦が必要と成った、だがそこは何でも知っていると豪語(ごうご)する先輩さぁ、配置に着いているって返って来たよ、後は見ての通り僕が合図を送り、元照れ屋ちゃんがカウントダウンをする、こちらは見えていないが大体分かる、阿良々木君の妹ちゃんが伏せると同時に、四方から相馬珠美に一斉攻撃(いっせいこうげき)を仕掛けた筈さ』

 

『そして結果から言うと、不意討(ふいう)ちは失敗した、阿良々木君の妹ちゃんを救出できたので、単純に失敗したと言うと怒られそうだからぁ、あわよくば一太刀(ひとたち)(あび)びせたかったという打算は、叶わなかったと言っておこうかぁ』

 

『その理由については僕の推測(すいそく)だけど、何でも知っている先輩が配置に着いた時には、もう【玉藻前】は結界を張っていたのだろう、緊急事態(きんきゅうじたい)考慮(こうりょ)すれば文句(もんく)など言えないが、援軍に怪異を構成(こうせい)したのが失敗の原因だね、怪異の気配(けはい)に【玉藻前】が気付かない訳がない、攻撃を仕掛けた時には既に幻術(げんじゅつ)を掛けられていた筈さ、(まぼろし)の【玉藻前】が(いた)る所に出現したのかなぁ』

 

『まぁそれについても、何でも知っている先輩は大方の予測をしていたさ、一斉攻撃を仕掛けることで生まれた結界の(ほころ)びから、お人形ちゃんと妹ちゃんを逃がすことに成功したんだからねぇ』

 

『そして交渉を持ちかける、まずは自分の技量を見せたのだろう、この場合は妖刀・心渡を使っての剣技(けんぎ)となるね、目に見えぬ速さで自分の周囲一帯を切り裂き、【玉藻前】の結界内にあって心渡による妖刀結界を(つく)って見せた、自分の腕前を披露(ひろう)することで相手を交渉の場へ付かせるつもりでね、でも相手は妖狐だ、化かしあいはお手の物ってね、おそらく幻術を解いて幻の【玉藻前】を消し話を聞くと見せかけた、しかし実際には何でも知っている先輩の背後から本体が(おそ)い掛かる、ところがどっこい【玉藻前】は髪を数本は切られたかなぁ、背後から襲う【玉藻前】を心渡が一閃(いっせん)した筈だから』

 

『これでようやく【玉藻前】は【妖刀・心渡】の能力と、何でも知っている先輩の技量を理解した、長期戦に成ることが【玉藻前】にとって良い結果をもたらさない以上、交渉に応じることにした、何でも知ってる先輩は切り札である【妖刀・夢渡】を置いて行くことで、その場を終わらせることを選択する、とまぁこんなところだろう』

 

「神原さん」も「わたし」も、ただただ呆然(ぼうぜん)と「忍野さん」の話に聞き入っていました。

 

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