なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なでこ☆フォックス -43-

          ☆

 

『まっよいっだよーー!! 迷える(・・・)子羊を救うため、地上に舞い降りた女神【八九寺真宵(はちくじまよい)】ここに降臨(こうりん)!!』

 

うっわぁーー、スッゴイ台詞とキメのポーズまでしちゃったよー、見ているこっちの方が恥ずかしいよー。

 

『な・なな・なんですかーあなた達は、この神社に参拝に来る人は99%阿良々木さんって決まってるのに…』

 

どうやら「暦さん」と間違えての登場だったみたいで、「幼い女神」は頬を赤く染めてます。

 

『久しぶりだね・八九寺さん、地獄から生還(せいかん)するなんてとんでもない設定だけど、でもあなたの場合は幽霊から神になったのだから、生還というよりは昇格かな、どちらにしてもこうしてまた会えるんだから良かったのかな』

 

『斧乃木さんではないですかー、いやーその節は大変お世話になりました、私が【鬼物語】で美しく消えることが出来たのは斧乃木さんのお蔭です、感謝してもしきれません』

 

「真宵ちゃん」と「余接ちゃん」は知り合いだったんだー、それに二人とも仲良さそう。

 

『僕は八九寺さんを肩車しただけだよ』

 

『そのお蔭で、最後に素敵な噛み方が出来ました』

 

「真宵ちゃん」は両手を唇の前で合わせて、嬉しそうに微笑んでます。

 

『ふーん、感謝されているところ悪いけど、迷子の怪異だった八九寺さんに、迷える子羊を救うことが出来るの?』

 

『いきなりの毒舌(どくぜつ)ですねー、一瞬・阿良々木さんの彼女さんかと思いましたよ』

 

『それに今の登場シーンを鬼のお兄ちゃんが見た場合って、いったいどんな突っ込みを入れるんだろう、僕の場合は蝸牛(かたつむり)の象徴だったリュックサックについてかな、あなたの場合リュックサックを背負っていないというのは、峯不二子(みねふじこ)の胸がツルペタなのと同じくらいのインパクトの無さだけど』

 

『わたし斧乃木さんとは友好な関係だったと思ってましたが、考えを改めるべきのようですね』

 

『そうだね・勘違(かんちが)いは早めに訂正(ていせい)するべきだね、いま僕は鬼のお兄ちゃんの家に住んで居るよ、あなたが地獄で迷子になっている間に、僕と鬼いちゃんの関係はずっと深いものになっている、一年も前の噛んだ話なんて、鬼いちゃんの記憶からはとっくに消えているから』

 

『わたしの美しい思い出を…、斧乃木さんは・阿良々木さんの好みをご存知ですか? いまどきフリッフリの洋服を着て僕っ子っていつの時代の流行か知りませんが、阿良々木さんの好みとは到底言えませんね、そもそも・その無表情キャラに対しての需要(じゅよう)はとっくの昔に滅亡しています、つまり斧乃木さんの出番は終了しているのです、さーお引き取りを!』

 

ぜんぜん仲良くないー、二人とも腕を組んで(にら)み合ってるよー、これでどうやって「真宵ちゃん」に頼みごとをすればいいのでしょう?

 

         ☆

 

「真宵ちゃん」が登場するちょっと前です。

 

『忍野さんもなかなか(すみ)に置けないのだな、さすがは阿良々木先輩の師匠(ししょう)といったところか、見直したぞ』

 

『元百合っ子ちゃん、そんな真顔で言われたら返答に困るよ、僕はねぇちゃんと自分の領分(りょうぶん)をわきまえているつもりだよ、こういったアクシデントに遭遇(そうぐう)するのはぁ、阿良々木君と相場が決まっているだろう』

 

『アクシデントですか…、ららちゃんの一目()れは…』

 

『元照れ屋ちゃんもさぁ、これ以上この話を引っ張るのは止めておこう、正義っ子ちゃんはまだこの先も人として生きていける、それなのに僕みたいなのと一緒に居たら、自分が怪異だってことを自覚しちゃうだろぉ、だからこの話はおしまいだ』

 

そっか…、「ららちゃん」は今まで通りに人間として生きていけるんだ、良かった。

 

『そうだね、この一連の物語が解決したら僕が不死鳥のお姉ちゃんの記憶を消す、だからいままで通りの生活が送れるだろうね、僕はキメ顔でそう言った』

 

記憶を消すって…、あの・アンリミテッド・ルールブック・快眠版だよね…、「ららちゃん」死なないでね。

 

『さて・待ち合わせ場所をこの北白蛇神社にした理由だけど、【三竦(さんすく)み】・なんでも知っている先輩が残した置き土産を使わせてもらう』

 

『三すくみと言うとアレだな、戦場ヶ原先輩が阿良々木先輩を亀甲縛(きっこうしば)りにして、阿良々木先輩は私の背に馬乗りで座る、そして私は戦場ヶ原先輩の足を()めるという、幻のトライアングルのことだな』

 

『はっはぁ、まったく元気がいいなぁ百合っ子ちゃんは、僕がこのセリフを素で言うのはとても珍しいんだ、だから聞いてほしい・幻のトライアングルは永遠に幻のままにした方がいい』

 

とてもチャラチャラした格好の「忍野さん」ですが、実に大人な対応でした。

 

『三竦みっていうのはぁ、ジャンケンと同じに考えると分かりやすい、ジャンケンのグーはチョキに勝ち・チョキはパーに勝ち・パーはグーに勝つだろう、これを物に例えるとグーが石・チョキがハサミ・パーが紙とする、石はハサミでは切れないから石の勝ち・ハサミは紙を切れるからハサミの勝ち・紙は石を包み込めるから紙の勝ちって考え方さぁ、さて・この法則を生物に当て()めた代表例がある、それが蛇と蛙と蛞蝓(なめくじ)なんだ、捕食の関係からいうと蛇は蛙を丸呑みだろ・蛙は蛞蝓を舌でペロンさ・そして蛞蝓はというと、蛇が蛞蝓を丸呑みにすると蛞蝓は消化されず・逆に蛞蝓の体液が蛇を内側から溶かしてしまう、実際にそうなるかは解からない、だが昔からの言伝えってやつはそれだけで効力が有るもんさぁ』

 

『それで・なぜ三竦みなのかっていうと、蛇は蛞蝓を食べられないだろう・溶けちゃうからねぇ、そんで蛙は蛇に食べられるのが嫌だから蛞蝓を食べない、つまり蛙にとって蛞蝓は食糧でもあるが・同時に蛇除けのお守りでもある、蛞蝓はといえば蛙に食べられないようにただ居るだけさ、三竦みとは三者が竦み上がって動けないという意味を指す言葉で、特定の距離に互いが得意なものと苦手なものがそろう時、三者は睨み合ったまま動けないという構図になる』

 

『なるほど・さっきの私の例えは逆だったのだな、私にとって戦場ヶ原先輩とはすべてだ・だから私が勝つことなどありえない、阿良々木先輩は・私がこの身を(ささ)げようとすると逃げるから私の勝ちだな、戦場ヶ原先輩は・なんだかんだと言っても阿良々木先輩に一番惚れているからな、ここは阿良々木先輩に軍配を挙げよう、といった感じなのだな』

 

『違うがまぁいいよ・話の続きをしよう、なんでも知っている先輩は神様が不在だったこの北白蛇神社に新しい神様を(ほう)じた、名前の通りこの神社の神様はもともとは蛇神さぁ、しかし神様といえど怪異である以上は人々の信仰が無ければ消えてしまう、実際にこの神社は元照れ屋ちゃんが【クチナワ】を復活させるまで神域とはとても呼べない状況だったろう』

 

『はい、社は崩れかかってましたし、参道も草が生い茂っていて石段が見えないくらいでした』

 

『うむ・それは私達の出会いの場面のことだな、まさかこんな可愛らしい子が未開の山道を下って来るとは思わなかったのでな、正直度胆(どぎも)を抜かしかけたぞ』

 

『すみません・驚かせてしまって…』

 

『とまぁ・今とは随分違うってことさ、信仰が回復したってことよりも・神様が居ることによってこの山全体が神性を帯びたんだ、さて・君達も知っての通り蛇神としての【クチナワ】はもう居ないだろぉ、じゃあ・今この北白蛇神社を神社たらしめている神様っていったい誰なのだろうか』

 

『忍野のお兄ちゃん、そんなもったいぶった言い方をしてないで、さっさと答えを言ったらいいだろう、僕はキメ顔でそう言った』

 

『はっはぁ、まったく皆元気がいいねぇ・何か良い事でも有ったのかい? 自分で考えて答えを出すというのも僕は必要だと思うんだけどね』

 

『確かにそうだな、何もかも忍野さんにまかせっきりでは申し訳ない、それに私の存在理由が無くなってしまうしな、よし私から答えを言わせてもらおう、いまこの神社で神様をしているのは・メイド姿の羽川先輩ではないだろうか』

 

『その心はぁ』

 

『羽川先輩のことだ、一度くらい冥途(めいど)にも行ったことが有りそうだからな』

 

『………』

 

『じ・じゃあわたしは…、忍さんではないでしょうか…、ただの感ですが…』

 

『………』

 

『僕は余弦お姉ちゃん以外なら誰でもいい、折檻(せっかん)されるのはご免だからね』

 

『………』

 

「忍野さん」は「わたし」達を見つめたまま、何も反応が有りません。

 

『どうしたんだい忍野のお兄ちゃん、僕が言うのも変な話だが、らしくないと思うよ』

 

『はっはぁ…僕が悪かったよぉ、僕の説明があまりにも伝わらないということが今回は教訓になったようだ、友達の詐欺師(さぎし)に教えてあげるかな、では・答え合わせをしようか』

 

たぶんと言うか…間違いなく「忍野さん」は落ち込んでいます。

 

『答えは蛞蝓さ、蛇を得意としている蛞蝓が蛇に代わってこの神社に納まっている、理由は簡単だ・蛙が居ないだろう、蛇と蛞蝓だけなら竦み上がることなく蛞蝓が蛇を押さえ込むだけだからねぇ、さて・ここからが本題だ、一年前・元照れ屋ちゃんに呪いを掛けたのは二人だったろう、一人は相馬珠美・もう一人は?』

 

『賀茂くん・賀茂翔琉です』

 

『はっはぁ…、やっぱり偶然なんてものは存在しないなぁ、あるのは必然と悪意ばかりだ、まぁそれはいい、それについては後で話すとして、その呪いをカケルくんは今も蛇切縄を受け続けている、阿良々木くんが(はら)えなかったもう一匹の蛇の呪いがね、人を呪わば穴二つといってねぇ、呪いというのは成功しようがしまいが必ず自らへとかえってくるものだぁ、だから呪いを受けたものには同情の余地はないんだけど、今回はそうも言ってられない、というのも・呪いをカケルくんが受けている蛇切縄の呪力は、おそらく玉藻前のエネルギーとして変換(へんかん)されているからさぁ』

 

『そうしたら、たまちゃんが蛇切縄から賀茂くんを守っているんですか?』

 

『そういう解釈もできるねぇ、まぁ今回の場合は玉藻前に力を与えないためにも、呪いをカケルくんを蛇切縄の呪力から解放するとしよう、その為には蛇を得意とした神様にお願いするのが一番だ、いまこの北白蛇神社で蛇の力を押さえ込んでいる蛞蝓の神様にねぇ、ちなみに蛞蝓っていうのは蝸牛(かたつむり)(から)が無くなった生物の事をいう、それはまぁ会ってからでいいね、さぁここにお賽銭(さいせん)を入れて・頼んでごらん・君の友人を助けて下さいってねぇ』

 

この後「わたし」はお賽銭を入れ、柏手(かしわで)を打ちました、

そしてこのページのはじめへと戻ります。

 

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