なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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いやー予想以上に話が長くなり、更新が遅くなりました。
続きの方よろしくお願いします。


なでこ☆フォックス -44-

          ☆

 

見た目は少女の「八九寺真宵」ちゃん、現在は北白蛇神社の神様をしている蛞蝓神と、見た目が童女の「斧乃木余接」ちゃん、陰陽師さんの式神・(けん)「ららちゃん」のお人形さんが、お互いを睨み合ったまま仁王立(におうだ)ちしています。

 

どちらも見た目が可愛いのであまり迫力(はくりょく)はありません、ですが「わたし」はこれから蛞蝓神様としての「真宵ちゃん」にお願いをしなければならないのです、それを思うとこの状況は非常に厄介(やっかい)です。

 

『あ・あのね…、二人とも仲良くしようよ…』

 

一応「わたし」の方がお姉さんなので(見た目ですが)、優しく微笑みながら言いました。

 

『『………』』

 

無視されました…、少女と童女が一瞬だけ「わたし」に視線を向けますが、すぐにお互いが正面の相手へと視線を戻します。

 

『あ・そっか、わたしまだ自己紹介とかしてないからねー、あのね・わたしは…』

 

『千石撫子さんですよね、お隣の方は神原駿河さん、そして気絶しているのは阿良々木さんの下の妹さんで月火さん、あと・無礼にも賽銭箱をベッドにしているのは忍野メメさんですね』

 

「真宵ちゃん」の視線は「余接ちゃん」をとらえたままで、「わたし」達にはいっさい見向きをせずに言いました。

 

『うん? 私も初見(しょけん)だと思うが、なんで名前を知っているのだ』

 

『そうですね、神原さんは自分の行動にも・帰る家にも迷っていませんから、だから私のことが見えなかっただけで、私の方からはしっかりと神原さんのことは見えていましたよ、阿良々木さんをストーキングしている時とかに』

 

『なるほど、昔よく阿良々木先輩が自転車を押しながら独り言を話していたが、実は八九寺ちゃんと話していたのだな、良かった私は今まで・阿良々木先輩は可哀想な人間なのだと思っていたのだ』

 

『いや・鬼いちゃんは今でも可哀想な人だよ、人形である僕に一生懸命相談をしているからね』

 

そこは応えてあげようよ「余接ちゃん」。

 

『そうすると、真宵ちゃんは・わたしや、らら・月火ちゃんとも会ったことが有るんだね』

 

『いいえ・会うのは初めてです、私があなた方のことを知ったのは地獄に居る時のことですから、私これでも地獄の案内人をしたことが有りまして、その時に阿良々木さんに関わった人については一通り網羅(もうら)しています』

 

なんだかとっても殺伐(さつばつ)とした感じの答えが返ってきましたが、「わたし」の考えすぎですよねー、とりあえず会話も成立したことですし、お願いをしなきゃです。

 

『あ・あのね、真宵ちゃんにお願いがあって来たんだけど、聞いてくれるかな』

 

ちょっと軽いかなー、でも神様とはいえ相手は少女だし…。

 

『お断りします! わたし・あなたのことが嫌いです』

 

『えっ…えぇぇぇぇーーーーー………』

 

これまでほとんど「わたし」の方を見ないで話していた「真宵ちゃん」が、シッカリと「わたし」を見て・シッカリとした口調で・ハッキリと言いました。

 

『八九寺さん、今のはあなたと鬼いちゃんがよくやってた噛みました(・・・・・)ってやつかい? もしそうならセンスが悪いよ、僕はキメ顔でそう言った』

 

『違います、わたしは千石さん・あなたのことが嫌いです!』

 

言い直されました…、なぜこんなにもハッキリと嫌われるのか分かりません…、「わたし」は何処に視線を向ければいいか分からず、ここは大人である「忍野さん」を見ましたが、「忍野さん」は片目を瞑って笑っています。

 

『千石さんがこの北白蛇神社で蛇神をしていたことも知っています、つまり千石さんはわたしの先輩に当たりますね、それでも失礼は承知で言わせていただきます、わたしは・あなたのことが嫌いです、理由は・あなたが自分の我儘で阿良々木さんを殺そうとしたからです』

 

『あっ………う…ん………』

 

「わたし」の罪…、今まで忘れていた(つぐな)い切れない大罪(たいざい)…、忘れることで自分を守っていた卑怯(ひきょう)な「わたし」…、誰に()められることなくのうのうと暮らしていた「わたし」…、どれをとっても「真宵ちゃん」が「わたし」を嫌う理由は充分です…。

 

『千石さんが・忍野扇さんに(そそのか)されたことも知っています、ですが・わたしはあなたの取った行動を許す訳にはいきません、何故なら、あなたは自分の叶わない恋を、あなただけの思い出にする為に、阿良々木さんを殺そうとしたサイコパスだからです』

 

『う…う…う………うあああぁぁぁぁぁぁーーーー…』

 

『無駄ですよ千石さん、この神社一帯にはわたしの神気が満ちていますからね、あなたのもう一つの人格【クチナワ】は出てこれませんよ』

 

「わたし」は…「わたし」は…「わたし」は………、人に言われて…初めて分かりました…、「わたし」がサイコパスなのだと…、っぐぅぅぅぅぅう…苦しいよぉぉぉぉお…助けてよぉぉぉぉお…こよぉ……、ダメだ……「わたし」は・また……

 

『僕が口を(はさ)むことじゃないのかもしれないけど、一方的っていうのはあまり見ていて良いものじゃないから言わせてもらうよ、八九寺さんが自己満足で美化している鬼いちゃんとの別れのシーンだけど、あの別れ方を喜んでいるのはあなただけだよ、鬼いちゃんはあの後もずっと苦しんでいたさ、あなたは自分が犠牲(ぎせい)になることで美しい思い出としたけれど、残された側の立場としては八九寺さんの犠牲の上で自分が助かったという罪悪感(ざいあくかん)が残っただけだよ、僕はキメ顔でそう言った』

 

『ううむ…確かにその考えには気付きませんでした、わたしが阿良々木さんを苦しめていたとは…、すべてはこの可愛さが原因とはいえ申し訳ないことをしました、次に会った時はわたしの方から抱き付いてあげなくてはいけませんね』

 

『チッ! マジうぜーこの蛞蝓、今度はカエルでも連れて来ようかな』

 

『斧乃木さんの言い分は分かりました、ですがわたしが自己犠牲を選んだことと・千石さんが殺戮(さつりく)を選んだことを、同じレベルで語られるのは心外(しんがい)です、わたしは好きな人には幸せになって欲しいのです、なのにこの人は好きな人が自分に振り向いてくれないからって…』

 

『それのどこがいけないんだよー、わたしだってあんなことしたくなかったよー、でもしょーがないじゃん・わたしが一番辛い時に助けてくれたんだもん、もうどうしようもない時に・蛇切縄に締め上げられた時に、暦お兄ちゃんが助けてくれたんだよー、恋をするに決まってるじゃん、好きで・好きで・好き過ぎて・おかしくなってもしょうがないじゃん、また怪異に()ったら暦お兄ちゃんが助けてくれるかもって思うじゃん、どんな些細(ささい)な理由でもいいから会いたかったんだよー、なのに・それなのに……うっわああああああぁぁぁぁぁぁぁ……』

 

泣きました…号泣(ごうきゅう)しました…声の限りを出して…、蛇の槍で「暦さん」を何度も刺し貫いた映像をフラッシュバックさせながら…、

 

『もう気は済んだろう、阿良々木先輩を殺そうとしたのは千石ちゃんだけじゃない、私もかつては戦場ヶ原先輩への横恋慕(よこれんぼ)から阿良々木先輩を憎んだことがある、形はどうであれ私も同罪なのだ』

 

『少々大人気がなかったですかね、わたしはこう見えても生きていれば成人してますから』

 

『思考回路は子供のままだけどね、僕はキメ顔でそう言った』

 

『どうして千石ちゃんを泣かせようとしたのだ?』

 

『これでもわたしは神ですからねー、罪の告白と言いますか・懺悔(ざんげ)する気持ちを許すことも仕事の内です、千石さんの場合あれもこれもみーんな自分の罪だと思っているみたいなので、一つ位は解消しておく必要がありますから、そうしないとこの先のことも対応できませんので』

 

『八九寺さんの場合、人の懺悔を聞くよりもまずは自分が懺悔するべきだと思うけどね、なんなら僕が聞いてあげてもいいよ、たぶん許しは無いけどね』

 

『斧乃木さんこそどうですかー、怪異とはいえ心苦しいこともあるのでは?』

 

『間に合っているよ、僕には鬼いちゃんが居るからね』

 

『仲が良いのは分かったが、そろそろ千石ちゃんのことを気にしてくれるかな、このまま泣かしっぱなしでは可哀想だ』

 

『失礼・噛みました…、千石さん・先程はサイコパスなどと言ってご(めん)なさい、わたしは一つ確認がしたくて怒らせました、千石さんが阿良々木さんに対してどのように思っているかを知りたかったのです、千石さんは阿良々木さんを(ひょう)するときお兄ちゃんと言いました、単なる(あこが)れだと、しかし憧れである人物が憎悪(ぞうお)の対象に成り得るでしょうか、わたしの答えは(いな)です、ですが憎愛(ぞうあい)ならば分かります・憎むことと・愛すること、愛し過ぎるが故に・報われぬことへの憎しみですね、人が抱く感情としてとて普通の感情だと思います、わたしは千石さんが行った行為に対しては・やはり納得がいきません、ですが何故その行為に(いた)ったかについては理解できました、千石さんは本当に阿良々木さんを愛していたのだということが・です』

 

『わたしが・暦さんを…愛していた…』

 

『えぇ・今もたぶん引きずっていますよ』

 

『でも…暦さんには彼女が居て…とてもお似合いのカップルで…わたしが暦さんを愛してるって…』

 

『ハッキリ言って迷惑です! ですが・人が人を愛することは自然なことです、愛した相手には別な愛する人が居たとしても、だからといってその相手を愛することが罪だと言えるでしょうか? わたしはそうは思いません、永遠の愛・永遠の(ちかい)・永遠の貞操(ていそう)、そんなものは永遠の命を持った怪異のみにしか当て嵌まらないのです、まー怪異とは人が造った願望ですからね、でも今という生をまっとうする人に永遠などありません、いま生きている生を後世に残す為にも人は愛し続ける生き物なのです、死んでしまったわたしが言うのもなんですが…、千石さんは自分の気持ちに素直になるべきだと思います、これは決して阿良々木さんへの愛を貫けという意味では無くてですねー、自分の心に嘘を付かない生き方を選んで欲しいってことです』

 

『嘘つきは泥棒(どろぼう)の始まりって言うよね、蛇のお姉ちゃんが自分の心に嘘を付いてるのって、僕からすると鬼のお兄ちゃんを横取りしようとジッと執念(しゅうねん)深く待っているようにも見えるよ・蛇だけに、去年・猫のお姉ちゃんは玉砕(ぎょくさい)した、鬼のお兄ちゃんに結婚を前提に付き合って欲しいと言ってさ、燃え盛る自分の嫉妬心に整理を付けるためにね、あれだけ見事な玉砕というのは、見ている方も清々(すがすが)しいものだったよ』

 

『わたしも…ちゃんと振られろって…ことかな?』

 

『いつまでも自分の心に嘘を付いていては一歩も前には進めません、これは迷子だったわたしの教訓です、人の人生は短いです・特に青春といわれる時間はあっという間に過ぎていきます、同じ場所を行ったり来たりしていては十年経っても何も変わらないですよ、千石さんは今もこうして人間として生きているんですから、失敗して・後悔して・反省して・また失敗をします、でもそれが生きているってことではないですか、わたしからすれば羨ましい限りです』

 

『失敗して…後悔して…反省をする……わたしは反省をしていなかった……』

 

『蛇のお姉ちゃんが鬼のお兄ちゃんにしたことはとっくに解決している、当事者の鬼いちゃんと怪異殺しが許しているからね、というか責任の半分は鬼いちゃんにあるんだけど、蛇のお姉ちゃんは最近になって記憶を取り戻したから知らないだろうが、鬼いちゃんは蛇のお姉ちゃんを救えなかったことを今でも後悔している、鬼いちゃんはそんな後悔の呪縛をいまだに解けずにいるんだ、蛇のお姉ちゃんが反省したことを鬼いちゃんに打ち明ければその呪縛は解けるかもね、僕はキメ顔でそう言った』

 

『そんなに…もう半年以上も前から…暦さんを後悔させ続けていたの…、わたしは…何も知らずに……ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…』

 

『よし! 許す! わたしはこの北白蛇神社の神として、千石撫子さん・あなたを許します』

 

『あ・ありがとうございますぅぅぅう…』

 

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