なでこ☆フォックス【狐物語】   作:TAINZ

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なんて言いますか、この話を書くのにかなり悩みました。
「撫子」が自分の問題だと認識させる為の話なのですが、なかなかまとまりませんで…、ご理解いただければ幸いです。
ご一読よろしくお願いします。


なでこ☆フォックス -46-

「真宵ちゃん」現在この北白蛇神社で蛞蝓の神様として、この町を(おさ)めている神様ですが、「わたし」のお願いを(嫌です!)と断りました、いったい何がいけなかったのでしょう?

 

やっぱり神様にお願いごとをするのですから・礼儀作法でしょうか?

それともお賽銭が少なかったのかな…五百円じゃあまずいよね…、出世払いで許してもらえるかな?

 

あと考えられることと言えば……、

 

『千石さんが恋愛感情に(うと)い事はよくわかりました、ある意味・阿良々木さんといい勝負です、なので千石さんが賀茂さんという方に行った仕打ちに対しては何も言いません、ですが千石さんが賀茂さんを本当に助けたいというのであれば、その理由をちゃんと言っていただけますか、でないとわたしは千石さんのお願いを聞くことは出来ませんよ、わたしは阿良々木さんとは違って、誰も彼も助けたいなんて感情は持ち合わせていませんので』

 

そうか…「わたし」の気持ちが伝わらなかったのですね、…というよりも…「わたし」はどうして賀茂君を助けて欲しいのでしょう…、「わたし」にとって賀茂君とは…なんなのでしょう…?

 

『なるほどね、僕は八九寺さんのことを新米の神と少し見くびっていたようだ』

 

『今更ですか、まー良いでしょう神は寛大ですからね、斧乃木さんの懺悔もついで(・・・)に聞いて差し上げますよ』

 

『ならば・私の懺悔を聞いては(もら)えまいか』

 

『神原さんのですか?』

 

『うむ・私の懺悔だ!』

 

『もちろん聞くことは構いませんが、わたしが聞くことで神原さんの気持ちが晴れるかは分かりませんよ』

 

『いいんだそれで、ただ言っておきたいだけなのだ…』

 

『分かりました、話すことで楽になる痛みもあるでしょうから』

 

『ありがとう…、忍野さんは賀茂に帰った呪いについては阿良々木先輩が気に病むことでも、私が責任を感じることでもないと言った、だがそれでも私と阿良々木先輩にはどうしようもない罪悪感が残っている、いやすまない・この言い方だと阿良々木先輩が私と同罪のように聞こえてしまうな、先輩の名誉の為にも事実を伝えなくてはいけないよな…』

 

『阿良々木先輩は千石ちゃんから【蛇切縄】を引き剥がした時に足と腕を噛まれている、阿良々木先輩には吸血鬼としての治癒(ちゆ)能力があるが、私の感想からすると傷が治る気配は無かった、片足と片腕が使い物にならなくなっているにも関わらず、阿良々木先輩は【蛇切縄】の標的(ひょうてき)となるべく立ち上がろうとした、だが…それを私は()めさせたのだ…』

 

『阿良々木先輩は分かっていた…【蛇切縄】を取り逃がすという事は、千石ちゃんに呪いを掛けた中学生に呪い返しをしてしまうという事が…、阿良々木先輩という人は・本当に馬鹿な人だ…、本当の阿呆(あほう)だ…、本当にお人好しで……、本当に尊敬している…、だからこそ・阿良々木先輩に気付いて欲しかった…、今その場で助けるべき相手は誰なのかという事を…』

 

『私は見ず知らずの誰かではなく、今この目の前にいる阿良々木先輩を心底(した)っている千石ちゃんを…、君を選び助けて欲しかったのだ!』

 

『正直に言おう、私は千石ちゃんに呪いを掛けた相馬珠美と賀茂翔琉が許せなかった、過去の自分の行いを思い出させるからな、以前・私は【猿の手】に…いや違うな【レイニーデビル】という悪魔に願ったことがある、表向きには自分の幸せを願ったものだったのだが、実際には他者への(ねた)み・単純に嫉妬(しっと)によるやつあたりを悪魔に願ってしまった、自分に言い訳をしながら…それに気付かないふりをしていた卑怯(ひきょう)者・それが私なのだ…』

 

『さっき言いかけた・私も阿良々木先輩を殺そうとしたことがあるという話なのだが…、私は・先輩を殺そうとした行為に対して・願った内容はまったくの別物なのだと嘘を付いた、私が先輩に告げた嘘とは・ジェイコブズの短編小説【猿の手】なのだ、この話の概略(がいりゃく)を一言で言えば・自分の意に沿()わぬ形で願いが叶うというものだった、小説の内容は・猿の手のミイラには三つ願いを叶える力がある、登場人物は三人で老夫婦とその息子・まず息子が願ったお金が欲しいという願いに対して、意に沿わぬ形で叶った願いとは・自らの死に対しての報償金(ほうしょうきん)だった、息子が欲しいと願った金と同額の金を受け取ったのは老夫婦だ、息子の死に(なげ)いた母親がまた別の願いを掛ける、願ったのは・息子の生き返り、そしてゾンビとなった息子が返ってくると恐怖した父親が最後の願いを掛ける、その願いとは墓に戻れというものだった、そういった内容の怪異と遭遇したという嘘を付いたのだ』

 

『しかし実際に私が遭遇した怪異とは【レイニーデビル】だ、この怪異は私の母・旧姓【臥煙遠江】が高校生の時に自ら生み出した怪異で、もともとは西洋の低級悪魔だった、この悪魔は魂と引き換えに三つの願いを叶えるのだが、その叶える願いは人の怒りや嫉みといった負の感情に(かたよ)るものしか叶えない、本心からいえば・私はそのことにうすうすだが気付いていた筈だ、しかし私は…自分が願った内容が嫉妬であるという事を認めたくなかった、それで私は・自分にも・阿良々木先輩にも嘘を付いた…』

 

『私の本心が望んだこと【レイニーデビル】に願ったこととは、阿良々木先輩への嫉妬だ、戦場ヶ原先輩を助けたこと・戦場ヶ原先輩に笑顔を与えたこと・戦場ヶ原先輩の隣にいること・そのすべてが憎かった、私がそうしたくて一年以上も()え続けていたことを、阿良々木先輩は簡単に成し()げてしまった、悔しさで涙が止まらなかったよ』

 

『つまり私は自分の意思で阿良々木先輩を…憎み…妬み…恨み…殺そうとしたのだ、そうした感情に気付かないふりをして・私は阿良々木先輩に【猿の手】の話をする、自分が願ったのは「戦場ヶ原先輩のそばに居たい」ただそれだけだと、阿良々木先輩を殺そうとしたのは・意に沿わぬ形で願いを叶える【猿の手】なのだとな、本当に私は自分勝手の嘘つき者だよ、自分の無力を認めることなく・すべての責任を怪異に(ゆだ)ねたのだから…』

 

『そんな私の行為と、相馬珠美と賀茂翔琉が千石ちゃんに呪いを掛けた行為が、私には同じ物のように思えてな…、阿良々木先輩が【蛇切縄】を必死にくい止めようとしている姿が見ていられなかったのだ、私は自分の罪に対して何の責任も負っていない…、強いて言えば左手に怪異を残した事がせめてもの罪滅ぼしだったが・それも今はこの通りさ…、忍野さんは私が責任を感じる必要は無いと言った…、だが私は阿良々木先輩が必死にくい止めようとした【蛇切縄】の呪いを・賀茂に反す事を選んだのだ、今も賀茂が呪いに苦しんでいるのは私の責任だ』

 

『そんなこと無いです、神原さんと暦さんはわたしを助けてくれただけです、賀茂君が呪いを掛けたのはわたしがそれだけの事をしたからで…』

 

『わたしは・賀茂君のことを何も知りません、一年生の時に同じクラスだったこと位で・小学生の時に転校してきた事も何も知りませんでした、今日・たまちゃんに言われるまで、賀茂君の事も忘れていましたし・呪いに苦しんでいることも知りませんでした、あれだけの事をしておいて・すべてを忘れていたわたしは、本当に酷い人間だと思います…』

 

『さっき真宵ちゃんに・どうして賀茂君を助けたいのかと聞かれた時、わたしは理由が思い当たりませんでした、わたしにとっての賀茂君という存在は…迷惑な人です、勝手にわたしを好きになって・勝手にわたしに告白をして・わたしに酷いふられ方をする…、でもそれってわたしが暦さんにしている事と一緒なんですよね』

 

『わたしは告白をしていません・ただ暦さんにわたしの想いを聞かれただけ…、そして暦さんはわたしとは両思いにはなれないと言いました、わたしが賀茂君にしたような罵詈雑言などではなく、ただ淡々(たんたん)と・わたしの願いは叶わないと…、それでもわたしは・怪異を呑み込み・怪異と一体化して、暦さんを殺し続けました…』

 

『想いが届かないことへの怒り・悲しみ・そして殺意を・わたしは知っています、だからわたしは賀茂君の気持ちが理解出来ます、賀茂君がわたしを心底憎み・呪いを掛けた気持ちが解ります、賀茂君とわたしは同じ感情に苦しんだということが解ります』

 

『わたしは自分のしでかした罪を(つぐな)うことなく皆さんに助けて頂きました、感謝してもしきれません、だから今度はわたしが同じ(あやま)ちを(おか)した賀茂君を助けてあげたい…、ですが・わたしには何が出来るのか…まったく分かりません、本当にわたしは何にも出来ないのに・皆さんに助けてもらっているだけです、たまちゃんが言ったことって真実なんですよね、わたしは何も見ていないし・何も覚えていないし・何も解決しようとしていない、ズルいのですよね』

 

『そしてこれがとても卑怯な事だとは理解しています、ですが・わたしには皆さんにお願いをして頼ることしか出来ません、どうかわたしに力を貸してください、賀茂君とたまちゃんを助ける為の力を貸してください、お願いします、わたしはズルくて・卑怯で・何も出来ないダメ人間です、こんなわたしで本当に申し訳ありません、ですが・どうか力を貸して下さい・お願いします、ダメなわたしを助けてください、よろしくお願いします』

 

『私からもお願いしたい、これは千石ちゃんだけの問題ではなくて私の問題でもあるのだ、それに阿良々木先輩にはもうこれ以上・罪の意識に()らわれて欲しくはない、勝手なのは重々承知(じゅうじゅうしょうち)しているし・自分の(けつ)()けない(おろ)か者と(ののし)ってくれて一向に構わない、だが私も千石ちゃん同様に何も出来ない若輩者だ、伏してお願いするより方法が見当たらない、お願いします・私達に御助力(ごじょりょく)頂きたい』

 

「神原さん」がその場で土下座をしました、「わたし」も慌てて土下座をします。

 

『お2人の気持ちしっかりと受け止めました、勿論わたしには異論は有りませんよ、わたしが(さず)かった力がおよぶ限り協力させて頂きます、千石さん・御立派に成られましたね、自分と同じ過ちを犯した賀茂さんを助けたいという思い、充分な理由だと思いますよ、そして神原さん・あなたがした選択は決して間違いだったとは思いません、あなたはただ御自分の罪滅ぼしであった左手の怪異から開放されたことに対して、どこか後ろめたさを感じているのでしょうが、気に病む必要は無いのです、怪異が離れたということは・もうそれだけの代償(だいしょう)をあなたは支払ったということです、何時までも過去に捕らわれず・前を向いて未来を掴んで下さい、それが生ある者の勤めだとわたしは思います、さて・千石さんにはおって沙汰(さた)を申し渡すとして、これにて一件落着(らくちゃく)・本日の御白州(おしらす)はお開きと致します』

 

『は・はぁぁ』

 

『おいおい・とんだ大岡(さば)きだね、勝手に話を終わらせるなよ、八九寺さんがいくら神に成ったからって・あなた一人で対応出来る問題じゃ無いだろう、僕の印象からすると・あなたはこの北白蛇神社の外ではまったくの無能なんじゃない、無知で・無能で・無駄なんじゃない、僕はキメ顔でそう言った』

 

『ふっふっふーん、斧乃木さんのご指摘はごもっともですよ、わたしの力がおよぶ範囲はこの神社を中心とした山一つが精々でしょう、もちろん信仰が広まればもっと広範囲にも拡大していくでしょうが、現在のところはこの山だけです、なので賀茂さんの呪いを解くためには本人をこの北白蛇神社まで連れて来なくては無理です、それに関しては皆さんで考えて頂くしかありません、さて・斧乃木さんはわたしを無知で・無能で・無駄と(おっしゃ)いましたね、それって最高の()め言葉では有りませんか! 無知であるということは・これから知識を得ることが出来るということです、無能であるならば・芸を学びそれを(みが)いていくことが出来ます、無駄というものは・人生を豊かにしてくれます、雑学=無駄なんていう解釈が有るようですが、そういったものを持ち合わせていない人というのは寂しいのではないでしょうか?』

 

『人の可能性を八九寺さんに説かれると言うのも()に落ちないが…、確かにそういった見解も有るね、つまり蛇のお姉ちゃんも・猿のお姉ちゃんも・まだまだこれからって事なんじゃないの、あなた達は今の自分には何も出来ないと理解しているのだから、これからの自分には何が出来るかを考えながら生きていけば良いって事さ、今は助けて貰うだけの無能な存在かもしれないが、今後は助ける側に成れるかもしれないしね、まー精々頑張ってよ』

 

『わたしの台詞を勝手に使わないで下さい、最後に閉めようとしていたのに』

 

『大岡裁きの真似をした時点で、八九寺さんの閉めは有り得ないよ』

 

『お言葉ですけど、斧乃木さんみたいに(まー精々頑張ってよ)なんていう、投げやりな言い回しでは千石さんにも・神原さんにも・増してや読者様にも失礼というものです』

 

『あなたが何に対して気を使っているのか僕には理解できないが、やっぱりこの話の閉めが八九寺さんで無いことだけは断言できるよ』

 

『フラグ立てですかー、いくら無表情キャラだとしても言って良いことと悪いことが…』

 

『おーいぃ・あららぎぃー、いったいこの面子はどうなってやがるぅー』

 

聞き覚えのある声と・聞き覚えのある(しゃべ)り方が、境内の入り口の方から聞こえてきました…。

たぶん「わたし」がこの声を効いたのは、ここ北白蛇神社です。

 




読んで頂いた皆様に、話の内容が伝わっていればと願うばかりです。

次話も引き続きよろしくお願いします。
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