ないない尽くしで転生   作:バンビーノ

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02.ないない

 クールに冷静になろう、ありのままに起こったことをまとめよう。

 ・ゲートオブバビロンから小石しか出なかった。

 ・金髪少女が謎のエネルギー弾を出す。

 ・小石とエネルギー弾直撃、目の前が真っ白に。

 ・気づけば図書館の本棚の前にいた。

 ・時計を確認すれば時間が戻ってる。

 

 結論から言うとまとめたところで何もわからない。だってまとめただけだしな。

 というより、あれっ? ゲートオブバビロンから剣とか斧も槍もでずに拾った小石しか出なかっただと……?

 ちょっと嫌な考えがよぎったのでトイレに向かう。

 個室に入り、ゲートオブバビロンをひとつ展開して「剣よ、出ろ」とか言ってみるけど金のゲートが波打つだけでなにも出ない。恐る恐る手を入れるが空を切るだけで何にも触れない。

 

「これはアレか? 四次元ポケットと秘密道具が別物ってのと一緒で、ゲートオブバビロンと中身の武器は別物なのか……そうかそうか」

 

 今ここでゲートオブバビロンは、ただ無限に物をしまえる以外のメリットが無くなった。

 

 神様のサービス精神のなさに項垂れつつトイレから出て、図書館の椅子に戻る。

 拾った小石を発射してたことを思い返してみると、自分の持ち物を際限なく仕舞えて発射も出来るってとこか……発射機能付き四次元ポケットだな。

 

 さてさて、発射機能がついてる素敵な四次元ポケットはいいとして、あの金髪少女。『フォトンランサー』とか言って、金色の電気纏ったエネルギー弾を出してた。

 まぁ、どんな世界か知らないけどああいうの使えるのが普通なのだろうか? 実はみんな普段は普通に生活してるだけで使えるとか……急に人が消えてたことを思えば何か結界みたいなファンタジックなことしてるのかもしれない。その結界内だけで、ああいう魔法みたいなマジカル能力が使えるとか。なんとかバトルフィールド的なものだったりするのか。

 ってわけで正面にいる車椅子少女(今回も無事本を取れたようである)に問いかける。

 

「ちょっとすまん」

「えっ、あぁ、わたしか」

「魔法って使える?」

「なに言うてるん?」

「今のなしで」

 

 素で「コイツ何言うてるんや?」って顔をされた。心が辛い。

 普通の人は使えないか、あのコスプレ少女が例外だったのか。物のついでだし、聞きたいこと聞いとこう。魔法使えるか聞く以上に恥ずかしいことはない。もう何も怖くない、主にあの金髪少女以外。いやでも聞きたいことは、

 

「なぁなぁ、魔法ってなんやの?」

 

 先手を討たれた上に掘り返された。掘り返された穴に入りたい。

 

「寝起きで寝惚けてたか、読んでた本がファンタジーだったのでつい熱に浮かされてたってことで見逃してやってほしい」

「バッチリ起きとったし、置いたる本は地理か歴史ものなんやけど……なんで歴史なん?」

「夏休みの宿題でだな」

「今、春や。それも世間様のいう一学期が始まったばっかの四月」

「手強いな……」

「いや、あんたが弱すぎるんやろ。で何を聞きたかったん?」

 

 何だかんだで話がいい流れになった、なったが別段聞きたいことはなかった。いや、あるんだけどコスプレ魔法少女(仮称)について以外ないし。

 まさか露出の多いコスプレ魔法少女を知らないか、なんて聞けるわけもない。変人でも良いけど変態にはなりたくない微妙な機敏があるんだ。

 

「やー、ホント呆けてただけだ。本を読む邪魔をして申し訳なかった」

「ふぅん? まぁ、ええよ。でもこんな昼間から呆けてたら、いつか恥ずかしい目見るし気ぃつけや?」

「わかったよ、オカン。それじゃ失礼」

「誰がオカンか。ん、それじゃ気ぃつけや」

 

 お互いにピッ! っと片手をあげて別れる。特に得るものは無かったけど少し楽しかった、主に現実逃避の意味でな!

 外に出て辿り着いたのは公園、前回より早く図書館をあとにしたのでまだ二時過ぎである。

 

 シンキングターイム、現実を直視する時間がやって参りました。

 ゲートオブバビロン改め、四次元ポケット(射出も出来るよ!)の件は解決した。色々、問題はあるけど解決した。

 しかし、残りの問題が難解過ぎて困る。この際、通り魔系魔法少女はいいや。小石を拾うと襲ってくるみたいな習性がある、そういうものとして受け入れよう。

 やっぱなし、あとで考える。『やり直し』のトリガーがアイツだったら笑えない。

 で、目の前が真っ白になった件はどうしてなのか……エネルギー弾、もとい魔法少女が撃ったので魔法弾が爆発する特性があったのか、あの石が原因か。そもそも目の前が真っ白になったことしか、解ってないから爆発したのかすらわからん。

 というか爆発してたら死んでるよなぁ、なにこれコンティニュー?

 気づけば本棚の前にいたってのは死んだからコンティニューしたのか、あそこセーブポイントだったの?

 金も家族も戸籍もないけど死ぬとコンティニュー出来るサービス付きとな……? おい、需要と供給がすれ違ってんぞ。俺にも魔法くれ、魔法。

 

 しかしもし、もしそうだと仮定する。あの小石か魔法弾が爆発して俺が死んだとする。

 転生とかいう普通じゃない体験をして、金髪ロリが魔法使って小石が爆発するなんて世界なんだ。『やり直し』みたいな特殊能力あっても不思議じゃない、うん。

 死んだら戻るって考えたらなんか気持ち悪いけど、死ぬ直前に時間が巻き戻るって可能性もなくはないので、そう考えれば幾分マシなるか……なるか?

 

「よっし、解決ぅ! ……なわけねぇ!」

 

 公園の遊具の上でひとり気持ちの悪いノリツッコミをしてる男児がいた、俺である。フェレットかイタチみたいなペットを連れた少女が、ビビってこっちを見ているが無視。

 確認したいことができた俺は急いで小石を拾いに行く。今の時間なら、小石を拾うのは前回より二時間は早い。

 走る走る、小石を拾った路地に。相変わらず大人たちは微笑ましいものを見る目で見てくるけど、こっちは割りと切羽詰まってるんだよ!

 まず確かめたいこと。それはあの魔法少女コスの出現条件。

 

「はぁ、はぁ……! 小石確保……!」

 

 小石を拾い四次元空間にしまう、ゲートオブバビロンって呼ぶの面倒になってきたし、取り敢えず四次元空間でいいや。

 そのまま身構えて五分ほど待つが、あのちょっと恥ずかしい露出多めの少女は来ないし結界も出現しない。どうやら小石を拾うと無条件で現れるわけではないらしい。

 まぁ、出てこないに越したことはない。

 じゃあ、次の実験に……あんまりやりたくないねぇけどな。

 

 公園にゆったり歩いて戻るといい感じに暗くなってきていた。途中で腹ごしらえのため試食コーナー回ってたせいもある。食うもん食わないと動けん、というか試食品が置いてある店が閉まったら現状食うもんがないのだ。

 で次は爆発だか閃光が発生した原因……たぶん爆発だな。それを起こしたのが小石なのか魔法弾なのか。

 たとえ小石が原因として巻き込まれても『やり直し』が効くはず……効くのかなぁ、こればっかりは死んで試すのも嫌だから試せんのだけど。なんで『やり直し』になったのか、その条件もわからないし。

 ひとまず四次元空間から出した小石を、離れたジャングルジムに投げてみる。

 キンッ! と小気味いい音がなるが爆発しなかった。

 

「これくらいじゃ爆発しないのか、はたまた本当に爆発しないのか」

 

 次は大きめの石をふたつ持ってきて、ひとつを小石の下に置いておく。もうひとつを滑り台の上から――落として叩きつける!

 これまた小気味いい音が響いたが何も起こらない。小石を見ても無傷、光る気配もない。危険もなさそうなので、ポッケにしまっておく。

 ということは、だ。あの爆発はエネルギー弾のせい? 溢れんばかりの露出欲を爆発にまで還元するとはこの世界の露出系ロリ通り魔えげつないな。

 発生条件のわからない金髪ロリに気をつけて暮らす世界……なわけはない、ないと嬉しい。

 

「そもそも何を目的にあの子は来たんだろうか?」

 

 ジュラルミンソードみたいなの寄越せと言って、ハルバート振り回す危ない子だった。勘弁してほしい、あの子のことを改めて考えてみるがおかしなことしかない。

 金髪ツインテールのロリ、ここまでセーフ。

 コスプレでメカチックなハルバートを持ってる、はいアウト。

 何か寄越せと言い、断るとハルバート振り回す、ツーアウト。

 挙げ句の果てにはエネルギー弾を撃ち込んできて爆発する、スリーアウッ! チェンジ!

 

 まあ、二つ目については持ってないことを説明すれば良かったのかもしれない。けどな、ゲートオブなんたらが、な……あると思って熱に浮かされてたんだよ。実際は四次元空間があるだけで、戦力は頑丈な小石ひとつだったという悲しい現実が待ってたわけだが。

 しかし、なんだろうか。日が暮れるまで色々考えたけど大事なことに気づいた。

 

「寝床も飯もない」

 

 しまった、もう一回は試食コーナー回るつもりだったんだが……取り敢えず目についたイタドリの皮を剥いてシャクシャクと食べる。まったく腹にたまらない。

 こう、もっと満腹になるまで食べたいよね。ポッケの小石を取り出し眺める。

 

「…………お前、食えないかね?」

 

 ワンチャンいけるかもしれない。口に放り込む、噛む。歯がたたない、当たり前だった。石で砕けないものが噛めるはずもない。舐める、味がしない、だって石だもの……ぺっ。唾液でベトベトになった小石を口から出す。そりゃ食えねぇわな、あー石より飯が欲しい

 あ? なんか手のなかには唾液でテラテラ光ってる、小石が……光ってる?

 

「口に入れられてキレたのか!?」

 

 そんなバカな……! 小石が口に入れられて、怒って爆発するなんて嘘だろ!

 焦った俺はなにも考えず反射的に、小石を四次元空間に投げ込む。そしてゲートを急いで閉じ……よし、何も起こらないな。爆死は免れた。

 額を伝う冷や汗を腕で拭ってると声がかけられた。

 

「動かないでください、あなたの持っているジュエルシードを渡せば危害は加えません」

「えぇ……出現条件なんなのさ」

 

 ――通り魔少女、狼を引き連れ再登場。帰れ。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を。
相変わらず、はやての本を取ってあげるオリ主イベントスルー。

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