私としても非常に迷ったんだよ? あの脳ミソたちから言われたということは気にくわないがタイプゼロの素体にも興味はあるとも。とっても気になるさ、だが気にくわないなら聞く必要もないさ!
興味があるが気にも食わない、ならば今でなくても己がやりたいときにやればいいじゃないか。
行動を他人に縛られるなど我慢ならないだろう……娘はあれだ、他人じゃないからね。たまに止められても仕方ないというものだろう? 決して
「そうだろう?」
「ドクター、いい加減にしてください。せめて最高理事会につけられた“首輪”が取れるまでのあと数年は……」
「取ったさ」
「えっ?」
「だから首輪など既に取ったさ」
私を生み出した――造り出した奴らは私の性格を把握してるがゆえに離反を阻止するため、とある“首輪”をつけた。
「だが、本当に私の性格を理解しているならばこの程度すぐ外せることくらいわかるだろうに」
「ですが……それでも」
「今日の部隊襲撃は休止だ! 今度こそプレシア女史に会いに行くぞ!」
「ど、ドクター!?」
ウーノよ、止めるんじゃない。私は無限の欲望だぞ、なればこそ欲に忠実でなければなぁ! 死者蘇生、この私が全うな手段では出来ないと結論付けたものだ。
いったいどうやって行ったか確かめないわけにはいくまい!
チンク、トーレ来たまえ……いざというとき、頼む本当に頼むからな。
「はい、ドクター」
「では行こうか!」
ゼっとん隊だかなんだかの襲撃はいいだろう! そんなものは光の星から来る巨人にでも任せておきたまえ。
▽▽▽▽
ふと思いついたんだが、これは重大な案件だ。下手をすれば地球が危ない。
「なのはたちって魔法少女なら将来魔女になるのか?」
「えっ? な、ならないよ!?」
「ユーノと契約したなのははエントロピーをディバインバスターでぶち抜いて魔法少女になったんだろ?」
「それで言ったら私が契約したのはレイジングハートにならないかな……って違うよ、なんで急にそんな話になったの!?」
「思いつき」
えぇ……と眉をハの字に下げるなのはを傍目に考える。なのはが歳を取り、シワに染みに絶望し魔女となり、バスターやブレイカーを無尽蔵に撃ち放つ姿を思い浮かべる。
魔女というか怪獣だった。
「で、何歳まで魔法少女枠を占拠するの?」
「魔女って聞くとずっと魔法少女でいたくなってきたよ」
「高町なのは三十八歳、職業は魔法少女です」
「痛い、なにかが痛いよ!? あれ、それなら魔女の方がマシに思えてきた……」
「魔法少女が職業とか、もう職業病だよな。誤用だけど」
なまじ三十八歳という数字がリアルなので生々しくて、随分と痛々しさを助長している。
美人ならギリギリいけるかもしれないが、大変失礼ながらなのはが美人になるかなんてわからないからな……小学生で美人も糞もない。小学生で可愛かったあの子も二十年というときを経て樽型体型にもなりうるしね。
「なのはって運動音痴、略してうんちだしワンチャン樽型体型」
「色々と失礼すぎるよね!? 意地でもスレンダーでいてやるんだから!」
「体型維持だけに意地でも?」
「上手、くもないよ……」
そんな会話をしながらも国語の問題集もとい問題作の採点をする。
実は今なのはの勉強を見ている最中なのだ、となりではフェイトとアリシアが八神に習っている。アリシアはついでらしい。日本語も覚えときたいとかなんとか言ってた。
それにしても、八神が話に入りたそうにこちらをチラチラ見ている。ネタに走ろうとする血が騒ぐのかね?
で、問題の問題作だ。頭痛が痛いみたいな言い方だけど内容もそんな感じなんで仕方ない。
「猿もおだてりゃ真珠に登る。ってなんとなく覚えてるの繋げただけだろ」
「うっ」
どうやったらこんな解答になるのか、算数の文章題で計算がわからないので取り敢えず出てる数字全部足してみましたーみたいな雰囲気醸し出してる。むしろここまで中途半端に覚えているのは才能じゃないか?
「そんな才能いらないよぅ……」
「床に耳あり畳に目あり、両方床じゃねぇか」
「ああ!?」
「しかもどうやって床から盗み聞き、盗み見するというのか」
「ゆ、床下に潜り込めば……」
どんなホラーだ、盗み聞きはともかくどうやって見ろというのか……
「しかも部屋が二階にあるとアウトや」
「なのは選手二問間違い、ツーアウト追い詰められました――ナナシ、運命の採点を始めた!」
「泣きっ面に……蹴り――スリィアウツッ! チェンジ!」
「うわぁぁん! 学校に行ってもない3人が苛めてくるよ!」
「う、うん……でもなのは私より国語苦手なんだ」
その一言でなのは撃沈。さめざめと涙を流しつつ横にぶっ倒れた。魔法の模擬戦じゃ勝てないけど、国語の模擬試験なら余裕で勝てるな。
そして何だかんだでフェイトは覚えると早いからね。
それに比べてなのはは苦手意識が刷り込まれてるからなかなか進行具合が鈍足なのだ。
因みに現在は学校に行ってない八神はこの春からフェイトたちの通う聖祥小学生に転入するんだけど……そんなことより国語だ、現国だ。
「まさに泣きっ面に蹴りを入れるフェイトちゃんにさすがの私も戦慄や」
「無意識だから手加減なく叩き込まれたね」
「鉄壁のバリアジャケットを誇るなのはもこれに堪らずダウン」
「な、なのは! なのは!」
フェイトがなのはの肩を持ちを前後に揺さぶるが頭が揺れるのみで反応がない。これは重傷だな、フェイトの泣きっ面に蹴りがクリティカル的な意味で。
口から魂らしきものが抜けている。泣きっ面というか、死体蹴りだったようだ。
「これで英語ができるってのが不思議だよな」
「算数も飛び抜けてできるし」
「なんというか、ミッド魔法特化やねぇ」
これは恐らく社会も駄目じゃないかな。
織田信長は長篠の戦いで武田軍の騎馬隊をなにで打ち負かしたでしょうか?
「ディバインバスターって書くんやな」
「書かないよ!」
「えっ、さすがにスターライトブレイカーは不味いで!?」
「問題文の打ち負かすに二重線で訂正して、撃ち負かすに直すんだよね」
「しないってばー! 銃使ったことくらい知ってるよ!」
「残念、銃ではないのだ」
「えっ!?」
ちなみに答えは鉄砲隊、ニアミスだね。銃ができるのはもう少し先のとこだ。
内容は、織田ブッ飛ばすって騎馬に乗って調子よくパカラってる武田軍騎馬隊に対して、柵と土塁で守りを固めて近づいてきたところを鉄砲隊でズドン。
なんかデジャヴ感じるよね、ユニゾンして調子よく飛んでたらバインドで止められてズドン。
――我こそが第六天魔王高町なのは、我の征く道を塞ぐ者の尽くを撃ち抜いていざ押し通らん。あ、なんかしっくりきた。
「なんかまたナナシくんが一人でしたり顔してる……絶対失礼なこと考えてる」
「いやいや、なのはって社会は出来そうだなって考えてた」
「ホント!?」
うん、なんとかなるんじゃないかなー。適当にいったけど誤魔化せた……と思ってたら思わぬところから奇襲を受けた。
「さっきと言ってることが真逆なあたり適当にいっとるんがわかるな」
「何故バレたし」
なのはに背中をポスポスと殴られながら、八神と向き合う。フェイトも終わったようだ、俺も解答用紙を見せてもらう。
「おお、大体合ってる」
「ふっふーん、私の妹だからね!」
「やめたげ、なのはちゃんが部屋の隅で泣いとる」
「泣いてないもん! 次のテストでは満点取るんだから……!」
泣いたり荒ぶったり忙しいな。しかし、満点取るってもこれじゃ辛い気がする。今やってたことわざ小テストは10問中1正解の全滅一歩手前だった。わかりやすいことわざベスト3に入りそうな、五十歩百歩だけ書けてた。
「はい、なのはちゃん前回の国語は何点や?」
「60点…………じゃ、弱」
「よし、70点目指すとこからいこうか。高い目標もいいけど、無理な目標よりも自分の成長を実感できやすい目標をたてて、一歩一歩確実に踏み締めていく方が長く効果あるから」
「な、ナナシくんにまともなこと言われたー!?」
なに心底ビックリしてるのか。これでも、フェイトの聖祥小学生編入のために文系を教えたのは俺なんだぞ?
理系? 教える必要がなかったナリ、数学レベルも余裕でこなしてた。
これは魔法というプログラムが使えるからとかじゃなくて、テスタロッサ家の血のせいだと予想してる。なにしろアリシアはさらにその上をいくし、プレシアは悠々とその上を飛び越えてる。
閑話休題、とにかく特に国語とか教えてたのは自分、ミーなのだ。
「もしかして……ナナシくん勉強は真面目に教えてる?」
「もちろん、将来に関わるからな」
「わかりやすく教えてもらえたよ」
「わっ、私にも真面目に教えてよぉ!?」
「いや、ことわざを真面目にと言われても……暗記しろとしか言えないわ」
文法とか文章題の作者の気持ち云々かんぬんなら割りと真剣に教えられるけど、今やってたのことわざだろ? 覚えるしかないじゃん、逆に英語(ミッド語)習得しといて日本語のこれが覚えられない意味がわからん。
「このままやと、なのはちゃんは中卒くらいでミッドに移るんちゃうかな」
「八神、いくらなんでもそれは失礼だ……おい、そこの茶髪ツイン。なんで目逸らしてんの……?」
「あ、アハハー」
拝啓、高町家の皆様。
貴方たちの娘さんは中学を卒業後、地球から抜け出し異世界で魔法少女として働くそうです。私は少女と名乗れなくなった年齢になったときどうするのか心配が絶えません。
「魔法少女として働こうとしてるわけじゃないから」
「え、なんだ。ババァは解雇だヒャッハー! ってな職場に身を投じるんじゃないのか」
「うわぁ、嫌だなぁそんな職場。なのは頑張れ」
「だから行かないから! ……あ、そういえばナナシくん」
ふと思い出したかのようになのはが疑問の声をあげた。なんだ、小学校に行ってないのに国語が出来る理由は秘密だぞ。
「そこも気になるけどそうじゃなくて……なんではやてちゃんだけ苗字で読んでるの?」
「あ、それは私もちょっと気になるかな。私も姉さんも名前なのにはやてだけ苗字だし」
はて……あ、確かに八神だけ苗字で読んでるな。しかし、そう言われても理由か。
「実はまだ親密度が足りなくてな」
「あと3つはイベントをこなしてもらわんとあかんな!」
「八神がな」
「私がか!?」
「ほら、イベント発生だ。お腹を空かしているナナシがいるぞ、好感度アップのチャンス!」
「ほら、ナナシぃ。ご飯や、とびっきりの……ドッグフードや」
「もはや人扱いですらない……!? これはドッグファイトも辞さない」
間違いなく好感度を上げる目的ではない、八神が全力で上の立場を取りにきた。
そして、語呂だけで返したけどドッグファイトは戦闘機の格闘戦なんだよね。話に沿ってない返しになって負けた気分だ、八神のドヤ顔腹立つ。
「ここまでお互いネタをやり取りしてるのに親密度が足りないの……?」
「やり取りというかネタで殴りあってない?」
アリシア正解だと思う。
「ま、別に苗字でも名前でもええんやけどね」
「俺もだ」
「ナナシは名前しかないじゃん」
「神隠しにあっても名前から取るとこないんやね」
「ナナシ、あんたにはもったいない名前だね」
「ナをとって今日からナシや!」
お前らナシ汁ぶっかけんぞ。たたでさえ無い名前を短くするとか止めてやれよ、なんか俺が可哀想だ。
「それで! 結局ナナシくんはどうして苗字で呼んでるの?」
「そこに苗字があるからさ」
「話が進まないよぅ……」
「でもまぁ、うちにもぎょうさん八神が増えてくれたし名前で呼んでくれてええんよ?」
そういえば、そうだな。会ったときは八神はオンリーワン八神だったけど今じゃ量産型八神だもんな。
「親密度後払いでいいですか?」
「無利子でええで」
「よし、ならはやてって呼ぶことにするわ」
「なんや、急に名前呼びになると……」
「凄くドキドキ……」
「することも別段無いね」
「無いな、ホントどっちで呼んでもよかったし」
本当に驚くほどなにも変わらない。あ、でもなのはは友達になるには名前を呼べばいいって言ってたよな。
つまり、
「今まではやてと俺は友達じゃなかった……?」
「なんやっ、て……?」
「極論過ぎないかなぁ!?」
「けど私にとっては第一印象が変な人で、次会ったときはホンマに通りすがりの魔法使いやったんよなぁ」
「空から飴を降らせます、ベッドをお菓子で埋め尽くします」
「あ、ヴィータ喜んで食べてたで」
「それはよかった」
主に賞味期限的な意味で。
「でもナナシくんは人の呼び方コロコロ変えられるの?」
「名前だけでなく話し方も変えれますよ高町さん?」
「ひぃ!?」
「おい、さすがに失礼だろ」
「普段を知ってると、今のナナシ違和感しか無かったよ……というよりは別人に見えたよ」
「フェイトまでか、アリシアどうだった!?」
「キモかった!」
「イイ笑顔でなんてことを」
わかってたけどな、俺も違和感しかなかった。ただ外面を整えないといけないときのため覚えただけだよ。
「さて、こうやって周りに敵しかいない状態を四面楚歌という」
「えっ、あ、うん」
「こんな感じにことわざや慣用句、熟語は実際あったことに関連付けて覚えると覚えやすい」
「まさか今までのやり取りって……」
「そう、なのはが覚えやすくなるようにするための前振りだ。な、はやて?」
「もちろんや、これでなのはちゃんも覚えやすくなったやろ」
なのはとフェイトが尊敬の意がこもった目で見てくるけど当然嘘である。普通に遊んでた。
アリシアもわかってるだろうけど、バラさずニヤニヤして見てるあたり同罪だと思う。
こんな感じで勉強会は続いたのだが勉強になったんかね?
――そこはなのはのテストを見るまでわからないシュレディンガーの猫なのであったとさ。
ここまで読んでくださった方に感謝を。
活動報告で何か言ってましたが投稿。まぁ更新ペースは落ちるんじゃないですかね。
ちょっと出すキャラを増やしました、なのは国語勉強しろと言う声が聞こえたので勉強会。