──
『Sonic Move』
目まぐるしく赤錆色と金色の光芒を走らせ、火花を散らす。高速高機動戦闘……十四はソニックフォーム形態となったフェイトとほぼ互角に打ち合えていた。
妖精事件当時のように策を弄することもなく、真正面から。光刃に拳をぶつけ、射撃魔法を撃ち合い、速度でもフェイトに食らいついている。
速さにおいて、フェイトが相手では一歩譲る結果になるのは常ではあるのだが、ここまで渡り合ったことはなかった。
(なんだ、この感じ……)
余裕、余力が感じられた。まだ速くできる。まだ力を出せる。いつも通りに力を出しているというのに……まだ半分程度しか出し切っていない感覚になっていた。
手を抜いているわけではない。相変わらず目まぐるしく動くフェイトに追いつくのがやっとではあるし、要所要所でシグナムが横から斬りかかってくるのをなんとか捌いている状況である。
正直な話、ジリ貧……なのにも関わらず、十四はまるで負ける気がしなかった。
「シィッ!」
「ハァッ!」
『Haken Slash』
──
十四の魔力強化された右手の手刀とフェイトのハーケンフォームの刃。火花と電光を散らしてぶつかり合う。
足の止まった二人に、十四の背後からレヴァンティンに炎を纏わせたシグナムの紫電一閃。
「なろっ」
あの一撃は受けられない。受けたら防御ごと叩き落される。
避ける?否、回避行動を取った瞬間にフェイトに先回りされて終わる。撃墜される相手が変わるだけ。
十四が取った行動は迎撃。左手の指先全てに、魔力の光弾を作り出して発射する。
──
「沈め!」
五指全ての指からマシンガンのように連射される魔力弾。一発一発の威力は心許ないものではあるが、貫通力はずば抜けて高い。
しかし相手は歴戦の騎士シグナム。こんな雑多な魔法で落とせるとは十四は欠片も思っていない。十中八九防御で固められて魔力弾を防ぎながら弾幕を突破してくるに違いない。
だから、一秒……その半分でよかった。0.5秒、その剣を振り下ろすのが遅らせることが出来れば。
『Panzergeist』
フィールドタイプの防御魔法。防御を張ったまま速度を落とさず弾幕に突っ込んでくるシグナムに、十四は勝機を見出した。
防御を張れば、ほんの少し……ほんの少しではあるが、推力に回す魔力を防御へと回さなければならないため、若干だけ速度を遅らせることができる。
「っ!」
シグナムへと気を逸らした十四の隙、フェイトが見逃すはずもなく。
手刀と鎌の光刃、拮抗していた刃の押し合いを、一気に有利に進めた。
叩き落せる。地上に落としてダウンさせれば、追撃で一気に勝ちを取れる。
フェイトは押し切り、なす術もなく十四はそのまま地に落ちていく……。
「……っ」
空から落ちたものの、着地は体勢を整えて成功。踏み場となった地面はひびが割れる。
若干、足が痺れるものの問題はない。すぐに消えてなくなる感覚である。
「やべぇな……」
劣勢、不利な状況は変わらず、だというのに……それでもまだ負ける気がしない。
思い違い、思い上がり……?十四はそれに首を横に振る。
レアスキル
故に、確信する。
(無意識にセーブしているのか……)
腕に巻かれた黒いバンテージをまじまじと見る。
十四は今、いつもの調子でいつもの結果になるように魔法を使っていた。デバイスに頼らない戦い方……たった一人で生き残っていく戦い方を。
(まさか、デバイス一つ増えた程度でここまで変わるか……?)
いつもと違うといえば、このデバイスの有無でしかない。
ただそれだけの違い……だというのに。
「面白え……!」
このデバイスは、すでに自分の体の一部と化している。物としての延長線上にある物ではなく、一体となった処理装置……。自分の能力値にそのままプラスされている。
だというのに、まったくというほど違和感が感じられない。望めば望むほど、自分の内に眠る力を引き出せる。
今の自分の全力を出したら……もっと早く、もっと強力な魔法を、ほぼタイムラグなしで発動させる。
ブラウニーがあったからこそ引き出せた全力……それに迫る力を引き出せるかもしれない。
「……認めてやるか」
名も無きこのデバイスの力を。卑下することなく、その力をそのまま認める。
足手まとい、などとは呼べない。とんでもない。このくらいのじゃじゃ馬でなければ、加添十四を満足させることはあり得ない。
使えない物は切り捨てる性格ではあるが……使えるのであれば重用する。十四はコレをいたく気に入る。
間違いなく、このデバイスは己の力になる。
「捨てるのは止めにしてやる。魅せてみろよ」
十四は、無自覚に己に強いていた
いつもであれば無理と無茶と判断する魔力運用を、加減抜きで敢行する。
――魅せてみろ、お前の底を。
お前がいれば、加添十四はどこまでいける?
「――――アアアアアアアアアアッッッ!!」
吼える。己の思う最強を幻想し、現実に投影する。
――その最強の幻想を、さらに超える。
無理じゃない。無茶じゃない。相手が誰だろうと、自分が何であろうと……加添十四は誰にも負ける気はない。敵だろうと、味方だろうと、自分だろうと――十四は全てを凌駕し続けると決めた。
十四の全身から噴き出される魔力。それは濃く、激しく、荒々しい奔流であった。
ある程度離れた距離にあるフェイトとシグナムでさえ、ビリビリと肌で感じられるほど。
一層、警戒を強める。先ほどまでの十四とは違うと、経験が告げている。
「……調子が良いようだな、加添は」
この模擬戦、始まってからの十四の動きがシグナムが知る以上にキレが増していた。
デバイスを得たというのに、デバイスを頼った風には見えない魔法の使い方。だというのに、フェイトとシグナムの二人を相手に渡り合っている。
ギリギリの相手だからこそ、戦いながら成長している……シグナムにはそう見えていた。
「そう、単純じゃないかもしれません」
ただ調子が良い、とは一番近くで打ち合っていたフェイトには考えられなかった。
自分の速さには強い自信がある。無論、絶対に自分の方が速いという過信はないが、誰かに負けない負けたくないという思いは非常に強い。
確かに十四は強い。魔法キャリアは一年足らずにも関わらず、一足飛びで自分たちに並び立つほどの実力と才能を持っている。速さに関しても、フェイトに若干劣る程度ではあるものの油断の出来ない相手なのは間違いない。
──その十四が、本気のフェイトと速さで渡り合った。
この事実は決して無視できない。調子が良い、というだけで決めつけるのは早計過ぎる。
「違和感があるんです」
「違和感?」
「何ていうか……力を抑えながら、十四が加減しながら戦っているようにも感じるんです。思い違いかもしれませんけど……」
フェイトが感じた違和感。それは、十四が自らの
呼吸──息を吸ったり吐いたりすることのことではなく、拍子や間といった別の表現で言い表せる、リズムのことである。
自らの呼吸を維持し、それを相手に強制させることで戦いを優位にすすめることができる。それは魔法戦闘だけでなく、格闘技などにも同じことが言えていた。
打ち合っていたフェイトには、十四が呼吸を維持しようとせず、かといって彼女たちの呼吸に呑まれることなく渡り合った彼が気味が悪く見えた。十四の性格や今までの戦法もあって、また何か仕掛けているのではないかと勘ぐってしまう。
「……見事だな、テスタロッサ。呼吸を理解するなど並大抵じゃない。こればかりは経験則が物をいうからな」
フェイトの言い表せない違和感を、シグナムは汲み取って理解する。
歴戦の武人のシグナムは、二人相手に互角の立ち回りをしている十四より、違和感を感じ取ったフェイトを称賛する。
十四の呼吸の乱れは、シグナムには思い付く原因がある。
新たに得たデバイス。慣れぬデバイスの操作に四苦八苦して、戦いながら色々試している。あのように自分に一喝して魔力を放出しているのもまたその一環なのだろう。
そもそもこの模擬戦はデバイスのテストが目的。近接戦闘を得意とする彼女たちに遠距離戦で挑まないあたり、十四もこの模擬戦の趣旨を見失っていない。
「……スゥー……ハァー……」
荒々しく纏った魔力が、深呼吸を重ねるごとに落ち着いていく。
空手の息吹。丹田にまで息を送り込み、体内の気を循環させ、満たす型の一つ。
といっても、十四には気などというオカルトを信じているわけではない。調子を整える方法の一つとして、ルーティーンに組み込んでいる。
渦巻いていた魔力は完全に凪いでおり、十四の全身に薄皮一枚の状態で纏っている。
――静かで凛とした、見る者が見れば綺麗とまで評するだろう構え。
フェイトとシグナムは確信する。今の十四こそ、噛み合った呼吸をした状態。ここからが、彼の本領なのだと。
「……」
彼は、攻めない。待ちに徹している。
地に脚を着けたまま、微動だにしない。
「かかってこい、か……」
見え見えのカウンター狙い。十四から動く気配はなく、隙を見せるか不用意に距離を詰めるかで反応してくるのだろう。
――普通はそんな誘いに乗らない。遠距離からの射撃や砲撃で一方的に蜂の巣にしてしまえばいい。フェイトもシグナムもその手段を持っている。
しかし、その手段は出来なかった。
いくら魔法を撃ったとしても、十四に一発も通りはしない……彼女たちはそう悟っていた。
十四の発している
咆哮と共に渦巻いた魔力……あれは十四が考えなしにまき散らした訳ではなく、不可視の高感度センサーと誘導弾チャフとフレアを兼ねた、AAAランク以上の難易度に位置する高位フィールド系防御魔法──。
『Plasma Lancer』
「ファイア」
発射台のスフィアから放たれる電気の矢。
牽制のために放った射撃魔法が……十四へと着弾する前に自壊し、暴発する。
訓練場内に充満したフィールドの魔力。それが十四の近くになればなるほどその濃度が濃くなり、魔力弾の自壊を強く促していく。
「
アンチ・シューティングフィールド、略称ASF。通称、射撃型魔導師殺しとも呼ばれる。
難易度の高い魔法で、使い勝手もそれほどよくない。体得者も使用者も数少ない稀少な魔法である。同じ妨害型フィールド系防御魔法を会得するのなら、まだAMFの方が汎用性が高い。
この魔法は十四の師であるクロノから教えられたものではなく、なのはたちから模倣したものでもない。自らの適正……その方向性に合った魔法を自ら模索し、自力で会得したものである。
十四の魔法適正はあらゆる方面で優れた結果を出すことができる万能型。しかし逆を言えば器用貧乏とも言い換えられる。一点特化型が相手の場合どうしても不利な状況に陥りやすい傾向がある。
……十四が選んだのは、万能型らしく多くの引き出しを用意して対特化型の対処法を習得するものだった。
この場面で汎用性に富むAMFを使わなかったのは、彼女たちの手段を限定させるため。ASFは射撃魔法に限れば、AMFより無力化することができる。
「バルディッシュ、ザンバーフォーム」
『Yes sir.Zamber form.』
リボルバー型カートリッジに撃鉄が叩かれ、光刃の鎌が消え……ヘッド部分が変形して輝く雷神の大剣へと変わる。
バルディッシュ・アサルトのフルドライブ、ザンバーフォーム。高出力のその大剣は、あらゆるものを両断する切断力と破壊力を持っている。
ASFは近接攻撃や砲撃などにはまったくの無力。あくまで逸らし受け流す程度しか機能しないため、強力な一発には及ばない。
「……待て、テスタロッサ。迂闊に攻めるな」
「でも……」
「痺れを切らすな。今の私たちは、ヤツの手のひらの上だ」
フェイトも、それくらいはわかっていた。十四の手のひらの上で踊らされている。良いように行動を誘導されていることも、承知の上であった。
カウンターを待っている相手に射撃を封じられた。それならばと一発の大きい大技で攻めようとするフェイトの気持ちをシグナムは理解できる。
経験のあるシグナムならまだしも……フェイトには、耐えられないのだ。この場所の空気が……この殺し殺される殺気が充満した、張り詰め、むせ返るほど殺伐した空気が。
隙を見せたら潰す。欠片も隠そうとしていない殺気は、着実にフェイトの心を蝕んでいた。
ここにいたくない。いたくない。ほんの数分、ほんの数秒でも長居してしまったら……狂ってしまう。
ならいっそのこと、早く墜ちたい。墜とされたい。
冷静さを欠いた者から墜ちていく。この場は今、そういう
動きをなくした、静止した空間。
経過した時間は、十秒か、一分か、一時間か……。
フェイトは、どうにかなってしまいそうであった。何も動かない、何も変わらない……たったそれだけが、これほど苦痛なのだと初めて知る。
いつの間にか、全身が冷や汗でまみれていた。瞬きも許されない、緊迫した世界。呼吸すら、ままならない。
シグナムは殺気にあてられる経験は数多くあるものの、十四の戦い方が今までとはガラリと変わったことに面食らっていた。
ブラウニーを使えた頃は、無鉄砲に突っ込み、倒れない限りゴリ押しで勝つ。無茶無謀で、十四にしかできない戦い方であった。しかしそれは、能力に頼り切った素人戦法。いくら強力であっても行き着く限界が存在し、それ故に先の事件は十四は敗北したのだ。
今の十四は……魔法に出会って一年が経過しようとしている今、自らの戦い方を固めようとしていた。
いつまでも『
(攻められない……ここまで堅いか、ヤツの守りは)
いくら頭の中でシミュレートしても、シグナムは逆にカウンターを食らう光景しか見えなかった。
数も、火力も、意味をなさない。十四を中心とした間合いを打ち崩せない。
最も得意とする近接攻撃で攻め立てる……待ってましたと言わんばかりに撃ち落されるのが目に見えている。
中距離からのシュランゲフォルム……今の十四はフェイトレベルの高速機動が可能、フォルムの切り替えの隙に距離を詰められて一撃で落とされる。同様にフルドライブのボーゲンも同様、かすりもしないだろう。
なのはやユーノのような魔法的・物理的防御力ではなく、技量によって成り立つ達人の防御。
シグナムやヴィータたちのような、歴戦の強者がようやく至れる経験の極致。
フェイトにも驚かされたが、十四までもがここまでとは……たかだか十年ちょっと生きてきた子供が自分に迫るほどの力を持つ、シグナムはその若き才能に身震いする。
今が古代ベルカ諸王時代の戦乱期であったなら……永久に勇名を轟かせる戦士になっていたに違いない。
「……シグナム、ごめんなさい」
「テスタロッサ?」
「死に手を打ちます。その隙に……!」
フェイトの表情は疲弊して限界そのものの顔だった。もう、狂ってしまいそう。ただ滞空しているだけだというのに、心が壊れてしまいそうになる。
もうずっとまばたきをせずいたため、十四の姿をはっきり見ることができない。焦点が定まらず、ぼやけた視界がずっと続いている。
どうせ落ちてしまうというのなら、我が身を投げ打って活路を作りシグナムに決定打を打ってもらうしかない。
シグナムも勘づいていた。フェイトはもう限界であろうと。むしろ、ここまで居続けた胆力の方を褒め称えたい。
一方の十四は、長い膠着状態で集中力が落ちるどころか逆に増しているところがある。長引けば長引くほど、不利になるのは目に見えていた。
スッとシグナムは片手を挙げる。
「加添、降参だ。我々には打つ手はない」
「シグナム……!?」
突然の降参宣言。フェイトが
フェイトが犠牲になれば、確かに活路は見いだせるかもしれない。しかしそれは、実戦の時だけで十分であった。
これはあくまで模擬戦。決して命のやりとりをするためのものではなく、仕合いは仕合いでしかない。足掻くために死に手が必要になった時点で、敗者は決まっていたようなものであった。
もし十四に結果が不満を持っているというのなら、また仕切り直せばいい。あくまで彼女たちは十四のデバイスのテストという名目で付き合ってあげているのだ。
──"クロノ、あいつらの降参は受理したか?"
──"ああ。こちらでも確認できた"
別室にいるクロノと念話で、見届け人である彼にシグナムたちの降参宣言を聞き入れたことを確認し、そこでやっと十四は構えを解いた。
白旗を振っておきながらの不意打ちはない、とはシグナムの性格からあり得ないとはわかっているものの、十四自身なら遠慮なくやるので念のための確認であった。
「やけにあっさり負けを認めるのな」
「どうやってもカウンターされるのが見えた。テスタロッサも限界であったし、死に手しか浮かばない時点で私たちの負けだよ」
「利口だな。俺も
パンッ、と十四が両手で拍子を叩くと、地上にいた十四が霞みの如く消え去った。
幻術、何時の間に、と二人が息を呑む以上に──彼女たちの背後に身を隠していた十四が、黒と黄色のリボンを手に持って浮いていた。
ふさり、と彼女たちが束ねていた髪が解かれて落ちる。背後を取られ、一発をいれられていたという事実を示していた。
フェイトもシグナムも、幻術で姿を隠していた十四に一切気づくことが出来なかった。不用意にここまでの接近を許し、地上にいた幻を看破することもかなわずに……。
「さーらーに」
もう一度、拍子を取ると……彼女たちを取り囲むように配置された
同じように幻術で隠したものではない。
ミッド、ベルカ問わず魔法の基本中の基本技ではあるが、基本なだけあって奥が深く、高位の魔法になればなるほどその難易度は底なしに上がる。
彼女たちを囲んだこの二種の魔法……通り抜ける隙間がないほどの高密度の弾幕は、不意を打ってしまえばフェイトとシグナムを撃墜させるには十分な破壊力だ。
「ほいほいほい、と」
そしてまた三度、手を叩く──十四が用意していた遅延魔法の数はこれだけではなかった。
先の弾幕が防がれたことを想定し、
防がせない、避けさせない、反撃させない、逃がさない。オーバーキルもいいところである。
フェイトもシグナムも……十四が次々と待機させていた魔法を解放する様を見て唖然とする。
降参していなければ、これが自分たちに向けられていた。その容赦の無さ、徹底さ……そして何より、高位魔法を何重にも仕掛けて、疲れた様子を十四はまったく見せていない。
以前まで……デバイスを持つ前までなら、あり得ない。ブラウニーを使えていた頃でさえ、これほどの魔力コントロールの精緻さはなかった。
一年間の経験……そして、十四の力を最大限に発揮する
────ズバ抜けた超高速処理能力、微細な魔力コントロール……それは他の誰にも追随を許さない、十四だけの武器になった。
「……まだ、少し余裕があるな」
十四の中には確かな手ごたえがあり、そしてそれはまだ限界には程遠いことを実感した。
先の遅延魔法群。それら全てを構築した時間は一秒にも満たない。
コントロールが難しい幻術魔法も、非常に安定して発動していた。
……もっと多くの魔法を、もっと難しい魔法を、もっと早く展開できる。
「十四、そのデバイスの名前決めたの?」
「あー、名前か」
フェイトの問いで、すっかり忘れていたことだった。
使えるか使えないか、それだけが全ての十四にしてみれば名前などどうでもよかった。
使えるのはわかった。それでもデバイスに物以上の価値を見出せない、のは相変わらず。
「じゃ、P4Uでいいや」
深く考えないで出した名前。名前など、いつだって変えられるのだから適当でいい。
バッジの裏面の淵に4とForをかけていたのを思い出し、クロノのS2Uと似たような感じにでっち上げただけであった。
「P4U……何の略なの?」
「Powerでいいだろ」
──Power for You.
あなたのための、力。
クロノから贈られた、十四のための力。
そしてその力を、十四は誰のために使うのか……。
「考えるまでもないな」
口元がほころんで、自分の内にある変わらない想いを再確認する。
あの事件から死んで、生まれ変わってからずっと……加添十四はいつだって。