秋色の少年は裁定者の少女に恋をした   作:妖精絶対許さんマン

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久しぶりにこっちを投稿。戦闘シーンは雑だし短いです。


集積学園 Ⅵ

「あ・・・・・・うぅ・・・・・・」

 

「鷹月!?どうした!しっかりしろ!!」

 

学生寮では部屋や廊下、風呂場などのあらゆる場所で生徒達が倒れていく。『無間』の咆哮は島全体に轟き、呪いに耐性が無い人間は一瞬で命を奪うほどの力を、咆哮は孕んでいた。死なないのは秋が学生寮の回りに書いておいた三百を越える『比護』のルーンのおかけだ。

 

「一体・・・・・・・この学園でなにが起こっているんだ!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お姉ちゃん・・・・・・」

 

「大丈夫、大丈夫だからね本音。秋さんがきっと解決してくれるから」

 

学生寮の一室では本音が虚に抱きつき、虚はそんな本音をあやしている。

 

(・・・・・・秋さん。)

 

虚は本音を撫でながら、目を瞑る。大切な友人の無事を祈りながら。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『無間』は一つに集まってから動かない。長い指を小刻みに動かしながら、空洞の瞳で秋を見つめている。

 

(一気に吹き飛ばしたからか、外殻だけ吹き飛んで中の残留思念が集まったのか)

 

秋は立ち上がり、干将・莫耶を構える。

 

『何故ダ!何故ジャマをする!?男のお前ガ何故、女どもヲ護る!?』

 

幼児のような、青年のような、年老いた老人ような声が『無間』から発せられる。

 

「別に、この学園にいる人間を護るつもりはない。ただ、依頼だからね。報酬をを貰ったからには働くさ。だから、君を滅ぼす」

 

『ふざケルナ!!()達は不滅だ!!こノ胸ノ内をコガス憎悪あるかギリ、()達は尽きルコトハ無イ!!』

 

「この世界に不滅なものなんて存在しない。神秘は衰退し、いつか消える。人間の憎しみも、妬みも、嫉妬も、時が進めば使い果たして消えてなくなる。どんな偉業を成し遂げた英雄だろうと人は忘れる」

 

科学が進歩した現代において、誰が神話を彩る神仏・英雄を信じるだろうか。神仏なぞ架空のものと笑い、英雄を架空の人物として見る。

 

『忘れロト言うのカ!?ISに乗れルだけトイウだけで威張ル女共への憎悪を!!()ヲ見捨てた人間タチへの怨みヲ!?』

 

「そうじゃない。思い出してほしいんだ。確かに君たちが死んだのはIS・・・・・・傲慢な女性達のせいかも知れない。でも、そんな人間ばかりじゃないはずだ。君たちを助けようとした女性は?見捨てずに支えようとしてくれた人間?」

 

『いなカッタ!!誰モ、誰も、ダレモ、ダれモ、助けテくれなカッた!!だかラ殺ス!!一人残ラず殺す!!殺すコロスコろす殺す!!』

 

それは逆恨みに近かった。だが、理性を失い、自我を損壊した『無間』には逆恨みだと判断できない。

 

「そう・・・・・・」

 

秋はため息を吐く。腰からぶら下げていた夜天の書の表紙が開いていく。

 

「ならーーーーーー問答はこれで終わりだ」

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ーーーーーー!!』

 

『無間』は秋に向かって巨大な手を振り下ろす。当たれば秋の肉体は潰れ、絶命するだろう。ーーーーーー当たれば、だが。ガガガガッ!!と重低音がアリーナに響いた。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ーーーーーー!?』

 

『無間』は突然の衝撃に手を戻した。秋がいた場所からプシューと空気が抜ける音と白煙が上がった。

 

「宝具の弾丸は効くんだ」

 

秋は棺桶を構えていた。棺桶から白煙が上がっており、秋の回りには空薬莢が落ちている。

 

 

ーーーーーー超過剰武装多目的棺桶(ライヘンバッハ)

 

 

世界的推理小説シリーズ『シャーロック・ホームズ』の登場人物にしてホームズ最大の宿敵、ジェームズ・モリアーティとシャーロック・ホームズが共に落ちたとされる滝坪と同じ名前の宝具。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️ーーーーーー!』

 

『無間』の体に瘤のような物が浮かび上がり、瘤が割れると小型の『無間』が這い出てきた。

 

「増殖能力もあるのか。これは長期戦になるかな?」

 

秋は小型の『無間』に狙いを定め、棺桶(ライヘンバッハ)の引き金を引く。棺桶の下部が開き、銃口が露出する。銃口が火を吹き、宝具の弾丸を吐き出す。小型の『無間』は蜂の巣になり、霞のように消えていった。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️ーーーーーー!!』

 

『無間』の体の至るところに瘤が現れ、中から小型の『無間』が這い出てくる。

 

「ちっ・・・・・・!」

 

秋は舌打ちをしながらも棺桶の引き金を引き続ける。だが、小型の『無間』を減らすより増殖するスピードが早く撃破するスピードが追い付かない。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️!!』

 

『無間』は右腕を振り上げ、地面を凪ぎ払うように振るう。

 

「ーーーーーー起動せよ(セット)身体強化・Ⅱ(ブースト・ツヴァイ)!」

 

秋は身体強化の魔術を使い、棺桶を背負って腕の進行方向に走る。『無間』の腕は地面を削りながら秋に迫る。秋は強化された脚力で地を蹴り、空中に浮かび上がる。僅かな浮遊感を感じながら、棺桶から伸びている鎖を強く握る。

 

「はあぁぁぁぁぁ!!」

 

迫ってきていた『無間』の手を棺桶の手で殴り付けた。棺桶で殴られた『無間』の手の平には穴が開いていたが、すぐに塞がった。秋は観客席に着地した。

 

『ハハハハハッ!!命あル者に死ヲ!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!』

 

「・・・・・・死んだのなら早く成仏すればいいものを。どれだけ深い怨念なんだよ」

 

今もなお『無間』の本体から小型の亡霊が這い出てくる。

 

「この宝具じゃジリ貧か・・・・・・なら!」

 

棺桶は粒子となって消え、腰から下げている本が新たなページを開く。秋の手に黄金色の一振りの刀が握られていた。秋は刀を鞘から引き抜く、頭上に掲げる。

 

「草紙、枕を紐解けば音に聞こえし大通連。いらかの如く八雲立ち、群がる悪鬼を雀刺しーーーーーー文殊智剣大神通、天鬼雨!!」

 

刀は分裂していき、やがてアリーナの半分を覆った。刀達は一斉に刀身を地面に向ける。

 

「行けっ!!」

 

分裂した刀達が一斉に地面目掛けて降り注ぐ。『無間』から産み出されている亡霊を貫き、『無間』本体を穿っていく。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?』

 

『無間』は自身の体が削れていくのを感じ、悲鳴を上げる。

 

「・・・・・・・・・・」

 

刀の雨はやみ、『無間』の体は半分ほど崩れていた。亡霊を産み出そうとするが瘤が破裂するだけだった。

 

『なゼダ・・・・・・ドウシテ・・・・・・神ヨ。何故、我ら(僕ら)ニこのヨウな試練ヲ・・・・・・』

 

『無間』は崩れ落ちる手を夜空に伸ばし、弾けて消滅した。

 

「・・・・・・・・・・神様なんて自分勝手な概念的存在だ。神様は誰も・・・・・・救わない」

 

秋の脳裏に恋した少女の姿がよぎる。神の声を聞き、故国を救わんと立ち上がり、最後には魔女の烙印を押され火刑に処された聖女の姿が。


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