秋色の少年は裁定者の少女に恋をした   作:妖精絶対許さんマン

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1つ言わせてほしい。

どうしてこうなった?


師匠の人形師は横暴だった。

暗闇。光を飲み込む程どす黒い闇が蠢いている。

 

キッハッハ!物語(ストーリー)が動き出したぜ!

 

形の無い闇が嗤う。

 

これが貴方の望みなの?

 

雪の様な少女が問う。

 

嗚呼!此処からだ!此処からアイツの物語(ストーリー)がまた動く!一時はどうなるかと思ったが運命(Fate)って奴は案外わからねぇもんだなあ!!

 

ふぅ~ん。わざわざ“平行世界から死んだ人間の魂を持ってきた”のはどうして?

 

アイツには苦しんで、苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんでもらって此処に。英霊の座”に来てもらうんだよ!持ってきた魂は性根が腐ってるから踏み台に成ってもらうんだよ!!

 

・・・・・本気?今の時代だと純正の英雄は生まれないわよ?それこそ反英雄か抑止の守護者じゃないと“座”には招かれないわ。

 

だから、“夜天の書”をアイツに送ったんだよ!あの本は人間が持つには強力すぎる!!なんたってあの本は“人類”も“星”も滅ぼせる物だからなぁ!!

 

そんな事に為ったら抑止力が黙ってないわ。貴方の計画前にあの子死ぬわよ?

 

関係ねぇ!結局、“座”に来るんだ!だけど、簡単に死んでもらっちゃあ困る。だから、夜天の書を書き換えた。あの本はもう、魔術を記録する事は出来ねぇが英霊の宝具を使えるようにしておいた!

 

貴方、とことん抑止力に喧嘩を売るのね。神造兵装はどうするの?

 

ありゃあ再現できなかった。まあ、他の宝具で十分だろ。キッハッハ!愉しくなってきたなぁ!!キッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!

 

形の無い闇は不気味な嗤いを残して消えていった。

 

・・・・・頑張ってね、秋。

 

雪の様な少女も去っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・知らない天井」

 

目覚めて一発目にボケる事ができる程度には持ち直した秋。秋が寝ていたのは橙子が社長をしている建築デザイン事務所“伽藍の堂”の一室。寝巻きは橙子のYシャツと履いていたズボン。

 

「おはようございます」

 

事務所に続く扉を開けると、珈琲を飲んでいる橙子。秋の方を目を点にして見ている片目を隠している男性と和服姿の女性がいた。

 

「おはよう。顔洗って来い」

 

「はい」

 

秋は橙子に言われた通りに事務所にある洗面所に入っていった・・・・・と、思ったら戻ってきた。

 

「どうした?」

 

「・・・・・届きませんでした」

 

秋の身長は120㎝。事務所に設置されている洗面台の高さは約140㎝。20㎝、秋の身長が足りなかった。

 

「幹也・・・・・手伝ってやれ」

 

「え?あ、わかりました」

 

幹也と呼ばれた男性は近くにあった椅子を持って、秋の手を引いて洗面所に入っていった。

 

「おい、トウコ。あの子供はなんだ?」

 

「昨日拾った私の弟子だが?」

 

「拾ったってお前・・・・・犬猫じゃあるまいし。親が心配してるだろ?」

 

「親ならアイツと姉兄を置いて失踪したらしい。まったく、あの歳の子供を置いて普通、失踪するか?」

 

橙子は苛立ちながら煙草をくわえて火をつける。橙子は秋の父、⬜⬜秋斗とは同時期に時計搭に在席していた。⬜⬜秋斗は良くも悪くも平凡な魔術師だった。魔術回路の数も20本と平均的で使用する魔術も強化の魔術を使える程度。それでも上を目指そうと努力する⬜⬜秋斗に橙子は素直に感心していた。故に子供を置いて失踪した⬜⬜秋斗の行動が信じられなかった。

 

「いや・・・・・上を目指す余り子供が邪魔になったのか?」

 

どちらにしても最低なのは代わり無い、橙子は声に出さずに内心で呟いた。

 

「先生」

 

橙子が内心で⬜⬜秋斗の事を罵っていると秋と幹也が戻ってきていた。

 

「戻ったか。魔術の訓練は夜からだ。それまで、ゆっくりしていろ」

 

「わかりました。あの・・・・・先生。此方の2人は?」

 

「ああ、紹介してなかったな。お前の隣に居る片目を隠しているのはこの事務所の従業員、黒桐幹也だ」

 

「よろしくね」

 

「よろしくお願いします、黒桐さん」

 

「幹也で良いよ。えっと・・・・・」

 

「秋です」

 

「秋君だね。名字は?」

 

「・・・・・言いたくありません」

 

秋は俯いて拒否した。

 

「ソイツは訳ありだ。名字は聞いてやるな。そこの和服を着ているのは両儀式。私の使い魔代りだ」

 

「ふん・・・・・」

 

式と呼ばれた女性は顔を逸らした。

 

「式。ちゃんと挨拶しないとダメだよ」

 

「う・・・・・よろしく」

 

式は幹也に言われて渋々と挨拶した

 

「よろしくお願いします、両儀さん」

 

秋の式に対する第一印象はツンデレなった。

 

「ああ、そうだ。幹也と式。秋と一緒に服を買いに行け。金は私が出す」

 

「べ、別にそこまでしてもらわなくても・・・・・。時間を見計らって服を取りに行きますから」

 

伽藍の堂がある新都から秋が住んでいた家は電車で1時間程の場所にある住宅街。聖杯戦争時は家からルーラーに背負ってもらって冬木市まで移動していた。

 

「気にするな。魔術協会の妹の口座の金だからな」

 

「それ犯罪ですよね!?」

 

橙子の妹嫌いを知っている幹也と式は何事も無いようにしているがそんな事を知らない秋はツッコミを入れてしまった。

 

「そう言うわけだ。とりあえず行け。これは“先生”命令だ。お前に拒否権は無いからな」

 

「どう言うわけですか・・・・・」

 

弟子入り1日目にして不安に駆られる秋だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「今から魔術の訓練を始めるぞ」

 

「よろしくお願いします、先生」

 

秋は幹也と式と一緒に服を買いに行った。と、言っても上下の服と下着数着を買っただけですぐに帰った。

 

「秋。お前はいつ、魔術回路を開いた?」

 

「えっと・・・・・ルーラーを召喚したのが2週間前だから。ちょうど2週間前です」

 

「2週間か・・・・・。秋斗が居ないからまともな訓練は受けてないな」

 

「あ、でも凛さんに少しだけ魔術の手解きを受けました」

 

「凛?誰だそれは?」

 

「聖杯戦争に参加していたマスターの1人で冬木の管理者(セカンドオーナー)?って言ってました」

 

秋の頭の中にガンドを笑いながら撃つあかいあくまの姿が思い浮かんだ。

 

「ちょっと待て!お前、今、聖杯戦争っ言ったな!参加していたのか!?」

 

「はい。エクストラクラスの“ルーラー”を召喚して生き残っちゃいました」

 

「エクストラクラス・・・・・はは、お前はとことん規格外だな。よし、明日はその凛とやらに会いに行くぞ」

 

「あぅ・・・・・ガンド撃たれそうで怖いです」

 

あかいあくまにガンドを撃たれないかで戦々恐々する秋。

 

「話が逸れたな。夜天の書を開け」

 

「はい」

 

秋は持っていた夜天の書を開き、中を見ていく。夜天の書には強化といった初級の魔術が載っていた。頁を捲っていくと見なられた女性の絵が書かれていた。

 

「あれ?どうしてセイバーさんの絵が・・・・・」

 

さらに頁を捲っていくと青い槍兵、紫の騎兵、紺の暗殺者、裏切りの魔女、鉛色の狂戦士が描かれていた。

 

「アーチャーさんだけ無い・・・・・」

 

仲間外れのアーチャーだった。

 

「これは・・・・・英霊か。だが、夜天の書は魔術を記録して使えるようにする魔術書だったはずだ。まさか、所有者によって内容が変わるのか・・・・・?」

 

橙子は夜天の書の変化を考察する。秋は夜天の書のランサーの頁を見る。

 

「ゲイ・ボルク・・・・・」

 

アイルランドの光の御子が使っていた魔槍。先に“心臓に槍が命中した”という結果を作ってから“槍を放つ”という原因を作る必殺の槍。余程、幸運が高くなければ必ず命中する。

 

「おい、秋。その槍どこから出した」

 

「ふぇ?・・・・・ほわぁ!?」

 

いつの間にか秋の膝の上に赤い魔槍が乗っていた。

 

「せ、先生どうしましょう!?これゲイ・ボルグですよ!?ゲイ・ボルク!」

 

「わかったから振り回すな、バカ弟子!刺さったらどうするんだ!」

 

秋はゲイ・ボルクを危なっかしい手つきで振り回す。そんな秋を橙子が怒鳴る。第3者から見たら親子に見えるだろう。

 

「ごめんなさい・・・・・先生」

 

秋は橙子に怒られてシュンとしてしまった。

 

「はぁ・・・・・まあ、良い。その槍をどうやって出した?」

 

「えっと・・・・・」

 

秋はゲイ・ボルクが出た時の事を思い出す。“かっこいい”“使ってみたい”“何で全身青タイツなんだろう?”と考えていた。

 

「・・・・・“かっこいい”“使ってみたい”って考えたら膝の上に乗っていました」

 

「“考えた”?投影したのか?それにしては魔力の反応が無かった・・・・・。創造か?いや、宝具の創造なんてそれこそあり得ない。なら模倣か?一番有り得るのは起源によるものか?」

 

橙子が秋が出した可能性があるゲイ・ボルクについて考察し始める。

 

「・・・・・・・・・・?(ランクが下がってる?)」

 

秋の視界にはゲイ・ボルクの宝具としてのランクが映っている。“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”の本来のランクはB。秋の手にある“刺し穿つ死棘の槍”のランクはC+。1ランクダウンしている。“突き穿つ死棘の槍”のランクもB+からBにダウンしている。

 

「(ランサーさんが使ってないからかな?)」

 

秋はゲイ・ボルクのランクがダウンしているのは自分が担い手では無いからと考えた。

 

「よし、秋。他にも英霊の宝具が使えるかも知れない。先ずはゲイ・ボルグを消せ」

 

「わかりました。(どうやってやるんだろう。消えろって念じたら消えるかな?)」

 

秋は消えろ~消えろ~と念じるとゲイ・ボルクはエーテルを出しながら消滅した。

 

「次はセイバーの宝具だ」

 

「あの・・・・・先生?魔術の訓練は・・・・・」

 

「そんなの後でも出来る。早くしろ」

 

「この先生横暴だ!」

 

「秋。お前は一つ勘違いをしている。魔術師という生き物は総じて・・・・・横暴だ」

 

「そうでしたね!?すっかり忘れてましたよ!?」

 

橙子の言葉に朝どうようツッコミを入れる。こうして、⬜⬜秋の前途多難な魔術師生活が始まった。




夜天の書

⬜⬜⬜⬜⬜によって改変された魔術書。本来の能力から逸脱し、英霊の宝具が使えるようになった。ただし、1ランクダウンしている。同じ英霊の宝具は2つ同時には使えない。

例・“破魔の紅薔薇”を使いながら“必滅の黄薔薇”は使えない。

ただし、他の英霊の宝具を使いながらの使用も可能。

例・“騎士は徒手にて死せず”を使いながら“必滅の黄薔薇”は使用可能。

ギルガメッシュの宝具“王の財宝”も使えるが蔵には何も入っていない。神造兵装も使用不能。

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