FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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すいません、前編と後編では無理でした(笑)



虹の桜 中編

 

ハコベ山の雪崩から次の日、《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》恒例イベント“花見”当日

 

 

 

そこではすでにギルドに所属する仲間たちが満開の桜が咲く御所にブルーシート的なものを敷いて、準備を完了させていた。

見渡す限りの桜は春の訪れを感じさせ、上質な酒の入った盃には時折舞い散る桜の花びらが落ち、浮いている。

そんな見慣れぬ景観が酒を進ませる。……などと言う酒豪の女がいたが、「お前はいつも飲んでるだろ」と言い返した。

それにしても、噂に聞いた“虹の桜”はある時間にのみ満開の桜の中にある一番大きな桜の木が、虹色に輝くという。

メイビスが初代ギルドマスターを勤めていた頃には恐らく無かっただろう木だ。それに少年――レインもまた、それを見たことはない。

だからこそ、楽しみなのである。……とは言ったものの、未だに《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》恒例イベントで見ていないのはこれだけだったりする。

そういえば、ビンゴ大会があるということも聞いていたのだが……。

 

「……まあ、後半からスタートだよなぁ……」

 

そう言いながら、レインは謎の液体が入った盃を片手に持ちながら、適当に野菜やら肉やらを食べていく。ミラの料理は正直レインも感嘆するほど美味しかった。

自分よりも料理の幅が広い彼女には驚いているが、時々ミラが怒っているシーンを見ると、冷や汗しか出ない。昔の迫力が戻ったみたいだからだ。

そんなことを考えていると、レインのとなりに座った誰かに気がついた。

 

「ん? ああ、ウェンディとシャルルか。どうかしたのか?」

 

「えーっと……。その前に、レインさん、お酒はダメですよ?」

 

「そうよ、アンタ確か14歳でしょ? 飲んでいい年齢って15歳って聞いたけど?」

 

「あー、これ? ノンアルコール飲料をそれっぽく飲んでるだけ」

 

そう言うと、ウェンディはホッとしたのか、自分もまた持ってきていた飲み物を一口だけ飲む。

 

「それなら安心です」

 

「嘘、実は酒だったりする」

 

「ええ!?!? だ、ダメだよ、お兄ちゃん!!」

 

「それは無理。久々に飲むんだから、別にいいだろ?」

 

そんなことを言いながら、捕まえようとするウェンディの手をのらりくらりと避けながら、また盃を寄せ、飲む。

必死で止めようとするウェンディだったが、さっきからレインの持つ盃から酒臭さが匂わないことに気がつき、近くにおいてある飲み物のボトルを確認してみると、そこには“自然の恵み 天然水”というラベルが着いており、それを見て肩を落とした。

 

「お、お兄ちゃん……、また嘘だったんだ……」

 

「はは、まだまだだな、ウェンディ。こう言うのは鵜呑みにせず、状況判断から始めるべきなんだよ…っと」

 

そう言うと、レインは空っぽになった盃を置き、一回だけ瞳を伏せ、意識を集中した。頭の中で巡りにめぐる魔法に関するデータが次々と乱立される中、次々と聞いた覚えのない魔法や、まだ使えない魔法の魔導書らしき何かが頭の中に思い浮かび、その中の一つ――いや、一冊と言うべきか――を手に取り、意識を戻す。

たった一瞬のことだが、かなり頭には疲れが溜まりやすいので控えているが、今使うにはちょうど良さそうだった。

試しに両手を合わせ、ゆっくりと開いていく。その行動にウェンディとシャルル、その付近にいた他のメンバーも首をかしげていたが、レインはソッと呟いた。

 

天空の造形(スカイ・メイク) “流星(ミーティア)”」

 

両手が開かれた範囲にあった空気が圧縮され、そこから徐々に形が生まれていく。岩石のような形をした空気と風の塊がレインの上へと舞い上がると小さく爆散し、その中から地面に落ちる寸前だった空中を舞う桜の花びらが舞い散った。

 

「綺麗……」

 

「あ、アンタ、さっきの……」

 

「ん? この魔法か? さっき覚えた」

 

平然というレインに一同は愕然とし、棒立ちになっていた。それでも、レインは「あれ? そんなに可笑しいか?」と言うだけで、何も可笑しくない様子をしていた。

そこへ、上半身が裸になっている男、グレイが姿を現した。

 

「お前、それ造形魔法じゃねえか」

 

「おー、流石、氷の造形魔導士なだけあるな、グレイ」

 

「ああ。ちょうどいい、相手になれ、レイン!」

 

「は…? 何言ってんだ、お前。ここ花見会場だろ? 暴れて損するだけだろうが」

 

「んなこと知るか、造形魔導士同士でやろうじゃねえか!」

 

「ま、マジか……。(せ、選択した魔法間違えたな、これ…)」

 

完全に戦闘を開始しようとするグレイにドン引きしそうになるレイン。その後ろではすでに大慌てになりかけのウェンディがおり、シャルルが退避を呼び掛けていた。

――のだが……

 

「行くぜ、氷の造形(アイス・メイク) “(キャ)……」

 

「いい加減にしろ、阿呆。興醒めするだろうが」

 

――ゴチン!!

 

鈍い打撃音がグレイの後頭部から響き、魔法を放とうとしていた彼の声が途中で止まる。すぐにグレイは倒れ、そのあとカエルのようにピクピクと身体を動かしながら気を失った。

パンパンと手をはたくと、レインはまた静かに盃を持つと、そのなかに天然水を注ぎ始めた。全くもって周りが状況を理解していないその場で、レインは冷たい天然水が喉を通ると、「美味しいなぁ、天然水!!」とだけ言って、また飲んだ。

 

「……なんだ、これ。瞬殺かよ……」

 

なんとか状況を飲み込んだ者たちが最初に言った言葉はそれだった。グレイと言えば、ギルドでも有数の実力者の立ち位置にいる魔導士であり、この間の六魔将軍でもリオンと協力して、六魔一人を倒すほどの実力を持っていた。

――だが、目の前で天然水を美味しそうに飲むS級魔導士の見た目14歳少年に瞬殺されたのである。元より化け物なのは知っていたが、余裕綽々でこのレベルであった。

 

「ふー…、あ、そうだ。ウェンディ、ちょっと面白いもの持ってきた」

 

「えーっと?」

 

「はい、これなんだ?」

 

そう言いながらカバンからレインは小さな小瓶を出した。その中の液体は緑色で、綺麗な色をしていたが、色々と怪しさ満点だった。

しかし、小瓶の蓋をパカッと外した時に、とてもいい匂いがしてきた。それも薬草のような……そんな匂いだった。

 

「なんだろう……、薬草みたいな……」

 

「正解だ、ウェンディ。昨日取ってきた薬草を飲み薬みたいにしてきた。意外と使えそうだったんだよな~」

 

「へえ~、お兄ちゃ……レインさんって薬剤師みたい」

 

「まあ、家のなかにこういうヤツが山ほどあって、そろそろ処理に困ってきたところ。変な薬がないか確認しておかないとなぁ……」

 

そんな風に呟くと、レインは桜を見上げた。綺麗な桜が並び、少しずつ散った桜の花びらが空を彩っていて……、そんな空中に一人の少女がいて……え?

思わず、レインは驚いた。なぜ空に少女がいるのか?そう考えていると、ある結論が頭のなかから浮かび上がり、冷や汗が噴き出しそうになった。

一応、ウェンディに「すぐに戻る」とだけ伝え、レインも空へと躍り出る。ウェンディたちの視界から見えないぐらいの高い上空に来ると、レインは回りを見渡し、見つけた。

自分と同じ金色の髪を持ち、天使のような羽のついた頭のアクセサリー。白を中心とした服を着た少女、初代ギルドマスターのメイビス・ヴァーミリオンその人だ。

すると、メイビスはレインを見つけるや否や、即座に抱きついてきた。嬉しそうに微笑んでから、彼女は言った。

 

「久しぶりですね、レインさん♪ いえ、ここはこういうべきでしょうか、()()()♪」

 

「あー、ホント前にあってから結構日にち経ってたな、ごめんな、メイビス」

 

レインを突然“兄さん”と呼ぶメイビス。それを不自然に感じないレイン。これには訳があり、話は数日前の《チェンジリング》の事件前日へと移る。

自分を取り戻し、記憶の一部が修復されたレイン。彼が名前を“レイン・ヴァーミリオン”と名乗るのは、メイビスの実の兄であり、家族であることの証拠なのだ。

実際レインはメイビスよりも8歳ほど年上だったのだが、彼女が生まれてから一年後にレインは拉致され、父親と母親はその記憶を消されてしまったのである。

その後、5年経ったある日、拉致した組織を壊滅させ、天狼島に帰ってきたレインは、正規ギルドの一つ《赤い蜥蜴(レッドリザード)》に加入した。

その時にたまたま雑用係をしていた少女が金色の髪を持ち、優しげな顔をしていたのに気がつくと、試しに名前を訊ねたのである。

すると……

 

――わたしはメイビス。メイビス・ヴァーミリオンです、どうかしたんですか? 強い魔導士さん?――

 

それを聞いて、気がついたら涙が頬を伝っていた。あれから5年も経ったと言うのに、妹は生きていたんだと知って……。

その後、レインはメイビスに優しく接し、ギルドマスターだったジーセルフを黙らせ、彼女と過ごす時間を増やしていった。

ついにはレイン自身が自室を捨て、メイビスと同じ馬小屋で寝ることを選ぶほどに。せめて……、せめて一人になったメイビスを見守ってやれたらとレインは思っていた。

 

――だが、その願いはある日に焼き尽くされた。

 

闇ギルド《青い髑髏(ブルースカル)》によってギルドは壊滅させられた。次々と仲間外れ殺され、ついにはメイビスも狙われた。

ギルドの残骸に挟まれ、動けなくなっていたジーセルフの娘、ゼーラを助けようとするメイビスを後ろにレインは闇ギルドの魔導士たちの前に立ち塞がった。

 

――君は逃げろ!! その子を連れて、早く遠くに逃げるんだ!!――

 

――そ、それじゃあ、貴方が…!!――

 

ここに止まろうとするメイビスにレインは喝を入れ、小さな約束を結んだ。

 

――オレのことは構うな!! なあに、ヤツらを片付けたら君たちを迎えにいく!!――

 

――分かりました…、また会いましょう、魔導士さん!!――

 

――ああ、約束だ。また会えたら靴をプレゼントさせてもらうよ、メイビス!!――

 

そうして、メイビスはゼーラを連れ、逃げ切った。

――だが、レインは心臓にいくつもの槍やら剣を受け、全身傷だらけとなった。

すでにレインの命は“風前の灯火”だった。ほとんどの身体の部分には感覚がなく、油断すれば、意識が失われ、もう二度と目を覚まさないと思った。

そんななか、レインの目の前に一冊の謎の本が落ちた。それがあの本だったのである。

それを思いだしたレインはメイビスのところに行き、一足の靴を墓の前へ置いた。それを見て、メイビスは驚いたが、それ以前に姿や雰囲気の違うレインが“ある人”に似ていたことに気がつく。

そして……知った。ギルドにいた時に、ずっと見守ってくれた魔導士がレインであり、自分の兄であることを。

レインは懐かしそうにしながら、部屋に置いてあった誰かの物かもわからない写真を入れた懐中時計を見せた。

その時計には“レイン・ヴァーミリオン”と“メイビス・ヴァーミリオン”と彫られ、一人の少年と少年が抱えた小さな赤子が写っていた。

それを見て、メイビスは思わず涙を流し、レインも嬉しさに泣いた。その後、レインは自分の名を名乗り遅れたことと、約束が達せられるのに100年かかったこと。

さらにはメイビスがこうなる前に自分として会えなかったことを謝り続けた。だが、メイビスはレインに「謝らなくていい」と言い、ただ二人、少しの間泣いただけだった。

そんなこともあり、今では本当の兄妹としての関係なのだが……

 

「むぅ……、面白そうなことしているなら、教えてくれてもいいじゃないですか~」

 

「はは、ごめんごめんって。でもさ、メイビス。花見会場に行くのは流石に……」

 

「わたしも混ざりたいです……、お花見」

 

「まあまあ……。流石に諦め切れない?」

 

「わたしは諦めません。お花見だって今だけじゃないですか~」

 

「ま、まあ……“虹の桜”は今日の夜だけだけど……」

 

「虹色の桜ですか!? それは絶対に見逃せません!!」

 

「(ダメだこれ、絶対に行く気だ、メイビス…)」

 

そうため息をつきながら、レインはいい考えが出ないか模索する。すると……

 

「分かった。それじゃ、夜まで待っててくれ。夜になったら多分ギルドのみんなはいないだろうから、その時に花見をしよう。二人でゆっくり酒でも入れながら」

 

「ふふ、流石ですね~。それでこそ、わたしの兄です!」

 

「(……完全に押しき切られたな、これ)」

 

今までに感じたことのない重荷にレインはため息しか出なかった。どうしてこうも、メイビスには勝てないのだろうかと言う疑問を考えながら。

二人の妹を持つレインは今日は大変だなぁ……と染々思うのだった……。

 





ま、そんな訳です。これで“ヴァーミリオン”の伏線は撤去しました。

さて、次回で虹の桜終わらせて……あ、そうだ。

虹の桜の後に一つだけ話を入れようと思うのですが、どっちがいいですかね?

“24時間耐久ロードレース”か、“ウェンディ、初めての大仕事”か。

ちなみにこれどっちか決まるまで投稿がおくれるかもしれません。

自分では決められなかったんで。それでは次回~♪

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