FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹 作:天狼レイン
ごめんなさい、いや、なんというか……、申し訳ないです。
そんな訳で5000文字より多めです。以上です。本編どうぞ
地下洞窟内にて
「ひっさしぶりに来たな、ここ。結構汚いんじゃないかと思ってたが、普通だな、前とほとんど変わってない」
一番最初に降り立ったレインは周りの安全を確認しつつ、キョロキョロと見渡した。降り立ったその場所は部屋のように広く、向こう側に洞窟への通路が一本だけ用意されていた。
地下室とも言えるその部屋には作業用の道具、地下の地図が記されたものが用意されており、意外と迷う気配は無さそうに見える。
「よいしょ……。あれ? レインさん、なんだか空気が美味しい気がします」
次に降り立ったウェンディが地下へと降りる階段より繋がった梯子から離れ、レインの横に並び立つと、試しに深呼吸をしてみると、何故か外よりも綺麗な空気がそこにはあった。
「ん? ホントだ、確かに外とは空気が全然違う」
「確かに、地下なのにこれほどまでに空気がいいとはな……」
「ホント、ここが外なら快適そうね」
グレイ、エルザ、ルーシィが口々に言い、あとからハッピーとシャルルも降り立ち、全員が揃うとレインが説明をする。
「一応地下洞窟の何処かに風魔法のラクリマ置いててな。そこで“高濃度エーテルナノ”が放出されている訳だ。ちなみにオレはいつも体調悪い時には自室じゃなくて、ここでゆっくり寝る。その方が過ごしやすいからな……地面が冷たいけどな」
「へぇー、確かに“天空の
シャルルが実体験のようなことを口にすると、レインも言いづらそうだが、答える。
「まあ、オレも意外となぁ……。空気が悪いところだと、魔法を使用するのを躊躇うんだよなぁ、不味い“エーテルナノ”が空気中に散布されてるから」
「“エーテルナノ”に美味しいも不味いもあるのね……アンタたち」
理解しかねる様子を見せたルーシィ。確かにレインやウェンディのような環境に敏感な魔導士以外はどんな悪天候や環境が悪いところでも“エーテルナノ”を普通に取り込み、魔力を回復するのだが、何かを食べることで魔力を回復したり、強化される滅竜魔導士。
それも天空の滅竜魔導士に至っては、その空気がどれほど綺麗で高濃度な“エーテルナノ”で構成されているかが戦いや健康を左右することがある。
事実、以前“ニルヴァーナ”を止めた際には高濃度でありながらも、“エーテルナノ”が闇などの異常物質を含んでいたために、レインは結局魔力を一気に全快することが出来なかった。
「まあ、便利さ故の弱点ってあるもんだろ…、やっぱり。エルザだって妖刀“紅桜”使うときに、魔力消費が厳しいからサラシだけの装備じゃなかったか?」
「確かにそうだな。ナツやレインも乗り物に弱いのだったな」
「まあ、ね。でも飛べるし、オレは。――ナツはいつもぐったりだが」
「やっぱり何かの条件を果たした時からわたしたちって乗り物に弱くなるんでしょうか?」
「多分そうかもな。となれば、大体の条件は把握できる。――けど、ナツの方を先に済ませてからにするか」
レインが話に区切りを付けさせ、一本しかない地下洞窟への通路を見る。目を凝らしているのか、意識を集中させる彼からはいつも通りの覇気の一部が感じられた。
「大体3つ、か……」
「なんの数だ? レイン」
「トラップだ、今のところで視認できる数。遠くにいけば、簡単に攻略できるトラップだけで構成されてるんだが……、地下から家のなかに上がる梯子付近に近づくほどトラップの容赦なさが上がる。――つまり、今から向かう場所で発動するトラップはギリギリ即死級にならないレベルのものだな」
「な、なんでいきなり即死級クラス!?」
「ま、仕方ないだろ。家の防御のためなんだろ?」
「まあ、そうなんだが、な。正直ここ周辺のトラップまで来る泥棒一人もいないからなぁ。途中くらいから巨大木槌の降り下ろしあるし」
「や、やっぱり部屋以外にもあったんですね……」
苦笑いを溢すウェンディと呆れ果てるシャルル。そんな彼女たちを見つつ、物は試しとレインは近くにあったスイッチを軽く押し、距離を取る。
すると、先程までレインが立っていた場所の左側の壁が突然現れた巨大な木槌によって粉砕され、その勢いのままブルンッと振られるそれを見ながら、全員が軽く呆然とする。
振り子のように同じ幅を行ったり来たりするそれが何よりも怖いのだが、それ以前に配備しようと考えた本人が何を考えているかが一番怖かった。
「……やっぱ、危ないよな、これ。オレも久しぶりで結構怖い」
「……で、ですよね……」
ルーシィが半場諦め気味な言い方で肯定すると、どうしたものかとレインは考え込む。すると、羽織っていたコートの袖をギュッと掴んで離さないウェンディを見つけ、訊ねた。
「怖かったのか? やっぱり」
「う、…うん……」
「そうだよなぁ……。今度からトラップも威力を絞った感じのヤツに変えないとな。――ところで、大丈夫か、ウェンディ?」
「……ちょっと怖い………」
「(ちょっとじゃない…な。かなり震えてる)それならさ、オレの前、歩くか? それならいざというときになんとかなるしさ」
「…ぁ……。……うん、ありがとう、お兄ちゃん」
涙で晴れない表情をしていたウェンディが明るくなり、いつもの可愛らしさを取り戻すと、レインは無意識に笑いかけていた。
正直、レイン自身もよくわからない。何故、彼女と一緒にいると楽しいのか、嬉しいのか、それに加えて守ってあげたいと感じるのか。
もう一人の大切な妹だから。そう言えば、説明は簡単だ。しかし、レインは何故かそれだけで言い切ってしまうのが不思議と嫌だった。
もっと具体的に何故そんなに大切に感じるのかが不思議で仕方ない。本当にただ妹として接しているとかが分からないときもある。
エドラスで似たようなことを考えたときが一度あったが、その時にも結局答えは出なかった。それを思うと、この気持ちが何なのかが気になってきた。――が、その問いはウェンディが感謝を伝えたかったのか、自分の顔を埋めてきたことで埋め尽くされ、また遠い何処かに消え去っていた。
「(この小さな“手”が、いつかオレに届く“拳”になるんだろうな。やっぱ、オレを万が一に倒すことが出来るのは……)」
「どうか…したの? お兄ちゃん」
「いいや、何でもないよ。――ところで、さっきから“お兄ちゃん”って読んでるんじゃないか? また」
「…あ………」
――◆――◇――
「しっかし、さっきからとんでもねぇトラップばっかだな、レイン」
「確かにそうだな。飛来する金属棒に、突然穿たれる落とし穴。普通ならば、すでにかなりの怪我を負ってしまいそうなレベルのばかりだ」
「やっぱ、危ないよな、これ全部。……地下洞窟と家との繋がりを断絶するのが手っ取り早そうだな、そうなると」
「そうだよね、オイラたち、結構危ない目に遭ったし」
「それなのに肝心の解毒薬が見つからないのよね」
ハッピーとシャルルの辛辣な指摘にレインも流石にグサリときた。まあ、事実故に反論など出来る訳もなく、黙りとしか出来ない。
「………1、2、3……10……13か」
「敵か、レイン?」
「いや、違う。この洞窟に住み着いた毒ガスネズミか、この感じだと」
「う、うわぁ……またあれなの…?」
「オイラもあれ嫌だなぁ」
「そんじゃ、一気にやっちまうか?」
「――いや、オレに任せてくれ」
すでに構えを取り、警戒するグレイ。彼を制止し、レインが歩み出ると同時に、暗闇から無数に光る紅い眼が輝く。次第に近づいてくるネズミたち。
それを見て、ルーシィとハッピーが後退り、ウェンディも少し不安そうな顔をする。そんなメンバーの不安を掻き消すかのように、レインは少しずつ殺気を漏らしていく。
「……立ち去れ」
小さく発せられたのはたったそれだけ。しかし、その声には高密度な殺気が含まれており、耳がそれを受け取るだけで頭が危険だと判断し、危険信号を全身に通達する。
それは仲間であるルーシィたちも同様だ。仲間だと言うことを認識している彼女たちは別に怯えなくていいことぐらいは分かっているが、彼の殺気は予想以上だった。
ゆっくりとレインは息を吐き、再び声をあげる。それも今度は声を大にして。
「――立ち去れ!!!」
その声は空気を震動させ、まるで周波数のように広がっていった。その声の周波数が通ったあとにはネズミたちが一目散に逃げ惑う姿があり、怯え方が尋常ではなかった。
ネズミたちが完全に姿を眩ませると、レインはクルリと回転するように振り返り、無邪気に笑って見せた。
「な? 早かっただろ? わざわざあんなのに魔力使うのが損ってものだからな」
「確かにあのネズミって結構狂暴だったわよね……」
「全部逃げたな、綺麗に」
「レインさん、スゴい……」
「それにしてもああいうのも住み着いてる訳?」
「う~ん? 前見たときにはいなかったな。前はもっと大きくて別のヤツがいたからな」
「え、えーっと…それもさっきので…?」
今だけ自分の後ろに下がってきたウェンディがそう訊ねてくると、レインは普通に首を小さく縦に振り、肯定した。
「まあ、そんなところか。そろそろトラップの鬼畜さは下がるんだが……、疲れが出るところだなぁ。全員大丈夫か?」
「わたしはまだ大丈夫だ」
「オレもまだまだ行ける」
「わたしも行けるよ」
「わたしもです」
「エクシード二人は?」
「大丈夫よ、まだ行けるわ」
「アイ!」
全員が大丈夫そうだと分かると、早速レインは前へと進もうとして、急に何かを感じたのか、突然全員に……
「……っ!? 伏せろ!!」
反応速度が他のメンバーよりも遅めであるウェンディとルーシィを強引だが、伏せさせ、レインもまた地面に伏せる。
ハッピーとシャルル、エルザとグレイも急いで伏せると、頭上を氷で作られた槍が向こう側まで飛んでいく。
「イタぁ……、さっき何かが飛んできませんでした?」
「多分防衛用の“氷魔法のラクリマ”が攻撃してきたんだろうと思う。流石に気づかなかったら死んでたな、あれは」
「んなモンも置いてるのかよ、ここは」
「しかし、レインには助けられたな。感謝しよう」
全員がよいしょと立ち上がり、伏せたときについた砂をパタパタと落とす。念のために気配で異変察知をしてみるが、今のところは何も感じなかった。
すると、向こう側を見ていたらしいハッピーが奥で光る何かを見つけたのか、声をあげた。
「あれ? なんか光ってるよ」
「あ、ホントですね」
「確かに、なんか紫色に光ってんな」
「なんなの、あれ……?」
先程のネズミのように何かが住み着いているのかと考え、構えを取り、警戒するメンバー。ハッピーの声に気がついたレインはセカセカとそっちに歩いていき、紫色に光る何かを掴んだ。ジーっと確認してからため息をつき、それを全員に見せる。
「薬、あったぞ。見た目通り不気味なんだけどな」
――◆――◇――
「………全く、あの薬結構作るの苦労するから使いたくなかったなぁ……。元はと言えば、バカナツが勝手に食ったせいなんだが……」
ナツに薬を飲ませ、なんとか解毒を済ませたレインたち。ルーシィとエルザ、グレイに頼み、とりあえず、ナツは引き取ってもらった。漸くゆっくり出来ると思っていたのだが……。
「あの……、レインさん」
レインが座るソファーの隣にはウェンディも同様に座っていた。一応全員帰らせたはずなのだが、彼女は何か話があるらしく、残っている。
こう言うときは相手が話せるようになるまで待つために、レインはボーッとしていたが、ウェンディが話しかけてきたことで反応する。
「どうしたんだ? ウェンディ」
「前に言っていた“魔導を見る力”ってどういうものなんですか?」
確かにそれは魔導士ならば、気になるだろう。魔導士の使う魔法は“魔の法律”、そう言っても過言ではない代物だ。――となれば、当然その魔の法律の流れである“魔導”を見ることが出来る力はどんなものなのかと言う話になる。
「ざっくばらんに言えば、かなり簡単な魔法か超上級魔法までの範囲…かな。それでも特殊な魔法は見られない。例えば、“滅竜魔法”。本来ドラゴンが使うためだから、持ち主から授かるしか手に入らない。他にも《妖精の尻尾》三大魔法もその例。マカロフさんが使う“ロウ”は今では誰も覚えようとすれば使える。――けど、残り二種は違う。一つは破壊魔法、これはメイビスが相手を認めたときに授けてくれる魔法。もう一つは特殊な場合だけ……ってところかな」
「そうなんですか? わたしはてっきりその力で見て覚えることが出来たりするんじゃないかな…って」
ま、普通ならばそう思うのも頷ける。しかし、それほどこの力は便利とも言いづらい。
「オレもいつからこの力があるのか覚えてないから分からない。それにあんまり便利じゃないんだ、これ。使うと微妙に頭痛がするし」
「なんだか不便そうですね」
「まあ、便利すぎるのもあれだしさ。利点って言ったら“古文書”で魔法を探すより圧倒的に早く見つけられ、習得できるっていう点だけかな。――さて、と」
ソファーから腰をあげ、レインは時間を確認し、ウェンディに言う。
「女子寮前まで送るよ。まあ、単に話がしたいだけなんだけどね。――このあと、フィー迎えに行かないといけないから」
「はい!」
――◆――◇――
「……パパ、遅い」
「まあまあ、フィーちゃん、気長に待ちましょう~♪」
結構不機嫌に待っていた。
さて、次回からは天狼島編に入りたいです。次回も読んでくれると嬉しいです。