FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹 作:天狼レイン
さて、やっとこさ天狼島ですよ、みなさん。
今回大幅カット多いです。まあ、許してください。
それはさておき。定期報告でオリキャラ募集しております。奮ってご参加を。
「ふぇぇぇ………」
情けない声を漏らしたのは可愛らしい水色のしましま模様が入った水着を着て、テーブルに身体を倒して預けている藍色の長い髪を持つ少女。
つい先程まではいつも通りの服装を着ていたはずなのだが、この近海に入るに当たって服装は水着へと変わっていた。
それもそのはずであり、この辺りの近海は暖かい海流と雲が全くないとも言える天候のせいもあり、結構暑い。
マグノリアの街ではすでに夜など、かなり寒いのだが、それが一変するほどにここは暑くて仕方がないのだ。
そんな藍色の長い髪の少女――ウェンディの側には二人の女たちがいる。両方、ウェンディのようなパートナーではなく、S級魔導士昇格試験参加者なのだが、ウェンディ同様に暑さによってだらけてしまっている。
青い髪を持つ少女――レビィ・マクガーデン。
黒い髪を持つ女性――カナ・アルベローナ。
当然二人も水着だ。そんな彼女らの視線の先には一匹の青猫と金髪の女性もいる。
毎度お馴染みのハッピーとルーシィだ。
彼らもウェンディと同じパートナーとしての参戦だ。ルーシィに至っては備えられたチェアにだらしなく座り、ひたすら暑い系統の単語を連発している。
ハッピーに関してはジュースなどの小道具を置く小さな台に寝転び、同じく暑い系統の単語を連発するばかり。
互いにアイスになるとか、食べられるなど言っているが、正直片や人間アイス、片や猫アイスなど食べたくないだろう。
そんなこんなで彼らは試験会場である聖地天狼島へと向かっている。だが、流石にほとんどのメンバーが暑いと言っていてはキリがない。
――というより、これから試験の地である天狼島も暑いことには暑いと言える。つまり、今暑い暑いと言っていても仕方がないのだが、やはり何度も言うが暑いらしい。
そんな中、ウェンディがあることを思いだし、自分の足元に置いてあった何かの包みを見つけ、それを自分の前に配置した。
「ウェンディ、それなに?」
「見たところ、棒状のものが入ってみたいだけど……」
レビィとカナがそれぞれ呟き、その包みの中身を知らないウェンディは分からないと答える。しかし、差出人については遠に把握済みだ。よくよく見れば、分かりやすいように“ある人物”の名前の一部が包みに記されている。
――
その名を見た途端に、ウェンディは誰かをすぐに察したのだが、恐らく彼のことだ。こういうことも予想しておいての判断もとい仕掛けてあるのだろう。
兎に角、中身は開けないと分からないのだが、ここでいきなり意地悪とも言える罠があるパターンに入れば、恐らくほとんどのメンバーが予選前に落ちてしまうだろう。
そう思うと、気が引ける。
「ウェンディ~……、それなに~……溶けちゃう……」
「これ……、開けていいんでしょうか……?」
ルーシィが未だに暑いと連呼するせいで、流石のウェンディも開けない方がいいという決心が揺らぎそうになる。事実、自分も暑いからだろう。
すると、それに便乗するようにレビィとカナもただ首を縦に振るだけだが、首肯した。近くを見渡せば、平気そうな顔をしているパートナー兼試験参加者のドランバルト、フリードとビックスロー、ジュビアが見える。
エルフマンやグレイも暑そうにしているが、ナツはそれどころではない。完全に船酔いし、何回か
それを見て、完全にウェンディの決心が彼女の中で音を立てて崩れ去り、しぶしぶ開けることを選んだ。
「そ、それじゃあ……、開けますね、みなさん」
包みに手をかけ、ゆっくりと巻かれたヒモを解いていき、布だけになったのを確認し、大丈夫なのかと不安になりつつも、ウェンディはその包みを完全に開け放った。
「……え? これって……」
恐る恐る中身のそれを見て、ウェンディは取り出す。それは綺麗な白色の布があり、持ち手用の棒と一緒に設置するためなのか土台もついていた。
それが指すモノと言えば当然あれしかない訳だ。
――現在ここにいるほとんどのメンバーが欲しがっているパラソル以外に他ならない。
「ぱ、パラソル……入ってました……」
「でかした、ウェンディ!!」
「それでこそ
「わ、わたし…女なんですが……」
包みから出てきたパラソルを見て、暑がっていた男共――エルフマンとグレイが起き上がった。とりあえず、グレイは下半身をちゃんと隠してほしい。
早速彼らがそれを取ろうとするのだが、その前にウェンディがあるものを見つけた。包みに入っていた2本のパラソルの隙間に挟まっていたのは飾り気のない一通の手紙。
――間違いなく彼のちょっとした手紙だ。
それを見てすぐに封を開くと、中に入れてあった手紙からは彼の筆跡と共に内容が記されていた。
拝啓 S級魔導士昇格試験に参加するギルドの仲間たちへ
このパラソルはここによく来るオレからのプレゼントだ。まあ、暑さ凌ぎくらい
少しはしても許されるだろう。それぐらいじゃないと色々ストレス溜まるからな。
――まあ、度が過ぎると天狼島に入ってからが途方もなくかなり疲れるけどな。
それはさておき。この二本のパラソルについてだが……。
当然レディーファーストって言うモノが何処かの地方ではある。――と言う訳で、
二本とも女子が使うといい。男子は暑さでこんがり焼けてチキンにでもなればいい。
――というより、そんな貧弱な男が試験に選ばれる訳ないか。まあ、女子は
ゆっくり休め。根性みせろよー、男子~。ちなみに猫は女子と同じ待遇だ。
まあ、試験頑張れ。――でも、とりあえずオレとギルダーツに当たったら……
運が無かったと思ってくれ。
レイン・ヴァーミリオンより
「なんじゃそりゃあーー!!!」
「くぅ~!! 漢には厳しいぜ、レイン!!」
「オイラはパラソルOKなんだね」
「レイン、こういうのも予測してたのかな……」
「た、多分そうだと思います……」
グレイとエルフマンの嘆き声が広い海の上で木霊し、次々と女子と猫は同じ場所に集まり、パラソルを開いて、その下に出来た日陰に入る。
「なにこれ……、すごくすずしい……」
「だねぇ~……」
「レインって女の子に優しいね……」
上から順にルーシィ、カナ、レビィが感想と感謝を述べ、同じく黙ってはいるもののウェンディとハッピーも涼しそうだ。
少し視線をずらせば、グレイやエルフマンが暑がる姿が見える。対してさっきと変わらない者たちも当然居るのは居るのだが。
ふとそう思っていると、微かに揺れた船体により、ウェンディのカバンから中途半端に姿を見せていた小さな球体のラクリマが転がり落ちる。
それを見てウェンディは焦りながらも、回収し、それをテーブルの上に置くと安心したのか、息を吐いた。
「ねえ、ウェンディ。前から思ってたんだけど、それってなんなの?」
前から少しだけ見覚えがあったルーシィは疑問をここで解消するべく、ウェンディに訊ねた。
「えっとですね……。これは貯蓄用のラクリマで、レインさんがわたしに「常日頃から魔力を準備したり、使ったりするのに馴れた方がいい」って言われて、これにいつも全魔力の1割ぐらいここに入れてるんです」
「へぇ~、ところでそれ貯めてどうするの?」
「それは……わたしも聞いてません。後でレインさんに会った時に渡さないと行けないので、その時に聞いてみます」
謎の貯蓄ラクリマをカバンにしまいこみ、ウェンディは再びテーブルに身体を預けるが、そんな彼らを見下ろすようにある人物が姿を現した。
――三代目ギルドマスター、マカロフ・ドレアーである。
もうすぐそこまで見えかかっている天狼島を見て彼もそろそろ説明をするために出てきたのだろうが、その服装を見るとただの観光客としか言えそうにない。
「なんだよ、その服!!」と突っ込むグレイ。再び言うが、とりあえず下半身をなんとかしてほしい。流石に全裸になることに躊躇いなどは一切ないのかと言いたくなる。
先ほど彼が言ったのだが、天狼島にはかつて“妖精”がいたという。確証は無いが、この島から《妖精の尻尾》の原点が作り出されたとレインは言っていた。
――妖精に尻尾はあるのか? 永遠に謎故に永遠の冒険。
それこそがギルド――《妖精の尻尾》の由来だと彼は言っていた。今のウェンディには上手くは理解できない。それでも、彼には懐かしいのだろう。
そんなことはさておき。
マカロフは説明をするべく、語りだした。
この島に初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンが眠るということを。
それを言い終えると、彼は自分の真横にラクリマビジョンを展開した。
そこには“闘”と書かれた対戦の間と何も起こらないと示される“静”。
そして……、ギルダーツやエルザ、ミラ、レインの書かれたマスには激しい戦いになり、突破するのが困難と書かれた“激闘”が記されていた。
何故かは不明だが、ビックリマークの本数が人によって違っていた。
ミラは2本、エルザは3本、ギルダーツは4本――レインは5本だった。
それが現す意味は……
「これ、レインに当たったら終わりじゃ……」
グレイが推測を口に出すが、恐らくそういう意味だろう。正直ギルダーツでも無理だろうが、あからさまに危険の表示が違っている。
すると、マカロフが咳払いを一回してから説明を開始した。
「一次試験で試されるのは“力”と“運”じゃ。当然“激闘”に当たれば、突破は困難となる。それを避けることのできる運も必要。当然“静”ならば、何もしないで二次試験に進めるぞ。
レインの提案もあり、“静”は今回2つ。“闘”は1つ。“激闘”は4つじゃ。まずは島から出てくるあの煙を目指すといい」
そう言うと、マカロフはすぐさま“試験開始”と宣言する。だが、流石に始めて良いのか分からず仕舞いだ。そんな彼らを差し置き、羽を広げたハッピーがナツに持ち上げ、空から島へと接近しようとする。
所々から聞こえる「せこい」や「ずるい」の声。
しかし、彼らは進めなかった。――突然壁のようなものに阻まれて。
「うぎゃあッ!?」
「五分後には解けるようになっている」
短い悲鳴をあげ、壁に衝突したナツたちを置いて、犯人であるフリードはビックスローと共に島へと先行する。
当然他のメンバーも術式の壁からは出られていない。――はずだったが。
「ごめんね、ルーちゃん!!」
「ギヒッ」
文字に詳しいレビィが一分でそれを解いたことにより、ガジルと共に続いて先行した。さらに続いてフリードと付き合いの長いエバーグリーンも当然、エルフマンと共に術式を変更し、自分達だけ進んでいく。
「あと何分くらい足止め?」
「恐らく4分です」
ジュビアの返答で大体のメンバーが大焦りするのだが、一人だけ慌てていないものがいたのである。――ウェンディをパートナーにしたメストだ。
「焦らないんですか?」
「いいや、大丈夫だ。ウェンディ、掴まってくれ」
「あ、はい」
自信満々な彼の様子に疑問を抱くものの、ウェンディは彼の手を握る。一瞬だけ謎の浮遊感があったのだが、気がつけばそこには島の上。向こうを見れば、みんながいる船が見える。
「え、えええええ!?!?」
「はは、驚いたかい?」
「しゅ、瞬間移動……」
「そんなところかな。それじゃあ、行こうか」
瞬間移動のお陰で時間を短縮できたメストが先を急ごうと指示する。しかし、ウェンディはあることに気がつき、それについて訊ねた。
「あ、あの……、少し服を着替えていいですか?」
――◆――◇――
ウェンディがいつもの服に着替え終わり、メストと共にルート選択に入った。すでにルートは3つ封鎖されていたが、まだまだ選ぶルートはある。
どれにしようか二人で悩んでいる最中、ウェンディは“とある何か”に気がついた。
「あれ?」
「ん? どうかしたのか? ウェンディ」
「いえ、その……。島から
「なんだって…!?」
それを聞き、メストもそれを確かめようとするが、あまり感じ取れなかった。だが、ウェンディは違った。確かに島からは微弱ながらもレインの魔力で溢れ帰っていた。
それはまるで……、この島がレインの魔力で生き生きとしているように。
力強く、それでいてなんだか暖かさも感じる。そんな感覚に囚われつつも、ウェンディはメストと共にルート選択に戻った。
「どれにしましょう……」
「そうだな……。ここは運に任せてBルートにでもするかい?」
「そうですね。ここは運に任せてみましょう」
近くにあったBの看板の立てられたルートへと二人は入っていく。途中まで洞窟が広がっていたその道は、気がつけば綺麗で広い湖が広がる地底湖のような場所へと変わっていた。
湖の上を舞うホタルの光は幻想的で、ウェンディはそれに見入っていたのだが……、その湖でバシャバシャと音を立てる何かに気がついた。
「ふーっ……、漸く頭がしっかりしてきたなぁ……。まったく……妹を酔い潰すまでこんなに苦労するとはな……」
その声音を聞いた途端、ウェンディは後退りを思わずしてしまった。その様子にメストは首を傾げたのだが、次の瞬間その声の主がこちらを向いたことで理解した。
湖で顔を洗っていた者。
それはウェンディにとって、一番大切な兄であり、憧れの人。同じ師と親を持つ兄妹のような仲である――淡い金髪に一房の藍色の髪を持つ、白銀のコートを羽織った少年。
今回の試験史上、最難関と言われる最強の試練。
S級魔導士、《天空の刀剣》と《天竜》の異名を持つレイン・ヴァーミリオンだった。
「れ、レイン…さん…」
「ん? へぇー、ウェンディとメストか。ようこそ、
可愛そうなウェンディ。いきなりこれですからね(笑)
ちなみにグレイたちは“静”の間に行きました。やったね、グレイ、楽できるよ(笑)
他は変わりないです。次回はウェンディが日頃、レインに軽い稽古をつけて
もらった成果が出るかも?の回です。ご期待あれ