FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

50 / 80
色々と案が増えてきて嬉しい作者です。

さて今回はゼレフ登場回ですね。それと、今回は今までのレインの謎の根本的な部分に

当たります。勘の良い人、すでにマガジン読み漁ってる人、ネタバレ読んでる人には

味気ないかもですが(笑)


憎しみの記憶

「クソッ! オレが何をしたって言うんだ!!」

 

その声は地底湖にある細いに関わらず、頑丈に出来た柱に縛り付けられている男から発せられたものだった。

彼の手首には普段ならば、評議院が使っているはずの“魔封石”製の手錠が付けられ、どう考えても部外者が居なければ解除など出来ない代物である。

そんな彼の前に立つ少年と少女。

淡い金髪に一房の藍色の髪の少年は欠伸を噛み殺しつつ、小説を片手に読んでいた。一方の藍色の長髪の少女は少しムスッとしており、捕まえられた男を見ていた。

 

「……やっぱり、こいつがスパイか。う~ん、もっとこう……、難しい推理小説って無いもんかな……」

 

「レインさん、この人、どうするんですか?」

 

推理小説を読む少年――レインはそばにいるウェンディの問いを考えながら、読んでいる小説のページを進めていく。

時折彼が漏らす言葉と言えば、小説に関係する何かのみ。完全に捕まえた男の子のことなどそっちのけになっているであろう。

そんな彼を不思議そうにウェンディは見ているのだが、捕まえた男を一瞥し、それからため息をついた。

 

ため息をついたのにもキチンとした理由があった。

それはこの男――偽名メスト・グライダーと名乗る人物は評議院からのスパイらしく、レインがそれを見破るまではウェンディは気がつくことすら出来なかったのだ。

――と言っても見破るというよりは、ウェンディ自身に掛けられていた記憶操作魔法をレインの持つ《魔法解除(スペルキャンセル)》によって強制解除したまでの話だ。

それにより、彼女に植え付けられていたメストという人物がいたという記憶はすっかり除外され、元通りとなっている。

 

しかし、疑問がウェンディにはあった。

それはギルドメンバー全員にかけられただろうはずの記憶操作をレインだけは全く受けていなかったと言うことだった。

いくら《魔法解除》があると言っても、それは自身に作用させなければ発動しないし、魔法を受けた相手――仲間にも直接触れ、発動しなくてはならないものだ。

そうそう意識していつも使う訳ではないはず。それがウェンディの考えだった。

 

すると、それに気がついたのか、レインは小説をパタンと閉じ、ポーチに仕舞うとウェンディの方へと向き直り、それから少しの間を開けてから口を開く。

 

「オレだけがなんで記憶操作されなかったのか……ってことが気になったのか?」

 

「あ、うん。どうしてですか?」

 

「まあ、結構理由も簡単な訳なんだよなぁ。まず、一つ目。オレは一部を除いた魔法を視て、それを得る力――“魔導を見る力”がある。これはまず、ここに来る前に魔導図書館に行ってきたんだが……、この力は元より魔法に対しての耐性が極端に上がるのも一つの効果らしくてな。まあ、つまり……、これあれば、記憶操作などの魔法を自然と受けない」

 

「チッ……、まさかそんなものを持ってたのか……」

 

「はいそこ、後で尋問するから黙っとけ。――二つ目は、前に似たようなことをやられた経験があってさ、その時に“状態異常完全無効化(フルレーゼ)”を発動してたから、その時に耐性がついたままなんだろうな、お陰で助かった訳だし」

 

「なんだか、レインさんが可笑しい気が……」

 

「まあ、そんなこと言ってたらキリ無いと思うけどな。事実、オレは()()()()()()()()()()()()()()()状況だからな」

 

「え………戻らない? どういうことですか?」

 

突然のことに疑問符が出たままのウェンディ。あれ?可笑しいこと言ったか?という顔のままのレインだったが、もう一人驚愕している男がいたので、可笑しいのが自分だと理解し、ため息――自分への――をついた。

そもそも魔導士には基本的に自身の魔力を貯める器のようなものが存在する。当然それは使いすぎれば、魔法が使えなくなるのと同時に、空気中にある“エーテルナノ”を吸収し、魔力回復を始めるのを現している。

つまり、強くなればなるほど自身の魔力を貯める器が巨大化し、さらに魔力を蓄積していられるのだが、レインはそれが極端すぎるほどに大きすぎた。

ウェンディたちの魔力の器がお酒を入れる盃のようなものならば、レインの魔力の器は何十人以上の料理が入れられた途方もなく大きい大皿のレベルなのである。

それも今のレインはその魔力の器に全ての魔力が溜まり切らないでいる。実際ニルヴァーナの時に放った滅竜奥義改の大技も普通に毎日持ち得ている魔力を一週間分集めたものに過ぎない。もっともっと魔力は溜まるはずなのだが、何故か一定量を溜めてから回復が遅すぎるのだ。何度も疑問に思い、ある薬剤師の者に訊ねに言ったのだが……

 

――私にも分からない。アンタの魔力がどうしてそんな強大なのか、それ自体が一番不思議な話。……というより、人間は嫌いだよ!! とっとと帰れ!! 帰れ!!――

 

と返されてしまう始末。途中で「オレ、悪魔なんだが……」と言いたかったのだが、結局言えなかったのもまた事実である。

軽くその話をウェンディに――次いでに捕まえた男にも――しつつ、レインは自身がそんなに異常なことに落ち込む。

欠けた記憶にその答えがあるのだろうと思ってはいるが、ここ最近は思い出す前触れや切っ掛けが一つも無い。

そろそろ前触れや切っ掛けが無いと、このまま思い出せないような気がしてしまうのだが、それも悪くない気がしているのもレインの本音だ。

――目の前にいるウェンディにはよくそれで心配されてしまうのだが……。

 

「さて、と。――とりあえず、こいつどうしようか」

 

「そうですね……、マスターに引き渡しますか?」

 

「だなぁ、どうせメイビスの所だろうし……ッ!?」

 

何かを言い切ろうとしたところで、レインが急に身体から殺気を漏らした。突然のことでウェンディは驚いたが、空気が重くなったことに気がつき、彼を見ると……、いつもとは雰囲気が違っていた。それも何かの感情に囚われているような雰囲気だった。

ゆっくりと口を開き、溜め込んでいた空気と共に力強く、それでいて憎しみを込めた言葉を吐き出した。

 

「あの時のヤツかッ……!!!」

 

ウェンディにはその“あの時のヤツ”という言葉が分からなかったが、彼の雰囲気の急変と、島自身が微かに震えたことで事の重大さが理解できた。

――と同時に、レインは素早く捕らえていた男――偽名メストの首もとに手刀を叩き込み、気絶させる。急に力が抜け、倒れ付した彼に目もくれず、レインは地面を蹴り、地底湖の天井に穴を開け、外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

「ナツ………」

 

黒髪の彼は確かにそう呟いた。今では見ない古い服装に身を包み、穏やかで優しそうな雰囲気を持つ彼。しかし、その彼は一瞬で周囲の植物を――生命を喰らい尽くした。

彼から発せられた黒い波動は呑み込んだモノを一瞬で生命として終わらせた。その謎の力がエルフマンとエバーグリーンのペアを襲おうとしたところに別チームだったナツが二人を助けた。その時、彼がそう呟いたのだ。

――だが、ナツの行動は呟いた彼に怒りを見せ、殴っていた。

簡単にひっくり返る彼。そんな彼を見ながらも、怒りを見せ続けるナツの姿。だが、殴られた黒髪の彼は涙を流し、何故か喜ばしい様子を見せていた。

 

「誰だ、てめえ」

 

「ナツ……」

 

ただひたすらにそう呟く彼。だが、そんな黒髪の彼に異変が再び生じようとしていた。突然頭を抱え込み、呻き、ナツたちに忠告するように告げた。

 

「離れ…るんだ……、じゃないと……みんな…殺して…しまう……」

 

「あ?」

 

なんのことだが、さっぱりなナツ。黒髪の彼の呻きは最大限にまで上がり……、今まさに先程の波動――彼がいうには“死の捕食”が始まろうとしていたその時……、“あの少年”が姿を現した。上空から奇襲を仕掛けるように、黒髪の彼を殴り飛ばし、降り立った少年――レイン。

いつも穏やかであり、少し厳しくもあるが、優しい彼の表情はいつもとは比較にならないほどに憎しみに包まれていた。怒りと憎しみが彼を支配しているように見えるほど。

 

「絶対お前は許さない……!! オレの妹を…メイビスをよくも……!!」

 

「メイビス!? メイビスって確か……二次試験の」

 

何かを思い出したナツ。そんな彼を見ようともせず、レインは倒れている黒髪の彼に怒りと憎しみを込めた視線を向けていた。

ゆっくりと立ち上がり、服についた砂を払い、黒髪の彼が顔をあげ……、固まった。そして、再び涙を流し始めた。

しかし、次はナツのことではなかった。その言葉はナツの前にたつ彼へと向けられていた。

 

「…レイン……無事だった…のか……。…あの時……消えて……しまった…のか…と……」

 

「なんのことを言ってるんだ、お前……」

 

意味の分からないことを告げた黒髪の彼、その言葉に疑問を抱きつつ、何かを続けようとしたレインが突然苦しみ出した。

左手で胸を押さえ、右手で頭を抱え込み、足は急にふらつき、膝から崩れた。

 

「がぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”……!!! ぐあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”……!!!

ウグッ……、あがぁッ……があ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

苦しみの雄叫びを上げ、地面に転がる。そんな彼が危険だと判断したナツたちは彼を助けようとするが、彼から幾度となく吹き出した魔力の弾丸が普通の魔法とは比較にならないほどに危険され、助けることすらできなかった。

転がり続けたレインの瞳からは紅い鮮血が少しだけ流れ、口からも血が垂れる。何かが身体の中で暴れているのかと思えるほどに彼の様子は異常だった。

淡い金色の髪は点滅する光のように金から銀、銀から金へと変わり続け、彼の瞳もウェンディと同じ茶色から紅い瞳へと変化しようとしていた。

そんな彼を見て、事の発端とも言えよう黒髪の彼は彼の様子に驚きを隠せなかった。何かをした訳でもなく、何かを伝えようとしたには不十分なことしか言っていない。

しかし、彼には目に見えるほどの巨大な異変が起こりつつあった。このまま彼が壊れてしまうのかが先か、何かの異変が達成され、変化してしまうのが先か。そう思われたその時……、彼を追いかけてきていた少女が辿り着く。

 

「ッ!? お兄ちゃん!!」

 

「なっ……!?」

 

その声に思わずその場にいた全員が振り返った。陸路から追いかけてきていたのは、藍色の長髪の少女ウェンディ。その彼女はレインを見つけると、正気を失ったように駆け寄ろうとした。

 

「危ねぇぞ、ウェンディ!!」

 

「そんなこと…、お兄ちゃんが苦しんでるのに気にしていられない!!」

 

ナツの制止を振り切り、飛び交う魔力の弾丸をなんとか避け切り、ウェンディは変化を始めようとしていたレインの元に辿り着く。

 

「お兄ちゃん!! お兄ちゃん!!」

 

「があ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”……!! ぐあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

「あ…そうだ、治癒魔法でなんとか出来るかも!!」

 

苦しみもがく彼に緑色の暖かい光を与える。治癒の輝きは彼の身体を包み、少しずつ流れ続けていた鮮血を止めるが、彼の苦しみは止められない。

その光景はウェンディにとって絶望の一端でしかなかった。自分の力では大切な兄すらをも助けられないと言うことを見せつけられているように。

なにもできない、その言葉はウェンディにとってどれほどだ残酷なものだっただろうか。ツラく、苦しく、叫びたいほどの悲しみだっただろう。

――しかし、悲しむ前にウェンディは自然と彼の手を握っていた。

なにもできない自分に出来るのはただ小さく胸のなかで祈るだけ。幼き頃に熱を出したウェンディを看病した記憶喪失の頃のレインはそうしてくれていた。

今の状況とは度合いが違うのは分かっている。それでも、ウェンディにはこれしかできなかった。小さく懇願するように……。

 

「(お兄ちゃん……、戻ってきて……)」

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

真っ白で何もない世界。何処か懐かしくて、寂しくて、もう来たくはないと思ったこともある場所。そんな場所でレインは目を開いた。

起き上がり、意識を完全に取り戻すために首を振り、ため息をついてから周りを見渡し、愚痴るように告げた。

 

「またここかよ……。――ってことは…」

 

振り返り、レインはあるものを見た。そこにいたのは小さな少年の姿を模した何か。見覚えのある手に、思わずレインは嫌な顔をするしかなかった。

 

『君は相変わらずだねぇ』

 

「なんで生きてる。オレが喰らったはずと思うんだが……」

 

『まあ、確かに我は死んだよ。ただここにいるのはその魂の残滓ってところさ。君のせいでもあるけどね』

 

やれやれと言った様子でそれは首を振った。ふと思えば、確かにレインは六魔将軍の時の作戦で自我と身体を取り戻した身だ。

その時に喰らい尽くした魂の残滓。――つまり、こいつの正体は……

 

「悪魔か。久しぶりな気がするが……、まあいいか。――オレに何かようなのか?」

 

『そうだねぇ。どうせなら身体を寄越せって言いたいけど、まあ、いいよ。どうせすぐに消えちゃうしさ。――とりあえず、我が君を苦しめた訳じゃないよ』

 

「……だろうな。お前にそんな力残ってないだろうし」

 

『心外だなぁ。なんならここで君に一矢報いてもいいんだよ?』

 

「――報いる力残ってるのか、お前」

 

『……あーあー、もう。どうして人間って乗りが悪いかなぁ』

 

「オレが知っているとでも?」

 

『だねぇ、君は色々と()()()()()()()し』

 

流石に言い返せない。事実感情が抜け落ち始めているのは本当だ。すでにほとんどの感情が失われている気がする。人間にとっての大罪――7つで現したそれのうち、残っているのはほんの二つでしかない。それも“憤怒”と“傲慢”。

残りの“強欲”、“暴食”、“色欲”、“嫉妬”、“怠惰”は失われている気がするのだ、レインには。元々人間の身から強制的に悪魔へと変化したために手順を飛ばした代償が付きまとっている。だから、レインは感情が失われつつある。前にウェンディに指摘されたことがあったのも仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。

そう思っていると、悪魔はゆっくりと告げようとしていた。

 

『ま、それは君の責任だ。我の知るところじゃない。――というのはさておき。君ってさぁ、なんでこうも記憶を失っているのかなぁ?』

 

「覚えてない。そこの記憶が無いから分からないな」

 

『だと思ったよ。それじゃ、一つだけ戻してあげるよ』

 

指をパチンと鳴らす。その音が耳に伝わり、脳内で何かの衝撃を走らせたのと同時に、レインの中にあった偽りの記憶が弾けて消えた。

消えたのは……

 

――アクノロギアによってグランディーネは尻尾を落とされ、魂を取られたという記憶。

 

消え去ったそれに気がつけないまま、レインは思い出そうとしたが、結局なにも思い出せず、取り越し苦労だった。

そんな彼を笑い者にしつつ、悪魔は答える。

 

『君ってさぁ、ホント、運命に操られているよね~。傑作だよ、アハハッ』

 

「なんか腹が立つな、その言い草」

 

『まあ、そう怒らないでよ。最後に一つ教えてあげるよ、一番大事なことをね』

 

「一番…大事なこと?」

 

不思議そうにその言葉を呟くレイン。笑いを堪えつつ、悪魔は周囲に広めるような言い方で、レインに伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レイン・ヴァーミリオンは確かに118年前に誕生した存在さ。でも……君は――レイン・アルバーストは違う。レイン・アルバーストという存在は――400年前にいた人間だよ!!』

 

 

 

 

 

 




さて、より一層読者の方々は迷ったことでしょう。まあ、小説考えていると

基本的に作者の意向が分からないように仕向けたくなるのが私です(笑)

お許しください。まあ、これでより一層、アニメ、コミックスしか読んでない方は

楽しみが増えるでしょうと期待しています。さて、次はそろそろあれでしょうかね。

失われた感情という部分にも目を向けてくれると助かります。それでは、次回♪
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