FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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今回はかなり、どキヅイ話です。

結構気分が悪くなるかも。

例えば、「コイツ最悪だろ」とか、「なんだよ、コイツ、たち悪すぎ」とかです。

まあ、次回に続くための必要な話なので……皆さん、心を鬼にして見守ってください。

P.S.

投稿遅くなると言ったな、あれは嘘だ。



約束を果たすために 前編

激しく舞い踊る妖精と悪魔。

小さくもあれば、大きくもある宿命を背負いし者。

言い表すとすれば、それが思い当たる。

淡い金髪に藍色の一房の髪を持つ少年の眼は、いつになく本気だった。

相手が相手だからだろうか。確かにそれもあるかもしれない。

だが、少年の中に眠る小さな、小さな何かが彼をもっと本気にさせているのかもしれない。

空白の記憶。

その記憶の一部に、悪魔が関わっている。

そんな感覚が少年の中で巡っていた。何処かで、何処かで約束したような気がするのだ。

誰かが悲しまないように悪魔を滅ぼす、ただそんな約束を。

約束したのか、していないのか。

そもそも約束したのはいつのことなのだろうか。

疑問がこみ上げ、少年の脳内でパッと弾け、消えていく。

思い出せない。

ただ、それだけのこと。記憶など所詮は情報の塊だ。

それが何かの役に立つとは言い切れない。

忘れても大したことは無いような存在に等しい。

――だが、約束というのは違う。

それも記憶でありながら、それは“形”として残る。

誰と結んだとかは全くもってどうでも良い。ただ約束は果たさなければ行けないモノでしかない。そんな厄介な代物だ。

言葉は本来、“言の葉”。葉のように生い茂り、広がるもの。それがどんな効果をもたらすのか、それは実際に起こらなければわかるはずもない。

一つ一つが紡がれ、一つの大きな、または小さな物語となる。

それこそが人生というものでもあれば、伝説や英雄譚との成り得るものでもある。それ自体が“形”なのかもしれない。

ならば、人の人生というのはなんなのか。最終的に消滅だけの人――もしくは生物の人生は何の価値があるのだろう。

何十年も前――《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》が誕生してから少年はずっと思っていたことだ。

確かに人生など短くもあれば、長くもある。そんなものでしかないとも言える実感の無いもの。何も起こらない人生は味気なく、何かが起きすぎて途中で天に召される人生は逆に濃すぎて面白くない。

所詮、死ねば同じこと。死ねば結局、いつかは忘れ去られるだけ。

ずっとそう思っていた。

――だが、過去の記憶を取り戻し、改めて思い出せば、あることを境に自分の価値観が変わっていたことに気がついた。

全ての記憶を失い、廃人の如く壊れ切った自分に優しく、根気強く、笑顔と気持ちを注いでくれた少女。

あの少女の優しさは壊れた自分の心を潤し、もう一度立ち上がる力の源となった。

何故壊れていたのかは思い出せない。

それでも、あの瞬間だけは面白くないと言っていた自分の人生で唯一の面白さの始まりとなった。それだけは分かる。ただ、小さな暖かさがスーッと広がって……届いたことぐらいは。

恩返しがしたい、そう思えるようになったのは大体3年前ぐらいだっただろうか。

恩返しをして終わるのも一つだが、少年はそれで済ませたくは無いと思えるようになった。

それが密かな“ある感情”であり、それに気づくこともなくただ反芻していたことに。

それに気がつかなくても、少年は胸に宿った(ともしび)を忘れないように、ただ小さな縁を広げていく。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

「――セイッ!!」

 

気合いの籠った一撃が迫り狂う悪魔の右腕に直撃する。威力のある一撃は悪魔の右腕の皮膚を切り裂くと思えたが、少しのダメージしか与えていないことに少年は気がついた。

 

――硬いな。それも防壁無しでこのレベルか。

 

胸のうちで小さく愚痴り、迫り来る大木のような凶腕の一撃を両手で防御する。

 

「ソラァ、吹っ飛べ!!」

 

「…グッ…!!」

 

――重すぎる。

 

瞬間的に感じ取れた。大木のような見た目に反することなく、その一撃は少年――レインを吹き飛ばした。

背中に衝突する木々がクッションとなり、痛みを微かながらに軽減するが、目の前が赤く染まりかけた。

 

「はぁ…はぁ……」

 

呼吸が乱れる。攻めても間髪入れずに襲い来る反撃の一撃を防ぐのがやっとだ。あれで直に殴られでもすれば、昏倒は免れないと言っても過言ではないだろう。

 

「(やっぱり、“ERA”は化け物か……。最強最悪の悪魔、伊達に異名通り、噂されるほどみたいだな。――にしても変だな。“ERA”は確か……消滅したって書かれてなかったか…)」

 

思い浮かぶ疑問を一旦頭を振って隅へと退け、目の前にいるソイツに意識を集中させる。まだ足が辣んで動けないウェンディのためにも、やはり出来るだけ遠ざけた方がいい。

あの悪魔に狙われているのは間違いなく、滅竜魔導士であり、幼い妹である彼女なのだ。

恩返しなんか今はどうでもいい。ただ守りたい、それだけだ。

 

「セイッ!!」

 

勢いに滅竜魔法の威力も加えた回し蹴りを悪魔の胴へと撃ち込む。流石の悪魔と言えど、威力をさらに増させた一撃で大したダメージは無いなどあり得ない。

微かながら身体が揺れ、踞る。――と思っていたレインの胴に大木のような凶腕がとんでもない速さで撃ち込まれた。

 

「グハッ……!?」

 

「遅い、弱い、温い。所詮はガキだ、弱ェよ」

 

メリメリと言わんばかりに腹へと力を加え、押さえ続けていたバネが元に戻ろうとする力のようにレインは吹っ飛ぶ。

再び木々が背中に何本も接し、勢いの力で折れていく。どんどん遠ざかる悪魔。それを反射的に理解し、吹き飛ばされる自分に抗うように、両足を地面に突き立てるように勢いを殺し、ゆっくりと速度を落とす。

漸く吹き飛ぶのが止まったが、思ったより衝撃が強すぎたために、吐き気を催した。

 

「ゴホッ……ゴホッ…。…なんつう…威力だよ、畜生が」

 

口から少しの鮮血が垂れるのを他人事のように見た後、ゆっくりとレインは息を吐き、再び空気を吸い込んだ。回復はあまりしないが、魔力でなんとか身体の強化ぐらいは出来るだろう。

 

――“天竜の羽衣”。

 

高濃度の魔力の膜を薄く自身に張り巡らせ、様子見だった気持ちを完全に切り替える。

瞳を紅く染め、足元から天狼島に預けていた自身の魔力を回収し、簡易式のドラゴンフォースを発動させる。

簡易式であるために鱗を食べた時の強制的なものよりも劣るが、持続性ではこっちに分がある。それにこの島に預けていた魔力は今のレインが抱えていた魔力より断然多い。

端から見れば、レインの魔力は何処かの魔導兵器クラスと比較にならないほどになっているだろう。

 

――だが、悪魔は狼狽えない。屁でも無さそうに嘲笑う。

 

「(やっぱり、化け物だな、コイツ。島の何割か吹き飛ばすレベルで殺しに行かなきゃ、勝てないか……)」

 

選択したくはなかったが、それしかないと思わざるを得なかった。レインの出生がどうであれ、ここはメイビスともう一度出会うことが出来た地。

ギルドの聖地以上に大切な場所だ。だが、それを捨てざるを得ないほど、あの悪魔は次元が違う。微かながらレインも震えている。恐怖かもしれないが、それ以前に別のなにかが反応している気がする。

 

「リリー!! ウェンディとシャルルを連れて、ここから離れてくれ!!」

 

「…!? お兄ちゃん!!」

 

「……分かった」

 

小さく頷き、リリーは本来の姿に戻るとウェンディとシャルルを抱えて、その場を後にする。

 

「お兄ちゃーん!!」

 

「レイン、アンタ、まさか…!!」

 

ウェンディとシャルルの声が残響として残るが、それもすぐに消えていく。彼らの姿が見えなくなるまで見届けると、息を吐いて……気持ちを締め直した。

 

「これで手加減しなくて済む」

 

「チッ、新しい社が逃げやがったか。後でゆっくりと奪わせてもらうか……」

 

「お前なんかにウェンディは殺らせねぇよ。悪魔なんざ、もう世界は求めてない。存在自体、消えてくれ」

 

「……そうか。なら、貴様は先に消え失せろ。我の前に立つ者は我が神罰にて葬り去る」

 

「何が神の罰だ。滅びるのは……お前らだ…!!」

 

靄のように姿を消すレインとERA。消えた二人のすぐ前で衝撃波が波打ち、周辺の木々を粉々に粉砕していく。

足元には小さなクレーターが穿たれ、石礫が空中に浮かび上がる。大気が震え、鳥や他の動物たちは一斉に逃げ去る音が聞こえる。

本能的に危険と判断したのだろう。正しき判断で良かったと思う。

右方向から放たれる強烈な一撃を難なく躱わし、そのがら空きの胴体に反撃を加える。

 

「天竜の鉄拳!!」

 

メリメリと抉り混むような一撃が脇腹に入り、さしものERAも仰け反るが、回し蹴りを叩き込んでくる。なんとか左手で防御するが、衝撃を殺し切れず、レインもまた仰け反る。

さらに狂気に満ちた爪による斬撃がレインのコートを引き千切り、小さくも爪痕を彼の左手に残す。その痛みを無視し、彼もまた風を纏った爪を高速でERAに叩きつける。

 

「天竜の双翼撃!!」

 

風の刃が悪魔を切り裂き、その勢いのままレインは次々に大技を叩き込んでいく。

 

「天竜の獄砕牙!!」

 

容赦のない一撃がERAの首めがけて放たれ、見事にそれが強打し、吹き飛ばす。――が、その勢いを殺し切り、迫っていたレインの顔面を掴むと、乱暴に放り投げた。

 

「ドラァッ!!」

 

「グッ……!?」

 

「消し飛べェ!!」

 

悪魔の口から放たれる真っ黒な輝きを放つ光弾がレインを包み込み、大爆発を引き起こす。爆発の大半を何とか躱わすが、羽織っていたコートは完全に塵と化し、レインもまた過大なダメージを受ける。

 

「まだまだオレはやれる!! 天竜の……大咆哮ォォ!!!」

 

自身の前に3つの魔法陣が展開され、そこから強大な魔力を秘めた天津風のブレスが放たれる。3つの咆哮はたちまち1つに集束し、とんでもない威圧感を秘めてERAへと接近していく。

 

「グオオオオオオ!?!?」

 

「オレたちの前から消え失せろォォ!!」

 

受け止めようとしたERAにさらに威力を高めて放つ。あまりの魔力にERAも驚愕し、大爆発にその身を巻き込まされる。

浮かび上がっていた瓦礫がパラパラと地面に落ち、大爆発によるクレーターが大きな穴を穿っていたことを示す。

安堵が込み上げたレインの背筋に瞬間的な戦慄が走り抜け、背後に迫る敵を反射的に迎撃する。目の前に死が迫り、ギリギリのラインに紅い軌跡を残す。

ERAの輝く紅い凶爪が妖しげに光る。あれほどの爆発をその身に受けたはずの悪魔は平然としており、嘲笑うような笑みを浮かべたまま、感嘆の声を漏らす。

 

「ガキにしてはやるなァ、貴様。人間じゃねェな、その動き。――悪魔か?」

 

「……ああ。まぁな。別にオレは人間のつもりだ。お前みたいに殺しはやらない。そもそも人を殺す必要すらない」

 

「フンッ、詰まらねェなァ、おい。悪魔ってのは基本的に衝動に駆られる存在だ。感情が高ぶれば、抑えが効かなくなり、全てを滅ぼそうとする生き物だ。貴様は自分に素直じゃねェな」

 

「んな感情に素直になる必要はねぇ。オレはオレだ。悪魔なんか知ったことじゃない」

 

「そうかよ、チッ。悪魔らしく何かを殺し、奪い、殲滅する。そんな悪心ありゃあ、貴様を同胞としてやりたかったんだなァ」

 

「………」

 

「例えば……、あの女を好き放題に壊してやるとかなァ?」

 

「貴様ァ!!」

 

レインの中で何かが跳ね、激情を押さえていた理性の枷が一つ弾け飛ぶ。全身の筋肉を収縮させ、勢い全てを足へと溜め、一気に放つ。

 

「滅竜奥義!! 天刃七裁き!!」

 

あらゆる方向から一斉に天津風の刃を創り出し、それらすべてと共にERAへと殺到する。瞬時に襲い掛かるそれらに翻弄される悪魔を他人事のように見ながら、その者の胴体に強烈な七つの強撃を叩き込む。

 

――まずは一撃!!

 

逆鱗の如き強打が悪魔の胴体にめり込むように放たれ、敵の口から紫色の鮮血が噴き出した。

 

――二連撃、三連撃!!

 

続いて連続で二発。手刀の印を結んだ両手で切り裂いていき、同じように鮮血が噴き出した。

 

――四連撃、五連撃!!

 

回し蹴りを胴体へと叩き込み、間髪入れずに爆発に似た衝撃を胴体を突き抜けるように放つ。

 

――六連撃!!

 

容赦なく縦断のような速度で裏拳を顔面に叩き込む。

 

「七連撃ィ!!」

 

最後の一撃はあっと言う間だった。一瞬のうちに手刀の印を結んだ両手を振るい、ドラゴンのアギトを思わせる切り傷の軌跡を宙にパッと輝かせる。

その瞬間、ERAの身体から鮮血が噴き出し、衝撃波が全身を蹂躙するように弾けた。

 

「グオオオオオオ!?!?」

 

ゆっくりと膝を地面に着け、沈黙するERA。それを荒い呼吸を直しながらレインは見る。腕に痺れが残り、力が上手く入らない。

あれほど強固な皮膚を切り裂いたこともあり、やはり腕にもダメージがかなりあった。そう思えるほどに、敵はかなりの強者だ。

流石はERAだと言いたいほどに。――しかし、なんだろう、この胸騒ぎは。少し上手くいきすぎている気がするのだ。

 

「(こんな程度のヤツじゃないはずだ……ERAは全ての生物を震撼させるほどの化け物のはず……)」

 

「………ククッ」

 

突然悪魔は微かに笑った。

 

「クククッ、アハハハハハッ!!!」

 

今度は狂ったように笑い出した。全身傷だらけだというのに、痛みや怪我を思わせないほどに相手は余裕綽々の態度を見せた。

 

「コイツはスゲェ、スゲェよ、マジモンの狂人じゃねェか!! あの女のことでそんなに強くなるのかァ、貴様はヨォ!! ――だが、やっぱ力が足らねェな。人間であり続けようとするからじゃねェか? とっとと堕ちろよ、悪魔擬き。そんでもって、あの女を好き放題に壊せよ。スッキリするだろうよ、今までの重荷が一気に消え去るんだからなァ!!」

 

「黙れ!!! オレは絶対、ウェンディには手を出す気はない。ただオレは守りたいんだ、もう二度と()()()()()はしたくねぇんだ!!」

 

――あんな想い?

 

あんな想いって……オレに何かあったのか?

思い出せない記憶に沈んでいる何かがレインの口から無意識に放たれる。自身の言ったことに疑問を抱きながらも、ただあの悪魔の誘いにだけは乗らないように自我を保つ。

先程の激怒のせいで、感情の昂りがかなり来てしまっている分、これ以上は抑えなければならない。六魔将軍以来は暴走がほぼ無くなったが、それでも抑えられるとも限らないため、レインは少し自分を恐れている。

そんな彼の心境を読んだかのように、ERAは不適に笑い、嘲笑う。

 

「恐れる必要が何処にあるってんだヨォ。貴様も悪魔だ、それ以上でもそれ以外でもねェだろ。好き放題やっちまえばいいんだよ。なんなら、我も手を貸してやろうかァ? この煩わしいほどの妖精の羽音消しの手伝いをなァ?」

 

「誰がそんなことするか!!」

 

――やッちまえよ、レイン。

 

「……!?」

 

――とっととやっちまって楽になれよ、レイン。

 

胸の中で何かが蠢き、囁いてくる。悪魔の声、そう言えるような妖しげで決して乗ってはいけない言葉。だが、それが魅力的に聞こえてしまうこともある。

そういうことを魔が指すと言うが、レインは決してそうは成りたくないと自信に呪いをかけるように心のなかで呟き続ける。

 

「(オレはそんなことに興味もない、家族(なかま)を殺したくない!!)」

 

――なにいってんだよ、レイン。お前は悪魔だ、化け物なんだよ。

 

「(黙れ、黙れ、黙れ!!)」

 

頭に直接響く声。目の前にいるERAもまた、そう囁きかけるように告げる。締め付けるような頭痛、気分が悪くなりそうなぐらいにレインは自分が分からなくなってくる。

 

「オレは……、オレは……、オレは……!!」

 

「とっとと堕ちろよ、悪魔擬きィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――天竜の……咆哮ォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!?」

 

「なッ……!?」

 

目の前に突風の如きブレス放たれ、目の前にまで迫っていたERAは避けざるを得なくなり、回避行動を取った。

同様にレインも驚いたのだが、驚いたのはブレスが目の前に放たれたからではない。その咆哮を放った声の主に聞き覚えがあったからだ。

まだ倒れていない木々の向こうから見える幼き姿。藍色の長髪を持ち、可憐な様子を醸し出す少女。間違いなくウェンディ・マーベル。レインの大切な妹分だ。

 

「ウェンディ、なんで戻ってきた!?」

 

「お兄ちゃんだけ、残していけない。わたしだって戦えます」

 

「ふざけるな!! 前に話しただろう、悪魔は本当の化け物なんだ!!」

 

「ほう……、ククッ、社が戻ってきたか。――手間が省けたなァ」

 

そう囁くERAの声に気づくことなく、レインは戻ってきたウェンディに叱咤する。

 

「なんで待っていられなかったんだ!! ここにいたら危険だとあれほど……」

 

「もう…何処にいても同じだから」

 

「どういう…ことだよ…」

 

「“悪魔の心臓(グリモアハート)”が攻めてきた。ナツさんたちが戦ってる」

 

それを聞いてレインは驚いた。戦闘していたせいか、回りのことに意識がいっていなかった。その結果、闇ギルドの最強ギルドの一角――“悪魔の心臓”を侵入させてしまっていたことに。しかし、それはここに戻ってくる理由にはならない。

 

「そんなの理由にならないだろうが!! 隠れる場所ぐらいは何処かにあるだろう!!」

 

「うっ……で、でも!! わたしはお兄ちゃんが居なくなっちゃいそうだったのが嫌だったから!!」

 

「…ぁ………」

 

確かにそうかもしれない。事実先程までウェンディの介入がなければ危なかったかもしれない。そう思えば……感謝すべきなのだろう。

だが、咄嗟のことで何を言えばいいのかが分からない。

 

「……………」

 

沈黙するレイン。ウェンディが心配そうにそれを眺め、声をかけようとして……固まった。

 

「……ぁ………動け…ない……!?」

 

「ったくヨォ、そんな話なんざ興味ねェよ。我が言いたいのはなァ……。――とっとと、その身体よこせェ!!」

 

何かをグイッと引っ張る仕草をするERA。その瞬間、ウェンディが糸で動く人形のように強引に動かされ、身体を地面に引きずりながらERAの元へと向かっていく。

 

「きゃあっ!?」

 

「ウェンディ!!」

 

「ヨッと……」

 

引っ張り終え、自分の前に這いつくばらせると、強引にウェンディの髪を掴み、立ち上がらせ、悪趣味な笑いを浮かべ、嘲笑した。

 

「…痛い……お兄ちゃん……助けて……」

 

「ハハッ!! コイツはいい、意外としっかりしてんじゃねェか。ドラゴンの力――滅竜魔法を使えるガキ。こんなガキがいるのかよ、この世界はヨォ!! 意外とまだまだ見込みがあんじゃねェか!! まあ、身体奪うのはまだ置いとくか。――そんじゃ、やッちまェよ、“操り人形(マリオネット)”」

 

「え……!?」

 

最後の言葉を聞いた後、ウェンディは目の前で起こったことに驚愕した。突然自分の身体が動き、目の前にいたレインに向かって――咆哮を放っていたのだから。

 

「ガハッ!?」

 

まともに受けたレインは吹き飛ばされ、木々を突き破り、最終的に岩山に衝突する。口から鮮血が噴き出し、彼の額から血が垂れる。

 

「…お兄…ちゃん……。わたし…今…何を……」

 

「アハハハハッ!!! 最高だ、最高だァァァ!!! 兄妹同士で殺し合え、殺せ、殺せ、殺せェ!!! こういうのが楽しみなんだよ、愛した者同士や大切な兄妹同士、大切な仲間、相棒同士で殺し合う、醜い死に様がなァ!!!」

 

「ゴホッ……ゴホッ……。このゲス…野郎が………!!」

 

「…わたしが……お兄ちゃんを……そんな……いやぁ……」

 

目から涙が溢れ出し、ウェンディは現実を信じられないと言う様子だった。しかし、実際それは現実でしかなかった。

見えない糸に吊るされた人形のように、ウェンディは確かに兄であるレインを攻撃した。それもほとんど全力とも言えるブレスを容赦なく。

その現実がいかに彼女を傷つけたなど分かりはしない。だが、確実に彼女の心に影が落ちる。

 

「さぁ、もっとだ、もっと殺し合え!! 我の呪法、《操り人形(マリオネット)》の前で死に様を見せろォォォ!!! フハハハハッ!! 人間はやっぱ、殺し殺され殺し合うのがお似合いだァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 





ゲスって最悪ですね。書き終わって読み返すとホント思います。マジこれ最悪だわ。

結構良心が傷みました。ウェンディちゃん、可愛そうです(涙)

――多分恐らく、天狼島編終わったらそんな話は二度と無いです。

ご安心を。なんだか一気にお気に入り減りそうで怖いです(涙)

次回はもっと明るくて、レインが活躍する話にしたい。出来れば、そんな話にしたいです。

それでは次回お会いしましょう~♪
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