FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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今回は前回予告した通り、ウェンディたちとの会話回です。

全く持って戦闘シーンらしいものは存在しません。それでも良い方はどうぞ。

それと、最初の部分はグロ注意です。それが苦手な方は飛ばして、ホノボノとした会話

の方だけを読んでください。決してグロ注意な最初は食事中に読まないようにお願いします。

気分が少しでも悪くなるので。

P.S.
ウェンディは天使かつ妹キャラ、異論は言わせない。

Avisさんからのアドバイスで『///』←を撤去しました。上手いこといったかは
分かりませんが、気にせず読んでくださると嬉しいです。



優しき少女の言葉

X775年 7月7日 紅い満月が輝く夜の日。

後の世に“紅い満月の殺戮事件”と恐れられる惨劇の日。

 

銀髪の少年は震える手で、か弱き少女を抱えていた。周囲は炎の海と化し、悪魔たちが跋扈する。少年が色々と世話になっていた村に住む優しき村人たちは蹂躙され、それぞれの命を散らしていた。

 

ある者は食い殺され。

 

ある者は凌辱され。

 

また、ある者は勇猛果敢に立ち向かうも力が無いために、全身に恐怖を刻んで死んでいった。

 

そんな彼らの姿を少年が見たのは、彼らのために食べ物を取りに行った後のことだった。少年は持ち帰った食べ物を落とし、言い知れぬ衝撃を受けていた。

 

「……なんで…だよ………」

 

口からそれだけしか出なかった。出かける前はあれほど笑い声や元気そうな雰囲気を醸し出していた村人たちは、今や悲鳴と嘆きを溢し続けている。

同じように、村を襲撃した悪魔はケラケラと笑い、好き放題に村人たちを蹂躙する。酷いと言わんばかりの跡や、抉り取られた内臓などが散布する。

あまりの惨劇に村を救った過去を持つ少年ですら、正気を失いそうだった。笑えない……、こんなもの、笑える訳がないと心が叫ぶ。

そんな彼らと悪魔の狂喜の踊りが行われている中で、少年は見覚えのある少女を見つけた。言葉にならない何かが込み上げ、駆け寄る。

 

「――ナナ!!!」

 

少女の名を叫び、少年は無我夢中で走りだし、建物の残骸に背を預ける少女の元に急ぐ。何度ももたつきそうになる足を叱咤し、駆け出し、側に駆け寄る。

 

「ナナ!! 大丈夫…か……!?」

 

少年の眼に、あり得ないモノが入り込んだ。あり得ないモノの正体は思いもよらない、少女の身体にあった。

 

――巨大な眼だ。

 

少女の胴体に巨大な眼が埋め込まれている。それを見た途端、少年にはそれが何かが分かった。ゾッとするような過去の記憶の産物を思いだし、その禁忌とも言える名を恐る恐る口にしようとしたが、声が掠れた。

 

「嘘…だろ……、“悪魔の邪眼(グリモア・アイ)”……。…なんで…そんなものが……」

 

「ケホッ……ケホッ…!」

 

その名を口にした後に、ナナと呼ばれた少女が咳き込んだ。地面にポタポタと溢れる紫色の血液。下を向いていた少女が顔を上げると、それは少女の顔ではないと言えるものがあった。

少女の優しげな瞳。その瞳の中心――黒目だった部分が紅く輝き、白かった部分は黒く染まっていた。顔の半分から悪魔の鱗が浮かぶ上がり、耳は尖り、口から異常に発達した犬歯が顔を出す。額には謎の紋章が姿を現し、次々と侵食しているように見えた。

 

「…救世主の…お兄…ちゃん……?」

 

「…ナナ……、何があったんだ……? それ…どうした…んだ…?」

 

「…分から…ない…、目の前に…怖い…悪魔が…現れて……私の…お腹に……変な…の…付けて…消えちゃった……」

 

ドクドクと鼓動を打つように蠢き、ナナは口から血を吐いた。またもや紫色の血だった。それを見た少年は思わず、その症状の名を口をする。

 

「“悪魔侵食(グリモア・エラシオン)”……。まさか…寄生体を…埋め込んでいったのか……」

 

「…お兄…ちゃん……私…どう…なる…の…? 悪魔に…なっちゃう…の…?」

 

少女の問いの答えを少年は持っていた。しかし、答えられる訳がない。真実がどれほど残酷なものか、それを答えた時の少女の悲鳴が聞きたくなかった。これから起こることがどんなものかなど……。

 

――悪魔化した後に、少女を中心に悪魔が錬成されるなどと。

 

そんなことは言える訳がなかった。それが残酷だからという理由だけではない。この少女は両親を悪魔に殺されている。その悪魔になってしまうなど、口が裂けても言えなかった。

気がつけば、少年の眼から涙が溢れ落ちる。助けることが出来なかったこと、間に合わなかったと言うことが悔しくて仕方がなかった。

 

「…お兄…ちゃん……、私…悪魔に…なっちゃうん…でしょ…?」

 

「……ああ」

 

苦しさに耐えられず、少年は事実を答えてしまった。悲しむ少女の声が自分に突き刺さると思って、それを受け止めようとしていた。

だが、少女は悲鳴すら上げなかった。上げる所か、少女は微かに微笑んだ……。

 

「…そう…なんだ……。…私…悪魔になるんだ……、お兄ちゃんに…悪魔……倒してって…言ったのに……」

 

「…………オレも…ごめんな。…守れ…無くて……、約束…果たせなくて……」

 

涙が止まらない。少年が涙ながらに謝罪した。堪え切れない悔しさが込み上げ、握り締めた少年の手から血が垂れる。

 

「…ダメだよ……、お兄ちゃん…。…自分を傷付けちゃ……」

 

「……悔しくて……仕方が…ないんだッ…!! オレは無力で…何も……出来ない…!!」

 

「…ねえ…お兄ちゃん……」

 

少女が優しく微笑みかけながら、少年を見つめた。優しい表情が、少年の心に突き刺さる。見ていられなくて顔を背けた。だが、冷たい何かを感じとり、少女の方を振り返った。

少女から感じた冷たい何かは――鋭利な刃物だった。

 

「…私……お兄ちゃんにも…迷惑…かけたくない……。…ちょっと…怖いけど……、…私……みんなに…さよなら…しなきゃ……」

 

「…おい…、それ…なんだよ……。…なに…する気だ……ナナ…?」

 

少年が掠れた声で訊ねた瞬間……、目の前で赤い血が噴き出した。まだ侵食されていなかった腹部を――“悪魔の邪眼”ごと刃物で突き刺したのだ。

呻く少女の声が少年にも届いた。ゆっくりと力が刃物を持つ手から抜け、その手が地面に力なく落ちた。

 

「……ナナ……?」

 

「…えへへ……ごめんね…お兄ちゃん……。…私…自分から……大切な…命…捨てちゃった……」

 

「…なんで…自分の命を……断とうと…したんだ……?」

 

「……だって…お兄ちゃん……、優しいんだもん……、私が悪魔に…なったら……、倒せなく…なっちゃう…でしょ…?」

 

「……………ナナ……君は……」

 

「…でも……一人は……寂しく…ないの……お兄ちゃん…? ……私の…心……連れて…いって…いいよ…?」

 

「…ナナの…魂……を……?」

 

その言葉を聞いた途端、少年の脳内に“ある魔法”が浮かび上がった。

 

――禁忌魔法、《永劫魂臨》。

 

死する者の魂を永久に世に止める、禁忌の魔法。太古にいたと言われる一人のちっぽけな人間が、人生全てをかけ、造り出した魔法。

その者はそれを使用し、愛した者の魂と自らの魂をこの世に残させたと言われる。そんな魔法を少女は望んだ。

それまでして、少女はこの世に残っていたかったのだろうか。否、ずっと独りだった少年のために残ろうとしているのだろう。――だが、少年は首を振った。

 

「……こんな世界になんか…残らなくていい……。…君は…こんな世界に…残らなくて…いいんだ……ナナ」

 

「……お兄ちゃん……一人で…寂しく…ない…の…?」

 

「…ああ…。…君に…沢山…思い出を貰ったから…大丈夫だ…。…もう…寂しくないよ…、君がいてくれたから……」

 

「……良かった……、…お兄ちゃん……、…私……お兄ちゃんのこと…大好き……だよ……」

 

ゆっくりと少女から力が抜け落ち、目尻から一筋の涙が溢れ落ちた。暖かかった少女の身体が少しずつ冷たくなっていく感覚を手に伝えると、少年はゆっくりと立ち上がった。

 

「……うぐっ……ぁぁ……うあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

周囲で業火が猛威を奮う中、少年は今宵の闇に吼えた。瞳が紅く輝き、彼の身体から魔力が漏れだし、少年は自らの存在ごと全てを滅ぼした。

 

それから“ある魔導士”が歴史の中から姿を消したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

「……ぁ……ここ…は…?」

 

少年――レインは目を覚ました。そこは周囲が木で覆われた静かな場所。意識が途切れる前の場所とは、似ても似付かない場所だった。

 

「……何処だ、ここ?」

 

首を動かし、寝転んだままの体勢で周囲を見渡す。すると、隣には見覚えのある老人が横たわっていた。マスターであるマカロフだ。それも怪我をしているが、意識はあるようで、レインがこちらを向いたことに気がついていた。

ふと、記憶を駆け巡らせ、レインは浮かんだ言葉を口にする。

 

「オレが助けたのって……お爺さんだっけ…?」

 

「違うじゃろうが!!」

 

隣にいたマカロフが否定する。確かに記憶通りならば、レインが助けたのは大切な妹であるウェンディのはずだ。決して、老人ではない。

う~んと唸りつつ、首を傾げようと身体を動かすが、途端に身体が痛み、思わず顔をしかめる。そのことに気がついたのか、ちょっと離れた所にいた少女と猫二匹がこっちに駆け寄った。

 

「お兄ちゃん!!」

 

「アンタ、起きたの?」

 

「どうやら無事のようだな」

 

「……ウェンディ、元気そうで良かった。――シャルルもリリーもさっきぶりだな」

 

レインは妹ウェンディの無事に喜びながら、合流できたシャルルとリリーを見て安心する。すると、白猫シャルルから辛辣な言葉が掛けられた。

 

「アンタ、なんて無茶すんのよ!! 肩の関節を強引に戻したり、化け物相手に一人で戦ったり!!」

 

「そんなこと言われてもなぁ……。実際、リリーがいても厳しいままだったろ…。死者が出るのはオレはごめんだ」

 

「かもしれないけど、アンタ!! ウェンディがどれだけ悲しんでたと思ってるの!!」

 

それを言われた途端、レインは思い当たったのか、黙り混んだ。確かにそうだ。どれだけ気絶していたのかは分からないが、意識を取り戻していなかった間、ウェンディは悲しんでいたかもしれない。そう思うと、胸が痛んだ。

 

「ごめんな…、ウェンディ」

 

「…ううん…心配かけたのは、わたしの方……。…お兄ちゃんに大怪我させちゃった……」

 

「別に大したことはないよ。たかが、脱臼だしな。オレは平気……っ!?」

 

起き上がろうとしたレインに激痛が襲いかかり、顔をしかめた。ウェンディが焦り、急いでレインは横たわることにする。どうやら動くのは無理そうだと理解して。

 

「……困ったな。これじゃ、動けるか、どうか分かんないな……」

 

「安静にしなきゃ、ダメ。お兄ちゃんは怪我人だから……」

 

「――ああ、そうだな。大人しく…しなきゃな」

 

レインは仕方なく納得した。まあ、シャルルやリリー、マカロフに言われた場合は無理にでも動くつもりだったが……、あんなに潤んだウェンディの目を見れば、頷くしかなかった。

しかし、レインはあるモノを目にし、顔を赤くした。咄嗟に両目を隠し、言いづらそうにするほどに。

 

「どうかしたの、お兄ちゃん?」

 

「い、いや、そ、その……。…ウェンディ……見えてる…」

 

「え……何が見え……」

 

レインの指差す場所を視線で追い、ウェンディは彼が言っていた“見えているモノ”の正体に気がついた。それに気がついた途端、顔を真っ赤に染め上げ、左手でソレを隠し、背中を彼らに向けた。ソレの正体など、言わなくても分かるだろう、鈍くなければ。

 

――胸である。見えていたのは、ERAによって裂かれた服から微かに見えていた、ウェンディの未発達ながら女の子の胸だった。

 

「きゃっ!? みみみっ、見たの? お兄ちゃん……」

 

「……見た。――というより見えた」

 

「~~っ~~!!」

 

「……とりあえず、ウェンディ。オレのコートでも被って隠してくれ……」

 

「…う、うん……」

 

「アンタ……、最低ね」

 

「……不可効力だ」

 

シャルルの痛すぎる視線がレインに突き刺さり、彼は顔を背けざるを得なかった。

 

 

 

 

 

落ち着くために少しの間を置いてから、レインはもう一度口を開いた。

 

「……そういや、オレ。どれくらい寝てた?」

 

「ざっと一時間といったところか」

 

「……アンタが寝てた間に、ナツも復活して、何処かに行っちゃったわ」

 

「へぇ。ナツが怪我してたのか? もしかして……そこで気絶しているヤツか?」

 

まだシャルルの視線が痛いのだが、さっきよりはまだマシと言えるだろう。少しだけだが…。

内心反省と不可効力だと言い訳を連鎖させるレインは、一度視線を落としながら、ゆっくりと起き上がり、向こう側で倒れている金髪の男を指差した。――不気味な格好をした男の甲冑の一部に描かれた紋章を見ながら。

 

「ええ。あの男、“滅神魔導士”らしいわ」

 

「“滅神魔導士”……ゴッドスレイヤー。神殺しの魔法持ちか」

 

「うん。ナツさんはその魔導士の魔法を食べるために、自分の魔力を空にしたみたい…」

 

「無茶なことするなぁ、アイツ」

 

「「「お前(アンタ)が言える義理か(じゃないでしょ)!!」」」

 

マカロフ、リリー、シャルルのツッコミを受け、レインは「あれ? そうだっけ」といった顔をする。少し変な顔をしていたのか、彼のコートを羽織り、恥ずかしさをなんとか紛らせたウェンディがクスリと笑うのを見て、彼は微笑んだ。

 

「ウェンディ、心配かけたな」

 

「…ぁ……、うん。…もう…こんなこと…しないで…?」

 

「ああ、約束する。妹に――大切なウェンディに心配はかけない」

 

その言い方に何か含みがあるのかと勘違いしたウェンディが再び顔を真っ赤にし、見悶えるのを見て、さっきよりも痛い視線をしたシャルルに頭を叩かれるレインだが、今度の今度は本人であるレインにはなんのことかよくわからなかった。

 

「ん? なんか変なこと、言ったか?」

 

「アンタねぇ、鈍感すぎよ!!」

 

「確かに。流石にオレでも気がつくぞ、さっきのは」

 

「う~ん?」

 

やはりなんのことか分からないレインは首をかしげる。しかし、側で横たわるマカロフは何故か驚きを隠せない表情で訊ねてきた。

 

「変な言い方じゃが……。――お主、前より()()()()()()()()か?」

 

「え……?」

 

その言葉を聞いて驚くウェンディ。流石のシャルルやリリーも首をかしげる。だが、レインは少し黙り混んだ後、答えた。

 

「――ああ、そうかもしれないな。“何か”を欲しいって思える気がする」

 

嘘偽りない笑顔を溢すレインの姿に、思わず大抵の事情を知ったウェンディとシャルルは微笑んだ。事情を知らないマカロフとリリーは、やはり首をかしげたのだが、その後、彼が悪ふざけで言ったことに驚かざるを得なかった。

 

「例えば、ウェンディが欲しいとか?」

 

「…え…………っ!!」

 

「あ、アンタ、何言ってるのよ!!」

 

「冗談だって、冗談。例えばの例えばだろ? 妹に手を出したいとか言う兄に見えるか、オレが。いつもウェンディのことばっか心配してるのに」

 

「あ、あの……そ、それは…それで……恥ずかしいよ…お兄ちゃん……」

 

「まさかアンタ……、時々女子寮付近に居ないわよね?」

 

「まさか、そんな訳する理由がないって。流石にそこまではしない、しない。それしてたら、ただの不審者だし。あ、でも……――わざと仕事先をウェンディと会わせたりした時が何回か……」

 

「レイン、シスコンなのか……」

 

「お主……いつも何をしておるのじゃ…」

 

「まあ、それはあくまでエドラス行く前だし。今はウェンディのこと、そこまで過保護じゃないぞ? 結構強くなってきたし」

 

悪びれもせず、レインは笑顔で話す。こう見ると、そこはかとなく、彼は前よりも明るくなったように見えるし、表情も豊かになっている。

ふとそんなことを考えていたウェンディの頭にポンッと手が置かれた。よく覚えている感覚に気がつき、顔をそちらに向ける。そこにいるのはいつも通り、兄のレインだ。

 

「――ま、オレにとってウェンディは大切な妹だし、オレ自身の希望でもある。ただ一つの望みと言えば、ウェンディが元気で居てくれること、それだけでオレは十分だ」

 

ニッと笑い、レインはウェンディの頭を撫でる。優しい手付き、ウェンディが嬉しいと思えるぐらいの力強さ、それを知っている彼だからこその褒め方の一つ。

それがウェンディには暖かく、心に染み渡る。――とここで、ふと思い出したことがある。操られていた時に確かレインの心臓が止まったのを覚えている。なのに、彼は生きている。

流石のウェンディも不思議で仕方がなかった。ここにいるのが、幻影じゃないことを微かに祈りながら、それを訊ねる。

 

「えっと……、お兄ちゃん…心臓…止まったのに…大丈夫だったの…?」

 

それを聞いた途端、シャルルたちは固まった。普通なら心臓が止まれば、ほぼ死んだも同然だ。それを聞けば、確かに目の前にいるレインのことが怪しくなるのも当然である。

すると、レインは首をかしげると唸りながら、答えた。

 

「う~ん? なんでだろうな?」

 

「え……?」

 

「いや、な? 確かにオレも死んだような気がしたんだけどなぁ……。やっぱり生きてる。だってほら、心臓の鼓動、感じるだろ?」

 

ウェンディの手を取り、それを自分の胸に当てる。少し慌てていたが、急に驚いたような顔をした後に、呟いた。

 

「本当だ。お兄ちゃんの…心臓の鼓動が聞こえる」

 

手から伝わる微かな震動。それは心臓の鼓動と間違いなかった。少し身を乗りだし、ウェンディは思いきって彼の胸に頭を寄せ、耳を胸に当てた。

 

――ドクン…ドクン…ドクン…

 

心臓の音がやっぱり聞こえる。優しくて落ち着く音が聞こえてくる。グランディーネと居たときに夜中に寂しくなったウェンディが目を覚ましていたレインの胸の上で眠った時と同じ、優しい音が聞こえる。

 

「(お兄ちゃんの心臓の音……、優しい音……)」

 

「おーい、ウェンディ。なんかウットリしている所、ちょっと悪いけど……、少し傷に当たってるから、そろそろ…な?」

 

「ふぇ……? ……あっ! ご、ごめんなさい!!」

 

急いで離れるウェンディを見つつ、レインは少し考える。

 

「(……やっぱりウェンディ、甘えん坊だな……)」

 

ボーッと考えていると、シャルルがジロッとこちらを睨み、威圧するように呟いた。

 

「ちょっとアンタ。さっき何か変なこと考えたんじゃないでしょうね?」

 

「ん? いや、別に。普通にウェンディが甘えん坊だな~と………あっ…」

 

心のなかで考えていたはずのことを思わずポロっと口に出してしまい、言ったことに気がついてから本人の方を見る。

 

「…うぅ~………!!」

 

かなり顔が真っ赤になっていた。まるで炎魔法で顔を炙られたかのように。少し目元がウルウルとしており、恥ずかしくて仕方がないような様子だった。

そんな妹ウェンディの様子を見てから、レインは「あ、これ、どうすればいいんだろう」といった顔をする。なんだか恥ずかしがる姿が誰かに似ている気がするが、気のせいだろう。

 

「……これ、しばらくオレ黙ってた方がいいのか?」

 

「そうね、そうしなさい。アンタが何か言う度にウェンディが恥ずかしくなってるから」

 

「そうだな、とりあえず、お前は怪我を治すことを優先した方が良さそうだ」

 

「全く……お主は鈍感の塊じゃのう」

 

「失礼なこと言うなぁ、マカロフさん。オレが鈍感の塊? それならマカロフさんは頑固の塊じゃないのか?」

 

「なんじゃと?」

 

「(あ、やべ。地雷踏んだな、これ)」

 

自分が言ってはいけないことを口にしたのに気がつきながら、レインはプイッと顔を背け、焦りつつも回りを見渡し直す。

相変わらず顔を背けた先でウェンディが顔を赤くしたままの様子が見えるのだが、それが何処か微笑ましいなと思いつつ、レインは静かに眼を閉じ、もう一度意識を手放した。

 




ウェンディ「お兄ちゃん、寝ちゃったね」

シャルル「なんで座ったまま寝てるのかしら?」

リリー「レインは相変わらず不思議だな」

マカロフ「(人間らしくなった…か。こやつ、本当に子供か?)」

レイン「……ウェンディ………怪我……してない……のか?……」

ウェンディ「……心配性なのかなぁ…お兄ちゃん」

シャルル「アンタが結構危なっかしいからじゃない?」
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