FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹 作:天狼レイン
どうも皆さん、おはようございます。作者の蒼き西風の妖精です。
昨日は泣きそうになりました。だって一気に3人……いや、5人の方々にお気に入り
から外されてしまいました。恐らく作者が手を抜いたと思われたのか、それとも
下手くそだと判断されたのか……。どちらにせよ、作者の心に来ました(涙)
まあ、それを覆すために今回の話、張り切った訳ですとも。
遂に始まります、外伝編!! まずは外伝編一番目の主人公はフィーリ・ムーンです。
作者のない頭が考えた最初のオリキャラ。それがどんな風な心境なのかは今回の
話で。前回髪が白くなって登場した彼女。その理由は今回の外伝編に入ってます。
ということでその第一話をどうぞ!!
P.S.
七草粥を皆さんは食べましたか? 作者は食べていません。だって塾のせいで
御節を全く食べていませんから。弁当も結構少なめですので(笑)
心を穿つ絶望
あの日、私は何も知らないまま絶望を知った。
「……今日…パパ帰ってくるかな……」
長閑な自然に囲まれている家の静かなリビング。部屋にある椅子に一人ポツンと座る少女はふと呟いた。拾われ子ではあるが、少女の生活は充実している。不満など一切ない。
ほんの数ヵ月前まで野生を生きていたとは思えないぐらいに、彼女は幸せになっている。しかし、少しだけ不安はある。
拾われ子である以上、本当の親の温もりを知らないという現実からは逃げることなど出来やしない。
自分を産んだ母の顔も知らず。
自分の父の顔も知らず。
ただフィーリ・ムーンは闇雲に、がむしゃらに自然の中で生きていた。木々が生い茂る森の中を駆け抜け、見つけた獲物の首を噛み千切って確実に仕留める毎日。
一週間に一度は食事を取らないと助からないような不安定な生活。以前はそれが当たり前で、それが極々自然であるものだと認識していたほどに。
だが、数ヵ月前のあの日が人生の機転だったのだろう。金髪の長髪を持つ幽霊のような少女に声を掛けられ、何故かすんなり着いて行ってしまった自分にうんざりしそうになったあの時。何故か声を掛けた少女は聞き慣れぬ言葉を掛けてきた。
『こんにちは』
分からない。言語が違うせいか、全く以て理解できない。ただ何かを発しているのは分かるが、何を言いたいのか分からない。
キョトンとした私を見て、少女も何故か首を傾げた。だが、一応返事のようなことをしないと行けない気がして、私は口を開いて吠えてみた。
「がう」
かなり単純で簡単な答え。ただ単に吠えただけだ。人間の言葉にはあるまい。
当然普通ならば、すぐに察し、諦めるだろう。野生児のことなど、普通の人間は分かる訳もない。分かるとすれば、同じように自然の中を生き抜く狼。それも一番確率の高いのは同じ群れの狼たち。流石に人間には分からないだろうと私は踏んでいた。
だが、彼女は嬉しそうに笑うと返事を返した。
『がう、です』
なんで返してくれたの?
その疑問が私の中で渦巻いた。先程の“がう”はごく普通に人間のやり取りでいう“挨拶”のつもりで言ったはずだ。さっきのが何の言葉に当たるなどと目測がついている人間など聞いたことも見たこともなかった。
だからこそ、ただの野生児でしかなかった私には驚きが隠せなかった。ビックリした顔をそのままにしていると、再び彼女は嬉しそうに笑う。
『ふふ、なんだかお利口さんみたいですね♪ やっぱり見た目的にも女の子でしょうか?』
何のことだろう。おんなのこ? 聞いたことのない言葉。私のことを言ってるのかな。
再び疑問が込み上げる。今なら分かるが、この時言われていたのは私が女の子なのか、ということだった。やっぱりあの時の私の格好は人間的には目も当てられないような格好だったのだろう。自然の中を生き抜いていることもあり、本来の人間の身体とは違う感じだったのだと思う。自然には色々と危険なものも多い。切り株や木々から出ているトゲなども危険だ。
それによる怪我を緩和するために狼らしく体毛が生えていたのだろう。
今ではそんなものはすっかり見る影がない。寝ている間にママ――メイビスが苦労して刈ってくれたのだろうか? まあ、気にすることもないだろう。
それはさておき。
何のことだがさっぱりだったが、不思議と危険だと本能が感じなかったのは事実だ。その時の私にも彼女が浮かべる笑顔に安心を感じていた。
「………?」
思わず不思議だったために首を傾げた。すると、彼女は何かを勘違いしたのか、すぐに認識を改めようとしていた。
『あ、あれ? 男の子でしたか? それにしては顔の線も細くて美形……あ! 可愛い感じの男の子なんですね!』
さっぱり何のことだが分からない。おとこのこ? さっきとは違う言葉にさらに頭が困惑する。あまりにも分からない言葉が出現――当時の私の感覚でいうと――していたせいで、間の抜けた顔になっていたのか、彼女も間の抜けた顔になっていた。
『あ、あれ? 可笑しいですね……男の子じゃないのでしょうか……? ……やっぱり女の子……う~ん…?』
再び“おんなのこ”という言葉が出てきた。先程からずっと“おとこのこ”や“おんなのこ”と出ているが、やはり何のことだが分からない。
すると、彼女は一度私の前から立ち去ると奥の部屋のドアを開けた。隙間から見えた風景からして古臭そうな雰囲気だ。まるで遺跡みたいに。
少々ガラガラドッシャーンという音と彼女の悲鳴が聞こえたが、気にしないことにしておこう。少し経って、再び彼女が部屋から出てくる。
すこし
それはさておき。
部屋から出てきた彼女が持っていたのは一冊の本。少し埃を被っていたが、それでも綺麗に見える。やはり本の表紙に書かれた文字の羅列も分からない。
すると、彼女はそれを勢いよく開き、適当にページを開いては閉じ、探し始める。しばらくして、諦めたのか表紙に戻り、最初のページを開けると、そこから再びページを開いた。
ジーッと眺めた後、見つけたのかそれを私に見せてきた。
『あなたはどっちなんですか?』
彼女は訊ねながら、指先で何かを示した。示された場所を視線で追うと、そこには狼の絵が書かれていた。あまりの細かさに思わず息を呑んだが、気になったそれを先に確認した。
“オス”、“メス”と表記されたそこには当然のように狼の絵があり、彼女はそれを指していた。ゆっくりとその絵を眺めていると、二つの書かれている絵に違う箇所が少し見つかり、それを注意して見る。それから、何を訊ねていたのかが少しだけ分かると私は前足――当時の私の感覚で――で示した。
『“メス”……やっぱり女の子なんですね♪』
“メス”、“女の子”? やっぱり何のことだが、分からない。けれど、私が人間の言葉でいう“女の子”というものなのだと理解することはできた。
なんで分かっただけでそんなに嬉しそうなのかがよくわからなかったが、次の瞬間、彼女が突然私を抱き締めてきた。
『~♪ やっぱり女の子らしさがありますね♪』
「っ!?」
あまりのことで吠えることも出来なかった。だけど、抱き締められて何故か悪い気はしない。不思議と優しい匂いもする。微かだが、温もりも感じる。今までギュッとされたことなんて全くなかった。だから、スゴく不思議。なのに不安は感じられない。
ふとそんなことを思っていると、彼女は私に何かを呟きかけた。
『人狼……でしょうか? う~ん? あ! いいこと思い付きました。言葉、覚えてみたくはないですか?』
言葉。人間の言葉のことだろうか。それを彼女は私に教えようかと聞いているのだろうか。さっきからの質問などで耳にした言葉が気がつけば馴染み始めていた。
少しずつ相手の言っている言葉が言えるようになってくる。それと同時に狼として生きられなくなっている感じもする。安心するのに不安も感じる。
なんでこんな気持ちになるのだろう? 嬉しいのに寂しい。そんな不思議な気持ち。それが胸の中で渦巻いていく。
だが、人狼である私の本能が“言葉”という新しいモノに興味を示し、そちらに反応した。
「……………」
口を開いて声を出そうとしてみるが、パクパクと口が動くだけ。それを見て、彼女も嬉しそうにして口を開いた。
『こ・と・ば、です』
「………………ば…」
『その調子です♪』
「………と……ば…」
少しずつ狼から遠ざかっていく。代わりに何かが近づいてくる気がした。嬉しそうにする彼女のお陰か、不安が少しずつ消え失せていく。
ゆっくりと。ゆっくりと。先程の“言葉”という単語を出せるようになっていく。パクパクとしか動かなかった口が音を発する。
か細い声が次第にしっかりしていき、ちゃんと音を強めていく。少し疲れる感じがしたが、それでも何かを出そうと無意識に身体が急かしている。
そして……
「…………ことば」
『……、ちゃんと話せましたね♪』
“ことば”、それが口に出た途端、身体から力がスゥーと抜けた。言えたということに嬉しさもあったが、完全に狼とは別の何かに変わり始めたという現実に涙が一滴だけ溢れた。
涙が溢れたことで彼女は大慌てし始めたが、キョトンとする私の姿に落ち着きを取り戻した。
「……ことば」
『言葉、沢山知りたいですか?』
「……………がう」
『分かりました。それではあの人が帰ってくるまでゆっくり練習しましょう~♪』
その後リビングに案内され、何処かから持ってきたコートを羽織った私は埃の被った本を開いた彼女――メイビスに次々と言葉を教えてもらった。
まだまだ単体でしか言えなかったが、ゆっくりと言えるようになると言われ、次々と“言葉”という知らない何かを貪っていく。久々にフル稼働する脳内に次々と詰め込み、気がつけば、沢山絵が入った本――今思えば、小さい子供用の本だったのだろう――を読み終わっていた。
時々コートから匂う誰かの匂いに何故か暖かさを感じているうちに、私の運命が変わりつつあった。とてつもなくゆっくりと回っていた歯車が少しずつ加速していく。
ゆっくりと。ゆっくりと。加速する運命の歯車。その歯車の加速に私は気がつけなかったが、あの人がやって来た瞬間にそれを少しだけ感じた気がした。
「おーい、メイビス。誰と話してるんだ?」
その声が一気に遅れていた私の時間を加速させるように運命の歯車は急激に回転していった。
――◆――◇――
朝食を済ませ、簡単に洗い終えるとフィーリはウェンディからの御下がりであるパジャマを着替え、いつもの私服――レインやウェンディからの必死の説得による服装、年頃の女の子が着るようなものを身に纏い、家から出た。鍵は当然閉めている。
開けられるものなら開けてみよ!、とレイン――パパが言っていた気がする。どうやら、色々と自信があるらしい。まあ、地下の様子を見れば一目瞭然と言えるのだが。
「……ギルドの方にお知らせ……来てるかな…?」
一応1日ごとに連絡をくれることを約束されている。延長されることも想定した上の判断だろう。まあ、パパである彼のことだ、一瞬で海の上を翔び、街を駆け抜け、戻ってくることなど造作もないはずだ。
それをしないのは私――フィーリから見てお姉ちゃんであるウェンディのことが心配で心配で仕方がないからだろう。
「……パパ、お姉ちゃんのこと…好きなのかな……」
ふと込み上げ、口にした疑問。食事の際にそれを訊ねると毎度のようにパパはそっぽを向いてモゴモゴと何かを言っている。
流石の人狼であるフィーリの耳でも聞こえないとなるとただの言葉ではない言葉なのか、小さすぎるだけなのか。
この謎だけは特に難易度がありそうだと思ったのは薄々感じ始めてからのことだ。それほどまでに彼はそのことを訊ねられるとボロを溢しそうで溢さない。
「………お姉ちゃんも時々…変……」
脳裏に浮かぶ姉と慕う少女の姿。何故かこちらも訊ねられる度に顔を茹でられたように真っ赤にし、モゴモゴと何かを言っている。
こちらに関してはフィーリの特化した耳に捉えてはいるが、「……えっと…その……あの……うぅ……」としか言っていなかった。
その度にため息をついてしまうのはどうしてかはフィーリにも分からなかった。
「……帰ってきた時に聞いてみよう…かな……」
気になることは聞くのが一番。フィーリはそうママと慕うメイビスに教えてもらった。こういうのは本にも載っていないから興味深いんです、と。
その解決案が何故それなのかはまだ若いフィーリには分かる由もない。ゆっくりと。ゆっくりと。マグノリアの大きな街の中を一人頭を悩ませながら歩いていく。
もちろん、向かう先はギルドに他ならない。別に今はお金も持ち歩いていない。それにこの容姿だ。普通に考えて近づいてくる者など、そういない。
やって来そうなのは知り合いか、俗に言う悪い人か。商売が何やらと口々に言いつつ、詰め寄るその者たちには魔法を叩き込んでいいとパパから言われている。
彼曰く「正当防衛だから、文句を言われる筋合いはない」らしい。
色々教えてもらったことが沢山ある、そんな何でもないそのことが嬉しくて仕方がない。それほど愛されている、そう思えるからだ。
「……着いた。…早速入らなきゃ……」
マグノリアにあるカルディア大聖堂の裏側方面にあるのが魔導士ギルド《
その声はいつもの騒がしさ極まりないものではなく、深刻さが滲み出ている何かだった。
――さっき、評議院から連絡が入った……。
――ひょ、評議院!? なんで評議院が……、まさかアイツ等暴れたんじゃねぇよな!?
――違ぇよ……。て…天狼島が……。
――天狼島がどうかしたのか!?
不吉な予感。本能的にフィーリは判断した。
「(…なにが……あったの…?)」
聞き耳を立て、ドアに寄りかかる。人狼の少女の耳は遥かに人間を凌ぐ。だから、こういう聞き耳を立てるだけで大体の隠し話も聞こえてくる。
しかし、今回だけはその耳の利点が裏目に出る。向こう側で情報を聞いたメンバーが口にしたのは……。
――…天狼島が……
「……………え?」
聞き耳を立てていたフィーリの耳にその言葉は確かに届いた――いや、届いてしまった。あまりのことに動揺し、腕に力が入る。
ギィィと音を立て、ドアが開き、メンバー全員がこちらを見た。全員の顔が蒼白だ。しかし、同時に何かこちらを憐れんでいるような眼だった。
恐る恐る口を開き……彼らの中の誰かが訊ねた。
「……き……聞いて…いたのか………お嬢ちゃん……」
声が出ない。悲しさが溢れて、感情の整理を間に合わせない。両手が突如として震え、嗚咽が漏れかけ、目頭がドンドン熱くなっていく。
ボロボロと目から滴が落ち、地面である石畳のストリートに跡を残す。見開いた眼から輝きが少しずつ薄れ、少女の心にまで作用する。
あれほど帰りを待ち望んでいた少女の心に一本の杭が勢いよく突き刺さり、そこから次々と亀裂がピシッ、ピシッと入っていく。
ゆっくりと、ゆっくりと、骨身に染みるように。少女の健気な心は音を立てて、崩れ始める。
「…あぁ……ぁ……あ………ぁあ……」
弱々しい声が漏れた。涙は次々と眼から溢れ、零れ落ちる。綺麗な藍色の長髪が逆立ち、瞳が少しずつ血のような紅へと染まっていく。
まるで眼から出血し始めているのかと思えるほどに。倒れそうになるほどに足腰が震えた少女は両手で眼を押さえた。堪え切れない感情の濁流に呑まれ、絶叫する。
「あああぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”……!!!!!」
まるで咆哮。それほどまでに強烈な叫び声はマグノリアの街全域を包むかの轟音だった。絶叫と言うべき悲鳴を上げ、フィーリは無意識に足元の石畳を一瞬にして凍り漬けにした。
「…な、なんだ……、なんだよ……この魔力……」
誰かが恐怖と共に呟いた。見たこともないほどに強烈でドロドロしたような魔力の奔流。溢れだした感情のようにフィーリの魔力は膨張していく。
そのまま暴走を起こしてしまうのか、最悪の展開を脳裏に浮かべていたメンバーたち。だが、フィーリは回れ右と言わんばかりに勢いよくメンバーに背を向け、駆け出した。
駆け出した少女はすぐさま飛び上がり、ギルドに近い家の屋根へと着地し、さらに加速するべく駆け出した。
「急に…どうしたんだ……?」
「おい見ろ!! あの嬢ちゃんが向かった方向、ハルジオン港だぞ!?」
「それ以前になんだよ、あれェ!? あの子が走り去った場所、全部凍ってんじゃねぇか!?」
よくよく見れば、フィーリが駆け出した石畳は全て凍り漬けになっていた。本格的な冬と同じような冷気を感じるほどに。
誰もが眼を疑ったその光景。少女が起こしたにしては度が過ぎたそれにメンバーの思考は停止する。あれが本当に少女のやれることなのか、と。
だが、そんな彼らのなかで誰かが口を開き、叫んだ。
「お、俺たちも行こう!! 今なら評議院とかと協力して皆を探せるかもしれねぇぞ!!」
「そ、そうだな、行こう!!」
そして、彼らは次々とギルドから出ると、勢いよく駆け出した。目的地はハルジオン港。それぞれの願いはただ……大切な仲間が無事でありますように……、それだけだった。
――◆――◇――
嘘だよね、パパ、ママ、お姉ちゃん!!
私のなかにはただそれだけが渦巻いた。砕け始めた心がもう一度修復されていく。その言葉、想いだけが少女の支えだった。
いくら天狼島が消えたからと言って、それが仲間たちの生死不明と同じとは言えない。それに天狼島には結界がある。もしかしたら、結界のせいで認識出来ないだけかもしれない。
それなら頷ける、勝手に自分を理解させ、更に足に力を入れ、蹴り出す。
「(足だけでは遅い……。今だけは許して……パパ、ママ、お姉ちゃん!!)」
人目に付きづらい場所に入った途端、走っていた自身の両手を地面に軽くつけ、拾われる以前のように地面を強く駆け廻った。
腕として使っていたために前の足は動きが少し鈍く感じる。それでも走らないと行けないと自分を叱咤し、更に駆け出す。
景色が次々と過ぎ去っていく。日常茶飯事と言わんばかりに少女は壁すらをも駆ける。瞬間的に自らの魔力をブースターと化させ、更に更に加速する。
今ブレーキすれば、身体の何処かを痛めるだろう。今どこかで衝突すれば、軽い怪我では済まないだろう。それでもいい、ただ家族の安否が知りたい。
パパやママ、お姉ちゃんにもう一度会いたい。ずっと一緒にいたい。それだけを願い、少女はハルジオン港の裏通りを疾走する。
「(……光なんてものよりも速く、……もっと速く…!! 間に合って……、間に合ってッ!!)」
微かに自らのなかで産声を上げる少女にとっての原初の渇望。
“誰よりも速く、全てを奪われない速さを”、それが少女の中で形となる。魔力が更に込み上げ、急激に成長を果たさせていく。
魔力の器としても、一人の魔導士としても、一人の人間としても。感情の整理なんてどうでもいい、そんなものは後で調整すればいいと本能が叫ぶ。
「(……私は信じない……!! みんなが無事じゃないってこと……!! みんな、無事。絶対に生きてる。みんな、大切な人だもん……!!!)」
加速する自身と思考は漸く素直な自らを掴み始める。星の緒を引き街を走り抜ける少女は遂に港へと辿り着く。人々が海を見つめているが、そんなものは関係ない。
フィーリは高く飛び、海面に足をつける刹那、一瞬にして海面すらをも凍り付かせる。驚愕する人々の視線を感じるも、少女はもっともっと加速する。
レインですら出すのを控えているほどの速さを発揮し、一瞬のうちに大海を滑るように駆け抜けた。特化した眼に映る船の数々に少女はさらに気持ちを昂らせる。
「…やっと……届いたッ!!!」
急激な魔力消費と魔力回復に身体が悲鳴をあげ始めた。瞳から今度こそ血が垂れる。口から血が噴き出しそうになる。それでも耐えなければならない。
ここで弱音を吐きたくない。吐くなら家族が無事だと知ってからにしたい。私は自らに最後の叱咤をし、悲鳴をあげる自身の身体を無視し駆け抜けた。
漸く辿り着くとゆっくりと身体の加速した速さを落とし、ボロボロの身体で評議院の船に着地する。着地した途端、何人かの魔導士に囲まれたが、気にしてはいられない。
「退いて……」
「なんだ、君は!!」
「ここは評議院の船だぞ、なにしにきたんだ!!」
「子供か!? なんで子供がこんなところに…」
口々に呟く彼ら。囲まれたフィーリは己の力を収縮させ、強烈な魔力の覇気を放った。
「そこを退いてッ!!!!!」
放たれたそれに次々と気絶する一同。奥から異変を察知したリーダーらしき人物が出てくる。近くに少しだけ見覚えのある人間もいた。
「何事だ!?」
「と、突然子供が……」
「近くにいた者が一斉に倒れて……」
「……捕らえろ!! 何をしたかは分からんが今は捕らえるんだ!!」
「邪魔……するなァァァァァ!!!」
右手を思いっきり振るい、少女は雷球を自身の回りに展開し、それぞれを迫ってくる者共にぶつけた。一瞬にして感電し、その雷閃は船の上で閃光を迸らせる。
「な……!? なんなんだ、この魔法は……!!」
「ラハール!! 少し待て、あの子は確か、聖十の彼のところの者だ!!」
「パパと……、ママと……、お姉ちゃんは……どこ……教えて……!!」
すでに限界が迫っている少女の眼はとてつもなく鋭く普段の彼女の印象とは全く違うものだった。それを見て、ギルドに潜入していた男――ドランバルトはゆっくりと歩み寄り、一定の距離に入ると、申し訳無さそうに告げた。
「……済まない…。誰も…見つかっていないんだ……」
「……………え…?」
口元から血を滲ませたフィーリ。少女の口から掠れた声が漏れた。
「…本当に……済まない………。…
「………う…そ……」
膝から崩れ、フィーリは震える両手で頭を押さえた。急激な痛みもあるが、それ以上に信じられない現実を知った。
――誰も助けられなかった。彼はそう言ったのだ。
確かに知っている匂いは全くといっていいほどしない。よく過ごしていた天狼島はフィーリから見ても見つけられない。彼がいつも使うからとフィーリにも見えるようにしていたはずなのに。それなのに見えない。――いや、そこにもう無いのだ。
天狼島はもう何処にもない。仲間たちも……何処にもいない。もう生きていない。
その言葉が少女の精神を完全に崩壊させた。眼から止めどなく涙を溢れさせ、今度こそ感情の濁流に呑まれた彼女は絶叫する。
「あぁ……ぁ………ぁあ……ぁ……うそ……いやぁ……みとめ…たく……ない……よ……。……ぁ…ぁあ…ぁ………あぁ……あああ”あ”あ”あ”あ”あ”………!!!!!」
その日、少女の叫び声が天狼島近海で空しく響き渡った。
今のところ、外伝編一つの外伝につき、3~4話の構成考えています。
まあ、それぐらいが妥当だと思ってます。ちなみに今回は9000文字越えてました。
読みづらいかもしれませんが、感想良ければどうぞ。