FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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今回は次回の話への繋ぎのようなものです。

そのため文字数も5600程度です。駄文要素は相変わらずですが、良ければどうぞ。

前回のパターンからして「あっ」となっている方もいると思われますが、それでも

良い方はどうぞ。繰り返しどうぞ。ネタを天丼させるつもりはないですので(笑)

裏話2を活動報告に追加しました。良ければ、軽く読んでください。

P.S.
第12回東方project人気投票には投票されましたか?←余談。東方好きの方はお忘れなく。



壊れた少女

気がつけば、私はそこにいた。

周囲を見渡せば、様々なラクリマが浮いている場所に。浮いている半透明のラクリマには人が入っていた。誰も彼も両手、両足に鎖のようなものがついている。

よく見れば、私にもそれがついていた。少し重たいそれは不思議と別の重みを掛けているような感じだ。なんだか、自分は悪いことをしたんだという風に。

見渡せば、見渡すほど自分の置かれている状況が大体理解できる気がする。ほとんどの捕まっている者たちは悪そうな顔をしており、何か怪しげな企みを考えていそうな雰囲気だ。

けれど、一部――点々といる何には本当に罪を悔やんでいる者たちが見えた。恐らく自由になれたら何か目的を達成できるように励もうと考えている者たちだろう。

 

「……………」

 

虚ろな眼で私はその人たちをボーッと見ていた。何故か不思議な雰囲気が感じられたのだ。本当は優しい人、本当は良い人、本当は誰かのことを想える素敵な人。

そんな感じが伝わってくる。ここにいるべきじゃない、そう想える気がする。それでも捕まっているのだから、何かしてしまったのだろう。そう思うと、少し残念な感じがする。

 

――なら、なんで私はここにいるの?

 

突然小さな疑問が浮かび上がる。ボーッと仕掛けている頭で何度か必死に考えてみるが、()()()()()()。思い出そうとすると頭痛が走る。

大切な何かを忘れている気がする。自分がどうなってもいいから返してほしい、一緒にいてほしい、帰ってきてほしいと願った人たちがいたはずなのに。

 

「………思い…出せない……」

 

結局なにもでない。どれだけ考えても無駄だと言わんばかりに。不思議だ、考えても出ない時にいつも答えや考え方を教えてくれていた人のことが思い出せない。

独りぼっちだった自分を拾ってくれた人、一緒に居てくれた人の顔も声音も思い出せない。色々と感性がずれていた自分に本来の女の子らしさを教えてくれていたはずの人ですら思い出せない。今ある記憶が欠落している感じがするのに悔しいとも思えない。

なんでこんなことになったのだろう? なんで悔しいと思えないんだろう? なんで悲しくないんだろう?

少女の中でそれが浮かんで消えていく。消えてしまうほどに余剰で不必要なものなのかもしれない。大切なんじゃないか、そう思うのに勝手に消えてしまう。泡のように浮かんで……泡のように割れて消えていく。

 

「………私…何を……返してほしかったのかな…」

 

鎖に繋がれた両手を軽くあげ、それを眺めてみる。何故か手は傷だらけだ。少し皮膚が固くなったり、皮膚が破れたり、血が滲んだりしている。

それは足も同じだ。履いているであろう靴の面影など無いほどに傷で一杯だ。歩くことが出来るのか、疑問に思うくらいだ。それほどまでに手足は傷ついてしまっていた。

 

「……………」

 

痛みを感じない。――いや、感じているはずなのに痛くない。どうしてだろう? また疑問が浮かび上がる。それ以前に自分の名前以外の誰かの名前が思い出せない。前述の通り、顔も声音も思い出せない。

ふと、そんなことを思っていると、向こう側からカエルのような姿をした警備員の魔導士がやってきた。

 

「うわ、コイツ、起きてやがんぜ」

 

「マジかよ、こんな人間擬きが捕まるとか自体、予想外なのによぉ」

 

「………人間…擬き……?」

 

首を傾げ、なんのことだろうと考える。すると、彼らはこちらをもう一度見て、言葉を発した。

 

「ああ、テメェは人間擬きさ。人間と動物のなぁ?」

 

「……動物…?」

 

「んで、コイツ、何をしたんだっけな?」

 

「あれだろ、調査中の俺たちを襲撃したんだろ?」

 

「ああ、成程な。んじゃ、コイツに攻撃していいんだよなぁ?」

 

「……………?」

 

攻撃、その言葉の意味を探れるのかと首を傾げ、辺りを確認する。見れば、近づいてきたカエルは杖のようなものをこちらに向けていた。

なにも通さなかったはずのラクリマに通り抜ける杖。杖はこちらに照準を定めたかのように向き、光を放ち始める。

 

「……………?」

 

「泣けよ、罪人」

 

向けられた杖は輝きを放った。何かの魔法は壊れた少女を打った。鞭で打たれ続けたような痛みが全身に走っていく。

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

「ハハッ、ザマァねぇよなぁ!!」

 

「俺たち、評議院に逆らうからこんな風になるんだよぉ!!」

 

杖をこちらに向けたまま、魔法を打ち続ける彼らの片割れ。傷だらけの少女は魔法に打たれ続けたまま、痛みを感じて絶叫する。

塞がり始めた傷が再び開き、血が少し流れ出す。ラクリマの床が少しだけ赤く染まる。それを見て高笑いを浮かべる警備員のカエルたち。

それほどまでの仕打ちを受けるようなことをしたんだ、少女はそれを少なからず感じ取り、そのまま身を委ねようとした。

――だが、

 

「………ここ…で……」

 

「あ?」

 

「……………こんな…ところ……で…終われ……ない……ッ!!!」

 

「あ? なにいってんだ、テメ……」

 

無意識のなかに息を潜めていた何かが鎌首を持ち上げた。無意識の怪物がこちらに向けられていた杖を力強く握り、引っ張った。

グイッと強力な引きに耐えられず、ラクリマへと吸い込まれていく一人のカエルの評議院。外部からは中に入れるようになっていたのか、その者はラクリマへと入ってしまった。

 

「あ、やべえっ!?」

 

「お前、なにしてんだ!?!?」

 

「…………()()()()…♪」

 

悪魔のような笑みを浮かべ、無意識のなかの何かの眼を覚ませた少女は無理矢理引き入れたカエルの襟首を掴み、傷だらけの左手を固く握り、振るった。

 

「ぐほあっ!?」

 

「て、テメェ、な、なにしてんだ!!」

 

「……あはは…、あははッ♪ 痛いってどんな感じなの…? …聞かせて…、聞かせて……苦しいって…どんな感じなの…?」

 

捕まえたソイツに馬乗りになり、両手をブンブンと容赦なく振るう。殴るたびに自分の手から溢れる血と殴られたソイツから噴き出す血。

それが次々にラクリマの牢屋の床が次第に赤くなっていく。それでもなお、壊れた少女は止めない。容赦という言葉が存在するのかを疑うほどに殴り続ける。

 

「あはは……壊れちゃえ♪」

 

「ヒィッ!? やめ……やめてくれぇッ…!! それ…以上はやめでぐれぇ……」

 

泣き詫びるように降参と言わんばかりに降伏を示しているが、少女は笑い飛ばしながら殴り続ける。赤く染まっていく拳。それが何度も何度も彼を打ち据える。

彼の相方であろうもう一人のカエルの評議院はなにも出来ずに狼狽えている。まあ、普通はあんな風に抗われるなどと予想などしてはいないだろう。当然、対応できるはずのなくそのまま続いてしまうかと思われた。

そんな時、慌てふためく彼らの背後から老人がやってきた。

 

「そのようなことは止めなさい」

 

「……………誰…?」

 

「お、オーグ老師……、これはその…この犯罪者が…」

 

「彼女は犯罪者ではない。ラハールがカッとなってしまったのだろう。彼女を出しなさい、彼女に罪はない」

 

老師の男はそう告げ、ラクリマの牢屋を開けるように告げた。牢屋の扉が開き、微かに血が下へと垂れ落ちる。ボロボロの雑巾のようになったカエルがグニャリとした状態で少女の手から離され、大の字で倒れる。

相方らしき者はいそいそとその者を連れ、何処かに消え、少女はその人物と面を向き合っていた。何故か不思議と悪意を感じない老師に少女は身体に入っていた力の大半が抜け落ちる。

しかし、未だに手足の鎖は解かれていない。やはりまだ出してもらえないのだろう。

それ以前に先程まで殴り続けていたのだ。そう簡単に出してもらえる訳がなかった。さっきので罪を咎められるかもしれないのだから。

すると、オーグと呼ばれた男は徐に口を開き、訊ねてきた。

 

「何故、あんな風にいたぶった?」

 

「………分からない…」

 

「“分からない”……? なぜ……」

 

優しげに訊ねる彼の声。少女はゆっくりと両手を上げ、顔を覆って掠れた声で答えた。

 

「……分から……ない……分からない…よぉ………」

 

血塗れの両手から涙が落ちる。透明な滴は赤い床に落ち、光を反射させた。覆った両手を離した少女の顔に赤い血の跡が微かに残り、泣き面をその人物に見せた。

 

「……わ……わた……わたし……私は…誰を……返して…欲しかった…の………」

 

「……………」

 

先程の鬼のような猛威を振るっていた少女の面影はなく、そこにいたのは幼き弱々しい少女の姿だけだった。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

それから3年の月日が流れた。無事フィーリは釈放され、ギルドへと帰還。何の問題もなく、ギルド《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》の魔導士となった。

だが、当然その頃にはギルドの権威など遠に失墜しており、依頼などほとんど無かった。いつも通り、残った依頼を受け、その報酬金の何割かをギルド運営に回す日々が続く。

 

そんなある日、フィーリは突然評議院に招集された。その知らせは当然手紙であった。差出人は少女を釈放するために色々と裏を回してくれた老人、オーグ。その彼から招集がされていた。場所はフィオーレ王国と同名の町、フィオーレ。そこにある魔法評議院会場ERA。

私はそこに呼び出されていた。

 

 

 

「………ここかな」

 

小さく言葉を発し、そのまま何の躊躇いもなく螺旋状の坂を登っていく。登る直前に町に住んでいる者たちがかなり驚きの眼を向けていたが、気にする必要はないだろう。

呼び出されているのだから、正々堂々、ズケズケと入っていっても何の文句も言われまい。差出人が前もって報告しているのならば、いざ知らず……。

 

少し面倒臭かったが、なんとか登り切り、巨大な会場の見える位置にまでやってきた。門番でもいるのではないかと思ったが、広い庭の至るところに映像ラクリマが見える。

恐らくこれでこちらの様子を伺っているのだろう。ふとそんなことを思っていると、向こう側から職員らしき評議院が眼をひん剥いて凝視していた。すぐさま何かと構えているが、武具の類い一つもない職員では勝ち目など一切ない。

 

すると、今度こそ武具を携えた者がやってきた。いつぞやの見覚えのある魔導士たちだ。

すると、彼らを制止して後ろからこちらに向かってくる人物と眼があった。頭にコウモリのような生き物を乗せた人物――オーグ老師本人だ。

一応彼らを背後において、彼はこちらを向いて話しかけてきた。

 

「突然呼んで済まなかったな、妖精の者」

 

「……………別にいいよ…、もう仕事なんてほとんど来ないから」

 

「………さて、お前に頼みたい依頼があって呼ばせてもらった」

 

彼は挨拶をした後、忙しいのか早めに用件を切り出して告げた。

 

「この依頼を受けてほしい」

 

提示されたそれを受け取り、確認する。それはS級クエストだった。詳細欄にはかなり細かくびっしりと書き込まれており、難易度は普通のS級とは違うように見えた。

 

「……………私、S級じゃない」

 

「それは承知している。――だが、他のS級魔導士が何度か失敗したという報告を受けている。それ故、儂らはこれを管理していた。報酬金に加え、こちらからも出すつもりだ。どうか受けてもらえぬか?」

 

「………イエス、ノーって答える権利、ある…?」

 

「……できれば、受けてほしい。だが、かなりの危険を伴う依頼だ。実施はSS級と代わりない。最悪は放棄してもらっても構わん、受けてもらえぬか?」

 

実際彼には世話になっている。牢屋から何とか出され、ギルドに帰ることが出来たのは一重に彼のお陰としか他に言えないだろう。

それに加え、ここで依頼を達成すれば、なんとか資金も手に入り、ギルドの仲間たちに顔向けも出来る。そうなければ、迷惑かけた分も返せる。

その想いが決意という導火線に火を着けた。小さく頷き、「分かった」とだけ伝える。ゆっくりと、彼から距離を取り、依頼書を持ったままその場を後にしようとする。

すると、後ろから誰かの声が聞こえた。

 

「……本当にいいのか?」

 

「………あのときの…」

 

そこにいたのはギルドに潜入していた人物。頬付近に十字の傷のある男、ドランバルト。記憶を消したり弄ったりすることの出来る魔法と瞬間移動の魔法が使える魔導士。暴走した私を止めてくれた人でもある。しかし、そのため何かを大きく今もなお失ってしまったが。

今でもあの時の牢屋で思い出せなかったことがそのまま思い出せない。

 

「…本当に覚えていないのか……?」

 

「…分からない……大切な何かを大きく欠けてるのは分かるけど…分からない……」

 

本当に思い出せない。不思議に思うときは多い。帰ってくる家だって自分が建てた記憶はない。自分が後天的に住み着いたとしかいいようがない。ポッカリと穴が穿たれたように一緒にいた人物だけが思い出せない。誰かがいたのは確実に分かっている。その理由など単純明快。家に自分以外の部屋が矢鱈目鱈に多いのだから。

すると、彼は頭を下げた。彼の知り合いかと思われる者たちが何故か慌てているが、それもそうだろう。たかが一般人、たかが魔導士に評議院が易々と頭を下げたのだから。

しかし、私にはその重みは分からない。背負うべく大切なものがほぼないのだから。

 

「…本当に済まない……」

 

「……あなたの…せいじゃない……。…多分無力な私が悪いから……」

 

それを告げ、私は大切なものを全て忘れたまま魔法評議院会場ERAを後にした。苦悩を抱えた人物が背後にいながらも。何も出来ないし、出来るわけもなく、私は大切なものを全て置いて……。私は一人のうのうと生き続けた。

 

 

 

 

 

それから再び1年の歳月が過ぎ……、私はギルドからも評議院からも姿を消した。巨大な傷痕をその場に残し、神隠しにあったかのように姿を消してしまった。

その光景も見ていた者は口々にこう言っていたらしい。

 

――化け物。

 

――暴走。

 

――急激に何かを思い出し、自らの存在を壊し始めた愚か者。

 

何故そうなったのか、口々に言った彼らには分かるまい。

――否、その者に理解されるような安いものではない。ただ、少女は忘れてほしくなかった。あれほどの実力を持ち、あれほどの魔導士を。自らの父代わりをしてくれた彼のことを。

 

ただ少女は失いたくなかった。忘れたくなかった。誰にも彼を忘れてほしくなかった。ただそれだけ……。小さな少女はあその日を境にな化け物と化す。

 

自らを心から救ってくれた彼が来るまでの一年間。少女は人でも狼ですら……無くなった。

 




裏設定

ラクリマの牢屋内で原作、アニメでは犯罪者は手足に手錠、足枷は無かったが、
天狼島中のジェラールの不可解な状態後、オリジナルで全員手錠足枷。
念には念をということにしておいてください。

――まあバッチリ、カウンターパンチ食らってた管理人カエル(笑)
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