FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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どうも皆さん、おはようございます。蒼き西風の妖精改め、“天狼レイン”です。

ユーザ名を変更しましたが、これは理由があります。――まあ、面倒だったというのが

一番の理……ブベラッ!?

レイン「調子に乗るな、面倒で済ませたら勉強も生活も関係ねぇだろが」

……なんだか痛いことを言われた気がします。まあ、それもさておく訳ですが。

ところで皆さん。私が失踪したかと思いました? あれほど投稿ペースを馬鹿みたいに

早くしていたヤツが一週間近くメイン投稿を放棄するなんてって思いませんでした?

忙しかったんですよ、ホント。なんか願書がどうたらこうたらとか、

志望校別特訓じゃー/(°д°)/ガオーって叫ぶ塾教師が居たりと(涙)

英語とか何なの? 嫌いすぎて訳が分からん。嫌い以前に謎の言語じゃないですかね?

まだラテン語とかドイツ語の方が習いたいんですけど……。

それはさておき。久々の投稿ですが、今回はなんと10000文字です。

なんでこんなにはっちゃけたのか分からないんですが、まあどうぞ。

今回フィーリ登場部分は1割にも満たないです。まあ、ちょっとした理由があるので。

それではどうぞ。オリキャラも豊富です。

★今回のオリキャラ

・シャナ・アラストール(作者案)

・ムラクモ・アッシュベル(vitaフレンドBさん案)

・ラインハルト・エルドレイ(ニコニコ生放送メンバーの知り合いCさん案)
 ↑名前を少し変更しました。漸く調整が済みました、時間かけすぎてスミマセン。

P.S.
1/15と言えば……原作FAIRY TAIL 53巻発売日だー!!!ヒャッホォォォォ!!!
早速買いにいくぜエェェェェ!!!!

………財布が空っぽだったよ…パトラッシュ…………(涙)




始まりの分岐点

4年前、《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》、《蛇姫の鱗(ラミアスケイル)》、《青い天馬(ブルーペガサス)》、《化猫の宿(ケット・シェルター)》による連合軍がバラム同盟の一角たる闇ギルド《六魔将軍(オラシオンセイス)》とぶつかった地、ワース樹海。

 

生い茂る草木。空へと鳴く鳥たち。静かに流れる川のせせらぎ。風に吹かれ、ざわめく木々。澄んだ空気と心地よい風。自然に満ち溢れ、何の危険も感じられないような静かな森林。

誰が見ようと安全だと感じられるほどに落ち着いた場所。しかし、木々が生えていない場所の大半は4年前、姿を現し崩れ去った平和を求めた者たちの想いの残骸。

それらが所々に残っており、石の建物などのものは木々に侵食されていた。巨大な生き物を思わせた“それ”の胴体には綺麗に真ん中を穿ったような大穴がある。

 

そんな残骸の向く先に荒廃した集落があった。既に人は存在せず、そこには廃れた建物がいくつも建てられている。猫を模したその建物は知っているものなら懐かしくもあるだろう。

しかし、懐かしいと感じるものの一部はすでにこの世にいないと思われている者たち。誰かに忘れられ始めているだろう者たちでしかない。

ギルドで唯一の生きた人間と言えた藍色の長髪の少女も帰る場所であるギルドにも、自身が住んでいた家にもいない。

もう誰もここにやってくることなどない。そもそもこんな辺境に集落があることすら知らなかっただろう。

 

だが、珍しくそこには来客がいた。

 

灰色の長い髪を持ち、黒に少しの緑が混じった瞳を持つ少年。見た目はどうみても少女だが、声音を除き、ちゃんとした男である。服装と言えば、一般人と然程変わらないもので、違う点をあげるとすれば、履いている靴に細工がしてあるといったところだ。

すると、辺りを見渡していた少年は興味深そうに染々と呟いた。

 

「……こんなところがあったんだね。――見たところ、誰か住んでいたんだろうけど…」

 

「………そうだね。………とっても静か」

 

灰色の髪の少年に答えたのは灼熱のような長髪の少女。瞳も灼熱のような色――言うなれば、灼眼といったところか――を持っており、黒い羽織りを羽織っていた。

彼女の着るTシャツにはいつも通りのセンスの悪い一文字があり、に酷いときは“無”や“零”だが、今日に至っては色関連なのか“緋”とプリントしてあった。

淡い赤色のスカートの腰にあるベルトには一刀が差してあり、黒い鞘には職人の技が光っていた。その訳は光沢は無くとも“それ”からは見るものだけが分かる何かがあったからだ。

ふと少女が軽く深呼吸をすると少年が彼女に軽い質問を投げ掛けた。

 

「相変わらず、“それ”持ち歩いてるんだね、シャナ」

 

「………うん。………あの人がくれたものだから…」

 

「あの人らしいよね、本当に。――えっと確かこう言ってたんだよね? 『神を信じるのが嫌なら信じなくていい。だけど、仲間が危ない時に神がそれを拒ませようとするなら、斬り捨てていいんだ』だっけ? すごい考え方だよね。でも……あの人らしいね」

 

「………うん、私も…そう思うよ。……“神殺し 煉獄の神刀(ムスペルヘイム・ミストルテイン)”……すごく良い刀。……今なら分かるもん」

 

優しく刀の柄を撫で、シャナと呼ばれた少女はクスリと微笑む。何処と無く幸せそうな顔。頭の片隅では助けてくれた恩人である“あの人”を想い浮かべているのだろう。

一方の灰色の髪の少年は刀の銘を聞くと、少しだけ考え込む。

 

「(6本ある伝説の“神殺し”の武具たち。その武具を手にしたものは圧倒的な実力を手にすると言われ、それぞれが特殊な効果を持つ。その一つ、シャナの“煉獄の神刀(ムスペルヘイム)”は相方する者の体力を熱によって奪う……か。本当に凄い刀だよね……どうやって創ったんだろう、それを創った人は……?)」

 

「………どうかしたの、ムラクモ?」

 

「あ、いや、なんでもないよ。少し考え事をね」

 

ムラクモと呼ばれた少年は少し誤魔化すと、仕事の依頼書をバッグから取り出すと内容を確認した。書かれていたのはワース樹海にある小さな洞窟に住まう何か。

近づくだけでそこに通りかかった人間、動物、植物、ありとあらゆる全てが引き千切られ、肉を持つ生物ならば、引きずり込まれるという……。そんな噂が立つほどに危険な敵、それが今回の依頼書の対象だ。一応こちらは三人で来ているが、実質これはSS級相当。それほどまでに危険な依頼。だが、報酬金はごく普通の依頼やS級依頼とは比較にならないほどのものだ。少しギャンブル気分だが、達成した場合はギルド的にも喜ばしいものだろう。

内容を再び把握したところで、向こう側から白髪の青年がやって来た。瞳を伏せているが、見えない訳ではない。少し訳があるだけの彼は此方に戻ってくると、握っていた神槍を地面に突き立てて休憩を取る。

 

「……まったく、なんだあれは…」

 

「どうかしたんですか、ラインハルトさん」

 

ラインハルトと呼ばれた青年は大きくため息をついた。黒いコートを羽織り、黒を重視した軍服のような格好の彼は見ただけでそれなりの実力者だと分かるほどの者であり、ムラクモたちが所属しているギルドのある街では彼を知らぬ者は全く居ない。

それどころか、他の街、他のギルドにも彼の噂は伝わっている。闇ギルドから恐れられるほどの彼につけられた異名は《白銀の黒獅子(レグルス・アルゲンテウス)》。

頭髪の色である白を銀とし、彼の使う魔法を比喩したらしいが、出所は不明なままだ。本人にはどうでもいい異名らしいのだが、彼曰く街でもそう言われてしまっているため、無視しようにも無視できない。

ムラクモが訊ねると彼は少し間を置いてから簡単に答えた。

 

「……地獄絵図といったところか。阿鼻叫喚ではなかったが、食い千切られた肉片や骨がいくつか落ちているのを目にした」

 

「地獄絵図……肉片に骨ですか? それほどまでにそこは酷かったんですか?」

 

「………さっきからする血の臭い、それが理由なの…?」

 

「――ああ、その洞窟の周辺だけが真っ赤に血で染まり返っていた。恐らくそこにいるのだろう、今回の対象(ターゲット)は」

 

「……確か、討伐依頼って半年前からでしたっけ?」

 

「半年前に評議院が周辺を訪れた魔導士からの報告で推測してからだな。それにしても――」

 

地面に突き立てた金色の神槍を握り直し立ち上がると、ラインハルトはシャナを一瞥すると、口を開いた。

 

「――卿もそれを持っているのだな」

 

「………私も驚いてる。……ラインハルトも持ってたんだ、“神殺し”」

 

「そうだな。まったく昔の魔導士とやらはどうしてこんな武具(もの)を思い付くのだろうか……」

 

金色に輝く神槍。それを地面から引き抜き、それを眺める。彼もまた、シャナと同じ“神殺し”の一つを携えた魔導士だ。槍の銘は“神殺し 運命の神槍(ロンギヌス・ミストルテイン)”。同じく神殺しの力を僅かながら持つ武器だ。

それに加え、所持者であるラインハルト本人もまた滅神魔導士。これほど相性の良い魔導士はいないだろう。

 

「そろそろ討伐を開始するか……。ムラクモ、シャナ。今回だけは油断をするな、相手はS級魔導士を圧倒する力を所持している可能性がある。最悪離脱、依頼を破棄する。分かったな?」

 

「はい!」

 

「………了解、援護は任せて」

 

「それでは移動するぞ、いつでも動けるように用意しておけ」

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

「なんでこの辺りに闇ギルドの魔導士が出るんだ………」

 

「………さぁ? 多分気紛れ」

 

「それで済んじゃう話なの……?」

 

「確かに何故ここで出るのだろうな……」

 

それぞれ武器や魔法を展開したまま、彼らは目の前で気絶させた魔導士たちを一瞥した。大体6人だろうか、その者たちの服装には似ている点がいくつかあり、押された紋章は同じものだった。どこからどう見ても闇ギルドだと分かるほどに大きく……。

 

「ラインハルトさん、もしかして今回の対象は闇ギルドの所有する魔獣だったりするんでしょうか?」

 

「……そうかもしれんな。だが、まだ退くには早い。いざとなれば、評議院に通告後、連合軍として討伐が出来るかもしれんからな」

 

先頭にいる二人が互いの考えを共有する。一方、殿を勤めていたシャナが首を傾げ、幾度となく思考を巡らせる。思いついては途中で破棄し、それを繰り返すと彼女は口を開き、憶測ながら考えを口にした。

 

「………変な魔力を感じる。………なんだか気持ち悪い」

 

「気持ち悪い? どうしてなんだ、シャナ?」

 

「………なんだか()()()()()が混ざってる。……それもとっても想いが強いのに……その想いを隠してる………そんな感じ」

 

「想いを…隠してる…?」

 

「………うん」

 

寂しそうな顔をし、その魔力の持ち主を可愛そうに思うシャナ。何処と無く、彼女の過去に関係しているのか、無口で表情を余り出さない彼女が表情を出す。

それを見て、流石のラインハルトもムラクモも彼女のいう“優しい魔力”の正体が気になってしまう。――今までこんな風にいう彼女を見たことがなかったために。

 

「………隠された想い、か。それは“渇望”か、何かか? シャナ」

 

「………そうかもしれない。――でも、ただの渇望じゃない……。もっと……複雑で……何かを返してほしい……って願ってる」

 

「………“返してほしい”か。大切な存在(もの)を奪われたのかな……」

 

“大切な存在”――その言葉を呟き、ムラクモは寂しげな表情を浮かべ、青い空を見上げた。脳裏に焼き付いている最悪の日。轟音と爆炎が村を包み込み、人々と住み処を蹂躙する地獄のような光景。一瞬のうちの喪失、正しくそれが当てはまるだろう。

 

“あの人”が訪れ、自らの目標となった二週間後。

 

その日は自らの誕生日と同時に訪れた。祝われた出生の日はあの日から嬉しくなくなった。逆に傷口を抉るような痛みと哀しみに襲われるだけとなり、彼にとってはトラウマと何ら変わらない。

村にゼレフに関係する“何か”があったのか、それを求めた闇ギルドの者たちが容赦なく滅ぼしていくのをこの眼で見てしまった。

自らを地下に隠した両親が鎧を着た金髪の男によって焼き殺されるのも。その男が高笑いを浮かべ、容赦なく他の者も殺していく様を。

彼の記憶に離れようとも、離そうともしない“黒くおぞましい炎”。漸く分かったのは、その男が“滅神魔導士”であったことだけだ。

微かながらムラクモにも“復讐心”はある。ただそれを出さないだけ。ただそれを悟らせない。彼は静かに“怒り”を蓄える。ゆっくりと彼は“その者を殺すための刃”を――

 

「――クモ、ムラクモ。何をボンヤリしている?」

 

「……へ? あ、すみません、ラインハルトさん。少し嫌なこと思い出してました」

 

「……そうか。些かタイミングが悪いかもしれんが、()()()ぞ」

 

何故瞳を大方伏せているラインハルトが場所を特定出来るのかは不明でしかないが、確かに目的地である“血塗られた洞窟”の前に来ていた。

足元をよく見渡してみると、辺り一面に頭蓋骨やら肋骨、骨髄などが散乱している。少し真新しいのかと思える肉がついたままの骨もあれば、すでに腐り切った腐肉も当然そこにある。

洞窟前の木々の幹には返り血がこれでもか、というほどに付着し、前述の腐肉からはとてつもない異臭が発される。

正直ここにいると気分がマッハで悪くなると言えよう。まず骨が散乱している事態、非日常としか言えない光景でしかない。

 

「………臭いね、血の臭いがツラい…」

 

「私も同意見だ。偵察程度に来たときにも同様の気分を味わった。血生臭いとはこういうことか……」

 

「流石にこれはギリギリ予想……外ですね、ギリギリ所じゃなくて本当に予想外です」

 

「………帰っていい?」

 

「依頼を終えるか、破棄するまで待て」

 

「……じゃあ今すぐ破棄」

 

「決断早すぎない!? シャナ、一応これ仕事だからね!? 僕たち、ギルドの威信を微かながら背負ってるからね!?」

 

「………この状況で威信も糞もないよ?」

 

「………君、女の子だよね? どうしてそう……平然とそんな言葉出るの?」

 

「……気にしたらお仕舞い――いや、気にしないとお仕舞いかも」

 

「――みたいだね」

 

ムラクモ、シャナ、ラインハルトが同時に洞窟のある洞穴の上――崖のような所から魔法を放とうと企んでいた不届き者を視界に収めた。

それと、同時にすぐさまムラクモは小さく何かを呟いた。

 

「………《剣刃魔法(ブレイド)》、“超重力加速砲(レールガン)”」

 

背骨を対称軸とさせ、線対称に空気や風、土から造り出した無数の刃を展開する。展開された刃が一度収縮し、一本の強固で鋭利な刃を造り出すと、それを撃ち出すかのように他の刃がその刃を囲い、重力を掛け続けた。ミシミシという音が聞こえ、そろそろ粉砕してしまうのではないかと思うほどに重力が掛かり切った所で、彼は静かに告げた。

 

「――我が敵を撃て」

 

亜音速で撃ち出された“(それ)”は一瞬のうちに三人を狙っていた不届き者の足元を寸法違わず、狙い撃ち、大爆発を引き起こした。

それに加え、爆発を押さえ込むかのように展開される重力。恐らく当たっていなくとも動けまい。あれを逃れられる者など闇ギルドには中々いないのだから。

 

「まあ、こんな感じでしたが、どうでしたか?」

 

「よくやった。――さて、後は周囲を囲んだと勘違いをしている愚者に鉄槌を下さんとな?」

 

「………適当にやったらいい?」

 

「そうだな。死なない程度にやればいい」

 

「……了解、それじゃ、蹂躙を開始する」

 

それを言い切ると同時に二人は駆け出し、周囲に隠れていたであろう闇ギルドの者共に何の躊躇いもなく突撃。容赦なく薙ぎ倒していく。

 

「“白神の閃光(リューレ)”!!!」

 

黒い光の輝きに満ちた神槍が闇ギルドの者共を横一文字に薙ぎ払い、吹き飛ばす。時折断末魔のような悲鳴が上がったが、当然の報いだ。

襲う覚悟がないヤツに他人を襲撃する権利などある訳がない。況してや、覚悟もない者が戦場(ここ)に立つなと言えよう。

次々と容赦なく薙ぎ倒され、宙を舞っていく。すでに赤くなっていた地面に更に鮮血が落とされ、更なる赤みを増させていく。

縦横無尽に舞い踊り、それを楽しむラインハルト。彼の状況と光景に闇ギルドの者共は口々に何かを呟いていく。

 

「ば、化け物かよ……!!!」

 

「ま、まず、それ以前にあ、アイツ……《白銀の黒獅子》じゃねぇか!?」

 

「ま、マジかよ……。あんな化け物に勝てる訳がねぇ……」

 

あまりの強さに尻込みする彼ら。それを見て不思議そうにしつつ、縦横無尽に舞い踊っていた猛者たる彼は堂々と告げて見せる。

 

「フッ、今さら何を躊躇うか? 我等を殺るつもりでかかってきたのではないのか? まさか、今頃怖じ気づいたという訳ではあるまいな……?」

 

微かに開いた眼孔から輝く金色の瞳。ギラリと輝き、心臓を直接握るような恐怖が彼らを貫き、恐怖で身体が動かなくなり始めた様子を知りつつ、彼は笑い、告げた。

 

「しかし、今さらもてなす側が息切れでは興が冷めるというもの。一度仕掛けてきたのだ、終わるまで休むことは許さぬ。――さぁ、私を楽しませてくれ」

 

黒い輝きを放つ獅子のように獲物をその眼孔に捕らえた彼の猛威が襲撃するはずだった彼らに牙をむく。

 

 

 

「……“緋キ災厄之焔”」

 

シャナを中心に紅蓮の焔が円形状に展開され、急速な回転をしながら彼女に襲い来る者共を焼き尽くす。触れるだけで業火に全身を焼かれるような激痛に襲われ、身悶えするほどに泣き叫ぶ者もいれば、激痛に耐え切れず失神する者もいた。

その業火がかなり近い位置にあるというのに大元である少女は何のツラさや暑苦しさすら感じさせず、獄炎に焼かれ行く者共を冷ややかな眼で眺めた。

 

「………無鉄砲」

 

また一人見事に焼かれた。

 

「………無策」

 

さらに一人見事に焼かれた。

 

「………無謀で無能」

 

次々と焼かれていく。距離を取り、遠方から放たれた魔法ですら焼き消され、少女に届く気配などない。明らかに弱点らしい弱点を着いているはずの“風”や“水”ですら獄炎の前で無へと帰していく。

 

「………無駄なことし過ぎてる。私にはそんなの効かないよ?」

 

口を開き、告げた刹那の一瞬の隙。シャナの眉間と心臓辺りに鋭く尖った弾丸のような魔法弾が貫いた。ゆっくりと身体が倒れていき、地面にドサッと倒れる。

静けさが辺りを包み込む。撃ち抜かれた場所は眉間と心臓辺り。当然そこを撃たれれば人間は成す術なく死亡する。生々しく、誰かが見ていたら驚きを隠せない光景。

流石の彼らも歓喜のあまり狂喜乱舞する。無駄、無鉄砲、無意味。そう告げた少女は自分の隙を見せ、それで死んだ。馬鹿で無能はどっちだ、そう言わんばかりに彼らは狂喜に満ちた顔をさらけ出す。

――だが、

 

「………満足した?」

 

少女は極々自然に立ち上がり、微かに着いた砂を叩くと何事も無かったようにした。大きく欠伸を溢し、少女は腰に差した一刀を少しだけ抜いて納めた。

信じられないという顔が隠せる訳もなく、彼らは恐怖しながら少女に指を指しながら震えた口で言葉を発する。

 

「……う、嘘だろ……。確かに眉間と…心臓を………」

 

「……こ、こいつ……人間……なのか……化け物……じゃないのか……?」

 

「――……失礼だね。私はちゃんとした人間。ただ……私の魔法が可笑しいだけ」

 

穴が開いたままの眉間と心臓辺りから瞬時に焔がボッと上がり、一瞬のうちに傷口を完全に塞いだ。あり得ない光景にあんぐりと口を開けたままの彼らに面倒臭がりながらもシャナはかいつまんで答えた。

 

「……私の魔法、《灼刃煉獄(フレイムヘイズ)》は習得者自体を任意で焔に変えられる。だから今の私は焔そのもの、魔法も弾丸も通り抜ける。そして……」

 

指先で何かを摘まみ、それを彼らに見せつける。

 

「……勝手に私に触れたら焼かれる。私は触れる全てを焼き尽くす。そんな人でそんな魔導士。容赦なんて言葉も慈悲の言葉も中々ないよ?」

 

ドロドロに溶けた弾丸を手のひらで転がし、飽きたのか一瞬で焼き尽くす。フッと息を吐いて灰を吹き飛ばすと彼女は腰に差した一刀を抜いて彼らに突きつけた。

 

「……そろそろ茶番はお仕舞い。……遊びは好きだけど退屈は嫌い。……貴方たちは…面白い人たち? ――聞くのも時間の無駄だし、分からないから今から試すね」

 

駆け出した少女の回りから吹き荒れる獄炎が辺り一面を焼き尽くさず、敵だけを焼き尽くし、喰らっていく。

 

 

 

「――それじゃあ、僕も思いっきりやらないとね」

 

ムラクモもまた背筋を対称軸とし、無数の刃を展開した。ゆっくりと自らの手のひらから次々と小型の刃をさらに展開し、それらを目の前に跋扈する者共にその刃をさらけ出し、解き放たれる。

 

「ぐあああああ!?!?」

 

「グホァッ!?」

 

「があああぁ!?」

 

痛みに比例するような叫び声が空へと響き渡る。次々と刃に襲撃され、急所以外を的確に襲われ続ける。舞うように、同時に踊るように。彼――ムラクモは踊り子の如く刃を創造し、解き放っていく。

放たれた刃はそれぞれの属性を帯びる。風や空気からなら“風”などの属性を。土や岩などからは“土”などの属性が付与されている。

だから魔法で障壁を多少作って耐えようとしても容易に貫かれ、痛みが全身に走る。貫通能力が異常なまでに特化した魔法。創造することで魔力の限界が来るまで無限に創造する。

それこそが彼の魔法、師から教わった“失われた魔法”の一つ。

 

――《剣刃魔法(ブレイド)》だ。

 

その魔法によって造り出される刃は前述通り、限りはない。それを攻略しようと考えているのならば、黒魔術によくある魔力を奪う魔法以外の容易な手段はないだろう。

彼によって精製された刃たちは空へ無数に展開され、漸く態勢を立て直したばかりの者共に照準を定めた。ギラリと光に反射し輝く“それ”に彼らの大半は恐怖を感じ、動きが僅かながら鈍った。それが彼らにとっての勝機の終わり。そこで動けなければ、勝利など掴める訳がない。微かに哀れと感じ、ムラクモは指を弾いてパチンという音を鳴らした。

 

「――天の(きざはし)より降り注げ、“九重桜”」

 

九重に重ねられた刃たちが一斉に地面に存在する敵共を狙い、殺到する。その姿はまるで“雨”。“雨”でありながら色とりどりの刃が舞い落ちる様は“桜”。

“雨”でもあり、“桜”でもある。そう言わんばかりの刃たちが敵を蹂躙していく。普通に考えれば、この位の攻撃をしてしまうと多少の死人が出るだろうが、彼も並のS級魔導士に匹敵する強さを持っている。ちゃんと経験も豊富だ。そのための“4年間”だ。

かつてのあのギルドがもう無い以上、彼らの後釜に相応しいギルドなど無い。だからこそ、自分達が彼らの後身でなければならない。

前身があり、後身がある。それは重々承知だ。彼らを忘れてほしくない、それが彼らの所属するギルド――《帝王の宝剣(エンペラーブレイド)》の隠された意味なのだから。

 

「……ふぅ…、悪いね。僕たちは容赦が出来ない。けれど、相手の命は奪わない。だから君たちに出来ることは一つだよ。――大人しく罪を償え、愚か者」

 

底冷えするような眼孔を彼らに向け、灰色の髪の少年はすでに潰し終えた仲間たちの元へと戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

一通りの蹂躙を終え、漸くムラクモたちは洞窟の中へと入っていく。どこもかしこも見渡す限り返り血によって外壁すら赤く染まっている始末。

見ているだけでここで何が起こってしまったのかと容易に創造できるぐらいだ。それほどまでに酷い。時々足にぶつかる軽い何かを拾い上げて見てみれば、これまた骸骨だ。

地面に散乱するのも当然のように肋骨、脊髄などなど。骨ばかりで一食分の料理が完成してしまいそうだが、骨であるため栄養など一切ない。

ただの飾り――でも遠慮したいものだとムラクモはうんざりしつつ、思う。

 

シャナに関しては諦めたのか飽きてしまったのか、完全に焔に宙に燃やす以外の役割を全くせず、何かの本を一生懸命に見ていた。転んでしまいそうになるも踏みとどまるのは偶然なのだろうか、それとも必然なのだろうか。これまた謎が増えてしまう有り様だ。

 

「………シャナ、なに読んでるの?」

 

「………カッコいい感じの東洋の文字。漢字っていうみたい……。………私のこれも漢字だから」

 

「……あー…うん。…それね、今日は“緋”なんだ…?」

 

「……うん、この字好き。カッコいい」

 

「(……あ、あれ? 僕の知っている女の子の定義からかなりずれているような……?)」

 

「――ふむ、漢字か。……そういえば、何処かの魔法もその類いだったか?」

 

「……うん、“立体文字(ソリッドスクリプト)”のこと?」

 

「ああ。さて、それは兎も角。最深部はあとどれくらいだ、シャナ」

 

「………大体マスターにやってくる“お迎え”と同じくらい」

 

「そうか、ならもう少しか」

 

「いやいや、ラインハルトさん、そこは理解しちゃダメなヤツですから……」

 

「しかし、事実であろう。それに加え、当人もいない。愚痴を溢すなら今が潮時だ。これほどの好条件は無かろう」

 

「じゃ、私から。――……ロリコン」

 

「……多分それ、いきなり致命傷だよ、ホント」

 

「確かにシャナと変わらぬ齢の者が多いな……、早めに引導を渡しておくか」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいって、ラインハルトさん!! その神槍下ろして、呪いの言霊呟かないでください!!」

 

(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし)(ロリコン死すべし……)

 

「………そういえば、ラインハルトの大切な人。まだ私よりも身長あるけど、まだムラクモより少し高いだけだったね」

 

「まあ、“師匠”は色々と魔法に手を出しすぎてたから……」

 

「ほう……? まさか私の愛しき者を愚弄する気か、卿ら?」

 

「違いますから!! ホント違うんで、その神槍下ろしてください!!」

 

鬼形相でムラクモに迫るラインハルト。彼をなんとか宥めようと必死になるムラクモとそれを煽っていくシャナ。恐らく面白半分だろうが、あれを食らう覚悟など全く無い。

それ以前に愚弄したつもりも侮辱したつもりもなかったが、どうやら彼は“ロリコン”という言葉に過剰反応を起こしたせいで説得が困難になりつつあるようだ。

冷や汗を延々と流し続けるムラクモ。すぐそこまでラインハルトの神槍が迫っていた時、シャナが何かを見つけたのか声をあげた。

 

「……あそこ」

 

指差す場所にあったのは数多くの鎖に繋がれた少女。力なくダラリと身体は冷えた壁に寄りかかり、繋がれた少女は身動きすらしない。

 

「君、大丈夫!?」

 

急いで駆け付けるムラクモが少女に声をかけた。ゆっくりと目蓋が上がり、少女は光のない瞳で彼を見た。

 

「……………」

 

「良かった、ところで大丈夫?」

 

「……………パパ…は…どこ……?」

 

「……パパ?」

 

聞き返すが少女は再び気を失っていた。状況整理――という名の自らの落ち着かせをしていたラインハルトが顎に手を当て、考え込むと一つの結論を出した。

 

「……その少女。本当に人間か?」

 

「え? それってどういう……」

 

「頭部を見ろ。それは人間にないものだ」

 

手入れが出来なかったのか、毛先がボサボサの白い長髪。その長髪に紛れるようにしてあったのは対の耳。人間には無い、毛の生えた尖った耳。

それは少女が人ではないことを表していた。だが、冷え切っている彼女の身体からほんの僅かに感じる温もりは人間のようだった。

 

「………ラインハルトさん」

 

「……言わなくても分かるぞ、卿の言いたいことは」

 

「……私も予想してるから。いつも通りならほぼ当たるね」

 

彼らの小さな承諾。それを感じ、ムラクモは自分の決心を告げた。別に人助けのつもりはない。別に可愛そうだからなどではない。何故か、不思議なこの少女に惹かれたのだ。

不思議と白い長髪の人外の少女は何かを引きつけた。それはここにいるラインハルトやシャナも同様に。

 

 

 

そして少年の判断が彼らの未来を更に加速させる。絶望へと向かっていたはずの運命は静止し、微かな希望のある未来への扉が少しずつ開き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――この子をギルドで預からせてください。少しの間で構いません。僕が全て責任を取りますから」

 

 




軽いネタバレ。

ラインハルトの使う魔法は“光の滅神魔法”。一般の滅神魔導士と違い、武器に効果を
追加付与する戦いを主体とする。
肉弾戦が決して出来ない不向きという訳ではなく、本人がその方が戦いやすいからである。
それに加え、使っている武器。“神殺し”の一つである“運命の神槍(ロンギヌス)”は
元より滅神魔法の力が微かにあるので、それを更に強化し、上乗せすることが出来る。
扱いずらい魔法に方向性を持たせるためかは不明である。
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