FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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どうも作者の天狼レインです。え? なんで私立当日なのに投稿してるのって?

時間あったんです。一気に書き終えることができるほどの時間が。

さて、今回からシャナの過去についての外伝編です。今回は8000文字程度ですが、

内容は結構てんこ盛りですかね。それとタグに残酷な表現ありと入れてて良かったと

思います。今回のバイオとかグラセフよりも文的にキツイものが入ってます。

決してR-18に入るものではありません。寄生虫どうのこうのとか無いんで。アレハホントグロイ。

そんな訳でシャナがレインに会うまでの話をお送りします。それでは本編どうぞ。

――あ、それと食事中には読まないでください。前のフィーリとかよりもグロいんで。

P.S.
原作のシャナも結構な環境だったけど、こっちのシャナはもっと酷い気がする。
というか、私がそう言うのに慣れてしまっているのだろうか? 謎は深まるばかりである。





「泣き叫べ、劣等――今夜ここに、神はいない」
                    by ウォルフガング・シュライバー(Dies irae)





――まあ、勇者っぽいのは居ましたけどね、今回の話(笑)




外伝 其の弐 緋色の焔、白銀に咲く
幕引きと幕開け


フィーリとムラクモが元気良さそうに会話しながら夜のギルドの前のストリートを歩いている中。夜空を見上げる形で黒髪の黒羽織の少女がギルドの屋上にいた。

 

「……レイン元気かな…。怪我してなかったらいいな…」

 

ボーッとした頭を冷やしに少女がギルドの屋上にある塀に腰掛け、小さく呟く。紅蓮のように紅い、灼熱の長髪は今だけ黒く綺麗な長髪へと戻っていた。同じく灼熱の瞳も茶色混じりの黒目になっている。

これが本来の彼女の姿。この世に生を受けた時からの本当の彼女の姿だ。髪や瞳が灼熱のような色合いなのは彼女の使用する魔法の効力故だ。

様々な業火を操りそれを司る、その異能さ。それは人体に何らかの変化をもたらしている。こうして魔法の行使を完全に止め、警戒態勢を解かなければ彼女は本当の自分には戻れない。

 

「………メロンパン食べたいな。レインの作ったメロンパン…」

 

突如脳裏に浮かんだ大好物。あの甘さとカリカリ具合を越える同種のメロンパンには巡り合えていない。恐らくあのメロンパンこそが至高――故に

 

「あー、もう…!! レインの作ってくれたメロンパンが食べたい~!!」

 

彼女は落ちるかとハラハラさせるほどに塀の上で横になりジタバタする。普段の彼女からは予想もつかないほどの元気よさ。無口で毒舌というあの彼女は何処に行ったのだろうと感じる光景だが、この現場に遭遇したものは未だ居らず、今の彼女を知っているのも唯一レインだけだった。

 

「……レインに早く…会いたいな……。…いっぱい褒めて貰いたいな……あれからスゴく強くなったから……」

 

起き上がった彼女の頬は朱色に染まっていた。まるで彼のことを想い、恋しているかのように。普段の無愛想さからは予想のつかない、優しく健気な表情を浮かべ、彼女は懐かしい思い出に浸り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が彼に出会ったのは六年前――X783年のことだ。フィオーレ王国のあるこのイシュガル大陸の西にあるアラキタシア大陸より更に西の辺境にある大陸で私と彼は出会った。

大陸の名前はもう覚えていないが、私の生まれ過ごしてきた村はそんな辺境の大陸のさらに辺境にあった。農業が盛んで自然の恩恵によって村は何百年も存続していたと教えられていた。

 

当然自然があちらこちらにあるため、野生の動物も沢山いる。時に互いの望むものを交換しあったりするほど、この村に住む村人と動物たちは仲が良かった。

それが村の自慢の一つでもあったし、当時の私もそれが嬉しくて堪らなかったのだろう。子供たちは元気に原っぱを駆け回り、転んだり、喧嘩したり――そうやって幼少期の好奇心を満たしていた。

 

春は原っぱに咲く花を観察したり、春の優しい柔肌を撫でる風を存分に味わう。

夏はサンサンと照りつける太陽を背に受けながら川や小池で元気よく水遊び。

秋は美味しい秋の味覚に舌鼓を打ち、次に来る冬に備える。

冬は降り積もった雪で雪合戦をしたり、無事に春が訪れるように祈る。

 

そんな毎日の繰り返し。今ではすぐに飽きるようなものだけれど、当時の私はそれで満足していたのだと思う。

 

あの頃の私は無垢だった。無知で弱かった。普通の女の子だったし、今のように恐れられたり、仲間から賞賛されたりはしていない。

ただ元気に村のなかで幼少期を過ごし、成人してからも村のなかで結婚し、子を作り育て、老いればゆっくりと人生を振り返って終わりを迎えるはずだったのだろう。

 

――でも、人生に転機は訪れる。その転機が優しいものか、厳しく残酷なものか。それは人それぞれだ。ただ、私にとってその転機は残酷で非情極まりないものであったことは確かだ。

今でもそれを思い出すと身体の震えが止まらなくなったりする。恐怖と怒り、復讐したいと願ってしまう――そんな感情が胸の中で渦巻き蠢く気がする。

 

事の発端は私が5歳になった頃に訪れた秋のある日、村で行う収穫祭に必要な道具の材料である薪や木々、果物などを採集するために森の中に出掛けたことだった。

 

漸く5歳になり、私は自らの目で森を見ることができた。村では小さな子供――齢5歳に満たない子供は森に入れない決まりになっていた。

それ故、当時の私にとって新しい世界を見るかのような好奇心が生まれ、ワクワクしていた。早く採集を終わらせれば、少しぐらい森の中で遊んだり、いろんなものを見てもいいだろうと思って。今思えば、そんな気持ちを抱かなければ良かったのだと思える。

それでも――彼と出会うために必要だったと思えば……、そう思うと少しだけ苦しくは無くなった。

 

 

 

「おかーさん、なにをあつめればいいの?」

 

「薪と木の枝。それと果物よ。い―っぱい集めて皆に褒めてもらおうね、■■■」

 

あの頃の名前はもう捨てた。彼が居なければ、十の昔に私は死んでいた。だから私は昔の記憶があっても、その名前ではない。私はシャナだ。

そんな決意を抱くことになろうとも知らず、幼き頃の私は満足げに母の手を握り、ステップを踏むように元気よく森の中に入っていく。

それが全ての始まりであり――■■■と呼ばれていた頃の私に幕が引かれる日へのカウントダウン。

 

そして――シャナ・アラストールの人生が始まる日までのカウントダウンだった。

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

 

木々が生い茂り、微妙にじっとりとした微かな霧が発生している森の奥深く。そこに生える特殊な薬草やそこにしかない木の枝を取りに私と母親は来ていた。

採集など対して面白いことなど無いのだが、新天地と感じる故に私は楽しくて仕方がなかった。初めて見る外の景色は危険が全くない草原だけしか出たことのない私には輝いて見えた。

 

この時の私が今の私を見たらどう思うだろうか? 沢山の見たことがない景色を見ることが出来ることを羨ましがるだろうか? それとも、もう母親がいないことを哀れむだろうか?

まあ、当時5歳の私にはそんな区別もつくはずもなく、そんな区別がつくようになるのはその数日後だろう。

 

それはさておき。

 

幼い私が両手で漸く持てるほどに詰め込んだカバンからはみ出る薬草の数々と木の枝。それは誰が見ても子供にしてはよくやったと褒められる量だった。

満足げに微笑み、カバンの重さで覚束ない足元に注意しながら母親が取りに行った方向へと歩んでいく。何故かその時、不思議と霧が濃くなっていたことのだが私は気がつかなかった。

 

「っ!? …な、なに…?」

 

ガサッという音を立てる木々に驚き、少し足元がすくみそうになる。咄嗟に回りを見渡すが、何も見えな――突然道中で怪しげな何かが動いた。

 

「…………」

 

あんぐりと口を開け、固まる。しかし、固まった私に気がつかなかったのか、何も起こらないまま怪しげな何かは姿を眩ます。安堵し、木々が風で揺れているのだと無理矢理自分に信じ込ませ、再び歩き出そうと一歩進んだ時だった。

 

悲鳴が聞こえた。それも聞き覚えのある声。それは絶対に違わせることなく――

 

「――おかーさんの声!? ッ!!」

 

母親の悲鳴を耳にし、私は両手からカバンを落とし、そのまま駆け出した。途中足を引っ掻けさせようとする魂胆が丸出しの木の根があったが、それを咄嗟の判断で全て躱すと、村の子供で最速だった私が脚力をフルに使い、すぐに向かった。

向かった先に見えたのは、森の端だろうと思われる崖の岩壁を背にしてズルズルと後ろに後退する母親の姿。それに――

 

「……ぇ…? …クマ……なの…?」

 

クマらしき生き物だ。――いや、あれはクマだった。だが、それはクマであってクマではない。口から吐き出している呼気が紫色に怪しく輝き、血のように紅く染まった眼光。

返り血を受けたらしい鋭利で済むのかと思うほどに鋭い爪。クマ本体の身体からは何か可笑しなものが溢れ出しており、身体の表面に謎の亀裂が入っていた。

 

それはまるでクマの毛皮を被った化け物。恐らくは村の伝承にも載っていないだろう想定外の存在。正真正銘の化け物の姿だった。

 

恐怖に怯え、徐々に冷静さを失う母親。それを楽しんでいるかのように少しずつ距離を詰めようとするクマ型の化け物。あんな生き物がいるなんて――ふと私は思っていたが、それを心中で考えた後――

 

「…助けなきゃ……おかーさんを助けなきゃ…!!」

 

すぐさま近くの小枝を握るとそれを化け物に投げ付けた。

 

「あっちいけ!! 化け物なんか…あっちいけ!!」

 

今なら分かるが本当に幼い私は健気で――無知蒙昧だった。そんなもので何が出来る? そもそもそれで気が剃れたら次に狙われるのは私ではないか? と。

小枝が当たり、ゆっくりとこっちに振り返る化け物。やはりその眼光は元々のクマらしさなどなく、狂暴で血にまみれた存在を体現するものだった。

 

「――!?」

 

あまりのことに声が出ない。クマがゆっくりとこっちに向かおうと足取りを進めようとする。

自分に向いていないことに気がついた母親はこちらに気がつき、真っ青になった顔を向け、叫んだ。

 

「に、逃げなさい!! ■■■!! 逃げて村のみんなに伝えて!!」

 

「……い、嫌!! おかーさん、置いていけないもん…!!」

 

逃げろと叫ぶ母親に嫌だと断る私。いつもの生活から母親が消えることを拒みたかったのだろうと思うが、全てを失った後の私はこう思った。

 

――別に見捨てても良かったのだ。どちらにせよ、死んでしまうことに代わりないのだ、と。

 

そうなる未来を知らぬまま、私はいつも存在していた楽しくて幸せな刹那を逃さぬよう、母親を見捨てることを拒んだ。だが、ゆっくりと迫るクマ型の化け物の巨大さが私の決意をドスンドスンと立てる大きな音と共に鈍らせようとする。

当然のように私は後ろに後退した。しかし、あろうことか私は先程まで的確に避けていたはずの木の根に足を捕られ、尻餅をついて転んだ。

一気に恐怖が巨大化する。迫る化け物がさらに恐怖を掻き立てる。クマによってほとんど占められた視界の端で青い顔のまま動けない母親が映る。

 

私が死んだら……今度はおかーさんが殺される……!!!

 

突如感じた苦しさと微かな怒りが目の前にいる巨大なクマ型の化け物に対して理不尽さを感じさせた。

 

そもそもなんで私とおかーさんがこんな目に遭うの!?

 

胸に突然と怒りと共に沸き上がった言葉。

突然の理不尽さから来る怒りと力のない非力な私に対しての怒り。

それが少女の中で永久に眠り続けるはずだった“あるもの”の目を覚まさせる。ゆっくりと今よりは短い長髪を翻させるほどに立ち上がり、それと同時に私を中心とする突風が吹き荒れる。何かが寝覚める。その感覚が私の中で蠢き、一瞬のうちにそれが爆発的に広がり、本来は目覚めなかったであろう何かを封じる器のようなものを完全に破壊し切った。

 

「…お前なんか……――」

 

突風の中心にいる私の手に集まる謎の力。少しずつ集束し、収縮し、拡散しては、収縮する。ゆっくりと形作られ、赤い輝きを放ってそれは姿を現した。

 

炎だ。真っ赤に燃え盛る炎。こんな森なら少しだけ焼けば一気に広がる紅蓮の炎。それが無知蒙昧の私の手に渦巻き、形を形成し、紅蓮の剣を創造する。

 

――目覚めた魔法の才能。火魔法の才能。目覚めた時からすでに他者を圧倒するまでの魔法の原型。それが私の運命すら変える一撃と化す。

 

 

 

 

 

「――消えちゃえぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

紅蓮の剣を真っ直ぐ縦に降り下ろし、化け物を一刀両断する。抵抗するまもなく焼かれ砕かれ崩壊する化け物。断末魔が森全域に響き渡り、灰塵と化す。

紅蓮の剣は振るわれた後、一気に拡散し、消え去っていく。膝から崩れ落ちる私をすぐに血相が悪いままの母親は抱き止め、ギュッと抱き締めた。

暖かい。ただそれだけが私の心を癒した。ある日の私に起こった異変。それは今なら理解できるものであり――幼き頃の私には決して認めたくないものの始まりであった。

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

その次の日。荒れた森の有り様を目にした村人が前日に森に向かった私と母親に訊ねてきた。母親が代わりに説明し、なんとか問題にならずに済むと思われたが、村長にそれが嘘だと見抜かれ、真実を話すよう要求された。悩み悩んだ母親は渋々口を開き、こう告げた。

 

――■■■が魔法を使った……。紅蓮の剣で化け物を切り殺した、と。

 

それを聞いた村長の顔色がみるみる青くなり、恐怖の色が滲み出た顔つきで私を見た。周囲を見渡すと他の村人たちも顔色が青くなっていく。

まるで怖がられているようにだ。同年代の子供たちにはその理由がわかっていない。私もわかっていないのだ。

だが、母親を除く村人は口を揃えて、恐る恐るその禁忌の如き言葉を口にした。

 

――その子は……■■■は“魔女”だ、と。

 

当時の私は知らなかったが、村では魔力があるもの――つまり魔法が使えるものが魔物と同じ存在であることが分かった。特に女性ならば、魔法を使う女――魔女とされる。

それが表す真実は――その魔女を殺すことに繋がる。別に魔女に不老不死がある訳ではない。だが、その村では魔女や魔王、魔物は凶作や悲劇の兆し。殺さなければ村が滅ぶとされていたぐらいに恐れられ、疎まれる存在だったのだ。

何も知らないまま、私は詰め寄る村人たちから離れ、母親の後ろに隠れる。それと同時に子供を――私を離すまいと村人たちから距離を開ける母親。

 

その日からだ。毎日毎日、私の家には落書きや悪戯が頻繁に起こるようになった。村から出ていけという言葉はザラで、酷い時には「さっさと死ね」や「魔女の一家」などと周囲から叫ばれるようになった。友達だった子達や遊んでいた子供たちも私が窓から顔を出す度に石を投擲する。当たった額から血が溢れるのを見るとさらに勢いよく投擲を繰り返す。

窓ガラスが次々と割られ、嫌がらせがさらにエスカレートしていく。当然村の食物は配給されないし、自分達の家で作っている食物は全てダメにされた。

早く餓死しろと叫ぶ声が毎日毎日聞こえる。母親は家の出入りができる場所全てを封鎖し、襲って来ようとする村人たちから私を助けようと必死になる。

食べ物がなく、いつ殺されるか分からない状況で私と母親は極限状態となった。母親はストレスで性格が豹変しかけるまで苦しみ、私も日々の絶食や食べたいという欲望に心が歪みそうになる。

 

なんでこんなことになったんだ、と頭が自然と考え出す。

そもそも森の奥に出向かせたのは村人たちではないか。それにあんな化け物がいることすら知らなかった。それから逃れるために使ってしまっただけなのになんでこんな目に……。

 

そんなことを考え続ける日々が何日か続いた。しかし、それもすぐに終わりを告げることとなった。

 

睡眠欲求に勝てず、冷たい床の上で眠っていた私が目を覚ましたある朝。キッチンだった所に顔を出すと――そこには首を吊って死んでいた母親の姿があった。

 

ピクリとも動かぬ母親の姿に号泣する私。それと同時に家の封鎖部分を全て破壊し、流れ込んでくる村人たち。私と母親の遺体を見つけるや、すぐさま抵抗した母親の身体を無惨にも解体し、すぐさまそれを外に投げ捨てる。

次に見つけた私に無理矢理捕まえ、手首や足首に手枷や足枷をつけ、しまいには動物の如く首輪までつけた。ズルズルと引き摺りながら家から出された先に私は酷いものを見た。

 

――子供だ。私と同年代の子供の一部が炎の上で焼かれていた。ジューという油の焼ける臭いが蔓延し、それを眺める村人たちの嘲笑が聞こえた。

焼かれる子供の姿を見て泣き叫ぶ両親たち。しかし、彼らも続いて炎の上に投げ込まれ、容赦なく焼き殺される。次々と薪が足され、殺せ殺せと叫ぶ声が聞こえた。

 

「……ぁ……ぁぁ…………」

 

恐怖を感じた。あの村人たちがこんなに壊れるなんて思っていなかった。優しい村人たちという印象が音を立てて崩壊し、狂った形相を晒す化け物共に書き換えられる。

すぐさま私も引き摺られ、炎の上に連れていかれる。

 

「…い、嫌ぁ!!! 嫌ぁ!!!」

 

抵抗するが流石に子供の力では大人の力には及ばない。当然のようにズルズルと引き摺られる。皮膚が裂け、血が滲む。たま粒の涙を目尻から流し、私はただ泣き叫ぶ。

 

殺される。そう思った刹那、再び自らの手にあの感触が蘇る。一気に怒りと悲しみのままに紅蓮の剣を構築し、それを自分を引き摺る化け物に向かって叩き付けた。

 

「ギャアアアアアアアアアア!?!?」

 

悲鳴を上げ、炎を消そうとして無惨にも先に灰塵と化す。荒い呼吸を繰り返し、私は涙で滲んだ目で周囲を睨みつける。だが、村人たちは恐れることなく襲い掛かってきた。

力強く手が私の腕を取り押さえ、同胞を殺した化け物に人徳や人権などあるものかと言わんばかりに私の破れていた服を一気に破り捨てる。

抵抗する度に殴られ、意識が朦朧とする。動けなくなったのを見計らい、私を燃え盛る炎の前に作られていた牢獄らしき何かに投げ込んだ。

頭を強くぶつけたが、あまり影響がない。しかし、その衝撃は私を昏倒させるには丁度良かった。そのまま意識が無くなっていく。

無くなっていく意識のなか、最後に私の鼻に届いたのは――焼ける肉の臭いと死臭だった。

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと私は両腕、両足、胴体、首と木で作られた十字架らしき何かに括りつけられていた。抵抗すら出来ない。下の方にはすでに油のような臭いが立ち込める薪が揃えられていた。

私が目を覚ましたことに気がついた者がギョッとした顔で村長らしい人物に話しかける。それを聞いた村長もギョッとし、すぐさま何かを指示した。

指示された者が持っていたのは松明。――つまり、それで点火し、私を焼き殺そうと言うのだ。だが、生憎私は動けない。縛られる云々以前に殴られたことのせいで意識があまりハッキリしない上に身体が痛い。動く力すらない。

そして、火が薪につけられる。炎が少しずつ立ち上がり、一気に火の勢いが増す。身体が焼ける。熱くて耐えられない。

 

「……痛い……熱い……ぅぐっ……」

 

苦しさに声が漏れた。その声を聞いた者共が嘲笑し、一気に喚き散らした。

 

「魔女め!! さっさと死ねぇ!!!」

 

「てめぇなんざ生まれる必要なんかねぇーんだよ!!」

 

「さっさと死になさいよ、この魔女!!」

 

「そうだ、そうだ!! てめぇのせいで凶作になったらどうすんだよぉー!?」

 

狂っている。あんなのが私の求めていた刹那――楽しく過ごしていた日々だったのか?

 

それが突如として浮かび上がる。本当になんでこんな目にあってしまったんだと思った。別に私は悪いことをしていない。悪いのは全てあの時の化け物なのに。

私がたった一度村の外で魔法を使い、生きるために――抗うために魔法を使っただけなのに。私にどんな非があるのだろうと脳が叫ぶ。

涙が零れ落ちる。死にたくないと必死に喚きたくなる衝動に駆られる。涙がとまらず、私はただ焼かれる。少しずつ私を縛っていた木の十字架の根本が焦げ、折れそうになる。

ここで折れれば更なる激痛が私を襲うだろう。その恐怖が私を懇願させた。

 

「……お願い………なんでもいいからぁ…悪魔でも…なんでもいいからぁ…ぁぁ…。…私を……助けてぇ………」

 

人生で一番神に、悪魔に、なんでもいいから何かに強く願った。生きたいと願った。もうこんな場所から逃げたい、離れたいと私は強く強く願った。

命が燃え尽きる前に――私が本当に壊れてしまう前に、と。

 

その時だった。時間が止まったような感覚を感じた。でも時は止まっていない。だが、私の身体を縛る十字架の付け根に白銀の閃光が迸った。

それと同時に紅い斬撃が放たれ、狂ったように喚き散らしていた者共が一瞬で上半身と下半身を切り離され、血飛沫を上げて絶命していった。

その紅い斬撃は炎すら切り裂き、十字架に縛られた私をそのまま地面に倒れさせようとした刹那――ほんの一瞬で十字架を砕き割った少年が服すら無かった私を優しく抱き止めた。

 

「…ふぅ……、折角動物と仲が良いって噂の村に来たのに……。どうしてこんなに阿鼻叫喚なのかな…。オマケにこんな少女を服も着せずに十字架に磔にした上に焼き殺そうだなんてね。正直――許される訳がないよね?」

 

白銀の髪に何かの紋章を手に刻んでいた少年が鬼の如き形相で化け物共を睨み付けた。地面に突き刺した白銀の竜鱗に包まれた剣を一瞬で真横一文字に振り払い、者共を一刀両断していく。続いてその剣を消滅させ、背中に吊るしていた鞘から紅い太刀を抜刀するとそれを構えつつ、勢いよく疾走し、続けてすれ違い様に切り捨てた。

血のついた太刀を振うと、少年は優しげな目で私を見ると、小さく声をかけた。

 

「神でも悪魔でも無いけど――僕で良ければ助けるよ。ツラかったね、大丈夫だよ。後は僕に任せて、ゆっくり休んで」

 

少年の言葉に全身の力が抜け、意識がボーッとする私。向こうに少年は私の様子に安心ができる段階となったのか、あちらに向け直ると血の如く紅い瞳で彼の者共を睨み、宣言した。

 

「さぁて、覚悟は出来てるか……? 君たちには死後に天国なんて必要ない。僕が先に宣言するよ。君たちには地獄で罪を償い続け、泣き喚くのがお似合いだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが私と彼の――後にレイン・ヴァーミリオンと名乗る少年との出会いだった。

 

 

 

 

 

 




軽い説明とネタバレ。

5歳の頃のシャナが使った火魔法は決して《灼刃煉獄(フレイムヘイズ)》ではない。
あくまでもメイビスが幻魔法に目覚めたような感じであるためにちゃんとした枠組みの
魔法ですらない。そのため魔法の力を形成しても紅蓮の剣が限界である。
《灼刃煉獄》は後にレインが彼女に“生きるための力”という前提で教えることとなる。





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